写像による集合の像や逆像の性質について解説します。

写像 集合の像 集合の逆像

2019年4月5日:公開

像の逆像・逆像の像

写像\(f:X\rightarrow Y\)と定義域の部分集合\(A\subset X\)をそれぞれ任意にとります。このとき、\(f\)による\(A\)の像\(f\left( A\right) \)をとり、さらにその逆像\(f^{-1}\left( f\left( A\right) \right) \)をとると、それは必ずもとの集合\(A\)よりも大きい集合になります。

命題(集合の像の逆像)
写像\(f:X\rightarrow Y\)と部分集合\(A\subset X\)をそれぞれ任意に選んだとき、\begin{equation*}
A\subset f^{-1}(f(A))
\end{equation*}という関係が成り立つ。
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写像\(f:X\rightarrow Y\)と終集合の部分集合\(B\subset Y\)をそれぞれ任意にとります。このとき、\(f\)による\(B\)の逆像\(f^{-1}\left( B\right) \)をとり、さらにその像\(f\left( f^{-1}\left( B\right) \right) \)をとると、それは必ずもとの集合\(A\)よりも小さい集合になります。

命題(集合の逆像の像)
写像\(f:X\rightarrow Y\)と部分集合\(B\subset Y\)をそれぞれ任意に選んだとき、\begin{equation*}
f\left( f^{-1}\left( B\right) \right) \subset B
\end{equation*}という関係が成り立つ。
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包含関係に関する性質

写像\(f:X\rightarrow Y\)と定義域の部分集合\(A_{1},A_{2}\subset X\)をそれぞれ任意にとります。このとき、\(A_{1}\subset A_{2}\)が成り立つならばこれらの像についても\(f\left( A_{1}\right) \subset f\left( A_{2}\right) \)が成り立ちます。

命題(包含関係と集合の像)
写像\(f:X\rightarrow Y\)と部分集合\(A_{1},A_{2}\subset X\)をそれぞれ任意に選んだとき、\begin{equation*}
A_{1}\subset A_{2}\ \Rightarrow \ f(A_{1})\subset f\left( A_{2}\right)
\end{equation*}という関係が成り立つ。
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写像\(f:X\rightarrow Y\)と終集合の部分集合\(B_{1},B_{2}\subset Y\)をそれぞれ任意にとります。このとき、\(B_{1}\subset B_{2}\)が成り立つならばこれらの像についても\(f\left( B_{1}\right) \subset f\left( B_{2}\right) \)が成り立ちます。

命題(包含関係と集合の逆像)
写像\(f:X\rightarrow Y\)と部分集合\(B_{1},B_{2}\subset Y\)をそれぞれ任意に選んだとき、\begin{equation*}
B_{1}\subset B_{2}\ \Rightarrow \ f^{-1}(B_{1})\subset f^{-1}\left( B_{2}\right)
\end{equation*}という関係が成り立つ。
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補集合に関する性質

写像\(f:X\rightarrow Y\)と終集合の部分集合\(B\subset Y\)をそれぞれ任意にとります。このとき、\(B\)の補集合の逆像\(f^{-1}(B^{c})\)と\(B\)の逆像の補集合\((f^{-1}(B))^{c}\)は一致します。

命題(補集合に関する性質)
写像\(f:X\rightarrow Y\)と部分集合\(B\subset Y\)をそれぞれ任意に選んだとき、\begin{equation*}
f^{-1}(B^{c})=(f^{-1}(B))^{c}
\end{equation*}という関係が成り立つ。
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共通部分に関する性質

写像\(f:X\rightarrow Y\)が与えられたとき、\(X\)の部分集合どうしの共通部分の像や、\(Y\)の部分集合どうしの共通部分の逆像に関して以下の命題が成り立ちます。

