1次元ユークリッド空間 R の部分集合 A が与えられたとき、点 a∈R の任意の近傍が A と交わるならば、a を A の触点と呼びます。また、A のすべての触点からなる集合を A の閉包と呼びます。

2019年5月14日:公開

触点

\(\mathbb{R}\)の部分集合\(A\)が与えられたとき、点\(a\in \mathbb{R}\)の任意の近傍が\(A\)と交わるならば、すなわち、\begin{equation*}
\forall \varepsilon >0:U_{\varepsilon }\left( a\right) \cap A\not=\phi
\end{equation*}が成り立つならば、\(a\)を\(A\)の触点(adherent point)と呼びます。なお、点の近傍の定義を踏まえると上の条件は、\begin{equation*}
\forall \varepsilon >0:\left( a-\varepsilon ,a+\varepsilon \right) \cap A\not=\phi
\end{equation*}と言い換え可能です。つまり、点\(a\)を中心とする任意の開区間が\(A\)と交わるということです。

例(触点)
\(a\leq b\)を満たす実数\(a,b\in \mathbb{R}\)に関する\(\mathbb{R}\)上の区間\(\left[ a,b\right] \)が与えられたとき、\(a\leq x\leq b\)を満たす点\(x\in \mathbb{R}\)と\(\varepsilon >0\)をそれぞれ任意に選びます。このとき、\begin{equation*}
\left( x-\varepsilon ,x+\varepsilon \right) \cap \left[ a,b\right] \not=\phi
\end{equation*}が成り立つため、\(a\leq x\leq b\)を満たす任意の実数\(x\)は\(\left[ a,b\right] \)の触点です。一方、\(x<a\)を満たす点\(x\in \mathbb{R}\)を任意に選んだとき、例えば\(\varepsilon =\frac{a-x}{2}>0\)に対しては、\begin{eqnarray*}
a-\left( x+\varepsilon \right) &=&a-\left( x+\frac{a-x}{2}\right) \\
&=&\frac{a-x}{2} \\
&>&0
\end{eqnarray*}すなわち\(a>x-\varepsilon \)となるため\(\left( x-\varepsilon ,x+\varepsilon \right) \)は\(\left[ a,b\right] \)と交わりません。したがって\(x<a\)を満たす任意の実数\(x\)は\(\left[ a,b\right] \)の触点ではありません。\(b<x\)を満たす任意の実数\(x\)が\(\left[ a,b\right] \)の触点でないことも同様にして示すことができます。
例(触点)
\(a\leq b\)を満たす実数\(a,b\in \mathbb{R}\)に関する\(\mathbb{R}\)上の区間\(\left( a,b\right) \)が与えられたとき、\(a\leq x\leq b\)を満たす点\(x\in \mathbb{R}\)と\(\varepsilon >0\)をそれぞれ任意に選びます。このとき、\begin{equation*}
\left( x-\varepsilon ,x+\varepsilon \right) \cap \left( a,b\right) \not=\phi
\end{equation*}が成り立つため、\(a\leq x\leq b\)を満たす任意の実数\(x\)は\(\left( a,b\right) \)の触点です。一方、\(x<a\)を満たす点\(x\in \mathbb{R}\)を任意に選んだとき、例えば\(\varepsilon =\frac{a-x}{2}>0\)に対しては、\begin{eqnarray*}
a-\left( x+\varepsilon \right) &=&a-\left( x+\frac{a-x}{2}\right) \\
&=&\frac{a-x}{2} \\
&>&0
\end{eqnarray*}すなわち\(a>x+\varepsilon \)となるため\(\left( x-\varepsilon ,x+\varepsilon \right) \)は\(\left( a,b\right) \)と交わりません。したがって\(x<a\)を満たす任意の実数\(x\)は\(\left( a,b\right) \)の触点ではありません。\(b<x\)を満たす任意の実数\(x\)が\(\left( a,b\right) \)の触点でないことも同様にして示すことができます。
例(触点)
すべての有理数からなる集合\(\mathbb{Q}\)について考えます。点\(x\in \mathbb{R}\)と\(\varepsilon >0\)をそれぞれ任意に選んだとき、有理数の稠密性より、\begin{equation*}
\left( x-\varepsilon ,x+\varepsilon \right)
\end{equation*}という区間の中には有理数が存在するため上の区間は\(\mathbb{Q}\)と交わります。したがって任意の実数は\(\mathbb{Q}\)の触点です。

 

閉包

\(\mathbb{R}\)の部分集合\(A\)のすべての触点からなる集合を\(A\)の閉包(closure)と呼び、\begin{equation*}
A^{a},\quad \mathrm{cl}\left( A\right)
\end{equation*}などで表します。

