関数の極限と商

収束する関数どうしの商として得られる関数もまた収束し、新たな関数の極限はもとの関数の極限の商になります。また、このような関係は一定の条件のもとで無限極限に関しても拡張可能です。
関数 極限 収束 商
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点において収束する関数の商の極限

関数\(f,g:\mathbb{R} \supset X\rightarrow \mathbb{R} \)が与えられたとき、これらの関数が\(g\left( x\right) \not=0\)を満たす\(x\in X\)に対して定める値\(f\left( x\right) ,g\left( x\right) \)の商\(\frac{f\left( x\right) }{g\left( x\right) }\)を\(x\)の像とする新たな関数\(\frac{f}{g}:\mathbb{R} \supset X^{\prime }\rightarrow \mathbb{R} \)を構成できます。ただし、\(X^{\prime }=\{x\in X\ |\ g\left( x\right) \not=0\}\)です。

関数\(f,g\)がともに点\(\alpha \)において収束し、なおかつ\(\lim\limits_{x\rightarrow \alpha }g\left( x\right) \not=0\)である場合には関数\(\frac{f}{g}\)もまた収束し、両者の極限の間には以下の関係が成り立ちます。

命題(点において収束する関数の商の極限)
関数\(f,g:\mathbb{R} \supset X\rightarrow \mathbb{R} \)がともに点\(\alpha \in \mathbb{R} \)において有限な実数に収束するとともに\(g\left( \alpha \right) \not=0\)かつ\(\lim\limits_{x\rightarrow \alpha }g\left( x\right) \not=0\)が成り立つ場合には、関数\(\frac{f}{g}:\mathbb{R} \supset X^{\prime }\rightarrow \mathbb{R} \)もまた\(\alpha \)において有限な実数に収束し、その極限は、\begin{equation*}
\lim_{x\rightarrow \alpha }\left( \frac{f}{g}\right) \left( x\right) =\frac{\lim\limits_{x\rightarrow \alpha }f\left( x\right) }{\lim\limits_{x\rightarrow \alpha }f\left( x\right) }
\end{equation*}を満たす。
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上の命題より、関数\(f,g\)が収束することが分かっている場合には、関数\(\frac{f}{g}\)が収束することをわざわざ証明する必要はありません。しかも、\(\frac{f}{g}\)の極限を得るためには\(f\)の極限と\(g\)の極限の商をとればよいのです。

例(点において収束する関数の商の極限)
変数\(x\in \mathbb{R} \)に関する関数\(x^{2},\ 2x\)に関しては、例えば、\begin{equation*}
\lim_{x\rightarrow 3}x^{2}=9,\quad \lim_{x\rightarrow 3}2x=6
\end{equation*}などが成り立つため、関数\(\frac{x^{2}}{2x}\)に関しては、上の命題より、\begin{eqnarray*}
\lim_{x\rightarrow 3}\left( \frac{x^{2}}{2x}\right) &=&\frac{\lim\limits_{x\rightarrow 3}x^{2}}{\lim\limits_{x\rightarrow 3}2x} \\
&=&\frac{9}{6} \\
&=&\frac{3}{2}
\end{eqnarray*}が成り立ちます。もしくはシンプルに、\begin{equation*}
\lim_{x\rightarrow 3}\left( \frac{x^{2}}{2x}\right) =\lim_{x\rightarrow 3}\left( \frac{x}{2}\right) =\frac{3}{2}
\end{equation*}としてもかまいません。

 

無限大において収束する関数の商の極限

無限大における極限についても同様の命題が成り立ちます。

命題(無限大において収束する関数の商の極限)
関数\(f,g:\mathbb{R} \supset X\rightarrow \mathbb{R} \)がともに\(x\rightarrow +\infty \)において有限な実数に収束するとともに\(\lim\limits_{x\rightarrow +\infty }g\left( x\right) \not=0\)が成り立つならば、関数\(\frac{f}{g}:\mathbb{R} \supset X\rightarrow \mathbb{R} \)もまた\(x\rightarrow +\infty \)において有限な実数に収束し、その極限は、\begin{equation*}
\lim_{x\rightarrow +\infty }\left( \frac{f}{g}\right) \left( x\right) =\frac{\lim\limits_{x\rightarrow +\infty }f\left( x\right) }{\lim\limits_{x\rightarrow +\infty }g\left( x\right) }
\end{equation*}を満たす。また、\(f,g\)がともに\(x\rightarrow -\infty \)において有限な実数に収束するとともに\(\lim\limits_{x\rightarrow -\infty }g\left( x\right) \not=0\)が成り立つならば、\(\frac{f}{g}\)もまた\(x\rightarrow -\infty \)において有限な実数に収束し、その極限は、\begin{equation*}
\lim_{x\rightarrow -\infty }\left( \frac{f}{g}\right) \left( x\right) =\frac{\lim\limits_{x\rightarrow -\infty }f\left( x\right) }{\lim\limits_{x\rightarrow -\infty }g\left( x\right) }
\end{equation*}を満たす。
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例(無限大において収束する関数の商の極限)
変数\(x\in \mathbb{R} \backslash \{0\}\)に関する関数\(\frac{1}{x},\ \frac{2}{x}+3\)に関しては、例えば、\begin{equation*}
\lim_{x\rightarrow +\infty }\frac{1}{x}=0,\quad \lim_{x\rightarrow +\infty }\left( \frac{2}{x}+3\right) =3
\end{equation*}が成り立つため、関数\(\frac{1}{x}/\left( \frac{2}{x}+3\right) \)に関しては、上の命題より、\begin{eqnarray*}
\lim_{x\rightarrow +\infty }\left[ \frac{1}{x}/\left( \frac{2}{x}+3\right) \right] &=&\lim_{x\rightarrow +\infty }\frac{1}{x}/\lim_{x\rightarrow +\infty }\left( \frac{2}{x}+3\right) \\
&=&0/3 \\
&=&0
\end{eqnarray*}が成り立ちます。

