逆関数
関数\(f:\mathbb{R} \supset X\rightarrow \mathbb{R} \)が与えられたとき、終集合の要素\(y\in \mathbb{R} \)の逆像とは、\begin{equation*}f^{-1}\left( y\right) =\left\{ x\in X\ |\ y=f\left( x\right) \right\}
\end{equation*}と定義される定義域\(X\)の部分集合です。一般には、終集合の要素\(y\in \mathbb{R} \)を任意に選んだとき、それに対して\(y=f\left( x\right) \)を満たす定義域の要素\(x\in X\)は存在するとは限らず(この場合の逆像\(f^{-1}\left( y\right) \)は空集合)、存在する場合でも一意的であるとは限りません(この場合の逆像\(f^{-1}\left( y\right) \)は複数の要素を持つ集合)。
一方、関数\(f:\mathbb{R} \supset X\rightarrow \mathbb{R} \)が与えられたとき、終集合の任意の要素\(y\in \mathbb{R} \)の逆像\(f^{-1}\left( y\right) \subset X\)が1点集合になることが保証される場合には、つまり、以下の条件\begin{equation*}\forall y\in \mathbb{R} ,\ \exists x\in X:f^{-1}\left( y\right) =\left\{ x\right\}
\end{equation*}が成り立つ場合には、集合\(f^{-1}\left( y\right) \)と、そこに含まれる1つの要素\(x\)を同一視することにより、終集合のそれぞれの要素\(y\in \mathbb{R} \)に対して、その逆像に属する唯一の要素\(f^{-1}\left( y\right) =x\in X\)を値として定める\(\mathbb{R} \)から\(X\)への関数が定義可能です。このように定義された関数を\(f\)の逆関数(inverse function)と呼び、\begin{equation*}f^{-1}:\mathbb{R} \rightarrow X
\end{equation*}で表記します。つまり、逆関数\(f^{-1}\)がそれぞれの\(y\in \mathbb{R} \)に対して定める値\(f^{-1}\left( y\right) \in X\)は、\(f\)による\(y\)の逆像\(f^{-1}\left( y\right) \subset X\)に含まれる唯一の要素\(x\)と一致します。
繰り返しになりますが、関数\(f:\mathbb{R} \supset X\rightarrow \mathbb{R} \)による要素\(y\in \mathbb{R} \)の逆像\(f^{-1}\left( y\right) \)は\(X\)の「部分集合」である一方、関数\(f\)の逆関数\(f^{-1}:\mathbb{R} \rightarrow X\)による要素\(y\in \mathbb{R} \)の像\(f^{-1}\left( y\right) \)は\(X\)の「要素」です。両者を同一の記号\(f^{-1}\left( y\right) \)によって表記していますが、厳密にはこれらは異なる概念です。ただ、逆関数\(f^{-1}\)について考える際には\(f\)による\(y\)の逆像\(f^{-1}\left( b\right) \)は1つの要素だけを持つ集合であることが前提になっており、その1つの要素は逆写像\(f^{-1}\)による\(y\)の像\(f^{-1}\left( y\right) \)と一致するため、両者を同一視するということです。
関数\(f:\mathbb{R} \supset X\rightarrow \mathbb{R} \)の始集合は\(X\)である一方で終集合は\(\mathbb{R} \)ですが、その逆関数\(f^{-1}:\mathbb{R} \rightarrow X\)の始集合は\(\mathbb{R} \)である一方で終集合は\(X\)です。つまり、関数\(f\)と逆関数\(f^{-1}\)とでは、始集合と終集合の立場が逆転します。
f\left( 2\right) &=&5 \\
f\left( 3\right) &=&6
\end{eqnarray*}を満たすものとします。\(f\)による\(\left\{ 4,5,6\right\} \)の要素の逆像は、\begin{eqnarray*}f^{-1}\left( 4\right) &=&\left\{ 1\right\} \\
f^{-1}\left( 5\right) &=&\left\{ 2\right\} \\
f^{-1}\left( 6\right) &=&\left\{ 3\right\}
\end{eqnarray*}です。\(f\)による終集合\(\left\{ 4,5,6\right\} \)の要素の逆像がいずれも1点集合であることが確認できたため逆関数\begin{equation*}f^{-1}:\left\{ 4,5,6\right\} \rightarrow \left\{ 1,2,3\right\}
\end{equation*}が定義可能であり、これは、\begin{eqnarray*}
f^{-1}\left( 4\right) &=&1 \\
f^{-1}\left( 5\right) &=&2 \\
f^{-1}\left( 6\right) &=&3
\end{eqnarray*}を満たします。
\end{equation*}を定めるものとします。\(f\)による終集合の要素\(y\in \mathbb{R} \)の逆像は、\begin{eqnarray*}f^{-1}\left( y\right) &=&\left\{ x\in \mathbb{R} \ |\ y=f\left( x\right) \right\} \quad \because \text{逆像の定義} \\
