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数直線の位相

実数集合の内点・内部

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実数集合の内点と内部

実数空間の点\(a\in \mathbb{R} \)と正の実数\(\varepsilon >0\)をそれぞれ任意に選んだとき、点\(a\)を中心とする半径\(\varepsilon \)の近傍とは、点\(a\)からの距離が\(\varepsilon \)よりも短い場所にある\(\mathbb{R} \)上の点からなる集合\begin{eqnarray*}N_{\varepsilon }\left( a\right) &=&\left\{ x\in \mathbb{R} \ |\ \left\vert x-a\right\vert <\varepsilon \right\} \\
&=&\left( a-\varepsilon ,a+\varepsilon \right)
\end{eqnarray*}です。実数空間\(\mathbb{R} \)の部分集合\(A\)が与えられたとき、点\(a\in \mathbb{R} \)の近傍の中に\(A\)の部分集合であるようなものが存在するならば、すなわち、\begin{equation*}\exists \varepsilon >0:N_{\varepsilon }\left( a\right) \subset A
\end{equation*}すなわち、\begin{equation*}
\exists \varepsilon >0:\left( a-\varepsilon ,a+\varepsilon \right) \subset A
\end{equation*}が成り立つならば、\(a\)を\(A\)の内点(interior point)と呼びます。つまり、点\(a\)が集合\(A\)の内点であることとは、十分小さい距離\(\varepsilon \)を選べば、\(a\)からの距離が\(\varepsilon \)よりも短い場所にある任意の点が\(A\)の点になることを意味します。

図:aはAの内点
図:aはAの内点

逆に、点\(a\in \mathbb{R} \)が集合\(A\)の内点でないこととは、\begin{equation*}\forall \varepsilon >0:N_{\varepsilon }\left( a\right) \cap A^{c}\not=\phi
\end{equation*}すなわち、\begin{equation*}
\forall \varepsilon >0:\left( a-\varepsilon ,a+\varepsilon \right) \cap
A^{c}\not=\phi
\end{equation*}が成り立つことを意味します。つまり、点\(a\)が集合\(A\)の内点でないこととは、点\(a\)からいくらでも近い場所に\(A\)の要素ではない点が存在することを意味します。

図:aはAの内点ではない
図:aはAの内点ではない

実数空間\(\mathbb{R} \)の部分集合\(A\)のすべての内点からなる集合を\(A\)の内部(interior)や開核(open kernel)などと呼び、\begin{equation*}A^{i},\quad A^{\circ },\quad \mathrm{int}\left( A\right)
\end{equation*}などで表記します。任意の点\(x\in \mathbb{R} \)に対して、\begin{eqnarray*}x\in A^{i} &\Leftrightarrow &\exists \varepsilon >0:N_{\varepsilon }\left(
x\right) \subset A\quad \because \text{内部の定義} \\
&\Leftrightarrow &\exists \varepsilon >0:\left( x-\varepsilon ,x+\varepsilon
\right) \subset A\quad \because \text{近傍の定義}
\end{eqnarray*}という関係が成り立ちます。

集合\(A\)の内点\(a\in A^{i}\)が与えられたとき、内点の定義より、\begin{equation*}\exists \varepsilon >0:N_{\varepsilon }\left( a\right) \subset A
\end{equation*}が成り立ちます。近傍\(N_{\varepsilon }\left( a\right) \)はその中心\(a\)を要素として持つため、すなわち\(a\in N_{\varepsilon}\left( a\right) \)が成り立つため、このとき、\begin{equation*}a\in A
\end{equation*}が成り立ちます。以上より、\begin{equation*}
A^{i}\subset A
\end{equation*}であることが明らかになりました。集合\(A\)の内点は必ず\(A\)の要素であるということです。したがって、集合\(A\)の要素ではない点は\(A\)の内点になり得ないため、\(A\)の内点を探す際には\(A\)の点だけを候補としても問題はありません。

