集合 X から集合 Y への写像 f が与えられたとき、f のもとでの像が Y に属する何らかの要素であるような X の要素からなる集合を f の定義域と呼びます。写像の定義域と始集合は常に一致します。一方、f のもとで X に属する何らかの像であるような Y の要素からなる集合を f の値域と呼びます。写像の値域と終集合は一致するとは限りません。

2019年3月25日:公開

写像の定義域

写像\(f:X\rightarrow Y\)とそのグラフ\(G\left( f\right) \)が与えられたとき、\(\left( x,y\right) \in G\left( f\right) \)を満たす\(Y\)の要素\(y\)が存在するようなすべての\(X\)の要素\(x\)からなる集合を、\begin{equation*}
D\left( f\right) =\{x\in X\ |\ \exists y\in Y:\left( x,y\right) \in G\left( f\right) \}
\end{equation*}で表し、これを\(f\)の定義域(domain)と呼びます。

写像のグラフ\(G\left( f\right) \)の定義より、任意の\(\left( x,y\right) \in X\times Y\)に対して、\begin{equation*}
\left( x,y\right) \in G\left( f\right) \ \Leftrightarrow \ y=f\left( x\right)
\end{equation*}という関係が成り立つため、写像の定義域を、\begin{equation*}
D\left( f\right) =\{x\in X\ |\ \exists y\in Y:y=f\left( x\right) \}
\end{equation*}と定義することもできます。つまり、\(y=f\left( x\right) \)を満たす\(Y\)の要素\(y\)が存在するようなすべての\(X\)の要素\(x\)からなる集合が\(f\)の定義域です。

順序対\(\left( x,y\right) \in X\times Y\)を任意に選んだとき、\begin{equation*}
x\in f^{-1}\left( y\right) \ \Leftrightarrow \ y=f\left( x\right)
\end{equation*}という関係が成り立つため、写像の定義域を、\begin{equation*}
D\left( f\right) =\{x\in X\ |\ \exists y\in Y:x\in f^{-1}\left( y\right) \}
\end{equation*}と定義することもできます。つまり、\(x\in f^{-1}\left( y\right) \)を満たす\(Y\)の要素\(y\)が存在するようなすべての\(X\)の要素\(x\)からなる集合が\(f\)の定義域です。

以上の議論をまとめると、写像\(f:X\rightarrow Y\)の定義域は、\begin{align*}
D(f)& =\{x\in X\ |\ \exists y\in Y:(x,y)\in G(f)\} \\
& =\{x\in X\ |\ \exists y\in Y:y=f\left( x\right) \} \\
& =\{x\in X\ |\ \exists y\in Y:x\in f^{-1}\left( y\right) \}
\end{align*}などと様々な形で表現できます。

 

始集合と定義域は一致する

写像の始集合と定義域は常に一致します。そこで今後は、写像の始集合と定義域を総称して定義域と呼びます。

命題(写像の始集合と定義域は一致する)
任意の写像\(f:X\rightarrow Y\)について、\(X=D(f)\)という関係が成り立つ。
証明を見る(プレミア会員限定)

 

写像の値域

写像\(f:X\rightarrow Y\)とそのグラフ\(G\left( f\right) \)が与えられたとき、\(\left( x,y\right) \in G\left( f\right) \)を満たす\(X\)の要素\(x\)が存在するようなすべての\(Y\)の要素\(y\)からなる集合を、\begin{equation*}
R(f)=\{y\in Y\ |\ \exists x\in X:(x,y)\in G(f)\}
\end{equation*}で表し、これを\(f\)の値域(range)と呼びます。

写像のグラフ\(G\left( f\right) \)の定義より、任意の\(\left( x,y\right) \in X\times Y\)に対して、\begin{equation*}
\left( x,y\right) \in G\left( f\right) \ \Leftrightarrow \ y=f\left( x\right)
\end{equation*}という関係が成り立つため、写像の値域を、\begin{equation*}
R(f)=\{y\in Y\ |\ \exists x\in X:y=f\left( x\right) \}
\end{equation*}と定義することもできます。つまり、\(y=f\left( x\right) \)を満たす\(X\)の要素\(x\)が存在するようなすべての\(Y\)の要素\(y\)からなる集合が\(f\)の値域です。

順序対\(\left( x,y\right) \in X\times Y\)を任意に選んだとき、\begin{equation*}
x\in f^{-1}\left( y\right) \ \Leftrightarrow \ y=f\left( x\right)
\end{equation*}という関係が成り立つため、写像の値域を、\begin{eqnarray*}
R(f) &=&\{y\in Y\ |\ \exists x\in X:x\in f^{-1}\left( y\right) \} \\
&=&\{y\in Y\ |\ f^{-1}\left( y\right) \not=\phi \}
\end{eqnarray*}と定義することもできます。つまり、\(x\in f^{-1}\left( y\right) \)を満たす\(X\)の要素\(x\)が存在するようなすべての要素\(Y\)の要素\(y\)からなる集合が\(f\)の値域です。

以上の議論をまとめると、写像\(f:X\rightarrow Y\)の値域は、\begin{align*}
R\left( f\right) & =\{y\in Y\ |\ \exists x\in X:(x,y)\in G(f)\} \\
& =\{y\in Y\ |\ \exists x\in X:y=f\left( x\right) \} \\
& =\{y\in Y\ |\ \exists x\in X:x\in f^{-1}\left( y\right) \} \\
& =\{y\in Y\ |\ f^{-1}\left( y\right) \not=\phi \}
\end{align*}などと様々な形で表現できます。

 

終集合と値域は一致するとは限らない

写像の始集合と定義域は常に一致する一方で、終集合と値域は一致するとは限りません。つまり、写像\(f:X\rightarrow Y\)の値域が\begin{equation*}
R\left( f\right) =\{y\in Y\ |\ f^{-1}\left( y\right) \not=\phi \}
\end{equation*}と定義されることを踏まえると、ある要素\(y\in Y\)に対してその逆像\(f^{-1}\left( y\right) \)が空集合になり得るということです。例えば、それぞれの実数\(x\)に対して、\begin{equation*}
f\left( x\right) =x^{2}\in \mathbb{R}
\end{equation*}を像として定める関数\(f: \mathbb{R} \rightarrow \mathbb{R}\)について考えます。このとき、終集合の要素\(-1\)に対して、\(x^{2}=-1\)を満たす実数\(x\)は存在しないため\(f^{-1}\left( -1\right) =\phi \)となります。したがって、\(f\)の終集合\(\mathbb{R}\)と値域\(R\left( f\right) \)は一致しません。

次回は写像による集合の像について解説します。
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