&=&\left\{ x\in \mathbb{R} \ |\ y=2x+1\right\} \quad \because f\text{の定義} \\
&=&\left\{ \frac{y-1}{2}\right\}
\end{eqnarray*}ですが、これは1点集合であるため逆関数\(f^{-1}:\mathbb{R} \rightarrow \mathbb{R} \)が定義可能であり、\(f^{-1}\)はそれぞれの\(y\in \mathbb{R} \)に対して、\begin{equation*}f^{-1}\left( y\right) =\frac{y-1}{2}
\end{equation*}を定めます。
\end{equation*}が成り立つため、この関数\(f\)はそれぞれの\(x\in \mathbb{R} \)に対して、\begin{equation*}f\left( x\right) =2.54x
\end{equation*}を定めます。\(f\)による終集合の要素\(y\in \mathbb{R} \)の逆像は、\begin{eqnarray*}f^{-1}\left( y\right) &=&\left\{ x\in \mathbb{R} \ |\ y=f\left( x\right) \right\} \quad \because \text{逆像の定義} \\
&=&\left\{ x\in \mathbb{R} \ |\ y=2.54x\right\} \quad \because f\text{の定義} \\
&=&\left\{ \frac{y}{2.54}\right\}
\end{eqnarray*}ですが、これは1点集合であるため逆関数\(f^{-1}:\mathbb{R} \rightarrow \mathbb{R} \)が定義可能であり、\(f^{-1}\)はそれぞれの\(y\in \mathbb{R} \)に対して、\begin{equation*}f^{-1}\left( y\right) =\frac{y}{2.54}
\end{equation*}を定めます。この逆関数\(f^{-1}\)は「センチメートル」を「インチ」に変換する関数です。
逆関数は存在するとは限らない:関数による要素の逆像が空集合である場合
関数の逆関数は存在するとは限りません。関数\(f:\mathbb{R} \supset X\rightarrow \mathbb{R} \)が与えられているものとします。加えて、終集合に属する少なくとも1つの要素\(y\in \mathbb{R} \)について、その逆像\(f^{-1}\left( y\right) \subset X\)が空集合であるものとします。この場合、逆関数\(f^{-1}:\mathbb{R} \rightarrow X\)がその点\(y\)に対して定めるべき値がそもそも存在しないため、逆関数\(f^{-1}\)は定義不可能です。
\end{equation*}を像として定めるものとします。ただし、\(\mathbb{Z} \)はすべての整数からなる集合です。\(f\)によるそれぞれの整数\(y\in \mathbb{Z} \)の逆像は、\begin{eqnarray*}f^{-1}\left( y\right) &=&\left\{ x\in \mathbb{Z} \ |\ y=f\left( x\right) \right\} \quad \because f^{-1}\left( y\right) \text{の定義} \\
&=&\left\{ x\in \mathbb{Z} \ |\ y=2x\right\} \quad \because f\text{の定義} \\
&=&\left\{ \frac{y}{2}\right\}
\end{eqnarray*}ですが、\(y\)が奇数である場合に\(\frac{y}{2}\)は整数でないため、\(f^{-1}\left( y\right) \)は空集合になります。したがって、逆関数\(f^{-1}:\mathbb{Z} \rightarrow \mathbb{Z} \)は存在しません。
関数\(f:\mathbb{R} \supset X\rightarrow \mathbb{R} \)の逆関数が存在しない場合でも、その終集合\(\mathbb{R} \)を制限することにより、逆関数\(f^{-1}\)を作ることができる場合があります。以下の例より明らかです。
\end{equation*}を像として定めるものとします。先に明らかになったように逆写像\(f^{-1}:\mathbb{Z} \rightarrow \mathbb{Z} \)は存在しません。では、この関数\(f\)の終集合を偶数全体の集合\(E\)に縮小して、\begin{equation*}f:\mathbb{Z} \rightarrow E
\end{equation*}とした場合にはどうなるでしょうか。\(f\)によるそれぞれの偶数\(y\in E\)の逆像は、\begin{eqnarray*}f^{-1}\left( y\right) &=&\left\{ x\in \mathbb{Z} \ |\ y=f\left( x\right) \right\} \quad \because f^{-1}\left( y\right) \text{の定義} \\
&=&\left\{ x\in \mathbb{Z} \ |\ y=2x\right\} \quad \because f\text{の定義} \\
&=&\left\{ \frac{y}{2}\right\}