命題(集合の内部はその集合の部分集合)
実数空間\(\mathbb{R} \)の任意の部分集合\(A\)に対して、\begin{equation*}A^{i}\subset A
\end{equation*}が成り立つ。ただし、\(A^{i}\)は\(A\)の内部である。
例(有界開区間の内点)
\(a<b\)を満たす\(a,b\in \mathbb{R} \)を任意に選んだ上で、これらを端点とする有界な開区間\begin{equation*}\left( a,b\right) =\left\{ x\in \mathbb{R} \ |\ a<x<b\right\}
\end{equation*}を定義します。内部は、\begin{equation*}
\left( a,b\right) ^{i}=\left( a,b\right)
\end{equation*}となります(演習問題)。ここでは、\begin{equation*}
\left( a,b\right) ^{i}\subset \left( a,b\right)
\end{equation*}という関係が成立しており、先の命題の主張と整合的です。

例(有界閉区間の内点)
\(a<b\)を満たす\(a,b\in \mathbb{R} \)を任意に選んだ上で、これらを端点とする有界な閉区間\begin{equation*}\left[ a,b\right] =\left\{ x\in \mathbb{R} \ |\ a\leq x\leq b\right\}
\end{equation*}を定義します。内部は、\begin{equation*}
\left[ a,b\right] ^{i}=\left( a,b\right)
\end{equation*}となります(演習問題)。ここでは、\begin{equation*}
\left[ a,b\right] ^{i}\subset \left[ a,b\right] \end{equation*}という関係が成立しており、先の命題の主張と整合的です。

例(有界半開区間の内点)
\(a<b\)を満たす\(a,b\in \mathbb{R} \)を任意に選んだ上で、これらを端点とする有界な半開区間\begin{eqnarray*}\lbrack a,b) &=&\left\{ x\in \mathbb{R} \ |\ a\leq x<b\right\} \\
(a,b] &=&\left\{ x\in \mathbb{R} \ |\ a<x\leq b\right\}
\end{eqnarray*}を定義します。内部は、\begin{eqnarray*}
\lbrack a,b)^{i} &=&\left( a,b\right) \\
(a,b]^{i} &=&\left( a,b\right)
\end{eqnarray*}となります(演習問題)。ここでは、\begin{eqnarray*}
\lbrack a,b)^{i} &\subset &[a,b) \\
(a,b]^{i} &\subset &(a,b] \end{eqnarray*}という関係が成立しており、先の命題の主張と整合的です。

例(無限半開区間の内点)
\(a,b\in \mathbb{R} \)を任意に選んだ上で、無限半開区間\begin{eqnarray*}\left( a,+\infty \right) &=&\left\{ x\in \mathbb{R} \ |\ a<x<+\infty \right\} \\
\left( -\infty ,b\right) &=&\left\{ x\in \mathbb{R} \ |\ -\infty <x<b\right\}
\end{eqnarray*}を定義します。内部は、\begin{eqnarray*}
\left( a,+\infty \right) ^{i} &=&\left( a,+\infty \right) \\
\left( -\infty ,b\right) ^{i} &=&\left( -\infty ,b\right)
\end{eqnarray*}となります(演習問題)。ここでは、\begin{eqnarray*}
\left( a,+\infty \right) ^{i} &\subset &\left( a,+\infty \right) \\
\left( -\infty ,b\right) ^{i} &\subset &\left( -\infty ,b\right)
\end{eqnarray*}という関係が成立しており、先の命題の主張と整合的です。

例(無限半閉区間の内点)
\(a,b\in \mathbb{R} \)を任意に選んだ上で、無限半閉区間\begin{eqnarray*}\lbrack a,+\infty ) &=&\left\{ x\in \mathbb{R} \ |\ a\leq x<+\infty \right\} \\
(-\infty ,b] &=&\left\{ x\in \mathbb{R} \ |\ -\infty <x\leq b\right\}
\end{eqnarray*}を定義します。内部は、\begin{eqnarray*}
\lbrack a,+\infty )^{i} &=&\left( a,+\infty \right) \\
(-\infty ,b]^{i} &=&\left( -\infty ,b\right)
\end{eqnarray*}となります(演習問題)。ここでは、\begin{eqnarray*}
\lbrack a,+\infty )^{i} &\subset &[a,+\infty ) \\
(-\infty ,b]^{i} &\subset &(-\infty ,b] \end{eqnarray*}という関係が成立しており、先の命題の主張と整合的です。

