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数直線の位相

実数空間における基本開集合系(開基)と第2可算公理

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基本開集合系

実数空間の点\(a\in \mathbb{R} \)と正の実数\(\varepsilon >0\)がそれぞれ与えられたとき、点\(a\)を中心とする半径\(\varepsilon \)の近傍は、\begin{eqnarray*}N_{\varepsilon }\left( a\right) &=&\left\{ x\in \mathbb{R} \ |\ \left\vert x-a\right\vert <\varepsilon \right\} \\
&=&\left( a-\varepsilon ,a+\varepsilon \right)
\end{eqnarray*}と定義される\(\mathbb{R} \)の部分集合です。点\(a\)の近傍をすべて集めてできる\(\mathbb{R} \)の部分集合族を点\(a\)の近傍系と呼び、これを、\begin{equation*}N\left( a\right) =\left\{ N_{\varepsilon }\left( a\right) \ |\ 0<\varepsilon
<+\infty \right\}
\end{equation*}で表記します。

\(\mathbb{R} \)の部分集合\(A\)が\(\mathbb{R} \)上の開集合であることとは、\(A\)の点\(a\)を任意に選んだときに、\(A\)の部分集合であるような\(a\)の近傍が存在すること、すなわち、\begin{equation*}\forall a\in A,\ \exists \varepsilon >0:N_{\varepsilon }\left( a\right)
\subset A
\end{equation*}が成り立つこととして定義されます。同じことを点の近傍系を用いて表現すると、\begin{equation*}
\forall a\in A,\ \exists N\in N\left( a\right) :N\subset A
\end{equation*}となります。また、\(\mathbb{R} \)上の開集合をすべて集めてできる集合族を\(\mathbb{R} \)の開集合系と呼び、これを\(\mathcal{O}\)で表記します。

\(\mathbb{R} \)の開集合系\(\mathcal{O}\)の部分集合\(\mathfrak{B}\)が与えられたとき、\(\mathbb{R} \)上のそれぞれの開集合\(A\in \mathcal{O}\)を\(\mathfrak{B}\)の要素の和集合として表すことができるのであれば、すなわち、以下の条件\begin{equation*}\forall A\in \mathcal{O}\ ,\exists \mathfrak{B}^{\prime }\subset \mathfrak{B}:A=\bigcup \mathfrak{B}^{\prime }
\end{equation*}を満たす開集合族\(\mathfrak{B}\subset \mathcal{O}\)が存在する場合には、\(\mathfrak{B}\)を\(\mathcal{O}\)の基本開集合系(fundamental systemof open sets)や開基(open base)などと呼びます。上の定義中の\(\mathfrak{B}^{\prime }\)は開集合族\(\mathfrak{B}\)の「部分集合」を表す記号であることに注意してください。集合\(A\)を集合族\(\mathfrak{B}\)の要素の和集合として表すことができることとは、\(A\)を\(\mathfrak{B}\)の部分集合の和集合として表すことができることと同義であるため、上のような表現になっています。

例(開集合系は基本開集合系)
\(\mathbb{R} \)の開集合系\(\mathcal{O}\)は明らかに\(\mathcal{O}\)の基本開集合系です。なぜなら、\(\mathcal{O}\)は\(\mathcal{O}\)自身の部分集合であるとともに、開集合\(A\in \mathcal{O}\)を任意に選んだときに\(\mathcal{O}\)の部分集合\(\left\{ A\right\} \subset \mathcal{O}\)をとることができ、これが、\begin{equation*}A=\bigcup \left\{ A\right\}
\end{equation*}を満たすからです。