\end{eqnarray*}ですが、\(y\)が偶数であるため\(\frac{y}{2}\)は整数になります。したがってこの場合には逆写像\begin{equation*}f^{-1}:E\rightarrow \mathbb{Z} \end{equation*}が定義可能であり、これはそれぞれの偶数\(y\in E\)に対して、\begin{equation*}f^{-1}\left( y\right) =\frac{y}{2}
\end{equation*}を定めます。
逆関数は存在するとは限らない:関数による要素の逆像が複数の要素を持つ場合
関数\(f:\mathbb{R} \supset X\rightarrow \mathbb{R} \)が与えられているものとします。加えて、終集合に属する少なくとも1つの要素\(y\in \mathbb{R} \)について、その逆像\(f^{-1}\left( y\right) \subset X\)が複数の要素を持つものとします。この場合、逆関数\(f^{-1}:\mathbb{R} \rightarrow X\)がその点\(y\)に対して定めるべき値が一意的に定まらないため、逆関数\(f^{-1}\)は定義不可能です。
\end{equation*}を像として定めるものとします。\(f\)によるそれぞれの\(y\in \mathbb{R} \)の逆像は、\begin{eqnarray*}f^{-1}\left( y\right) &=&\left\{ x\in \mathbb{R} \ |\ y=x^{2}\right\} \\
&=&\left\{ \sqrt{y},-\sqrt{y}\right\}
\end{eqnarray*}となります。例えば、\begin{equation*}
f^{-1}\left( 1\right) =\{x\in \mathbb{R} \ |\ 1=x^{2}\}=\{1,-1\}
\end{equation*}となりますが、これは1点集合ではないため逆関数\(f^{-1}:\mathbb{R} \rightarrow \mathbb{R} \)は存在しません。
関数\(f:\mathbb{R} \supset X\rightarrow \mathbb{R} \)の逆関数が存在しない場合でも、その始集合\(X\)を制限することにより、逆関数\(f^{-1}\)を作ることができる場合があります。以下の例より明らかです。
\end{equation*}を像として定めるものとします。先に明らかになったように逆関数\(f^{-1}:\mathbb{R} \rightarrow \mathbb{R} \)は存在しません。では、この関数\(f\)の始集合を非負の実数からなる集合\(\mathbb{R} _{+}\)に縮小して、\begin{equation*}f:\mathbb{R} _{+}\rightarrow \mathbb{R} \end{equation*}とした場合にはどうなるでしょうか。\(f\)によるそれぞれの\(y\in \mathbb{R} \)の逆像は、\begin{eqnarray*}f^{-1}\left( y\right) &=&\left\{ x\in \mathbb{R} _{+}\ |\ y=x^{2}\right\} \\
&=&\left\{ \sqrt{y}\right\}
\end{eqnarray*}となり、これは1点集合であるため逆関数\(f^{-1}:\mathbb{R} \rightarrow \mathbb{R} _{+}\)が定義可能であり、これはそれぞれの\(y\in \mathbb{R} \)に対して、\begin{equation*}f^{-1}\left( y\right) =\sqrt{y}
\end{equation*}を定めます。
逆関数が存在するための必要十分条件
関数\(f:\mathbb{R} \supset X\rightarrow \mathbb{R} \)が単射であることは、\begin{equation*}\forall x,x^{\prime }\in X:\left[ x\not=x^{\prime }\Rightarrow f\left(
x\right) \not=f\left( x^{\prime }\right) \right]
\end{equation*}が成り立つことを意味し、\(f\)が全射であることは、\begin{equation*}\forall y\in \mathbb{R} ,\ \exists x\in X:y=f\left( x\right)
\end{equation*}が成り立つことを意味します。単射かつ全射であるような関数を全単射と呼びます。
関数が全単射である場合には、その逆関数が必ず存在します。
先の命題の逆もまた成立します。つまり、関数の逆関数が存在する場合、その関数は全単射です。
以上の2つの命題より、関数が全単射であることと、その逆関数が存在することは必要十分であることが明らかになりました。
関数\(f\)が与えられたとき、以下の関係\begin{equation*}f\text{は全単射である}\Leftrightarrow \text{逆関数}f^{-1}\text{が存在する}
\end{equation*}が成り立つことが明らかになりました。であるならば、以下の関係\begin{equation*}
f\text{は全単射ではない}\Leftrightarrow \text{逆関数}f^{-1}\text{が存在しない}
\end{equation*}もまた成り立ちます。
\end{equation*}を像として定めるものとします。先に明らかになったように逆写像\(f^{-1}:\mathbb{Z} \rightarrow \mathbb{Z} \)は存在しません。したがって先の命題より、\(f\)は全単射ではないはずです。実際、奇数\(y\in \mathbb{Z} \)に注目したとき、それに対して、\begin{equation*}2x=y