例(非整数空間の内点)
すべての非整数からなる集合\(\mathbb{R} \backslash \mathbb{Z} \)のすべての内点からなる集合は\(\mathbb{R} \backslash \mathbb{Z} \)であるため(演習問題)、\begin{equation*}\left( \mathbb{R} \backslash \mathbb{Z} \right) ^{i}=\mathbb{R} \backslash \mathbb{Z} \end{equation*}となります。ここでは、\begin{equation*}
\left( \mathbb{R} \backslash \mathbb{Z} \right) ^{i}\subset \mathbb{R} \backslash \mathbb{Z} \end{equation*}という関係が成立しており、先の命題の主張と整合的です。

例(実数空間の内点)
すべての実数からなる集合\(\mathbb{R} \)のすべての内点からなる集合は\(\mathbb{R} \)であるため(演習問題)、\begin{equation*}\mathbb{R} ^{i}=\mathbb{R} \end{equation*}となります。ここでは、\begin{equation*}\mathbb{R} ^{i}\subset \mathbb{R} \end{equation*}という関係が成立しており、先の命題の主張と整合的です。

 

内点は存在するとは限らない

実数空間の部分集合は内点を持つとは限りません。以下の例より明らかです。

例(有理数空間の内点)
すべての有理数からなる集合\(\mathbb{Q} \)は内点を持たないため(演習問題)、\begin{equation*}\mathbb{Q} ^{i}=\phi\end{equation*}となります。空集合は任意の集合の部分集合であるため、\begin{equation*}\mathbb{Q} ^{i}\subset \mathbb{Q} \end{equation*}という関係が成立しており、先の命題の主張と整合的です。

例(無理数空間の内点)
すべての無理数からなる集合\(\mathbb{R} \backslash \mathbb{Q} \)は内点を持たないため(演習問題)、\begin{equation*}\left( \mathbb{R} \backslash \mathbb{Q} \right) ^{i}=\phi
\end{equation*}となります。空集合は任意の集合の部分集合であるため、\begin{equation*}
\left( \mathbb{R} \backslash \mathbb{Q} \right) ^{i}\subset \mathbb{R} \backslash \mathbb{Q} \end{equation*}という関係が成立しており、先の命題の主張と整合的です。

例(整数空間の内点)
すべての整数からなる集合\(\mathbb{Z} \)は内点を持たないため(演習問題)、\begin{equation*}\mathbb{Z} ^{i}=\phi \end{equation*}となります。空集合は任意の集合の部分集合であるため、\begin{equation*}\mathbb{Z} ^{i}\subset \mathbb{Z} \end{equation*}という関係が成立しており、先の命題の主張と整合的です。

例(空集合の内点)
空集合は任意の集合の部分集合であるため\(\phi \subset \mathbb{R} \)であり、したがって\(\phi \)の内部も定義可能です。先の命題より、\begin{equation*}\phi ^{i}\subset \phi
\end{equation*}が成立しますが、空集合の部分集合は空集合であるため、このとき、\begin{equation*}
\phi ^{i}=\phi
\end{equation*}が成り立ちます。したがって、空集合は内点を持たないことが明らかになりました。

例(有限集合の内点)
\(\mathbb{R} \)の部分集合であるような非空の有限集合\(A\)を任意に選んだとき、\begin{equation*}A^{i}=\phi
\end{equation*}となります(演習問題)。

例(可算集合の内点)
\(\mathbb{R} \)の部分集合であるような非空の可算集合\(A\)を任意に選んだとき、\begin{equation*}A^{i}=\phi
\end{equation*}となります(演習問題)。

