集合 X に属するそれぞれの要素 x に対して、それを代表元とする同値類 [x] を作ることができますが、そのようなすべての同値類からなる X の部分集合族を商集合と呼びます。商集合は X の分割です。つまり、X の任意の要素は何らかの同値類に属するとともに、異なる複数の同値類に属することはありません。
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商集合

集合\(X\)上の同値関係\(\sim \)が与えられたとき、適当な要素\(x\in X\)を選べば、\(x\)を代表元とする同値類\(\left[ x\right] \subset X\)を構成できます。そこで、\(X\)のそれぞれの要素\(x\)を代表元とする同値類\(\left[ x\right] \)からなる\(X\)の部分集合族を、\begin{equation*}
X\backslash \sim =\left\{ \left[ x\right] \ |\ x\in X\right\}
\end{equation*}で表し、これを\(X\)の\(\sim \)による商集合(quotient set)と呼びます。

例(整数の合同関係)
すべての整数からなる集合\(\mathbb{Z}\)が与えられたとき、それぞれの順序対\(\left( x,y\right) \in \mathbb{Z} \times \mathbb{Z}\)に対して、\begin{equation*}
xRy\ \overset{def}{\Leftrightarrow }\ x\equiv y\ (\mathrm{mod}\ 2)
\end{equation*}を満たすものとして\(R\)を定義します。このように定義された\(R\)は\(\mathbb{Z}\)上の同値関係です。この\(R\)のもとでは以下の2つの同値類\begin{eqnarray*}
\left[ 0\right] &=&\{x\in \mathbb{Z} \ |\ x\equiv 0\ (\mathrm{mod}\ 2)\}=\{0,\pm 2,\pm 4,\cdots \} \\
\left[ 1\right] &=&\{x\in \mathbb{Z} \ |\ x\equiv 1\ (\mathrm{mod}\ 2)\}=\{\pm 1,\pm 3,\pm 5,\cdots \}
\end{eqnarray*}が存在します。したがって、\(\mathbb{Z}\)の\(R\)による商集合は、\begin{equation*}
\mathbb{Z} \backslash R=\left\{ \left[ 0\right] ,\left[ 1\right] \right\}
\end{equation*}となります。
例(学年分け)
ある小学校のすべての生徒からなる集合\(X\)が与えられたとき、それぞれの順序対\(\left( x,y\right) \in X\times X\)に対して、\begin{equation*}
xRy\ \overset{def}{\Leftrightarrow }\ x\text{は}y\text{と同じ学年}
\end{equation*}を満たすものとして\(R\)を定義します。このように定義された\(R\)は\(X\)上の同値関係です。この\(R\)のもとでは以下の6つの同値類\begin{eqnarray*}
X_{1} &=&\{x\in X\ |\ x\text{は1年生}\} \\
X_{2} &=&\{x\in X\ |\ x\text{は2年生}\} \\
X_{3} &=&\{x\in X\ |\ x\text{は3年生}\} \\
X_{4} &=&\{x\in X\ |\ x\text{は4年生}\} \\
X_{5} &=&\{x\in X\ |\ x\text{は5年生}\} \\
X_{6} &=&\{x\in X\ |\ x\text{は6年生}\}
\end{eqnarray*}が存在します。つまり、\(X_{i}\ \left( i=1,2,\cdots ,6\right) \)は\(i\)年生の学生からなる集合です。したがって、\(X\)の\(R\)における商集合は、\begin{equation*}
X\backslash R=\{X_{1},X_{2},X_{3},X_{4},X_{5},X_{6}\}
\end{equation*}となります。

 

類別

集合\(X\)の空でない部分集合からなる部分集合族\(\mathfrak{A}\)が以下の条件\begin{eqnarray*}
&&\left( a\right) \ \bigcup \mathfrak{A}=X \\
&&\left( b\right) \ \forall A,B\in \mathfrak{A}:\left( A\not=B\ \Rightarrow \ A\cap B=\phi \right)
\end{eqnarray*}をともに満たすとき、\(\mathfrak{A}\)を\(X\)の分割(partition)と呼びます。

条件\(\left( a\right) \)は、\(X\)の部分集合族\(\mathfrak{A}\)に属するすべての集合の和集合をとると、それは\(X\)と一致することを意味します。つまり、\(X\)の任意の要素は\(X\)の何らかの部分集合に属するという条件です。他方の条件\(\left( b\right) \)は、\(\mathfrak{A}\)に属する集合は互いに交わらないことを意味します。つまり、\(X\)の任意の要素は、\(X\)の異なる部分集合に属することはないという条件です。

