写像 f:X→Y とその終集合 Y の部分集合 B が与えられたとき、X の要素 x の中でも f(x) が B の要素であるようなものからなる集合を f による B の逆像や原像などと呼びます。

2019年3月26日:公開

集合の逆像

写像\(f:X\rightarrow Y\)とその終集合\(Y\)の部分集合\(B\)が与えられたとき、\(X\)のそれぞれの要素\(x\)の像\(f\left( x\right) \)は\(B\)の要素であるか否かのどちらか一方ですから、\(f\left( x\right) \)が\(B\)の要素であるような\(x\)からなる集合を定義できます。そこでこれを、\begin{equation*}
f^{-1}\left( B\right) =\{x\in X\ |\ f(x)\in B\}
\end{equation*}で表し、\(f\)による\(B\)の逆像(inverse image)や原像(preimage)と呼びます。\(f^{-1}\left( B\right) \)は明らかに\(X\)の部分集合です。

写像\(f:X\rightarrow Y\)の終集合\(Y\)の部分集合\(B\)と定義域\(X\)の要素\(x\)を任意に選びます。このとき、\begin{align*}
x\in f^{-1}\left( B\right) & \Leftrightarrow \ f\left( x\right) \in B\quad \because f^{-1}\left( B\right) \text{の定義} \\
& \Leftrightarrow \exists y\in B:y=f(x)
\end{align*}という関係が成り立ちます。ゆえに、\(f\)による\(B\)の逆像を、\begin{equation*}
f^{-1}\left( B\right) =\{x\in X\ |\ \exists y\in B:y=f(x)\}
\end{equation*}と表現することもできます。つまり、\(x\)が\(B\)の逆像の要素であることは、\(B\)のある要素が\(x\)の像と一致するための必要十分条件です。

例(関数による終集合の部分集合の逆像)
関数\(f:\mathbb{R} \rightarrow \mathbb{R}\)を\(f\left( x\right) =x^{2}\)と定義します。\(f\)による\(\{1,4\}\subset \mathbb{R}\)の逆像は、\begin{align*}
f^{-1}\left( \left\{ 1,4\right\} \right) & =\{x\in \mathbb{R} \ |\ x^{2}\in \{1,4\}\} \\
& =\left\{ -2,-1,1,2\right\}
\end{align*}となります。また、\(f\)による\((1,4)\subset \mathbb{R}\)の逆像は、下図より、\begin{align*}
f^{-1}\left( (-1,1)\right) & =\{x\in \mathbb{R} \ |\ x^{2}\in (1,4)\} \\
& =(-2,-1)\cup (1,2)
\end{align*}となります。

図:集合の逆像
例(空集合の逆像)
写像\(f:X\rightarrow Y\)による空集合\(\phi \subset Y\)の逆像は、\begin{equation*}
f^{-1}(\phi )=\{x\in X\ |\ f\left( x\right) \in \phi \}
\end{equation*}となりますが、\(f\left( x\right) \in \phi \)は恒偽式であることから、\begin{equation*}
f^{-1}\left( \phi \right) =\phi
\end{equation*}となります。つまり、空集合の逆像は空集合です。

 

要素の逆像と集合の逆像の関係

写像\(f:X\rightarrow Y\)とその終集合\(Y\)の部分集合\(B\)、そしてその要素\(y\in B\)が与えられたとき、任意の\(x\in X\)に対して、\begin{eqnarray*}
x\in f^{-1}\left( y\right) &\Leftrightarrow &\ y=f\left( x\right) \quad \because f^{-1}\left( y\right) \text{の定義} \\
&\Rightarrow &\ f\left( x\right) \in B\quad \because y\in B \\
&\Leftrightarrow &x\in f^{-1}\left( B\right) \quad \because f^{-1}\left( B\right) \text{の定義}
\end{eqnarray*}となるため\(f^{-1}\left( y\right) \subset f^{-1}\left( B\right) \)という関係が成り立ちます。つまり、\(y\)が\(B\)の要素ならば\(y\)の逆像は\(B\)の逆像の部分集合になります。

逆に\(f^{-1}\left( y\right) \subset f^{-1}\left( B\right) \)が成り立つときには\(y\in B\)が成り立ちます。実際、\(y\not\in B\)が成り立つものと仮定すると、任意の\(x\in X\)に対して、\begin{eqnarray*}
x\in f^{-1}\left( y\right) &\Leftrightarrow &y=f\left( x\right) \quad \because f^{-1}\left( y\right) \text{の定義} \\
&\Rightarrow &f\left( x\right) \not\in B\quad \because y\not\in B \\
&\Leftrightarrow &x\not\in f^{-1}\left( B\right) \quad \because f^{-1}\left( B\right) \text{の定義}
\end{eqnarray*}が成り立ちますが、これは\(f^{-1}\left( y\right) \subset f^{-1}\left( B\right)\)と矛盾です。ゆえに\(y\in B\)です。

以上を踏まえると、\begin{equation*}
y\in B\Leftrightarrow f^{-1}\left( y\right) \subset f^{-1}\left( B\right)
\end{equation*}と言う関係が成り立ちます。

 

終集合の逆像は定義域と一致する

写像の始集合と定義域は常に一致し、定義域の像と値域が常に一致することは既に示しました。さらに、写像による終集合の逆像は定義域と一致します。

命題(写像による終集合の逆像と定義域は一致する)
任意の写像\(f:X\rightarrow Y\)について、\begin{equation*}
f^{-1}\left( Y\right) =D\left( f\right)
\end{equation*}が成り立つ。ただし、\(D\left( f\right) \)は\(f\)の定義域である。
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次回は写像による集合の像や逆像の性質について解説します。
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