 

点において発散する関数の商の極限

一定の条件のもとでは、点において無限極限に発散するような関数についても同様の性質が成り立ちます。

命題(点において発散する関数の商の極限)
関数\(f,g:\mathbb{R} \supset X\rightarrow \mathbb{R} \)について、\(f\)が点\(\alpha \in \mathbb{R} \)において有限な実数に収束し、\(g\)が\(\alpha \)において\(+\infty \)もしくは\(-\infty \)に発散するならば、関数\(\frac{f}{g}:\mathbb{R} \supset X\rightarrow \mathbb{R} \)の\(\alpha \)における極限は、\begin{equation*}
\lim_{x\rightarrow \alpha }\left( \frac{f}{g}\right) \left( x\right) =\frac{\lim\limits_{x\rightarrow \alpha }f\left( x\right) }{\lim\limits_{x\rightarrow \alpha }g\left( x\right) }
\end{equation*}を満たす。
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ただし、有限な実数\(x\)と無限大どうしの商については、拡大実数系\(\mathbb{R} ^{\ast }\)における以下の演算ルールにもとづいて計算を行います。\begin{equation*}
\frac{x}{+\infty }=\frac{x}{-\infty }=0
\end{equation*}ちなみに、無限大どうしの商である\(\frac{+\infty }{+\infty },\frac{+\infty }{-\infty },\frac{-\infty }{+\infty },\frac{-\infty }{-\infty }\)はいずれも定義不可能であるため、例えば、\(\lim\limits_{x\rightarrow \alpha }f\left( x\right) =\lim\limits_{x\rightarrow \alpha }f\left( x\right) =+\infty \)などの場合には、上の命題の要領で\(\lim\limits_{x\rightarrow \alpha }\left( \frac{f}{g}\right) \left( x\right) \)を導出することはできません。

拡大実数系について復習する
例(点において発散する関数の商の極限)
変数\(x\in \mathbb{R} \)に関する関数\(x^{2}\)と変数\(x\in \mathbb{R} \backslash \{0\}\)に関する関数\(\frac{2}{x^{2}}\)に関しては、例えば、\begin{equation*}
\lim_{x\rightarrow 0}x^{2}=0,\quad \lim_{x\rightarrow 0}\frac{2}{x^{2}}=+\infty
\end{equation*}が成り立つため、関数\(x^{2}/\frac{2}{x^{2}}\)に関しては、上の命題より、\begin{eqnarray*}
\lim_{x\rightarrow 0}\left( x^{2}/\frac{2}{x^{2}}\right) &=&\lim_{x\rightarrow 0}\left( x^{2}\right) /\lim_{x\rightarrow 0}\left( \frac{2}{x^{2}}\right) \\
&=&0/\left( +\infty \right) \\
&=&0
\end{eqnarray*}が成り立ちます。もしくはよりシンプルに、\begin{eqnarray*}
\lim_{x\rightarrow 0}\left( x^{2}/\frac{2}{x^{2}}\right) &=&\lim_{x\rightarrow 0}\left( \frac{x^{4}}{2}\right) \\
&=&0
\end{eqnarray*}としてもかまいません。

 

