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相乗平均(幾何平均)

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相乗平均(幾何平均)の定義

自然数\(n\)を任意に選んだ上で、さらに\(n\)個の正の実数\(a_{1},\cdots ,a_{n}>0\)を任意に選びます。正の実数どうしの積は正の実数であるため、先の\(n\)個の正の実数\(a_{1},\cdots ,a_{n}\)の積\begin{equation*}\prod_{i=1}^{n}a_{i}=a_{1}\times \cdots \times a_{n}
\end{equation*}もまた正の実数です。また、\(\frac{1}{n}\)は有理数であるため、\(\frac{1}{n}\)を指数とする累乗\begin{equation*}\left( a_{1}\times \cdots \times a_{n}\right) ^{\frac{1}{n}}
\end{equation*}が1つの正の実数として定まることが保証されます。これを\(a_{1},\cdots ,a_{n}\)の相乗平均(geometric mean)や幾何平均などと呼びます。有理数を指数とする累乗の定義より、相乗平均は、\begin{equation*}\left[ \left( a_{1}\times \cdots \times a_{n}\right) ^{\frac{1}{n}}\right] ^{n}=a_{1}\times \cdots \times a_{n}
\end{equation*}を満たす正の実数として定義されます。つまり、\(n\)乗すると\(a_{1}\times \cdots \times a_{n}\)と一致するような正の実数として相乗平均\(\left( a_{1}\times \cdots \times a_{n}\right) ^{\frac{1}{n}}\)は定義され、これを、\begin{equation*}\sqrt[n]{a_{1}\times \cdots \times a_{n}}
\end{equation*}と表記することもできます。

例(相乗平均)
2つの正の実数\(a_{1},a_{2}>0\)の相乗平均は、\begin{equation*}\left( a_{1}a_{2}\right) ^{\frac{1}{2}}
\end{equation*}ですが、これは、\begin{equation*}
\left[ \left( a_{1}a_{2}\right) ^{\frac{1}{2}}\right] ^{2}=a_{1}a_{2}
\end{equation*}を満たす正の実数として定義されます。例えば、\(5\)と\(5\)の相乗平均は、\begin{eqnarray*}\left( 5\cdot 5\right) ^{\frac{1}{2}} &=&25^{\frac{1}{2}} \\
&=&5\quad \because 5^{2}=25
\end{eqnarray*}であり、\(1\)と\(4\)の相乗平均は、\begin{eqnarray*}\left( 1\cdot 4\right) ^{\frac{1}{2}} &=&4^{\frac{1}{2}} \\
&=&2\quad \because 2^{2}=4
\end{eqnarray*}であり、\(2\)と\(5\)の相乗平均は、\begin{eqnarray*}\left( 2\cdot 5\right) ^{\frac{1}{2}} &=&10^{\frac{1}{2}} \\
&=&3.1623\quad \because \left( 3.1623\right) ^{2}=10
\end{eqnarray*}であり、\(1\)と\(\frac{1}{4}\)の相乗平均は、\begin{eqnarray*}\left( 1\cdot \frac{1}{4}\right) ^{\frac{1}{2}} &=&\left( \frac{1}{4}\right)
^{\frac{1}{2}} \\
&=&\frac{1}{2}\quad \because \left( \frac{1}{2}\right) ^{2}=\frac{1}{4}
\end{eqnarray*}となります。

例(相乗平均)
3つの正の実数\(a_{1},a_{2},a_{3}>0\)の相乗平均は、\begin{equation*}\left( a_{1}a_{2}a_{3}\right) ^{\frac{1}{3}}
\end{equation*}ですが、これは、\begin{equation*}
\left[ \left( a_{1}a_{2}a_{3}\right) ^{\frac{1}{3}}\right] ^{3}=a_{1}a_{2}a_{3}
\end{equation*}を満たす正の実数として定義されます。例えば、\(5\)と\(5\)と\(5\)の相乗平均は、\begin{eqnarray*}\left( 5\cdot 5\cdot 5\right) ^{\frac{1}{3}} &=&125^{\frac{1}{3}} \\
&=&5\quad \because 5^{3}=125
\end{eqnarray*}であり、\(1\)と\(2\)と\(4\)の相乗平均は、\begin{eqnarray*}\left( 1\cdot 2\cdot 4\right) ^{\frac{1}{3}} &=&8^{\frac{1}{3}} \\
&=&2\quad \because 2^{3}=8
\end{eqnarray*}であり、\(2\)と\(5\)と\(8\)の相乗平均は、\begin{eqnarray*}\left( 2\cdot 5\cdot 8\right) ^{\frac{1}{3}} &=&80^{\frac{1}{3}} \\
&=&4.3089\quad \because \left( 4.3089\right) ^{3}=80
\end{eqnarray*}であり、\(1\)と\(\frac{1}{2}\)と\(\frac{1}{4}\)の相乗平均は、\begin{eqnarray*}\left( 1\cdot \frac{1}{2}\cdot \frac{1}{4}\right) ^{\frac{1}{3}} &=&\left(
\frac{1}{8}\right) ^{\frac{1}{3}} \\
&=&\frac{1}{2}\quad \because \left( \frac{1}{2}\right) ^{3}=\frac{1}{8}
\end{eqnarray*}となります。

