集合 X 上の同値関係 R が与えられたとき、X の要素 x を任意に選べば、R のもとで x と同値であるような X のすべての要素からなる集合を構成できます。このような X の部分集合を x を代表元とする同値類と呼びます。

2019年10月18日:改定
2019年10月11日:公開

同値類

集合\(X\)上の同値関係\(\sim \)と要素\(x\in X\)が与えられたとき、\(\sim \)のもとで\(x\)と同値であるような\(X\)のすべての要素からなる集合を、\begin{equation*}
\left[ x\right] =\left\{ y\in X\ |\ x\sim y\right\}
\end{equation*}で表し、これを\(x\)を代表元(representative)とする同値類(equivalence class)と呼びます。定義より明らかに\(\left[ x\right] \subset X\)です。

同値関係\(\sim \)は対称律を満たすため、任意の順序対\(\left( x,y\right) \in X\times X\)に対して\(x\sim y\)と\(y\sim x\)は必要十分です。したがって、\(x\in X\)を代表元とする同値類を、\begin{equation*}
\left[ x\right] =\left\{ y\in X\ |\ y\sim x\right\}
\end{equation*}と定義することもできます。

例(学年)
ある小学校のすべての生徒からなる集合\(X\)が与えられたとき、それぞれの順序対\(\left( x,y\right) \in X\times X\)に対して、\begin{equation*}
xRy\ \overset{def}{\Leftrightarrow }\ x\text{は}y\text{と同じ学年}
\end{equation*}を満たすものとして\(R\)を定義します。このように定義された\(R\)は\(X\)上の同値関係です。例えば、1年生の学生\(x\in X\)を代表元とする同値類は、\begin{eqnarray*}
\left[ x\right] &=&\{y\in X\ |\ x\text{は}y\text{と同じ学年}\} \\
&=&\{y\in X\ |\ y\text{は}1\text{年生}\}
\end{eqnarray*}となります。つまり\(\left[ x\right] \)はすべての1年生からなる集合です。
例(整数の合同関係)
すべての整数からなる集合\(\mathbb{Z}\)が与えられたとき、それぞれの順序対\(\left( x,y\right) \in \mathbb{Z}\times \mathbb{Z}\)に対して、\begin{equation*}
xRy\ \overset{def}{\Leftrightarrow }\ x\equiv y\ (\mathrm{mod}\ 2)
\end{equation*}を満たすものとして\(R\)を定義します。ただし、右側の\(x\equiv y\ (\mathrm{mod}\ 2)\)は、\(x\)が\(2\)を法として\(y\)と合同であること、すなわち、\(x-y\)が\(2\)の整数倍であることを表す記号です。このように定義された\(R\)は\(\mathbb{Z}\)上の同値関係です。例えば、整数\(1\)を代表元とする同値類は、\begin{eqnarray*}
\left[ 1\right] &=&\left\{ y\in \mathbb{Z}\ |\ 1\equiv y\ (\mathrm{mod}\ 2)\right\} \quad \because \text{同値類の定義} \\
&=&\left\{ y\in \mathbb{Z}\ |\ \exists k\in \mathbb{Z}:1-y=2k\right\} \quad \because \equiv \text{の定義} \\
&=&\{1-2k\ |\ k\in \mathbb{Z}\} \\
&=&\{\pm 1,\pm 3,\pm 5,\cdots \}
\end{eqnarray*}となります。また、整数\(2\)を代表元とする同値類は、\begin{eqnarray*}
\left[ 2\right] &=&\left\{ y\in \mathbb{Z}\ |\ 2\equiv y\ (\mathrm{mod}\ 2)\right\} \quad \because \text{同値類の定義} \\
&=&\left\{ y\in \mathbb{Z}\ |\ \exists k\in \mathbb{Z}:2-y=2k\right\} \quad \because \equiv \text{の定義} \\