\end{equation*}すなわち、\begin{equation*}
f\left( x\right) =y
\end{equation*}を満たす整数\(x\in \mathbb{Z} \)は存在しないため\(f\)は全射ではなく、したがって全単射でもありません。一方、関数\(f:\mathbb{Z} \rightarrow \mathbb{Z} \)の終集合を偶数全体の集合\(E\)に縮小して、\begin{equation*}f:\mathbb{Z} \rightarrow E
\end{equation*}とした場合、先に明らかになったように逆写像\(f^{-1}:\mathbb{Z} \rightarrow \mathbb{Z} \)は存在します。したがって先の命題より、\(f\)は全単射であるはずです。実際、終集合を\(E\)に制限した\(f\)は全単射です(確認してください)。
単射が生成する全単射
関数\(f:\mathbb{R} \supset X\rightarrow \mathbb{R} \)が単射である一方で全射ではない状況を想定します。関数の終集合を値域に制限すれば全射になるため、関数\(f\)の終集合を値域\begin{equation*}f\left( X\right) =\left\{ f\left( x\right) \in \mathbb{R} \ |\ x\in X\right\}
\end{equation*}に制限して、\begin{equation*}
f:\mathbb{R} \supset X\rightarrow f\left( X\right)
\end{equation*}とすれば全単射になります。すると、先の命題より、逆関数\begin{equation*}
f^{-1}:f\left( X\right) \rightarrow \mathbb{R} \end{equation*}が存在することが保証されます。
\end{equation*}を定めるものとします。ただし、\(f\)の定義域である\(\mathbb{R} _{+}\)はすべての非負の実数からなる集合です。\(f\)は単射である一方で全射ではなく(確認してください)、したがって逆関数\begin{equation*}f^{-1}:\mathbb{R} \rightarrow \mathbb{R} _{+}
\end{equation*}は存在しません。\(f\)の終集合を値域\begin{eqnarray*}f\left( \mathbb{R} _{+}\right) &=&\left\{ f\left( x\right) \in \mathbb{R} \ |\ x\in \mathbb{R} _{+}\right\} \\
&=&\left\{ x^{2}\in \mathbb{R} \ |\ x\in \mathbb{R} _{+}\right\} \\
&=&\mathbb{R} _{+}
\end{eqnarray*}に制限して\(f:\mathbb{R} _{+}\rightarrow f\left( \mathbb{R} _{+}\right) \)すなわち\(f:\mathbb{R} _{+}\rightarrow \mathbb{R} _{+}\)とすればこれは全単射になります。したがって、逆関数\begin{equation*}f^{-1}:\mathbb{R} _{+}\rightarrow \mathbb{R} _{+}
\end{equation*}が存在するはずです。実際、\(f\)によるそれぞれの\(y\in \mathbb{R} _{+}\)の逆像は、\begin{eqnarray*}f^{-1}\left( y\right) &=&\left\{ x\in \mathbb{R} _{+}\ |\ y=f\left( x\right) \right\} \quad \because \text{逆像の定義} \\
&=&\left\{ x\in \mathbb{R} _{+}\ |\ y=x^{2}\right\} \quad \because f\text{の定義} \\
&=&\left\{ \sqrt{y}\right\} \quad \because y\in \mathbb{R} _{+}
\end{eqnarray*}ですが、これは1点集合であるため逆関数\(f^{-1}:\mathbb{R} _{+}\rightarrow \mathbb{R} _{+}\)が存在し、これはそれぞれの\(y\in \mathbb{R} _{+}\)に対して、\begin{equation*}f^{-1}\left( y\right) =\sqrt{y}
\end{equation*}を定めます。
先と命題より以下が導かれます。
関数\(f:\mathbb{R} \supset X\rightarrow \mathbb{R} \)が単射であることと、逆関数\(f^{-1}:f\left( X\right) \rightarrow X\)が存在することは必要十分である。ただし、\(f\left( X\right) \)は\(f\)の値域である。
逆関数の定義域と値域
関数\(f\)の逆関数\(f^{-1}\)が存在する場合、関数\(f\)の定義域と逆関数\(f^{-1}\)の値域が一致し、関数\(f\)の値域と逆関数\(f^{-1}\)の定義域が一致することが保証されます。
&&\left( b\right) \ R\left( f\right) =D\left( f^{-1}\right)
\end{eqnarray*}がともに成り立つ。ただし、\(D\left( f\right) ,D\left( f^{-1}\right) \)は\(f,f^{-1}\)の定義域であり、\(R\left( f\right) ,R\left( f^{-1}\right) \)は\(f,f^{-1}\)の値域である。