例(相乗平均)
長方形の長辺の長さが\(L>0\)であり、短辺の長さが\(S>0\)であるものとします。この長方形の面積は\(LS\)です。面積を一定にしたまま正方形にするためには、正方形の辺の長さ\(x>0\)を、\begin{equation*}x^{2}=LS
\end{equation*}すなわち、\begin{equation*}
x=\left( LS\right) ^{\frac{1}{2}}
\end{equation*}にする必要がありますが、これはもとの長方形の長辺の長さ\(L\)と短辺の長さ\(S\)の相乗平均です。

 

相乗平均(幾何平均)の性質と活用例

繰り返しになりますが、\(n\)個の正の実数\(a_{1},\cdots ,a_{n}\)の相乗平均\begin{equation*}\left( a_{1}\times \cdots \times a_{n}\right) ^{\frac{1}{n}}
\end{equation*}とは、以下の関係\begin{equation*}
\left[ \left( a_{1}\times \cdots \times a_{n}\right) ^{\frac{1}{n}}\right] ^{n}=a_{1}\times \cdots \times a_{n}
\end{equation*}を満たす正の実数として定義されます。見通しを良くために、相乗平均を、\begin{equation*}
GM=\left( a_{1}\times \cdots \times a_{n}\right) ^{\frac{1}{n}}
\end{equation*}で表記すると、上の関係を、\begin{equation*}
GM^{n}=a_{1}\times \cdots \times a_{n}
\end{equation*}と表現できます。つまり、問題としている\(n\)個の正の実数\(a_{1},\cdots,a_{n}\)の積(右辺)を得るためにこれらの数を実際にかけ合わせるかわりに、相乗平均\(GM\)に相当する値を\(n\)回かけ合わせてもよいということです(左辺)。かけ合わせることに意味があるような数値\(a_{1},\cdots ,a_{n}\)の積を求めるために、平均的にはどのような数をかけ合わせればよいかを表す指標が相乗平均であるということです。

変化率はかけ合わせることに意味のある数値であるため、変化率の平均を求める際には相乗平均が適しています。

例(平均的な経済成長率)
ある国の5年間の経済成長率が以下の表で与えられているものとします。

$$\begin{array}{cc}\hline
年(n) & 経済成長率 (r_{n}) \\ \hline
1年目 & 1.05(+5\%) \\ \hline
2年目 & 1.1(+10\%) \\ \hline
3年目 & 1.05(+5\%) \\ \hline
4年目 & 0.95(-5\%) \\ \hline
5年目 & 1.1(+10\%) \\ \hline
\end{array}$$

表:経済成長率の変遷

この国の経済は年あたり平均してどれくらいの割合で成長したと言えるでしょうか。\(n\)年目の経済成長率を\(r_{n}\)で、\(n\)年目終了時の経済規模を\(e_{n}\)で、\(1\)年目の冒頭における経済規模を\(e_{0}\)でそれぞれ表記する場合、\(5\)年目終了時の経済規模は、\begin{eqnarray*}e_{5} &=&e_{4}\cdot r_{5} \\
&=&e_{3}\cdot r_{4}\cdot r_{5}\quad \because e_{4}=e_{3}r_{4} \\
&=&e_{2}\cdot r_{3}\cdot r_{4}\cdot r_{5}\quad \because e_{3}=e_{2}r_{3} \\
&=&e_{1}\cdot r_{2}\cdot r_{3}\cdot r_{4}\cdot r_{5}\quad \because
e_{2}=e_{1}\cdot r_{2} \\
&=&e_{0}\cdot r_{1}\cdot r_{2}\cdot r_{3}\cdot r_{4}\cdot r_{5}\quad
\because e_{1}=e_{0}\cdot r_{1}
\end{eqnarray*}となるため、\begin{equation*}
\frac{e_{5}}{e_{0}}=r_{1}\cdot r_{2}\cdot r_{3}\cdot r_{4}\cdot r_{5}
\end{equation*}を得ます。つまり、この経済の\(5\)年間を通じた経済成長率は\(\frac{e_{5}}{e_{0}}\)ですが、これは各年の経済成長率の積\(r_{1}\cdot r_{2}\cdot r_{3}\cdot r_{4}\cdot r_{5}\)と一致します。5年間の経済成長率\(r_{1},r_{2},r_{3},r_{4},r_{5}\)の相乗平均を、\begin{equation*}GM=\left( r_{1}\cdot r_{2}\cdot r_{3}\cdot r_{4}\cdot r_{5}\right) ^{\frac{1}{5}}
\end{equation*}で表記すると、相乗平均の定義より、\begin{equation*}
GM^{5}=r_{1}\cdot r_{2}\cdot r_{3}\cdot r_{4}\cdot r_{5}
\end{equation*}となるため、これと先の関係式より、\begin{equation*}
\frac{e_{5}}{e_{0}}=GM^{5}
\end{equation*}を得ます。つまり、この経済の\(5\)年間を通じた経済成長率は\(\frac{e_{5}}{e_{0}}\)ですが、これは相乗平均\(GM\)の\(5\)乗に等しいため、この国の経済は年あたり平均して割合\(GM\)で成長したと言えます。相乗平均は成長率の平均を表すということです。ちなみに、相乗平均の値を具体的に計算すると、\begin{eqnarray*}GM &=&\left( 1.05\cdot 1.1\cdot 1.05\cdot 0.95\cdot 1.1\right) ^{\frac{1}{5}}
\\
&=&1.0485
\end{eqnarray*}となります。一方、年あたりの平均的な成長率を表す指標として相加平均\begin{eqnarray*}
\frac{r_{1}+r_{2}+r_{3}+r_{4}+r_{5}}{5} &=&\frac{1.05+1.1+1.05+0.95+1.1}{5}
\\
&=&1.05
\end{eqnarray*}を採用した場合、これは相乗平均\(1.0485\)よりも大きくなるため、相加平均では成長率の平均を正確に捉えることはできません。