&=&\{2-2k\ |\ k\in \mathbb{Z}\} \\
&=&\{0,\pm 2,\pm 4,\cdots \}
\end{eqnarray*}となります。
例(有理数)
すべての分数からなる集合\(X\)を、\begin{equation*}
X=\left\{ \frac{p}{q}\ |\ p,q\in \mathbb{Z} ,\ q\not=0\right\}
\end{equation*}と定義します。ただし、\(\mathbb{Z}\)はすべての整数からなる集合です。このとき、それぞれの順序対\(\left( \frac{a}{b},\frac{c}{d}\right) \in X\times X\)に対して、\begin{equation*}
\frac{a}{b}\ R\ \frac{c}{d}\ \overset{def}{\Leftrightarrow }\ ad=bc
\end{equation*}を満たすものとして\(R\)を定義します。ただし、右側の\(=\)は実数が等しいことを表す通常の相等関係です。このように定義された\(R\)は\(X\)上の同値関係です。例えば、分数\(\frac{1}{2}\)を代表元とする同値類は、\begin{eqnarray*}
\left[ \frac{1}{2}\right] &=&\left\{ \frac{p}{q}\ |\ p,q\in \mathbb{Z} ,\ q\not=0,\ 2p=q\right\} \\
&=&\left\{ \frac{p}{2p}\ |\ p\in \mathbb{Z} ,\ p\not=0\right\} \\
&=&\left\{ \frac{1}{2},\frac{2}{4},\frac{3}{6},\frac{4}{8},\cdots \right\}
\end{eqnarray*}となりますが、これを有理数(rational number)と呼びます。約分したときに同じ数になる分数どうしを区別せず、それらを同一の有理数とみなすということです。また、有理数\(-\frac{4}{5}\)を代表元とする同値類は、\begin{eqnarray*}
\left[ -\frac{4}{5}\right] &=&\left\{ \frac{p}{q}\ |\ p,q\in \mathbb{Z} ,\ q\not=0,\ 5p=-4q\right\} \\
&=&\left\{ -\frac{4p}{5p}\ |\ p\in \mathbb{Z} ,\ p\not=0\right\} \\
&=&\left\{ -\frac{4}{5},-\frac{8}{10},-\frac{12}{15},-\frac{16}{20},\cdots \right\}
\end{eqnarray*}となります。
例(平面上のベクトル)
平面上の点\(A\)を始点とし、点\(B\)を終点とする有向線分を\(\overrightarrow{AB}\)で表します。平面上のすべての有向線分からなる集合を\(X\)が与えられたとき、それぞれの順序対\(\left( \overrightarrow{AB},\overrightarrow{CD}\right) \in X\times X\)に対して、\begin{equation*}
\overrightarrow{AB}\ R\ \overrightarrow{CD}\ \overset{def}{\Leftrightarrow }\ \overrightarrow{AB}\text{を平行移動すると}\overrightarrow{CD}\text{に重なる}
\end{equation*}を満たすものとして\(R\)を定義します。このように定義された\(R\)は\(X\)上の同値関係です。有向線分\(\overrightarrow{AB}\in X\)を任意に選ぶと、これを代表元とする同値類は、\begin{equation*}
\left[ \overrightarrow{AB}\right] =\left\{ \overrightarrow{CD}\in X\ |\ \overrightarrow{AB}\text{を平行移動すると}\overrightarrow{CD}\text{に重なる}\right\}
\end{equation*}となりますが、これをベクトル(vector)と呼びます。有向線分は位置・向き・大きさという 3 つの情報からなる概念ですが、そこから位置情報を除いた概念がベクトルです。つまり、平行移動すると重なるような有向線分どうしを区別せず 1 つのベクトルとみなすということです。ベクトルは向きと大きさという 2 つの情報から構成されます。

 