閉包の定義より、\(\mathbb{R}\)の部分集合\(A\)と任意の点\(x\in \mathbb{R}\)に対して、\begin{equation*}
x\in A^{a}\Leftrightarrow \forall \varepsilon >0:U_{\varepsilon }(x)\cap A\not=\phi
\end{equation*}という関係が成り立ちます。したがって否定をとると、\begin{eqnarray*}
x\not\in A^{a} &\Leftrightarrow &\exists \varepsilon >0:U_{\varepsilon }\left( x\right) \cap A=\phi \\
&\Leftrightarrow &x\in A^{e}
\end{eqnarray*}となります。さらに\(\mathbb{R}\)は部分集合\(A\)の内部\(A^{i}\)、境界\(A^{f}\)、外部\(A^{e}\)に分割されることを踏まえると、\begin{equation*}
x\in A^{a}\Leftrightarrow x\in A^{i}\cup A^{f}
\end{equation*}が成り立ちます。つまり、点\(x\)が\(\mathbb{R}\)の部分集合\(A\)の触点であることは、\(x\)が\(A\)の内点または境界であるための必要十分条件です。

命題(閉包の特徴づけ)
\(\mathbb{R}\)は部分集合\(A\)について、\begin{equation*}
A^{a}=A^{i}\cup A^{f}
\end{equation*}という関係が成り立つ。

\(\mathbb{R}\)の部分集合の内部や境界はいずれも\(\mathbb{R}\)の開集合系\(\mathcal{O}\)から間接的に定義される概念です。上の命題より閉包は内部と境界から定義可能ですので、閉包もまた\(\mathbb{R}\)の開集合系\(\mathcal{O}\)から間接的に定義可能です。

例(閉包)
\(a\leq b\)を満たす実数\(a,b\in \mathbb{R}\)に関する\(\mathbb{R}\)上の区間\(\left[ a,b\right] \)が与えられたとき、\(a\leq x\leq b\)を満たす任意の点\(x\in \mathbb{R}\)は\(\left[ a,b\right] \)の触点であり、それ以外の任意の実数は\(\left[ a,b\right] \)の触点ではないため、\(\left[ a,b\right] ^{a}=\left[ a,b\right] \)となります。
例(閉包)
\(a\leq b\)を満たす実数\(a,b\in \mathbb{R}\)に関する\(\mathbb{R}\)上の区間\(\left( a,b\right) \)が与えられたとき、\(a\leq x\leq b\)を満たす任意の点\(x\in \mathbb{R}\)は\(\left[ a,b\right] \)の触点であり、それ以外の任意の実数は\(\left[ a,b\right] \)の触点ではないため、\(\left( a,b\right) ^{a}=\left[ a,b\right] \)となります。
例(閉包)
すべての有理数からなる集合\(\mathbb{Q}\)について考えます。任意の実数は\(\mathbb{Q}\)の触点であるため、\(\mathbb{Q} ^{a}=\mathbb{R}\)となります。

 

数列を用いた閉包の定義

閉包の概念は収束列の概念を使って定義することもできます。具体的には、\(\mathbb{R}\)の部分集合\(A\)と点\(x\in \mathbb{R}\)が与えられたとき、\(x\)に収束する\(A\)の点からなる収束列が存在することは、\(x\)が\(A\)の触点であるための必要十分条件となります。

命題(収束列による閉包の定義)
\(\mathbb{R}\)の部分集合\(A\)と点\(x\in \mathbb{R}\)が与えられたとき、\(x\)に収束する\(A\)の数列が存在することは、すなわち、\begin{eqnarray*}
&&\left( a\right) \ \forall n\in \mathbb{N} :x_{n}\in A \\
&&\left( b\right) \ \lim_{n\rightarrow \infty }x_{n}=x
\end{eqnarray*}がともに成り立つことは、\(x\in A^{a}\)が成り立つための必要十分条件である。
証明を見る(プレミアム会員限定)

この命題を直感的に表現するならば、点\(x\in \mathbb{R}\)が\(\mathbb{R}\)の部分集合\(A\)の触点であることは、集合\(A\)の中から点\(x\)に限りなく近づくことができるということです。集合\(A\)の触点をすべて集めてできるのが閉包\(A^{a}\)ですので、\(A\)の点を項とする収束列の極限をすべて集めれば閉包\(A^{a}\)を得ます。言い換えると、集合\(A\)の中から限りなく近づくことができる点からなる集合が\(A^{a}\)です。

 