 

内部を用いた開集合の定義

実数空間\(\mathbb{R} \)の部分集合\(A\)が任意に与えられたとき、以下の関係\begin{equation*}A^{i}\subset A
\end{equation*}が必ず成り立つことが明らかになりました。では逆に、以下の関係\begin{equation*}
A\subset A^{i}
\end{equation*}もまた必ず成り立つのでしょうか。以下の例が示唆するように、この関係は成立するとは限りません。

例(集合と内部の関係)
\(a<b\)を満たす\(a,b\in \mathbb{R} \)を任意に選んだ上で、これらを端点とする有界な閉区間\begin{equation*}\left[ a,b\right] =\left\{ x\in \mathbb{R} \ |\ a\leq x\leq b\right\}
\end{equation*}を定義します。先に確認したように、この閉区間の内部は、\begin{equation*}
\left[ a,b\right] ^{i}=\left( a,b\right)
\end{equation*}であるため、点\(a,b\in \mathbb{R} \)は\(\left[ a,b\right] \)の要素である一方で\(\left[ a,b\right] ^{i}\)の要素ではありません。したがって、\begin{equation*}\left[ a,b\right] \subset \left[ a,b\right] ^{i}
\end{equation*}は成り立ちません。

では、どのような条件のもとで\(A\subset A^{i}\)が成立するのでしょうか。実は、\(A\)が\(\mathbb{R} \)上の開集合である場合、そしてその場合にのみ\(A\subset A^{i}\)という関係もまた成立します。

命題(内部による開集合の定義)
実数空間\(\mathbb{R} \)の部分集合\(A\)について、\begin{equation*}A\subset A^{i}
\end{equation*}が成り立つことは、\(A\)が\(\mathbb{R} \)上の開集合であるための必要十分条件である。ただし、\(A^{i}\)は\(A\)の内部である。
証明

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\(\mathbb{R} \)の任意の部分集合\(A\)について\(A^{i}\subset A\)が成り立つことを踏まえると、\begin{eqnarray*}A\subset A^{i} &\Leftrightarrow &A\subset A^{i}\wedge A^{i}\subset A\quad
\because A^{i}\subset A\text{は恒真式} \\
&\Leftrightarrow &A=A^{i}
\end{eqnarray*}すなわち、\begin{equation*}
A\subset A^{i}\Leftrightarrow A=A^{i}
\end{equation*}という関係が成り立ちます。したがって、先の命題を以下のように言い換えることもできます。

命題(内部による開集合の定義)
実数空間\(\mathbb{R} \)の部分集合\(A\)について、\begin{equation*}A=A^{i}
\end{equation*}が成り立つことは、\(A\)が\(\mathbb{R} \)上の開集合であるための必要十分条件である。ただし、\(A^{i}\)は\(A\)の内部である。

以上の命題は、開集合という概念が内部という概念から定義可能であることを意味します。つまり、\(\mathbb{R} \)の部分集合\(A\)に対して、その内部\(A^{i}\)が定義されていれば、以下の条件\begin{equation*}A\text{は}\mathbb{R} \text{上の開集合}\Leftrightarrow A=A^{i}
\end{equation*}を満たすものとして開集合の概念を間接的に定義できるということです。

 

内部を用いた開集合であることの判定

実数空間\(\mathbb{R} \)の部分集合\(A\)を任意に選んだとき、以下の関係\begin{equation*}A\text{は}\mathbb{R} \text{上の開集合}\Leftrightarrow A=A^{i}
\end{equation*}が成り立つことが明らかになりました。したがって、\(\mathbb{R} \)の部分集合\(A\)が開集合であることを示すためには、\(A\)の内部\(A^{i}\)を特定した上で、それが\(A\)と一致することを示してもよいということになります。