例(近傍系は基本開集合系)
点\(a\in \mathbb{R} \)の近傍系は、\begin{equation*}N\left( a\right) =\left\{ N_{\varepsilon }\left( a\right) \ |\ 0<\varepsilon
<+\infty \right\}
\end{equation*}と定義されますが、\(\mathbb{R} \)のすべての点のすべての近傍からなる集合を\(\mathbb{R} \)の近傍系と呼び、これを、\begin{equation*}\mathcal{N}=\left\{ N_{\varepsilon }\left( a\right) \ |\ a\in \mathbb{R} \wedge 0<\varepsilon <+\infty \right\}
\end{equation*}で表記します。任意の近傍\(N_{\varepsilon }\left( a\right) \)は\(\mathbb{R} \)上の開集合であるため\(\mathcal{N}\)は\(\mathcal{O}\)の部分集合であり、したがって\(\mathcal{N}\subset \mathcal{O}\)が成り立ちます。加えて、\(\mathcal{N}\)は\(\mathcal{O}\)の基本開集合系でもあります(演習問題)。つまり、任意の開集合は近傍の和集合として表すことができます。
例(中心と半径が有理数の近傍系は基本開集合系)
中心\(a\)と半径\(\varepsilon \)がともに有理数であるような近傍を集めてできる近傍系を、\begin{equation*}\mathcal{N}_{\mathbb{Q} }=\left\{ N_{\varepsilon }\left( a\right) \ |\ a\in \mathbb{Q} \wedge \varepsilon \in \mathbb{Q} \wedge 0<\varepsilon <+\infty \right\}
\end{equation*}で表記します。任意の近傍\(N_{\varepsilon }\left( a\right) \)は\(\mathbb{R} \)上の開集合であるため\(\mathcal{N}\)は\(\mathcal{O}\)の部分集合であり、したがって\(\mathcal{N}_{\mathbb{Q} }\subset \mathcal{O}\)が成り立ちます。加えて、\(\mathcal{N}_{\mathbb{Q} }\)は\(\mathcal{O}\)の基本開集合系でもあります(演習問題)。つまり、任意の開集合は\(\mathcal{N}_{\mathbb{Q} }\)の要素であるような近傍の和集合として表すことができます。

開集合系\(\mathcal{O}\)の基本開集合系\(\mathfrak{B}\)が存在する場合、どのようなメリットがあるのでしょうか。開集合系\(\mathcal{O}\)の基本開集合系\(\mathfrak{B}\)が存在する場合、任意の開集合\(A\in \mathcal{O}\)は基本開集合系\(\mathfrak{B}\)に属する開集合の和集合として表すことができます。つまり、基本開集合系\(\mathfrak{B}\)さえ与えられていれば、それをもとに任意の開集合を表現できるため、開集合について議論する際に開集合系\(\mathcal{O}\)のすべての要素を議論の対象とする必要はなく、基本開集合系\(\mathfrak{B}\)の要素だけを議論の対象とすれば十分です。基本開集合系が存在する場合、議論の対象とすべき開集合の数を減らすことができるため、それにより議論を簡素化できるということです。

 

第2可算公理

実数空間\(\mathbb{R} \)の開集合系\(\mathcal{O}\)の基本開集合系\(\mathfrak{B}\)の中に可算集合であるようなものが存在する場合、\(\mathbb{R} \)は第2可算公理(second axiom of countability)を満たすと言います。

繰り返しになりますが、開集合系\(\mathcal{O}\)の基本開集合系\(\mathfrak{B}\)が存在する場合には、任意の開集合\(A\in \mathcal{O}\)が基本開集合系\(\mathfrak{B}\)の要素の和集合として表されるため、開集合について議論する際に\(\mathcal{O}\)に属するすべての開集合を議論の対象とする必要はなく、基本開集合系\(\mathfrak{B}\)に属する開集合だけを議論の対象とすれば十分です。しかも、第2可算公理が成り立つ場合には、可算集合であるような基本開集合系\(\mathfrak{B}\)が存在することが保証されるため、この場合、可算個の開集合だけを議論の対象とすれば十分です。