\end{equation*}を像として定めるものとします。\(f\)の定義域は、\begin{eqnarray*}D\left( f\right) &=&\left\{ x\in \mathbb{R} \ |\ f\left( x\right) \in \mathbb{R} \right\} \quad \because D\left( f\right) \text{の定義} \\
&=&\left\{ x\in \mathbb{R} \ |\ \frac{1}{2}x\in \mathbb{R} \right\} \quad \because f\text{の定義} \\
&=&\mathbb{R} \end{eqnarray*}であり、\(f\)の値域は、\begin{eqnarray*}R\left( f\right) &=&\left\{ f\left( x\right) \in \mathbb{R} \ |\ x\in \mathbb{R} \right\} \quad \because R\left( f\right) \text{の定義} \\
&=&\left\{ \frac{1}{2}x\in \mathbb{R} \ |\ x\in \mathbb{R} \right\} \\
&=&\mathbb{R} \end{eqnarray*}です。\(f\)の逆写像\(f^{-1}:\mathbb{R} \rightarrow \mathbb{R} \)が存在し、それぞれの\(y\in \mathbb{R} \)に対して、\begin{equation*}f^{-1}\left( y\right) =2y
\end{equation*}を像として定めます。\(f^{-1}\)の定義域は、\begin{eqnarray*}D\left( f^{-1}\right) &=&\left\{ y\in \mathbb{R} \ |\ f^{-1}\left( y\right) \in \mathbb{R} \right\} \\
&=&\left\{ y\in \mathbb{R} \ |\ 2y\in \mathbb{R} \right\} \\
&=&\mathbb{R} \end{eqnarray*}であり、\(f^{-1}\)の値域は、\begin{eqnarray*}R\left( f^{-1}\right) &=&\left\{ f^{-1}\left( y\right) \in \mathbb{R} \ |\ y\in \mathbb{R} \right\} \\
&=&\left\{ 2y\in \mathbb{R} \ |\ y\in \mathbb{R} \right\} \\
&=&\mathbb{R} \end{eqnarray*}です。したがって、\begin{eqnarray*}
&&\left( a\right) \ D\left( f\right) =R\left( f^{-1}\right) \\
&&\left( b\right) \ R\left( f\right) =D\left( f^{-1}\right)
\end{eqnarray*}がともに成り立ちますが、これは先の命題の主張と整合的です。
逆関数の求め方
関数\(f:\mathbb{R} \supset X\rightarrow \mathbb{R} \)の逆関数\(f^{-1}\)を具体的に求めるためにはどうすればいいでしょうか。先の命題より、関数\(f\)と逆関数\(f^{-1}\)の定義域と値域はそれぞれ、\begin{eqnarray*}f &:& X\rightarrow f\left( X\right) \\
f^{-1} &:& f\left( X\right) \rightarrow X
\end{eqnarray*}と定まります。加えて、逆関数の定義にしたがうのであれば、関数\(f\)による値域の要素\(y\in f\left( X\right) \)の逆像\begin{equation*}f^{-1}\left( y\right) =\left\{ x\in X\ |\ y=f\left( x\right) \right\}
\end{equation*}を具体的に求めた上で、それが1点集合であることを確認することになります。その上で、この集合\(f^{-1}\left( y\right) \)の唯一の要素を逆写像\(f^{-1}\)による\(y\)の像として採用することになります。
もう少し簡単に逆関数を求めることもできます。その際に以下の命題が役に立ちます。
\end{equation*}が成り立つ。
以上の命題より、関数\(f\)による\(x\)の像が\(y\)であることと、逆関数\(f^{-1}\)による\(y\)の像が\(x\)であることは必要十分であることが明らかになりました。以上の事実を用いると、比較的容易に関数の逆関数を求めることができます。具体的には、関数\(f\)の具体的な形状\(f\left( x\right) \)が明らかになっている場合、便宜的に、\begin{equation*}y=f\left( x\right)
\end{equation*}とおけば、上の命題より、これは以下の関係\begin{equation*}
x=f^{-1}\left( y\right)
\end{equation*}と必要十分であることが保証されます。したがって、\(y=f\left( x\right) \)を\(x\)について解けば逆写像の具体的な形状\(f^{-1}\left( y\right) \)が明らかになります。
逆関数を特定する手順を改めて整理すると以下のようになります。