例(有界開区間は開集合)
\(a<b\)を満たす\(a,b\in \mathbb{R} \)を任意に選んだ上で、これらを端点とする有界な開区間\begin{equation*}\left( a,b\right) =\left\{ x\in \mathbb{R} \ |\ a<x<b\right\}
\end{equation*}について考えます。この集合の内部は、\begin{equation*}
\left( a,b\right) ^{i}=\left( a,b\right)
\end{equation*}を満たすため、\(\left( a,b\right) \)は\(\mathbb{R} \)上の開集合です。
例(無限半開区間は開集合)
\(a,b\in \mathbb{R} \)を任意に選んだ上で、無限半開区間\begin{eqnarray*}\left( a,+\infty \right) &=&\left\{ x\in \mathbb{R} \ |\ a<x<+\infty \right\} \\
\left( -\infty ,b\right) &=&\left\{ x\in \mathbb{R} \ |\ -\infty <x<b\right\}
\end{eqnarray*}について考えます。これらの集合の内部は、\begin{eqnarray*}
\left( a,+\infty \right) ^{i} &=&\left( a,+\infty \right) \\
\left( -\infty ,b\right) ^{i} &=&\left( -\infty ,b\right)
\end{eqnarray*}を満たすため、\(\left( a,+\infty\right) \)と\(\left( -\infty ,b\right) \)はともに\(\mathbb{R} \)上の開集合です。
例(非整数空間は開集合)
すべての非整数からなる集合\(\mathbb{R} \backslash \mathbb{Z} \)の内部は、\begin{equation*}\left( \mathbb{R} \backslash \mathbb{Z} \right) ^{i}=\mathbb{R} \backslash \mathbb{Z} \end{equation*}を満たすため、\(\mathbb{R} \backslash \mathbb{Z} \)は\(\mathbb{R} \)上の開集合です。
例(実数空間は開集合)
実数空間\(\mathbb{R} \)の内部は、\begin{equation*}\mathbb{R} ^{i}=\mathbb{R} \end{equation*}を満たすため、\(\mathbb{R} \)は\(\mathbb{R} \)上の開集合です。
例(空集合は開集合)
空集合\(\phi \)の内部は、\begin{equation*}\phi ^{i}=\phi
\end{equation*}を満たすため、\(\phi \)は\(\mathbb{R} \)上の開集合です。

 

内部を用いた開集合ではないことの判定

実数空間\(\mathbb{R} \)の部分集合\(A\)を任意に選んだとき、以下の関係\begin{equation*}A\text{は}\mathbb{R} \text{上の開集合}\Leftrightarrow A=A^{i}
\end{equation*}が成り立つのであれば、以下の関係\begin{equation*}
A\text{は}\mathbb{R} \text{上の開集合ではない}\Leftrightarrow A\not=A^{i}
\end{equation*}もまた成立します。したがって、\(\mathbb{R} \)の部分集合\(A\)が開集合ではないことを示すためには、\(A\)の内部\(A^{i}\)を特定した上で、それが\(A\)と一致しないことを示してもよいということになります。

ちなみに、\(\mathbb{R} \)の部分集合\(A\)が開集合ではないことは\(A\)が閉集合であることを必ずしも意味しないため、\(A\not=A^{i}\)を示した場合、\(A\)が閉集合であることを示したことにはなりません。

