写像の終集合に属する任意の要素がいずれも写像による定義域の要素の像として得られるとき、そのような写像を全射と呼びます。全射の終集合と値域は一致します。

2019年4月6日:公開

全射

写像\(f:X\rightarrow Y\)は定義域\(X\)に属するそれぞれの値\(x\)に対して終集合\(Y\)に属する値\(f\left( x\right) \)を定めますが、\(Y\)の値\(y\)を任意に選んだときに\(y=f\left( x\right) \)を満たす\(X\)の値\(x\)が存在することを保証できるならば、すなわち、\begin{equation*}
\forall y\in Y,\ \exists x\in X:y=f(x)
\end{equation*}が成り立つならば、\(f\)を\(X\)から\(Y\)への全射(surjection)や\(X\)から\(Y\)の上への写像(onto-mapping)などと呼びます。

例(関数)
関数\(f:\mathbb{R} \rightarrow \mathbb{R}\)はそれぞれの\(x\in \mathbb{R}\)に対して\(f\left( x\right) =x\)を定めるものとします。\(y=f\left( x\right) =x\)とおきます。\(y\in \mathbb{R}\)を任意に選ぶとそれに対して\(y=f\left( x\right) \)を満たす\(x=y\in \mathbb{R}\)が存在するため、この\(f\)は全射です。
例(関数)
関数\(f:\mathbb{R} \rightarrow \mathbb{R}\)はそれぞれの\(x\in \mathbb{R}\)に対して\(f\left( x\right) =1\)を定めるものとします。\(y=f\left( x\right) =1\)とおきます。例えば\(y=2\in \mathbb{R}\)に対しては\(y=f\left( x\right) \)を満たす\(x\in \mathbb{R}\)は存在しないため、この\(f\)は全射ではありません。
例(関数)
写像\(f:X\rightarrow Y\)はそれぞれの\(x\in X\)に対して\(f\left( x\right) =2x\)を定めるものとします。\(y=f\left( x\right) =2x\)とおきます。\(X\)がすべての自然数からなる集合\(\mathbb{N}\)、\(Y\)がすべての非負の整数からなる集合\(\mathbb{Z} _{+}\)である場合には、\(y\in Y\)を任意に選ぶとそれに対して\(y=2x\)を満たす自然数\(x\in X\)が必ず存在するため、この場合\(f\)は全射です。一方、\(X=Y= \mathbb{N}\)の場合には、例えば\(3\in Y\)に対して\(3=2x\)を満たす自然数\(x\)は存在しないため、この場合\(f\)は単射です。
例(恒等写像)
写像\(f:X\rightarrow Y\)が包含写像であることとは、\(X\subset Y\)であると同時に任意の\(x\in X\)について\(f\left( x\right) =x\)が成り立つことを意味します。以前示したように包含写像は単射です。さらに、包含写像\(f:X\rightarrow Y\)について\(X=Y\)が成り立つ場合には\(f\)を恒等写像(identity
mapping)と呼びます。恒等写像\(f:X\rightarrow X\)が与えられたとき、終集合の要素\(x\in X\)を任意に選ぶと、それに\(x\)自身は\(X\)の要素であると同時に\(x=f\left( x\right) \)を満たすため、恒等写像\(f\)は全射です。
包含写像が単射であることの証明

 

単射であることと全射であることが同値になるケース

写像\(f:X\rightarrow Y\)の定義域\(X\)と終集合\(Y\)には有限かつ同じ個数の要素が含まれているものとします。つまり、正の整数\(n\)について、\begin{eqnarray*}
X &=&\{x_{1},x_{2},\cdots x_{n}\} \\
Y &=&\{y_{1},y_{2},\cdots ,y_{n}\}
\end{eqnarray*}と表すことができるということです。このような場合には、\(f\)が全射であることは\(f\)が単射であるための必要十分条件になります。証明は演習問題とします。

演習問題(プレミアム会員限定)

 

全射の値域と終集合

一般に、写像\(f:X\rightarrow Y\)の始集合\(X\)と定義域\(D\left( f\right)\)は常に一致しますが、終集合\(Y\)と値域\(R\left( f\right)\)は一致するとは限らないことは以前に示した通りです。しかし、\(f\)が全射の場合には終集合と値域が常に一致します。という関係が成り立ちます。

実際、任意の\(y\in Y\)に対して、\begin{align*}
y\in R(f)& \Leftrightarrow \ \exists x\in X:y=f(x)\quad \because R(f)\text{の定義} \\
& \Leftrightarrow \ y\in Y\quad \because \text{全射の定義}
\end{align*}となるため\(R\left( f\right) =Y\)が成り立ちます。

これを命題としてまとめておきましょう。

命題(全射の値域と終集合)
写像\(f:X\rightarrow Y\)が全射ならば、\begin{equation*}
R\left( f\right) =Y
\end{equation*}が成り立つ。

次回は全単射と呼ばれる種類の写像について解説します。
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