- 関数\(f:\mathbb{R} \supset X\rightarrow \mathbb{R} \)の値域\(f\left( X\right) \)を特定した上で、終集合を値域に制限した関数\(f:\mathbb{R} \supset X\rightarrow f\left( X\right) \)が全単射であることを確認する。このとき、逆関数\(f^{-1}:\mathbb{R} \supset f\left( X\right) \rightarrow X\)が存在する。
- 逆関数\(f^{-1}\)の形状\(f^{-1}\left(y\right) \)を特定する。つまり、\(y=f\left( x\right) \)とおいた上で、これを\(x\)について解いて\(x=f^{-1}\left( y\right) \)を得る。得られた結果\(f^{-1}\left(y\right) \)は逆関数\(f^{-1}\)の具体的な形状である。
\end{equation*}を定めるものとします。\(f\)の値域は、\begin{eqnarray*}f\left( \mathbb{R} \right) &=&\left\{ f\left( x\right) \in \mathbb{R} \ |\ x\in \mathbb{R} \right\} \\
&=&\left\{ \frac{1}{2}x\in \mathbb{R} \ |\ x\in \mathbb{R} \right\} \\
&=&\mathbb{R} \end{eqnarray*}です。さらに、\(f\)は単射であるため逆関数\(f^{-1}:\mathbb{R} \rightarrow \mathbb{R} \)が存在します。逆関数\(f^{-1}\)の形状を特定するために、\begin{equation*}y=f\left( x\right)
\end{equation*}すなわち、\begin{equation*}
y=\frac{1}{2}x
\end{equation*}とおいた上で、これを\(x\)について解くと、\begin{equation*}x=2y
\end{equation*}を得るため、\begin{equation*}
f^{-1}\left( y\right) =2y
\end{equation*}となります。以上より、\(f\)の逆写像\(f^{-1}:\mathbb{R} \rightarrow \mathbb{R} \)はそれぞれの\(y\in \mathbb{R} \)に対して、\begin{equation*}f^{-1}\left( y\right) =2y
\end{equation*}を定めることが明らかになりました。
\end{equation*}を像として定めるものとします。先に明らかになったように逆写像\(f^{-1}:\mathbb{Z} \rightarrow \mathbb{Z} \)は存在しません。\(f\)の値域は、\begin{eqnarray*}f\left( \mathbb{Z} \right) &=&\left\{ f\left( x\right) \in \mathbb{Z} \ |\ x\in \mathbb{Z} \right\} \\
&=&\left\{ 2x\in \mathbb{Z} \ |\ x\in \mathbb{Z} \right\} \\
&=&E
\end{eqnarray*}です。ただし、\(E\)はすべての偶数からなる集合です。さらに、\(f\)は単射であるため、\(f\)の集合を値域に制限して、\begin{equation*}f:\mathbb{Z} \rightarrow E
\end{equation*}とすれば、逆関数\begin{equation*}
f^{-1}:E\rightarrow \mathbb{Z} \end{equation*}が存在します。逆関数\(f^{-1}\)の形状を特定するために、\begin{equation*}y=f\left( x\right)
\end{equation*}すなわち、\begin{equation*}
y=2x
\end{equation*}とおいた上で、これを\(x\)について解くと、\begin{equation*}x=\frac{y}{2}
\end{equation*}を得るため、\begin{equation*}
f^{-1}\left( y\right) =\frac{y}{2}
\end{equation*}となります。以上より、\(f\)の逆写像\(f^{-1}:E\rightarrow \mathbb{Z} \)はそれぞれの\(y\in E\)に対して、\begin{equation*}f^{-1}\left( y\right) =\frac{y}{2}
\end{equation*}を定めることが明らかになりました。
合成関数を用いた逆関数であることの判定
関数\(f\)が与えられた状況において、その逆関数\(f^{-1}\)を特定する方法について解説しました。では、関数\(f\)に加えて、その逆写像の候補であるような関数\(g\)が与えられた場合、\(g\)が実際に\(f\)の逆関数であるか判定するためにはどうすればよいでしょうか。\(g\)は\(f\)の逆関数の候補であるため、両者の始集合と終集合の立場が逆転していることに注意してください。
集合\(X\subset \mathbb{R} \)に加えて2つの関数\begin{eqnarray*}f &:&X\rightarrow f\left( X\right) \\
g &:&f\left( X\right) \rightarrow X
\end{eqnarray*}が与えられているものとします。この場合、2つの合成写像\begin{eqnarray*}
g\circ f &:&X\rightarrow X \\
f\circ g &:&f\left( X\right) \rightarrow f\left( X\right)
\end{eqnarray*}が定義可能ですが、これらがともに恒等写像であることは、すなわち、以下の2つの条件\begin{eqnarray*}