閉包は閉集合

\(\mathbb{R}\)の部分集合の閉包は\(\mathbb{R}\)の閉集合です。

命題(閉包は閉集合)
\(\mathbb{R}\)の任意の部分集合\(A\)について以下が成り立つ。\begin{eqnarray*}
&&\left( a\right) \ A\subset A^{a} \\
&&\left( b\right) \ A^{a}\in \mathcal{A} \\
&&\left( c\right) \ \forall B\in \mathcal{A}:\left( A\subset B\ \Rightarrow \ A^{a}\subset B\right)
\end{eqnarray*}ただし、\(\mathcal{F}\)は\(\mathbb{R}\)の閉集合系である。
証明を見る(プレミアム会員限定)

\(\mathbb{R}\)の部分集合\(A\)を任意にとったとき、性質\(\left( a\right) \)より閉包\(A^{a}\)は\(A\)を部分集合として含み、性質\(\left( b\right) \)より\(A^{a}\)は\(\mathbb{R}\)の閉集合であり、さらに性質\(\left( c\right) \)より\(A^{a}\)は\(A\)を部分集合として含む任意の閉集合の部分集合です。したがって、閉包\(A^{a}\)は\(A\)を部分集合として含む最小の閉集合です。

\(\mathbb{R}\)の閉集合系\(\mathcal{A}\)と\(\mathbb{R}\)の部分集合\(A\)が与えられたとき、\(\mathcal{A}\)に属する\(\mathbb{R}\)の閉集合の中でも\(A\)を部分集合として含み、なおかつその中で最小の集合をとれば\(A\)の閉包\(A^{a}\)が得られます。したがって閉包は閉集合系から間接的に定義可能な概念です。さらに閉集合系は開集合系から定義可能ですので、結局、閉包もまた開集合系から定義可能な概念だと言えます。

 

閉包による閉集合の特徴づけ

先に示したように\(\mathbb{R}\)の部分集合\(A\)について\(A\subset A^{a}\)という関係が常に成り立ちますが、逆に\(A^{a}\subset A\)は成り立つとは限りません。しかし、\(A\)が\(\mathbb{R}\)の閉集合の場合には、そしてその場合にのみ\(A^{a}\subset A\)が成り立ちます。

命題(閉包による閉集合の特徴づけ)
\(\mathbb{R}\)の部分集合\(A\)について、\(A^{a}\subset A\)が成り立つことは、\(A\)が\(\mathbb{R}\)の閉集合であるための必要十分条件である。
証明を見る(プレミアム会員限定)

任意の\(A\subset \mathbb{R}\)について\(A\subset A^{a}\)が成り立つことと上の命題を踏まえると、閉集合を以下のように特徴づけることも可能です。

系(閉包による閉集合の特徴づけ)
\(\mathbb{R}\)の部分集合\(A\)について、\(A\)の任意の点が\(A\)の触点であることは、\(A\)が\(\mathbb{R}\)の閉集合であるための必要十分条件である。
例(閉包による閉集合の特徴づけ)
\(\mathbb{R}\)の区間\(\left[ a,b\right] \)は閉集合であり、その閉包は\(\left[ a,b\right] ^{a}=\left[ a,b\right] \)です。一方、\(\mathbb{R}\)の区間\(\left( a,b\right) \)は開集合であり、その閉包は\(\left( a,b\right) ^{a}=\left[ a,b\right] \)ですので\(\left( a,b\right) ^{a}\not=\left( a,b\right) \)です。これらの結果は上の命題の主張と整合的です。

 

触点と集合演算

触点は集合演算に関して以下の性質を満たします。

命題(触点と集合演算)
\(\mathbb{R}\)の任意の部分集合\(A,B\)について以下が成り立つ。\begin{eqnarray*}
&&\left( a\right) \ A\subset B\ \Rightarrow \ A^{a}\subset B^{a} \\
&&\left( b\right) \ (A\cap B)^{a}\subset A^{a}\cap B^{a} \\
&&\left( c\right) \ (A\cup B)^{a}=A^{a}\cup B^{a}
\end{eqnarray*}
証明を見る(プレミアム会員限定)

特に\(\left( c\right) \)は等号で成り立ちますが\(\left( b\right) \)は等号で成り立たない点に注意する必要があります。つまり、\begin{equation*}
A^{a}\cap B^{a}\subset (A\cap B)^{a}
\end{equation*}という関係は成り立つとは限らないということです。証明は演習問題にします。

次回は集積点や導集合という概念について解説します。
次へ進む 演習問題(プレミアム会員限定)

ワイズをさらに活用するための会員サービス

ユーザー名とメールアドレスを入力して一般会員に無料登録すれば、質問やコメントを投稿できるようになります。さらに、有料(500円/月)のプレミアム会員へアップグレードすることにより、プレミアムコンテンツ(命題の証明や演習問題、解答など)にアクセスできます。
会員サービス

ディスカッションに参加しますか?

質問やコメントを投稿するにはログインが必要です。
ログイン

アカウント
ログイン