無限大において発散する関数の商の極限

一方の関数が無限大において無限極限に発散するような場合についても同様です。

命題(無限において発散する関数の商の極限)
関数\(f,g:\mathbb{R} \supset X\rightarrow \mathbb{R} \)について、\(f\)が\(+\infty \)において有限な実数に収束し、\(g\)が\(+\infty \)において\(+\infty \)もしくは\(-\infty \)に発散するならば、関数\(\frac{f}{g}:\mathbb{R} \supset X\rightarrow \mathbb{R} \)の\(+\infty \)における極限は、\begin{equation*}
\lim_{x\rightarrow +\infty }\left( \frac{f}{g}\right) \left( x\right) =\frac{\lim\limits_{x\rightarrow +\infty }f\left( x\right) }{\lim\limits_{x\rightarrow +\infty }g\left( x\right) }
\end{equation*}を満たす。また、\(f\)が\(-\infty \)において有限な実数に収束し、\(g\)が\(-\infty \)において\(+\infty \)もしくは\(-\infty \)に発散するならば、関数\(\frac{f}{g}:\mathbb{R} \supset X\rightarrow \mathbb{R} \)の\(-\infty \)における極限は、\begin{equation*}
\lim_{x\rightarrow -\infty }\left( \frac{f}{g}\right) \left( x\right) =\frac{\lim\limits_{x\rightarrow -\infty }f\left( x\right) }{\lim\limits_{x\rightarrow -\infty }g\left( x\right) }
\end{equation*}を満たす。
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先ほどと同様に、\(\lim\limits_{x\rightarrow +\infty }f\left( x\right) =\lim\limits_{x\rightarrow +\infty }g\left( x\right) =+\infty \)の場合など、両者が無限極限に発散する場合には無限大どうしの商が定義不可能であるため、上の命題の要領で\(\lim\limits_{x\rightarrow +\infty }\left( \frac{f}{g}\right) \left( x\right) \)を導出することはできません。

例(無限において発散する関数の商の極限)
変数\(x\in \mathbb{R} \backslash \{0\}\)に関する関数\(\frac{1}{x} \)と変数\(x\in \mathbb{R} \)に関する関数\(2x\)に関しては、例えば、\begin{equation*}
\lim_{x\rightarrow +\infty }\frac{1}{x}=0,\quad \lim_{x\rightarrow +\infty }2x=+\infty
\end{equation*}などが成り立つため、関数\(\frac{1}{x}/2x\)に関しては、上の命題より、\begin{eqnarray*}
\lim_{x\rightarrow +\infty }\left( \frac{1}{x}/2x\right) &=&\lim_{x\rightarrow +\infty }\left( \frac{1}{x}\right) /\lim_{x\rightarrow +\infty }\left( 2x\right) \\
&=&0/\left( +\infty \right) \\
&=&0
\end{eqnarray*}が成り立ちます。もしくはよりシンプルに、\begin{eqnarray*}
\lim_{x\rightarrow +\infty }\left( \frac{1}{x}/2x\right) &=&\lim_{x\rightarrow +\infty }\left( \frac{1}{2x^{2}}\right) \\
&=&0
\end{eqnarray*}としてもかまいません。

 

本節のまとめ

本節において得たすべての命題を一般化すると以下のようになります。

系(関数の極限と商)
関数\(f,g:\mathbb{R} \supset X\rightarrow \mathbb{R} \)が与えられたとき、拡大実数\(\alpha ,\gamma \in \mathbb{R} ^{\ast }\)と有限な実数\(\beta \in \mathbb{R} \)について、\begin{equation*}
\lim_{x\rightarrow \alpha }f\left( x\right) =\beta ,\quad \lim_{x\rightarrow \alpha }f\left( x\right) =\gamma \not=0
\end{equation*}がともに成り立つ場合には、関数\(\frac{f}{g}:\mathbb{R} \supset X^{\prime }\rightarrow \mathbb{R} \)について、\begin{equation*}
\lim_{x\rightarrow \alpha }\left( \frac{f}{g}\right) \left( x\right) =\frac{\lim\limits_{x\rightarrow \alpha }f\left( x\right) }{\lim\limits_{x\rightarrow \alpha }g\left( x\right) }=\frac{\beta }{\gamma }
\end{equation*}が成り立つ。

\(\alpha ,\gamma \)が拡大実数であるとは、これらは有限の実数にもなり得るし、\(+\infty \)や\(-\infty \)にもなり得るということです。\(\alpha ,\beta ,\gamma \)がいずれも有限の実数の場合には、この命題は本節において最初に提示した命題になります。また、\(\alpha \)が\(+\infty \)もしくは\(-\infty \)で\(\beta ,\gamma \)がともに有限の実数の場合には、この命題は本節において 2 番目に提示した命題になります。また、\(\alpha ,\beta \)が有限の実数で\(\gamma \)が\(+\infty \)もしくは\(-\infty \)の場合には、この命題は本節において 3 番目に提示した命題になります。また、\(\alpha ,\gamma \)が\(+\infty \)もしくは\(-\infty \)で\(\beta \)が有限の実数の場合には、この命題は本節において 4 番目に提示した命題になります。このような意味において、この命題は本節における議論の集約です。

次回は収束する関数と順序の関係について解説します。
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