例(有界閉区間は開集合ではない)
\(a<b\)を満たす\(a,b\in \mathbb{R} \)を任意に選んだ上で、これらを端点とする有界な閉区間\begin{equation*}\left[ a,b\right] =\left\{ x\in \mathbb{R} \ |\ a\leq x\leq b\right\}
\end{equation*}について考えます。この集合の内部は、\begin{equation*}
\left[ a,b\right] ^{i}=\left( a,b\right)
\end{equation*}です。つまり、\begin{equation*}
\left[ a,b\right] ^{i}\not=\left[ a,b\right] \end{equation*}となるため、\(\left[ a,b\right] \)は\(\mathbb{R} \)上の開集合ではありません。
例(無限半閉区間は開集合ではない)
\(a,b\in \mathbb{R} \)を任意に選んだ上で、無限半閉区間\begin{eqnarray*}\lbrack a,+\infty ) &=&\left\{ x\in \mathbb{R} \ |\ a\leq x<+\infty \right\} \\
(-\infty ,b] &=&\left\{ x\in \mathbb{R} \ |\ -\infty <x\leq b\right\}
\end{eqnarray*}について考えます。これらの集合の内部は、\begin{eqnarray*}
\lbrack a,+\infty )^{i} &=&\left( a,+\infty \right) \\
(-\infty ,b]^{i} &=&\left( -\infty ,b\right)
\end{eqnarray*}となります。つまり、\begin{eqnarray*}
\lbrack a,+\infty )^{i} &\not=&[a,+\infty ) \\
(-\infty ,b]^{i} &\not=&(-\infty ,b] \end{eqnarray*}となるため、\([a,+\infty )\)と\((-\infty ,b]\)はともに\(\mathbb{R} \)上の開集合ではありません。
例(有理数空間は開集合ではない)
すべての有理数からなる集合\(\mathbb{Q} \)の内部は、\begin{equation*}\mathbb{Q} ^{i}=\phi\end{equation*}です。つまり、\begin{equation*}\mathbb{Q} ^{i}\not=\mathbb{Q} \end{equation*}となるため、\(\mathbb{Q} \)は\(\mathbb{R} \)上の開集合ではありません。
例(無理数空間は開集合ではない)
すべての無理数からなる集合\(\mathbb{R} \backslash \mathbb{Q} \)の内部は、\begin{equation*}\left( \mathbb{R} \backslash \mathbb{Q} \right) ^{i}=\phi
\end{equation*}です。つまり、\begin{equation*}
\left( \mathbb{R} \backslash \mathbb{Q} \right) ^{i}\not=\mathbb{R} \backslash \mathbb{Q} \end{equation*}となるため、\(\mathbb{R} \backslash \mathbb{Q} \)は\(\mathbb{R} \)上の開集合ではありません。
例(整数空間は開集合ではない)
すべての整数からなる集合\(\mathbb{Z} \)の内部は、\begin{equation*}\mathbb{Z} ^{i}=\phi \end{equation*}です。つまり、\begin{equation*}\mathbb{Z} ^{i}\not=\mathbb{Z} \end{equation*}となるため、\(\mathbb{Z} \)は\(\mathbb{R} \)上の開集合ではありません。
例(非空の有限集合は開集合ではない)
非空の有限集合\(A\subset \mathbb{R} \)の内部は、\begin{equation*}A^{i}=\phi
\end{equation*}です。つまり、\begin{equation*}
A^{i}\not=\phi
\end{equation*}となるため、\(A\)は\(\mathbb{R} \)上の開集合ではありません。
例(非空の可算集合は開集合ではない)
非空の可算集合\(A\subset \mathbb{R} \)の内部は、\begin{equation*}A^{i}=\phi
\end{equation*}です。つまり、\begin{equation*}
A^{i}\not=\phi
\end{equation*}となるため、\(A\)は\(\mathbb{R} \)上の開集合ではありません。

 

開集合を用いた内部の定義

実数空間\(\mathbb{R} \)の部分集合\(A\)の内部\(A^{i}\)は\(\mathbb{R} \)の部分集合であるため、さらにその内部\(\left( A^{i}\right) ^{i}\)をとることができますが、これは\(A^{i}\)と一致します。つまり、\begin{equation*}\left( A^{i}\right) ^{i}=A^{i}
\end{equation*}が成り立つということです(演習問題)。

以上の事実は、内部\(A^{i}\)の内部が\(A^{i}\)自身と一致することを意味しますが、先の命題より、以上の事実は\(A^{i}\)が\(\mathbb{R} \)上の開集合であることを意味します。つまり、\(\mathbb{R} \)の任意の部分集合の内部は\(\mathbb{R} \)上の開集合です。

