集合の相等
集合\(A\)に属する要素と集合\(B\)に属する要素が完全に一致する場合には\(A\)と\(B\)は等しい(equal)と言い、そのことを、\begin{equation*}A=B
\end{equation*}で表記します。
逆に、集合\(A\)と集合\(B\)が等しくない場合、そのことを、\begin{equation*}A\not=B
\end{equation*}で表記します。
A &=&\left\{ 1,2,3,4,5\right\} \\
B &=&\left\{ 5,4,3,2,1\right\}
\end{eqnarray*}に注目したとき、\(A\)に属する要素と\(B\)に属する要素が完全に一致するため、\begin{equation*}A=B
\end{equation*}が成り立ちます。
A &=&\left\{ 1,2,3,4\right\} \\
B &=&\left\{ 1,2,3,4,5\right\}
\end{eqnarray*}に注目したとき、\(A\)に属する要素と\(B\)に属する要素は完全には一致しないため、\begin{equation*}A\not=B
\end{equation*}が成り立ちます。
包含関係を用いた集合の相等の定義
2つの集合\(A,B\)が等しくないこと、すなわち\(A\not=B\)であることは、「集合\(A\)に属する要素と集合\(B\)に属する要素が完全に一致する」という命題が偽であることを意味しますが、このような事態が起こり得る状況としては以下が考えられます。
- \(A\)の要素だが\(B\)の要素でないものが存在する。すなわち、\begin{equation}\exists x\in A:x\not\in B \quad \cdots (1)\end{equation}が成り立つ。
- \(B\)の要素だが\(A\)の要素でないものが存在する。すなわち、\begin{equation}\exists x\in B:x\not\in A \quad \cdots (2)\end{equation}が成り立つ。
- \(\left( 1\right) \)と\(\left( 2\right) \)がともに成り立つ。
したがって、\(A\not=B\)が成り立つことは\(\left( 1\right) \)と\(\left( 2\right) \)の少なくとも一方が成り立つこと、すなわち、以下の命題\begin{equation*}\left( \exists x\in A:x\not\in B\right) \vee \left( \exists x\in B:x\not\in
A\right)
\end{equation*}が真であることを意味しますが、包含関係\(\subset \)の定義より、これは、\begin{equation*}A\not\subset B\vee B\not\subset A
\end{equation*}と必要十分です。つまり、\(A\)と\(B\)が等しくないこととは、\(A\)が\(B\)の部分集合でないか、\(B\)が\(A\)の部分集合ではないか、その少なくとも一方であることを意味します。
&&\left( b\right) \ \left( \exists x\in A:x\not\in B\right) \vee \left(
\exists x\in B:x\not\in A\right) \\
&&\left( c\right) \ A\not\subset B\vee B\not\subset A
\end{eqnarray*}はお互いに必要十分である。
以上の命題より、2つの集合\(A,B\)が等しくないことを示すためには、\(A\)が\(B\)の部分集合ではないか、\(B\)が\(A\)の部分集合ではないか、その少なくとも一方が成り立つことを示せばよいことが明らかになりました。
\end{equation*}が成り立ちます。
逆の議論も成立します。つまり、2つの集合\(A,B\)が等しくないことが判明している場合、\(A\)または\(B\)のどちらか一方にのみ属する要素が必ず存在します。
集合\(A,B\)について\(A\not=B\)が成り立つことが以下の命題\begin{equation*}\left( \exists x\in A:x\not\in B\right) \vee \left( \exists x\in B:x\not\in
A\right)
\end{equation*}と必要十分であるならば、逆に、\(A=B\)が成り立つことは、この命題の否定である以下の命題\begin{equation*}\left( \forall x\in A:x\in B\right) \wedge \left( \forall x\in B:x\in
A\right)
\end{equation*}と必要十分です。包含関係\(\subset \)の定義より、さらにこれは、\begin{equation*}A\subset B\wedge B\subset A
\end{equation*}と必要十分です。つまり、\(A\)と\(B\)が等しいこととは、\(A\)が\(B\)の部分集合であるとともに\(B\)が\(A\)の部分集合であることを意味します。
&&\left( b\right) \ \left( \forall x\in A:x\in B\right) \wedge \left(
\forall x\in B:x\in A\right) \\
&&\left( c\right) \ A\subset B\wedge B\subset A