先に例を通じて確認したように、中心と半径がともに有理数であるような近傍をすべて集めてできる近傍系\begin{equation*}
\mathcal{N}_{\mathbb{Q} }=\left\{ N_{\varepsilon }\left( a\right) \ |\ a\in \mathbb{Q} \wedge \varepsilon \in \mathbb{Q} \wedge 0<\varepsilon <+\infty \right\}
\end{equation*}は\(\mathcal{O}\)の基本開集合系です。しかも、\(\mathcal{N}_{\mathbb{Q} }\)は可算集合です(演習問題)。以上の事実は\(\mathbb{R} \)が第2可算公理を満たすことを意味します。

命題(第2可算公理)
実数空間\(\mathbb{R} \)は第2可算公理を満たす。具体的には、以下の集合族\begin{equation*}\mathcal{N}_{\mathbb{Q} }=\left\{ N_{\varepsilon }\left( a\right) \ |\ a\in \mathbb{Q} \wedge \varepsilon \in \mathbb{Q} \wedge 0<\varepsilon <+\infty \right\}
\end{equation*}は\(\mathbb{R} \)の開集合系\(\mathcal{O}\)の基本開集合系であるような可算集合である。
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第1可算公理と第2可算公理の関係

点\(a\in \mathbb{R} \)を任意に選んだ上で、その近傍系\(N\left( a\right) \)をとります。このとき、この近傍系の部分集合\(N^{\ast }\left( a\right) \subset N\left( a\right) \)の中に以下の条件\begin{equation*}\forall N\in N\left( a\right) ,\ \exists N^{\ast }\in N^{\ast }\left(
a\right) :N^{\ast }\subset N
\end{equation*}を満たすものが存在する場合、このような集合族\(N^{\ast }\left( a\right) \)を点\(a \)の基本近傍系と呼びます。加えて、可算集合であるような基本近傍系\(N^{\ast }\left( a\right) \)が存在する場合、\(\mathbb{R} \)は第1可算公理を満たすと言います。

\(\mathbb{R} \)が第1可算公理を導くことを示しましたが、実は、第1可算公理は第2可算公理から導くこともできます。

命題(第1可算公理と第2可算公理の関係)
実数空間\(\mathbb{R} \)は第2可算公理を満たす。この場合、\(\mathbb{R} \)は第1可算公理を満たす。
証明

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互いに素な可算個の開区間の和集合としての開集合

\(\mathbb{R} \)は第2可算公理を満たすことが明らかになりました。したがって、\(\mathbb{R} \)上の開集合を任意に選んだとき、それを高々可算個の点の近傍の和集合として表すことができます。\(\mathbb{R} \)上において点の近傍は有界開区間と等しいため、以上の事実は、開集合は高々可算個の開区間の和集合として表現可能であることを意味します。

特に、非空の開集合については、それを高々可算個の互いに素な開区間の和集合として表現することもできます。

命題(互いに素な可算個の開区間の和集合としての開集合)
実数空間\(\mathbb{R} \)上の開集合\(A\in \mathcal{O}\)を任意に選んだとき、\(A\not=\phi \)である場合には、\(A\)を高々可算個の互いに素な開区間の和集合として表すことができる。
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演習問題

問題(近傍系は基本開集合系)
\(\mathbb{R} \)の近傍系\begin{equation*}\mathcal{N}=\left\{ N_{\varepsilon }\left( a\right) \ |\ a\in \mathbb{R} \wedge 0<\varepsilon <+\infty \right\}
\end{equation*}が\(\mathcal{O}\)の基本開集合系であることを示してください。
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問題(基本開集合系であるための必要十分条件)
実数空間\(\mathbb{R} \)の開集合系\(\mathcal{O}\)の部分集合\(\mathfrak{B}\)が基本開集合系であることとは、\begin{equation*}\forall A\in \mathcal{O}\ ,\exists \mathfrak{B}^{\prime }\subset \mathfrak{B}:A=\bigcup \mathfrak{B}^{\prime }
\end{equation*}が成り立つこととして定義されますが、この条件は以下の命題\begin{equation*}
\forall A\in \mathcal{O}\ ,\forall a\in A,\ \exists B\in \mathfrak{B}:a\in
B\subset A
\end{equation*}と必要十分であることを示してください。

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