\forall x &\in &X:\left( g\circ f\right) \left( x\right) =x \\
\forall y &\in &f\left( X\right) :\left( f\circ g\right) \left( y\right) =y
\end{eqnarray*}がともに成り立つ場合には、\(f\)と\(g\)はお互いに相手の逆関数であることが保証されます。
g &:&f\left( X\right) \rightarrow X
\end{eqnarray*}が与えられたとき、以下の2つの条件\begin{eqnarray*}
\forall x &\in &X:\left( g\circ f\right) \left( x\right) =x \\
\forall y &\in &f\left( X\right) :\left( f\circ g\right) \left( y\right) =y
\end{eqnarray*}がともに成り立つ場合には、\begin{eqnarray*}
f^{-1} &=&g \\
g^{-1} &=&f
\end{eqnarray*}がともに成り立つ。
\end{equation*}を定め、写像\(g:\mathbb{R} \rightarrow \mathbb{R} \)はそれぞれの\(x\in \mathbb{R} \)に対して、\begin{equation*}g\left( x\right) =4x+32
\end{equation*}を定めるものとします。\(f\)の値域は、\begin{eqnarray*}f\left( \mathbb{R} \right) &=&\left\{ f\left( x\right) \in \mathbb{R} \ |\ x\in \mathbb{R} \right\} \\
&=&\left\{ \frac{x}{4}-8\in \mathbb{R} \ |\ x\in \mathbb{R} \right\} \\
&=&\mathbb{R} \end{eqnarray*}であり、これは\(g\)の定義域と一致します。\(x\in \mathbb{R} \)を任意に選んだとき、\begin{eqnarray*}\left( g\circ f\right) \left( x\right) &=&g\left( f\left( x\right) \right)
\\
&=&g\left( \frac{x}{4}-8\right) \quad \because f\text{の定義} \\
&=&4\left( \frac{x}{4}-8\right) +32\quad \because g\text{の定義} \\
&=&x-32+32 \\
&=&x
\end{eqnarray*}であり、\begin{eqnarray*}
\left( f\circ g\right) \left( x\right) &=&f\left( g\left( x\right) \right)
\\
&=&f\left( 4x+32\right) \quad \because g\text{の定義} \\
&=&\frac{4x+32}{4}-8\quad \because f\text{の定義} \\
&=&x+8-8 \\
&=&x
\end{eqnarray*}であるため、先の命題より\(f\)と\(g\)はお互いに相手の逆写像です。つまり、\begin{eqnarray*}f^{-1} &=&g \\
g^{-1} &=&f
\end{eqnarray*}がともに成り立ちます。
逆関数の逆関数
関数\(f\)の逆関数\(f^{-1}\)が存在する場合には、さらにその逆関数\(\left(f^{-1}\right) ^{-1}\)が存在し、これはもとの関数\(f\)と一致することが保証されます。つまり、逆関数の逆関数もとの関数に等しいということです。
関数\(f:\mathbb{R} \supset X\rightarrow f\left( X\right) \)の逆関数\(f^{-1}:\mathbb{R} \supset f\left( X\right) \rightarrow X\)が存在する場合には、さらにその逆関数\(\left( f^{-1}\right) ^{-1}:\mathbb{R} \supset X\rightarrow f\left( X\right) \)が存在して、\begin{equation*}\left( f^{-1}\right) ^{-1}=f
\end{equation*}が成り立つ。
2つの関数\begin{eqnarray*}
f &:&X\rightarrow f\left( X\right) \\
g &:&f\left( X\right) \rightarrow X
\end{eqnarray*}が与えられているものとします。\(f\)と\(g\)は定義域と値域が逆になっていることに注意してください。
\(g\)が\(f\)の逆関数であるものとします。つまり、\begin{equation*}g=f^{-1}
\end{equation*}が成り立つということです。この場合、先の命題より、\begin{equation*}
\left( f^{-1}\right) ^{-1}=f
\end{equation*}すなわち、\begin{equation*}
g^{-1}=f
\end{equation*}となるため、以上の事実は\(f\)が\(g\)の逆関数であることを意味します。以上より、\(g\)が\(f\)の逆関数である場合には、逆に\(f\)は\(g\)の逆関数であることが明らかになりました。
\(f\)と\(g\)の立場を逆にしても同様の主張が成り立ちます。したがって、\(f\)が\(g\)の逆関数である場合には、逆に\(g\)は\(f\)の逆関数です。したがって以下の命題を得ます。