\end{eqnarray*}はお互いに必要十分である。
以上の命題より、2つの集合\(A,B\)が等しいことを示すためには、\(A\)が\(B\)の部分集合であるとともに、\(B\)が\(A\)の部分集合であることを示せばよいことが明らかになりました。
\end{equation*}が成り立ちます。
逆の議論も成立します。つまり、2つの集合\(A,B\)が等しいことが判明している場合、\(A\)または\(B\)のどちらか一方にのみ属する要素は存在しません。
内包的に表現された集合が等しいことの表現
集合\(A,B\)がそれぞれ、\begin{eqnarray*}A &=&\left\{ x\in X\ |\ P\left( x\right) \right\} \\
B &=&\left\{ x\in X\ |\ Q\left( x\right) \right\}
\end{eqnarray*}という形で変数\(x\)に関する命題関数\(P\left( x\right) ,Q\left(x\right) \)を用いて内包的に定義されているものとします。ただし、\(X\)は変数\(x\)の定義域です。つまり、任意の\(x\in X\)について、\begin{eqnarray*}x &\in &A\Leftrightarrow P\left( x\right) \\
x &\in &B\Leftrightarrow Q\left( x\right)
\end{eqnarray*}を満たすものとして集合\(A,B\)をそれぞれ定義するということです。先に、\(A\)と\(B\)が等しいことを包含関係を用いて表現しましたが、それを以下の形で表現することもできます。
B &=&\left\{ x\in X\ |\ Q\left( x\right) \right\}
\end{eqnarray*}と内包的に定義されているものとする。このとき、以下の3つの命題\begin{eqnarray*}
&&\left( a\right) \ A=B \\
&&\left( b\right) \ \forall x\in X:\left[ P\left( x\right) \Rightarrow
Q\left( x\right) \right] \wedge \forall x\in X:\left[ Q\left( x\right)
\Rightarrow P\left( x\right) \right] \\
&&\left( c\right) \ \forall x\in X:\left[ P\left( x\right) \Leftrightarrow
Q\left( x\right) \right] \end{eqnarray*}はお互いに必要十分である。
集合\(A,B\)がそれぞれ、\begin{eqnarray*}A &=&\left\{ x\in X\ |\ P\left( x\right) \right\} \\
B &=&\left\{ x\in X\ |\ Q\left( x\right) \right\}
\end{eqnarray*}と定義されている場合、\(A\)と\(B\)が等しいことは以下の命題\begin{equation*}\forall x\in X:\left[ P\left( x\right) \Rightarrow Q\left( x\right) \right]
\wedge \forall x\in X:\left[ Q\left( x\right) \Rightarrow P\left( x\right) \right]
\end{equation*}が真であることを意味することが明らかになりました。したがって、\(A\)が\(B\)と等しいことを示すためには、\(P\left( x\right) \)を満たす任意の値\(x\in X\)について\(Q\left(x\right) \)が成り立つことを示すとともに、\(Q\left( x\right) \)を満たす任意の値\(x\in X\)について\(P\left( x\right) \)が成り立つことを示せばよいということになります。
\end{equation*}と定義します。ただし、\(\mathbb{Z} \)はすべての整数からなる集合です。このとき、\begin{equation*}A=\mathbb{Z} \end{equation*}が成り立つことを示します。まずは、\begin{equation}
A\subset \mathbb{Z} \quad \cdots (1)
\end{equation}を示します。\(A\)の要素\(x\in A\)を任意に選ぶと、\(A\)の定義より、何らかの整数\(a,b\in \mathbb{Z} \)を用いて、\begin{equation*}x=3a+2b
\end{equation*}という形で表すことができます。整数どうしの和や積は整数であるため\(3a+2b\)は整数であり、したがってそれと一致する\(x\)もまた整数です。つまり\(x\in \mathbb{Z} \)であるため\(\left( 1\right) \)が成り立つことが示されました。続いて、\begin{equation}\mathbb{Z} \subset A \quad \cdots (2)\end{equation}を示します。\(\mathbb{Z} \)の要素\(z\in \mathbb{Z} \)を任意に選ぶと、これを、\begin{equation*}z=3z+2\left( -z\right)