 

対数を用いた相乗平均の算出

繰り返しになりますが、\(n\)個の正の実数\(a_{1},\cdots ,a_{n}\)の相乗平均は、\begin{equation}GM=\left( a_{1}\times \cdots \times a_{n}\right) ^{\frac{1}{n}} \quad \cdots (1)
\end{equation}ですが、これは以下の関係\begin{equation*}
GM^{n}=a_{1}\times \cdots \times a_{n}
\end{equation*}を満たす正の実数として定義されます。つまり、与えられた正の実数\(a_{1},\cdots ,a_{n}\)の相乗平均\(GM\)を求めるためには積\(a_{1}\times \cdots \times a_{n}\)を計算した上で、さらに、\(n\)乗したときに先の積\(a_{1}\times \cdots \times a_{n}\)と一致するような正の実数を特定する必要があります。したがって、数の個数\(n\)が多くなるほど、また個々の数\(a_{1},\cdots ,a_{n}\)が大きくなるほど幾何平均を特定するのが困難になります。

対数変換を用いればこのような問題を解決できます。具体的には、\begin{eqnarray*}
\ln \left( GM\right) &=&\ln \left( \left( a_{1}\times \cdots \times
a_{n}\right) ^{\frac{1}{n}}\right) \quad \because \left( 1\right) \\
&=&\frac{1}{n}\ln \left( \left( a_{1}\times \cdots \times a_{n}\right)
\right) \\
&=&\frac{1}{n}\left[ \ln \left( a_{1}\right) +\cdots +\ln \left(
a_{n}\right) \right] \end{eqnarray*}という関係が成り立つため、以上の関係を用いて\(\ln \left( GM\right) \)の値を特定した上で、さらにそこから、以下の関係\begin{equation*}GM=e^{\ln \left( GM\right) }
\end{equation*}を用いて相乗平均\(GM\)を特定することになります。

例(対数を用いた相乗平均の算出)
以下の5つの数値の相乗平均\begin{equation*}
4,9,16,42,69
\end{equation*}を求めます。相乗平均の定義より、\begin{equation*}
GM=\left( 4\cdot 9\cdot 16\cdot 42\cdot 69\right) ^{\frac{1}{5}}
\end{equation*}ですが、これをそのまま計算するのは大変です。対数をとると、\begin{eqnarray*}
\ln \left( GM\right) &=&\ln \left( 4\cdot 9\cdot 16\cdot 42\cdot 69\right)
^{\frac{1}{5}} \\
&=&\frac{1}{5}\ln \left( 4\cdot 9\cdot 16\cdot 42\cdot 69\right) \\
&=&\frac{1}{5}\left[ \ln \left( 4\right) +\ln \left( 9\right) +\ln \left(
16\right) +\ln \left( 42\right) +\ln \left( 69\right) \right] \\
&=&\frac{1}{5}\left( 1.3863+2.1972+2.7726+3.7377+4.2341\right) \\
&=&2.8656
\end{eqnarray*}となるため、\begin{eqnarray*}
GM &=&e^{\ln \left( GM\right) } \\
&=&e^{2.8656} \\
&=&17.560
\end{eqnarray*}となります。

 

演習問題

問題(相乗平均の応用)
ある絵画を購入したところ、購入後の\(1\)年間で絵画の価値は\(50\%\)上がり、次の\(1\)年間でさらに価値が\(20\%\)上がり、その次の\(1\)年間でさらに価値が\(90\%\)上がりました。この\(3\)年間において、絵画の価値は年平均でどれくらい上昇したと言えるでしょうか。
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問題(相乗平均の応用)
ある地域の人口を計測したところ、計測開始時点は\(10\)万人、\(1\)年後には\(18\)万人、\(2\)年後には\(21\)万人、\(3\)年後には\(30\)万人でした。各年の人口増加率を求めた上で、さらにそれらの相乗平均を求めてください。得られた値は何を表す指標であるか説明してください。
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