同値類の代表元は交換可能

集合\(X\)上の同値関係\(\sim \)が与えられたとき、適当な要素\(x\in X\)を選べば、\(x\)を代表元とする同値類\(\left[ x\right] \)を構成できます。さらに、\(\left[ x\right] \)から要素を任意に選んだ上で、その新たな要素を代表元とする同値類を構成すると、それは\(\left[ x\right] \)と一致します。つまり、同値類は代表元を交換しても集合として区別されません。

命題(同値類の代表元は交換可能)
集合\(X\)上の同値関係\(\sim \)が与えられたとき、\begin{equation*}
\forall x\in X,\ \forall y\in \left[ x\right] :\left[ y\right] =\left[ x\right] \end{equation*}が成り立つ。
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例(整数の合同関係)
すべての整数からなる集合\(\mathbb{Z}\)が与えられたとき、それぞれの順序対\(\left( x,y\right) \in \mathbb{Z}\times \mathbb{Z}\)に対して、\begin{equation*}
xRy\ \overset{def}{\Leftrightarrow }\ x\equiv y\ (\mathrm{mod}\ 2)
\end{equation*}を満たすものとして\(R\)を定義します。このように定義された\(R\)は\(\mathbb{Z}\)上の同値関係です。例えば、整数\(2\)を代表元とする同値類は、\begin{eqnarray*}
\left[ 2\right] &=&\left\{ y\in \mathbb{Z}\ |\ 2\equiv y\ (\mathrm{mod}\ 2)\right\} \quad \because \text{同値類の定義} \\
&=&\left\{ y\in \mathbb{Z}\ |\ \exists k\in \mathbb{Z}:2-y=2k\right\} \quad \because \equiv \text{の定義} \\
&=&\{2-2k\ |\ k\in \mathbb{Z}\} \\
&=&\{0,\pm 2,\pm 4,\cdots \}
\end{eqnarray*}となります。例えば\(0\in \left[ 2\right] \)ですが、上の命題によると\(\left[ 0\right] =\left[ 2\right] \)となるはずです。実際、\begin{eqnarray*}
\left[ 0\right] &=&\left\{ y\in \mathbb{Z}\ |\ 0\equiv y\ (\mathrm{mod}\ 2)\right\} \quad \because \text{同値類の定義} \\
&=&\left\{ y\in \mathbb{Z}\ |\ \exists k\in \mathbb{Z}:-y=2k\right\} \quad \because \equiv \text{の定義} \\
&=&\{-2k\ |\ k\in \mathbb{Z}\} \\
&=&\{0,\pm 2,\pm 4,\cdots \}
\end{eqnarray*}となり、これは\(\left[ 2\right] \)と一致します。同様に考えると、\begin{equation*}
\cdots =\left[ -4\right] =\left[ -2\right] =\left[ 0\right] =\left[ 2\right] =\left[ 4\right] =\cdots
\end{equation*}という関係が成り立ちます。
例(有理数)
すべての分数からなる集合\(X\)を、\begin{equation*}
X=\left\{ \frac{p}{q}\ |\ p,q\in \mathbb{Z} ,\ q\not=0\right\}
\end{equation*}と定義します。ただし、\(\mathbb{Z}\)はすべての整数からなる集合です。このとき、それぞれの順序対\(\left( \frac{a}{b},\frac{c}{d}\right) \in X\times X\)に対して、\begin{equation*}
\frac{a}{b}\ R\ \frac{c}{d}\ \overset{def}{\Leftrightarrow }\ ad=bc
\end{equation*}を満たすものとして\(R\)を定義します。ただし、右側の\(=\)は実数が等しいことを表す通常の相等関係です。このように定義された\(R\)は\(X\)上の同値関係です。例えば、分数\(\frac{1}{2}\)を代表元とする同値類は、\begin{eqnarray*}
\left[ \frac{1}{2}\right] &=&\left\{ \frac{p}{q}\ |\ p,q\in \mathbb{Z} ,\ q\not=0,\ 2p=q\right\} \\
&=&\left\{ \frac{p}{2p}\ |\ p\in \mathbb{Z} ,\ p\not=0\right\} \\
&=&\left\{ \frac{1}{2},\frac{2}{4},\frac{3}{6},\frac{4}{8},\cdots \right\}
\end{eqnarray*}となります。例えば\(\frac{2}{4}\in \left[ \frac{1}{2}\right] \)ですが、上の命題によると\(\left[ \frac{2}{4}\right] =\left[ \frac{1}{2}\right] \)となるはずです。実際、\begin{eqnarray*}
\left[ \frac{2}{4}\right] &=&\left\{ \frac{p}{q}\ |\ p,q\in \mathbb{Z} ,\ q\not=0,\ 4p=2q\right\} \\
&=&\left\{ \frac{p}{2p}\ |\ p\in \mathbb{Z} ,\ q\not=0\right\}
\end{eqnarray*}となり、これは\(\left[ \frac{1}{2}\right] \)と一致します。同様に考えると、\begin{equation*}
\left[ \frac{1}{2}\right] =\left[ \frac{2}{4}\right] =\left[ \frac{3}{6}\right] =\left[ \frac{4}{8}\right] =\cdots
\end{equation*}という関係が成り立ちます。