命題(共通部分に関する性質)
写像\(f:X\rightarrow Y\)と部分集合\(A_{1},A_{2}\subset X\)をそれぞれ任意に選んだとき、\begin{equation*}
f(A_{1}\cap A_{2})\subset f(A_{1})\cap f(A_{2})
\end{equation*}という関係が成り立つ。また、部分集合\(B_{1},B_{2}\subset Y\)を任意に選んだとき、\begin{equation*}
f^{-1}(B_{1}\cap B_{2})=f^{-1}(B_{1})\cap f^{-1}(B_{2})
\end{equation*}という関係が成り立つ。
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上の命題では\(f(A_{1}\cap A_{2})\subset f(A_{1})\cap f(A_{2})\)を示しましたが、これとは逆に、\begin{equation*}
f(A_{1})\cap f(A_{2})\subset f(A_{1}\cap A_{2})
\end{equation*}は成り立つとは限りません。\(y\in Y\)が\(y\in f(A_{1})\cap f(A_{2})\)を満たすことは\(y=f\left( x\right) \)を満たすと同時に\(A_{1}\)と\(A_{2}\)の両方の要素であるような\(x\)が存在することを意味しますが、この\(x\)は\(A_{1}\)と\(A_{2}\)の共通部分に含まれるとは限らず、ゆえに\(y\in f(A_{1}\cap A_{2})\)が成り立つとは限らないからです。

具体例を提示しましょう。写像\(f:\{a,b\}\rightarrow \{c,d\}\)が\(f\left( a\right) =f\left( b\right) =c\)を満たすとき、定義域の部分集合\(\{a\},\{b\}\)について、\begin{eqnarray*}
f(\{a\})\cap f(\{b\}) &=&\{c\}\cap \{c\}=\{c\} \\
f\left( \{a\}\cap \{b\}\right) &=&f\left( \phi \right) =\phi
\end{eqnarray*}となるため、\begin{equation*}
f\left( \left\{ a\right\} \right) \cap f\left( \left\{ b\right\} \right) \subset f\left( \left\{ a\right\} \cap \left\{ b\right\} \right)
\end{equation*}という関係は成り立ちません。

ちなみに、上の命題は集合族の共通部分へと一般化可能です。つまり、写像\(f:X\rightarrow Y\)とその定義域\(X\)の部分集合族\(\{A_{\lambda }\}_{\lambda \in \Lambda }\)が与えられたとき、\begin{equation*}
f\left( \bigcap_{\lambda \in \Lambda }A_{\lambda }\right) \subset \bigcap_{\lambda \in \Lambda }f(A_{\lambda })
\end{equation*}という関係が成り立ち、終集合\(Y\)の部分集合族\(\{B_{\lambda }\}_{\lambda \in \Lambda }\)が与えられたとき、\begin{equation*}
f^{-1}\left( \bigcap_{\mu \in \Lambda }B_{\mu }\right) =\bigcap_{\mu \in \Lambda }f^{-1}(B_{\mu })
\end{equation*}という関係が成り立ちます。証明は演習問題とします。

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和集合に関する性質

写像\(f:X\rightarrow Y\)が与えられたとき、\(X\)の部分集合どうしの和集合の像や、\(Y\)の部分集合どうしの和集合の逆像に関して以下の命題が成り立ちます。

命題(和集合に関する性質)
写像\(f:X\rightarrow Y\)と部分集合\(A_{1},A_{2}\subset X\)をそれぞれ任意に選んだとき、\begin{equation*}
f(A_{1}\cup A_{2})=f(A_{1})\cup f(A_{2})
\end{equation*}という関係が成り立つ。また、部分集合\(B_{1},B_{2}\subset Y\)を任意に選んだとき、\begin{equation*}
f^{-1}(B_{1}\cup B_{2})=f^{-1}(B_{1})\cup f^{-1}(B_{2})
\end{equation*}という関係が成り立つ。
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共通部分の場合とは異なり、\(f(A_{1}\cup A_{2})=f(A_{1})\cup f(A_{2})\)が等号で成立することは特筆すべき事実です。