\end{equation*}と変形できますが、\(z,-z\in \mathbb{Z} \)であるため\(A\)の定義より\(3z+2\left( -z\right) \in A\)であり、したがってそれと一致する\(z\)もまた\(A\)の要素です。つまり\(z\in A\)であるため\(\left( 2\right) \)が成り立つことが示されました。\(\left( 1\right) ,\left( 2\right) \)が示されたため\(A=\mathbb{Z} \)であることの証明が完了しました。
もう一方の主張については以下が成り立ちます。
B &=&\left\{ x\in X\ |\ Q\left( x\right) \right\}
\end{eqnarray*}と内包的に定義されているものとする。このとき、以下の3つの命題\begin{eqnarray*}
&&\left( a\right) \ A\not=B \\
&&\left( b\right) \ \exists x\in X:\left[ P\left( x\right) \wedge \lnot
Q\left( x\right) \right] \vee \exists x\in X:\left[ Q\left( x\right) \wedge
\lnot P\left( x\right) \right] \\
&&\left( c\right) \ \exists x\in X:\lnot \left[ P\left( x\right)
\Leftrightarrow Q\left( x\right) \right] \end{eqnarray*}はお互いに必要十分である。
真部分集合
2つの集合\(A,B\)について、\(A\)は\(B\)の部分集合である一方で\(A\)は\(B\)と等しくないとき、すなわち、\begin{equation*}A\subset B\wedge A\not=B
\end{equation*}が成り立つ場合には、\(A\)は\(B\)の真部分集合(proper subset)であるといい、そのことを、\begin{equation*}A\varsubsetneq B
\end{equation*}で表記します。
集合\(A\)が集合\(B\)の真部分集合でないことは、上の命題の否定に相当する以下の命題\begin{equation*}A\not\subset B\vee A=B
\end{equation*}が成り立つことを意味します。つまり、\(A\)が\(B\)の部分集合ではないか、\(A\)と\(B\)が等しいかの少なくとも一方が成り立つとき、\(A\)は\(B \)の真部分集合ではありません。
\end{equation*}という関係が成り立ちます。また、\begin{eqnarray*}
\left\{ 1,3\right\} &\subset &\left\{ 1,3\right\} \\
\left\{ 1,3,5\right\} &\subset &\left\{ 1,3,5\right\}
\end{eqnarray*}がともに成り立つ一方で、\begin{eqnarray*}
\left\{ 1,3\right\} &\varsubsetneq &\left\{ 1,3\right\} \\
\left\{ 1,3,5\right\} &\varsubsetneq &\left\{ 1,3,5\right\}
\end{eqnarray*}はともに成り立ちません。
演習問題
&&\left( b\right) \ A\subset B\Rightarrow A=B
\end{eqnarray*}はそれぞれ成り立つでしょうか。理由とともに答えてください。
&&\left( b\right) \ A\varsubsetneq B\Rightarrow A=B
\end{eqnarray*}はそれぞれ成り立つでしょうか。理由とともに答えてください。
B &=&\left\{ n\in \mathbb{N} \ |\ n^{2}<17\right\}
\end{eqnarray*}と定義するとき、\(A=B\)が成り立つことを証明してください。ただし、\(\mathbb{N} \)はすべての自然数からなる集合です。
B &=&\left\{ 4x-3\in \mathbb{R} \ |\ x\in \mathbb{Z} \right\}
\end{eqnarray*}と定義するとき、\(A=B\)が成り立つことを証明してください。ただし、\(\mathbb{Z} \)はすべての整数からなる集合です。
&&\left( b\right) \ (A\subset B\wedge B\subset C)\Rightarrow A\subset C \\
&&\left( c\right) \ (A\subset B\wedge B\subset A)\Rightarrow A=B
\end{eqnarray*}が成り立つことを証明してください。\(\left(a\right) \)は反射律(reflexive law)であり、\(\left( b\right) \)は推移律(transitive law)であり、\(\left( c\right) \)は反対称律(antisymmetric law)です。つまり、包含関係\(\subset \)は順序関係(ordering relation)です。
\end{equation*}という関係は成り立つでしょうか。理由とともに答えてください。
プレミアム会員専用コンテンツです
【ログイン】【会員登録】