 

同値類の性質

同値類はさらに以下の性質を満たします。

命題(同値類の性質)
集合\(X\)上の同値関係\(\sim \)が与えられたとき、以下が成り立つ。\begin{eqnarray*}
&&\left( a\right) \ \forall x\in X:x\in \left[ x\right] \\
&&\left( b\right) \ X=\bigcup_{x\in X}\left[ x\right] \\
&&\left( c\right) \ \forall x,y\in X:\left( x\sim y\ \Leftrightarrow \ \left[ x\right] =\left[ y\right] \right) \\
&&\left( d\right) \ \forall x,y\in X:\left[ \lnot \left( x\sim y\right) \ \Leftrightarrow \ \left[ x\right] \cap \left[ y\right] =\phi \right] \end{eqnarray*}
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性質\(\left( a\right) \)は、集合\(X\)の要素\(x\)は自身を代表元とする同値類\(\left[ x\right] \)の要素であるという主張です。集合\(X\)の要素\(x\)を任意にとり、それを代表元とする同値類\(\left[ x\right] \)を作ると、\(\left( a\right) \)より\(\left[ x\right] \)は必ず\(x\)を要素として持つため空集合ではありません。つまり、性質\(\left( a\right) \)は、任意の同値類が空集合ではないことを示唆しています。

性質\(\left( b\right) \)は、集合\(X\)のすべての要素\(x\)に関して同値類\(\left[ x\right] \)をとった上で、それらの和集合をとると、それは\(X\)と一致すると言っています。実際、\(X\)の要素\(x\)を任意にとったとき、\(\left( a\right) \)より\(x\)は同値類\(\left[ x\right] \)に属するため\(X\subset \bigcup\limits_{x\in X}\left[ x\right] \)が成り立ちます。逆に何らかの同値類\(\left[ x\right] \)に属する要素\(y\)を任意に選んだとき、\(\left[ x\right] \)は\(X\)の部分集合族であるため\(y\in X\)となるため\(\bigcup\limits_{x\in X}\left[ x\right] \subset X\)が成り立ちます。したがって、性質\(\left( b\right) \)は性質\(\left( a\right) \)の言い換えです。

性質\(\left( c\right) \)は、集合\(X\)の要素\(x,y\)について、\(x\)と\(y\)が同値であることと、\(\left[ x\right] \)と\(\left[ y\right] \)が一致することは必要十分であるという主張です。そうであるならば、\(x\)と\(y\)が同値でないことと、\(\left[ x\right] \)と\(\left[ y\right] \)が一致しないことは必要十分になりますが、性質\(\left( d\right) \)はさらに、\(x\)と\(y\)が同値でないことと、\(\left[ x\right] \)と\(\left[ y\right] \)が互いに素であることが必要十分であるとまで主張しています。

次回は商集合と呼ばれる概念について学びます。
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