g &:&f\left( X\right) \rightarrow X
\end{eqnarray*}が与えられたとき、以下の関係\begin{equation*}
f\text{は}g\text{の逆写像}\Leftrightarrow g\text{は}f\text{の逆写像}
\end{equation*}が成り立つ。
合成関数の逆関数
集合\(X,Y\subset \mathbb{R} \)に加えて2つの関数\begin{eqnarray*}f &:&X\rightarrow f\left( X\right) \\
g &:&Y\rightarrow g\left( Y\right)
\end{eqnarray*}が与えられているものとします。以下の関係\begin{equation}
f\left( X\right) =Y \quad \cdots (1)
\end{equation}が成り立つ場合には合成関数\begin{equation*}
g\circ f:\mathbb{R} \subset X\rightarrow g\left( Y\right)
\end{equation*}が定義可能です。与えられた関数\(f,g\)の逆関数\begin{eqnarray*}f^{-1} &:&f\left( X\right) \rightarrow X \\
g^{-1} &:&g\left( Y\right) \rightarrow Y
\end{eqnarray*}が存在する場合、\(\left(1\right) \)のもとでは合成写像\begin{equation*}f^{-1}\circ g^{-1}:g\left( Y\right) \rightarrow X
\end{equation*}もまた定義可能です。
以上の条件のもとでは合成関数\(g\circ f\)の逆関数\begin{equation*}\left( g\circ f\right) ^{-1}:g\left( Y\right) \rightarrow X
\end{equation*}が存在することが保証されるとともに、以下の関係\begin{equation*}
\left( g\circ f\right) ^{-1}=f^{-1}\circ g^{-1}
\end{equation*}が成り立つことが保証されます。つまり、合成関数の逆関数は、個々の関数の逆関数の合成と一致します。
g &:&Y\rightarrow g\left( Y\right)
\end{eqnarray*}が与えられており、さらに、\begin{equation*}
f\left( X\right) =Y
\end{equation*}が成り立つものとする。この場合、合成関数\begin{equation*}
g\circ f:\mathbb{R} \subset X\rightarrow g\left( Y\right)
\end{equation*}が存在する。加えて、\(f\)と\(g\)の合成関数\begin{eqnarray*}f^{-1} &:&f\left( X\right) \rightarrow X \\
g^{-1} &:&g\left( Y\right) \rightarrow Y
\end{eqnarray*}がともに存在するならば、逆関数\begin{equation*}
\left( g\circ f\right) ^{-1}:g\left( Y\right) \rightarrow X
\end{equation*}が存在する。以上の条件のもとでは、逆関数\begin{equation*}
\left( g\circ f\right) ^{-1}:g\left( Y\right) \rightarrow X
\end{equation*}が存在するとともに、\begin{equation*}
\left( g\circ f\right) ^{-1}=f^{-1}\circ g^{-1}
\end{equation*}が成り立つ。
逆関数は全単射
関数\(f\)の逆関数\(f^{-1}\)が存在する場合、これは全単射になることが保証されます。
関数\(f:\mathbb{R} \supset X\rightarrow f\left( X\right) \)の逆関数\(f^{-1}:\mathbb{R} \subset f\left( X\right) \rightarrow X\)が存在する場合、\(f^{-1}\)は全単射である。
演習問題
f\left( 2\right) &=&5 \\
f\left( 3\right) &=&5
\end{eqnarray*}を満たすものとします。逆関数\(f^{-1}:\left\{ 4,5,6\right\}\rightarrow \left\{ 1,2,3\right\} \)は存在するでしょうか。存在する場合には具体的に求めてください。
\end{equation*}を定めるものとします。逆関数\(f^{-1}:\mathbb{R} \rightarrow \mathbb{R} \)は存在するでしょうか。存在する場合には具体的に求めてください。
\end{equation*}を定めるものとします。逆関数\(f^{-1}:\mathbb{R} \rightarrow \mathbb{R} \)は存在するでしょうか。存在する場合には具体的に求めてください。
\end{equation*}を定めるものとします。逆関数\(f^{-1}:\mathbb{R} \rightarrow \mathbb{R} \)が存在しないことを示してください。さらに、\(f\)の定義域と終集合を適当に調整した上で、その逆関数\(f^{-1}\)を求めてください。
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