命題(内部は開集合)
実数空間\(\mathbb{R} \)の任意の部分集合\(A\)について、その内部\(A^{i}\)は\(\mathbb{R} \)上の開集合である。
証明

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実数空間\(\mathbb{R} \)の部分集合\(A\)を任意に選んだ上で、その内部\(A^{i}\)をとります。これまでの議論より、\(A^{i}\)は\(A\)の部分集合であり、なおかつ\(\mathbb{R} \)上の開集合です。\(A\)の部分集合であるような\(\mathbb{R} \)上の開集合は\(A^{i}\)の他にも存在する可能性はありますが、\(A^{i}\)はそのような集合の中でも最大のものです。つまり、\(A\)の部分集合であるような\(\mathbb{R} \)上の開集合\(B\)を任意に選んだとき、これと\(A^{i}\)の間には\(B\subset A^{i}\)という関係が成り立つということです(演習問題)。

命題(開集合を用いた内部の定義)
実数空間\(\mathbb{R} \)の任意の部分集合\(A\)について、その内部\(A^{i}\)は\(A\)の部分集合であるような開集合の中でも最大のものである。すなわち、\(\mathbb{R} \)の開集合系を\(\mathcal{O}\)で表すとき、\(A^{i}\in \mathcal{O}\)であるとともに、\begin{equation*}\forall B\in \mathcal{O}:\left( B\subset A\Rightarrow B\subset A^{i}\right)
\end{equation*}が成り立つ。

証明

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実数空間\(\mathbb{R} \)の開集合系\(\mathcal{O}\)と部分集合\(A\)が与えられたとします。このとき、\(\mathcal{O}\)に属する\(\mathbb{R} \)上の開集合の中でも、\(A\)の部分集合でありなおかつその中で最大のものをとればそれは\(A\)の内部\(A^{i}\)になります。したがって\(\mathbb{R} \)の部分集合の内部という概念は\(\mathbb{R} \)の開集合系\(\mathcal{O}\)から間接的に定義することも可能です。

 

演習問題

問題(有界開区間の内部)
\(a<b\)を満たす\(a,b\in \mathbb{R} \)を任意に選んだ上で、これらを端点とする有界な開区間\begin{equation*}\left( a,b\right) =\left\{ x\in \mathbb{R} \ |\ a<x<b\right\}
\end{equation*}について考えます。このとき、\begin{equation*}
\left( a,b\right) ^{i}=\left( a,b\right)
\end{equation*}が成り立つことを証明してください。

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問題(有界閉区間の内部)
\(a<b\)を満たす\(a,b\in \mathbb{R} \)を任意に選んだ上で、これらを端点とする有界な閉区間\begin{equation*}\left[ a,b\right] =\left\{ x\in \mathbb{R} \ |\ a\leq x\leq b\right\}
\end{equation*}について考えます。このとき、\begin{equation*}
\left[ a,b\right] ^{i}=\left( a,b\right)
\end{equation*}が成り立つことを証明してください。

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問題(有界半閉区間の内部)
\(a<b\)を満たす\(a,b\in \mathbb{R} \)を任意に選んだ上で、これらを端点とする有界な半開区間\begin{eqnarray*}\lbrack a,b) &=&\left\{ x\in \mathbb{R} \ |\ a\leq x<b\right\} \\
(a,b] &=&\left\{ x\in \mathbb{R} \ |\ a<x\leq b\right\}
\end{eqnarray*}について考えます。このとき、\begin{equation*}
\lbrack a,b)^{i}=(a,b]^{i}=\left( a,b\right)
\end{equation*}が成り立つことを証明してください。

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問題(無限半開区間の内部)
\(a,b\in \mathbb{R} \)を任意に選んだ上で、無限半開区間\begin{eqnarray*}\left( a,+\infty \right) &=&\left\{ x\in \mathbb{R} \ |\ a<x<+\infty \right\} \\
\left( -\infty ,b\right) &=&\left\{ x\in \mathbb{R} \ |\ -\infty <x<b\right\}
\end{eqnarray*}について考えます。このとき、\begin{eqnarray*}
\left( a,+\infty \right) ^{i} &=&\left( a,+\infty \right) \\
\left( -\infty ,b\right) ^{i} &=&\left( -\infty ,b\right)
\end{eqnarray*}が成り立つことを証明してください。