例(整数の合同関係)
先の例で確認したように、すべての整数からなる集合\(\mathbb{Z}\)が与えられたとき、それぞれの順序対\(\left(x,y\right) \in \mathbb{Z} \times \mathbb{Z}\)に対して、\begin{equation*}
xRy\ \overset{def}{\Leftrightarrow }\ x\equiv y\ (\mathrm{mod}\ 2)
\end{equation*}を満たすものとして定義される\(R\)は\(\mathbb{Z}\)上の同値関係であるとともに、\(\mathbb{Z}\)の\(R\)による商集合は、\begin{equation*}
\mathbb{Z} \backslash R=\left\{ \left[ 0\right] ,\left[ 1\right] \right\}
\end{equation*}となります。\(\mathbb{Z} \backslash R\)は\(\mathbb{Z}\)の部分集合族ですが、その和集合は、\begin{equation*}
\bigcup \mathbb{Z} \backslash R=\left[ 0\right] \cup \left[ 1\right] =\mathbb{Z}
\end{equation*}を満たします。さらに\(\mathbb{Z} \backslash R\)の要素である\(\mathbb{Z}\)の部分集合については、\begin{equation*}
\left[ 0\right] \cap \left[ 1\right] =\phi
\end{equation*}が成り立ちます。したがって、商集合\(\mathbb{Z} \backslash R\)は\(\mathbb{Z}\)の分割です。任意の整数は\(\left[ 0\right] ,\left[ 1\right] \)のどちらか一方に必ず属するとともに、\(\left[ 0\right] ,\left[ 1\right] \)の両方に属することはありません。
例(学年分け)
先の例で確認したように、ある小学校のすべての生徒からなる集合\(X\)が与えられたとき、それぞれの順序対\(\left( x,y\right) \in X\times X\)に対して、\begin{equation*}
xRy\ \overset{def}{\Leftrightarrow }\ x\text{は}y\text{と同じ学年}
\end{equation*}を満たすものとして定義される\(R\)は\(X\)上の同値関係です。さらに、\(i\ \left( =1,2,\cdots ,6\right) \)年生の集合を\(X_{i}\subset X\)で表すとき、\(X\)の\(R\)による商集合は、\begin{equation*}
X\backslash R=\{X_{1},X_{2},X_{3},X_{4},X_{5},X_{6}\}
\end{equation*}となります。\(X\backslash R\)は\(X\)の部分集合族ですが、その和集合は、\begin{equation*}
\bigcup X\backslash R=\bigcup_{i=1}^{6}X_{i}=X
\end{equation*}を満たします。さらに\(X\backslash R\)の要素である\(X\)の部分集合\(X_{i},X_{j}\ \left( i,j=1,2,\cdots ,6\right) \)を任意にとったとき、\begin{equation*}
i\not=j\ \Rightarrow \ X_{i}\cap X_{j}=\phi
\end{equation*}が成り立ちます。したがって、商集合\(X\backslash R\)は\(X\)の分割です。問題としている小学校の任意の生徒は何らかの学年に必ず属するとともに、複数の異なる学年に属することはありません。

以上の 2 つの例では、集合\(X\)上の同値関係\(\sim \)から定義した商集合\(X\backslash \sim \)が\(X\)の分割になっていますが、このような性質はあらゆる商集合に関して成立します。これを示すためには、同値類に関して以前示した以下の命題を利用します。

補題(同値類の性質)
集合\(X\)上の同値関係\(\sim \)が与えられたとき、以下が成り立つ。\begin{eqnarray*}
&&\left( a\right) \ \forall x\in X:x\in \left[ x\right] \\
&&\left( b\right) \ X=\bigcup_{x\in X}\left[ x\right] \\
&&\left( c\right) \ \forall x,y\in X:\left( x\sim y\ \Leftrightarrow \ \left[ x\right] =\left[ y\right] \right) \\
&&\left( d\right) \ \forall x,y\in X:\left[ \lnot \left( x\sim y\right) \ \Leftrightarrow \ \left[ x\right] \cap \left[ y\right] =\phi \right] \end{eqnarray*}
上の補題について復習する

集合\(X\)上の同値関係\(\sim \)が与えられているものとします。要素\(x\in X\)を任意にとると、上の補題の\(\left( a\right) \)より\(x\in \left[ x\right] \subset X\)が成り立つため、商集合\(X\backslash \sim =\{\left[ x\right] \}_{x\in X}\)の\(X\)の空でない部分集合からなる部分集合族です。さらに、\begin{align*}
X& =\bigcup_{x\in X}\left[ x\right] \quad \because \text{補題の}(b) \\
& =\bigcup X/\sim \quad \because X/\sim \text{の定義}
\end{align*}が成り立つため、\(X\)の任意の要素は何らかの同値類に属します。また、\(A\not=B\)を満たす同値類\(A,B\in X\backslash \sim \)を任意に選ぶと、\(A=\left[ a\right] \)を満たす要素\(a\in X\)と\(B=\left[ b\right] \)を満たす要素\(b\in X\)がそれぞれ存在しますが、このとき、\begin{align*}
A\not=B& \Leftrightarrow \left[ a\right] \not=\left[ b\right] \\
& \Leftrightarrow \lnot \left( a\sim b\right) \quad \because \text{補題の}(c) \\
& \Leftrightarrow \left[ a\right] \cap \left[ b\right] =\phi \quad \because \text{補題の}(d) \\
& \Leftrightarrow A\cap B=\phi
\end{align*}が成り立つため、\(X\)の任意の要素は、異なる複数の同値類に属することはありません。以上の結果を命題としてまとめておきましょう。

命題(商集合は分割)
集合\(X\)上の同値関係\(\sim \)から構成される商集合\(X\backslash \sim \)は\(X\)の分割である。すなわち、\begin{eqnarray*}
&&\left( a\right) \ \bigcup X\backslash \sim =X \\
&&\left( b\right) \ \forall A,B\in X\backslash \sim :\left( A\not=B\
\Rightarrow \ A\cap B=\phi \right)
\end{eqnarray*}がともに成り立つ。

そこで、集合\(X\)上の同値関係\(\sim \)から\(X\)の分割である商集合\(X\backslash \sim \)を構成することを、\(X\)の\(\sim \)による類別(classification)と呼びます。

集合\(X\)上の同値関係\(\sim \)から\(X\)の分割である商集合\(X\backslash \sim \)を構成することができますが、逆に、集合\(X\)上の分割が与えられたとき、そこから\(X\)上の同値関係を生成することができます。次回はこのことについて解説します。

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