有限集合と可算集合の和集合は可算集合
有限集合\(A,B\)をそれぞれ任意に選んだとき、それらの和集合\begin{equation*}A\cup B
\end{equation*}もまた有限集合になることが明らかになりました。では、可算集合の和集合の濃度についても同様の主張が成立するのでしょうか。順番に考えます。
まずは、有限集合と可算集合の和集合が可算集合になることを示します。
\end{equation*}は可算集合である。
\end{equation*}が可算集合であることをすでに示しましたが、同じことを先の命題を用いて示すこともできます。実際、\begin{equation*}\mathbb{Z} _{+}=\mathbb{N} \cup \left\{ 0\right\}
\end{equation*}という関係が成り立ちますが、自然数集合\(\mathbb{N} \)は可算集合である一方で\(\left\{ 0\right\} \)は有限集合であるため、先の命題より、それらの和集合と一致する\(\mathbb{Z} _{+}\)は可算集合です。つまり、\begin{equation}\left\vert \mathbb{Z} _{+}\right\vert =\left\vert \mathbb{N} \right\vert \quad \cdots (1)
\end{equation}が成り立ちます。非正の整数からなる集合集合\begin{equation*}\mathbb{Z} _{-}=\left\{ 0,-1,-2,-3,\cdots \right\}
\end{equation*}が与えられたとき、それぞれの\(x\in \mathbb{Z} _{+}\)に対して、\begin{equation*}f\left( x\right) =-x\in \mathbb{Z} _{-}
\end{equation*}を定める写像\(f:\mathbb{Z} _{+}\rightarrow \mathbb{Z} _{-}\)を定義すればこれは全単射であるため、\begin{equation}\left\vert \mathbb{Z} _{-}\right\vert =\left\vert \mathbb{Z} _{+}\right\vert \quad \cdots (2)
\end{equation}が成り立ちます。濃度の相等関係\(=\)は推移性を満たすため、\(\left(1\right) ,\left( 2\right) \)より、\begin{equation*}\left\vert \mathbb{Z} _{-}\right\vert =\left\vert \mathbb{N} \right\vert
\end{equation*}が成り立ちます。以上より、\(\mathbb{Z} _{-}\)もまた可算集合であることが明らかになりました。
可算集合どうしの和集合は可算集合
可算集合どうしの和集合もまた可算集合です。
\end{equation*}もまた可算集合である。
有限個の可算集合の和集合は可算集合
先の命題は3個以上の可算集合に関しても拡張可能です。証明では集合の個数\(n\)に関する数学的帰納法を利用します。
\end{equation*}もまた可算集合である。
集合族\(\left\{ A_{\lambda }\right\} _{\lambda \in \Lambda }\)の添字集合\(\Lambda \)が有限集合であるとともに、この集合族の任意の要素\(A_{\lambda }\)が可算集合である場合、この集合族の和集合もまた可算集合になります。
\end{equation*}もまた可算集合である。
可算個の可算集合の和集合は可算集合
先の命題は可算個の可算集合に関しても拡張可能です。
\end{equation*}もまた可算集合である。
添字集合が\(\mathbb{N} \)とは限らない一般の可算集合である場合にも同様の主張が成り立ちます。
\end{equation*}もまた可算集合である。
\end{equation*}などはいずれも可算集合です。
高々可算個の高々可算集合の和集合は高々可算集合
ある集合が高々可算集合であることとは、その集合が有限集合もしくは可算集合のどちらか一方であることを意味します。以上の事実とこれまでの議論を踏まえると以下を得ます。
\end{equation*}もまた高々可算集合である。
集合族\(\left\{ A_{\lambda }\right\} _{\lambda \in \Lambda} \)の任意の要素\(A_{\lambda }\ \left(\lambda \in \Lambda \right) \)は有限集合であり、なおかつ添字集合\(\Lambda \)が可算集合である場合、上の命題より\(\left\{ A_{\lambda }\right\} _{\lambda \in \Lambda }\)の和集合は高々可算集合であることが保証されますが、可算集合であるとは限りません。以下の例より明らかです。
\end{equation*}を満たすものとします。つまり、この集合族の添字集合\(\mathbb{N} \)は可算集合である一方で、任意の要素\(A_{i}\)は有限集合です。この集合族の和集合は、\begin{eqnarray*}\bigcup_{i\in \mathbb{N} }A_{i} &=&\bigcup_{i\in \mathbb{N} }\left\{ 1\right\} \\
&=&\left\{ 1\right\}
\end{eqnarray*}ですが、これは有限集合であり、可算集合ではありません。
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