ちなみに、上の命題は集合族の共通部分へと一般化可能です。つまり、写像\(f:X\rightarrow Y\)とその定義域\(X\)の部分集合族\(\{A_{\lambda }\}_{\lambda \in \Lambda }\)が与えられたとき、\begin{equation*}
f\left( \bigcup_{\lambda \in \Lambda }A_{\lambda }\right) =\bigcup_{\lambda \in \Lambda }f(A_{\lambda })
\end{equation*}という関係が成り立ち、終集合\(Y\)の部分集合族\(\{B_{\lambda }\}_{\lambda \in \Lambda }\)が与えられたとき、\begin{equation*}
f^{-1}\left( \bigcup_{\mu \in \Lambda }B_{\mu }\right) =\bigcup_{\mu \in \Lambda }f^{-1}(B_{\mu })
\end{equation*}という関係が成り立ちます。証明は演習問題とします。

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差集合に関する性質

写像\(f:X\rightarrow Y\)と定義域の部分集合\(A_{1},A_{2}\subset X\)をそれぞれ任意にとります。このとき、差集合の像\(f\left( A_{1}\backslash A_{2}\right) \)と像の差集合\(f\left( A_{1}\right) \backslash f\left( A_{2}\right)\)の間には以下の関係が成り立ちます。

命題(差集合に関する性質)
写像\(f:X\rightarrow Y\)と部分集合\(A_{1},A_{2}\subset X\)をそれぞれ任意に選んだとき、\begin{equation*}
f(A_{1}\backslash A_{2})\supset f(A_{1})\backslash f(A_{2})
\end{equation*}という関係が成り立つ。また、部分集合\(B_{1},B_{2}\subset Y\)をそれぞれ任意に選んだとき、\begin{equation*}
f^{-1}(B_{1}\backslash B_{2})=f^{-1}(B_{1})\backslash f^{-1}(B_{2})
\end{equation*}という関係が成り立つ。
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上の命題では\(f(A_{1}\backslash A_{2})\supset f(A_{1})\backslash f(A_{2})\)を示しましたが、これとは逆に、\begin{equation*}
f(A_{1}\backslash A_{2})\subset f(A_{1})\backslash f(A_{2})
\end{equation*}は成り立つとは限りません。\(y\in Y\)が\(y\in f(A_{1}\backslash A_{2})\)を満たすことは\(y=f\left( x\right) \)を満たすと同時に\(A_{1}\)の要素だが\(A_{2}\)の要素ではない\(x\)が存在することを意味します。しかしこのことは\(y=f\left( x\right) \)を満たすような\(A_{2}\)の要素\(x\)が存在する可能性を否定してはおらず、そのような場合には\(x\in f\left( A_{2}\right) \)となり、ゆえに\(x\)は\(f\left( A_{1}\right) \backslash f\left( A_{2}\right) \)の要素ではありません。

具体例を提示しましょう。写像\(f:\{a,b\}\rightarrow \{c,d\}\)が\(f\left( a\right) =f\left( b\right) =c\)を満たすとき、定義域の部分集合\(\{a\},\{b\}\)について、\begin{eqnarray*}
f(\{a\}\backslash \{b\}) &=&f\left( \{a\}\right) =\{c\} \\
f\left( \{a\}\right) \backslash f\left( \{b\}\right) &=&\{c\}\backslash \{c\}=\phi
\end{eqnarray*}となるため、\begin{equation*}
f(\{a\}\backslash \{b\})\subset f\left( \{a\}\right) \backslash f\left( \{b\}\right)
\end{equation*}という関係は成り立ちません。

ちなみに、\(f\)が単射と呼ばれる種類の写像の場合には\(f(A_{1}\backslash A_{2})=f(A_{1})\backslash f(A_{2})\)という関係が成立します。単射については場を改めて解説します。

次回は単射と呼ばれる種類の写像について解説します。
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