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問題(無限半閉区間の内部)
\(a,b\in \mathbb{R} \)を任意に選んだ上で、無限半開区間\begin{eqnarray*}\lbrack a,+\infty ) &=&\left\{ x\in \mathbb{R} \ |\ a\leq x<+\infty \right\} \\
(-\infty ,b] &=&\left\{ x\in \mathbb{R} \ |\ -\infty <x\leq b\right\}
\end{eqnarray*}について考えます。このとき、\begin{eqnarray*}
\lbrack a,+\infty )^{i} &=&\left( a,+\infty \right) \\
(-\infty ,b]^{i} &=&\left( -\infty ,b\right)
\end{eqnarray*}が成り立つことを証明してください。

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問題(有理数空間の内部)
すべての有理数からなる集合\(\mathbb{Q} \)について、\begin{equation*}\mathbb{Q} ^{i}=\phi\end{equation*}が成り立つことを証明してください。

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問題(無理数空間の内部)
すべての無理数からなる集合\(\mathbb{R} \backslash \mathbb{Q} \)について、\begin{equation*}\left( \mathbb{R} \backslash \mathbb{Q} \right) ^{i}=\phi
\end{equation*}が成り立つことを証明してください。

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問題(整数空間の内部)
すべての整数からなる集合\(\mathbb{Z} \)について、\begin{equation*}\mathbb{Z} ^{i}=\phi\end{equation*}が成り立つことを証明してください。

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問題(非整数空間の内部)
すべての実数からなる集合\(\mathbb{R} \)とすべての整数からなる集合\(\mathbb{Z} \)の差集合\(\mathbb{R} \backslash \mathbb{Z} \)について、\begin{equation*}\left( \mathbb{R} \backslash \mathbb{Z} \right) ^{i}=\mathbb{R} \backslash \mathbb{Z} \end{equation*}が成り立つことを証明してください。

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問題(無理数空間の内部)
すべての実数からなる集合\(\mathbb{R} \)について、\begin{equation*}\mathbb{R} ^{i}=\mathbb{R} \end{equation*}が成り立つことを証明してください。
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問題(有限集合の内部)
\(\mathbb{R} \)の部分集合であるような非空の有限集合\(A\)を任意に選んだとき、\begin{equation*}A^{i}=\phi
\end{equation*}が成り立つことを証明してください。

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問題(可算集合の内部)
\(\mathbb{R} \)の部分集合であるような非空の可算集合\(A\)を任意に選んだとき、\begin{equation*}A^{i}=\phi
\end{equation*}が成り立つことを証明してください。

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問題(包含関係と内部)
\(\mathbb{R} \)の部分集合\(A,B\)を任意に選んだとき、\begin{equation*}A\subset B\Rightarrow A^{i}\subset B^{i}
\end{equation*}が成り立つことを証明してください。

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問題(共通部分と内部)
\(\mathbb{R} \)の部分集合\(A,B\)を任意に選んだとき、\begin{equation*}\left( A\cap B\right) ^{i}=A^{i}\cap B^{i}
\end{equation*}が成り立つことを証明してください。

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問題(和集合と内部)
\(\mathbb{R} \)の部分集合\(A,B\)を任意に選んだとき、\begin{equation*}A^{i}\cup B^{i}\subset \left( A\cup B\right) ^{i}
\end{equation*}が成り立つことを証明してください。

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問題(和集合と内部)
\(\mathbb{R} \)の部分集合\(A,B\)について、\begin{equation*}\left( A\cup B\right) ^{i}\subset A^{i}\cup B^{i}
\end{equation*}という関係は成り立つとは限らないことを示してください。

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