集合 A から集合 B への関係 R が与えられたとき、R の要素である順序対 (a,b) の要素を入れ替えて得られる順序対 (b,a) からなる B から A への関係を R の逆関係と呼びます。
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逆関係

集合\(A\)から集合\(B\)への関係\(R\)は直積\(A\times B\)の部分集合として定義されます。逆に、集合\(B\)から集合\(A\)への関係\(R^{-1}\)は直積\(B\times A\)の部分集合として定義されますが、順序対\(\left( b,a\right) \in B\times A\)を任意に選んだとき、両者の間に、\begin{equation*}
\left( b,a\right) \in R^{-1}\Leftrightarrow \left( a,b\right) \in R
\end{equation*}すなわち、\begin{equation}
R^{-1}\left( b,a\right) \Leftrightarrow R\left( a,b\right) \tag{1}
\end{equation}という関係が成り立つ場合、\(R^{-1}\)を\(R\)の逆関係(inverse relation)と呼びます。つまり、逆関係\(R^{-1}\)のもとで\(b\)が\(a\)と関係を持つことは、もとの関係\(R\)のもとで\(a\)が\(b\)と関係を持つことと必要十分です。定義より、\begin{eqnarray*}
R^{-1} &=&\left\{ \left( b,a\right) \in B\times A\ |\ R^{-1}\left(
b,a\right) \right\} \\
&=&\left\{ \left( b,a\right) \in B\times A\ |\ R\left( a,b\right) \right\}
\quad \because \left( 1\right)
\end{eqnarray*}という関係が成り立ちます。つまり、関係\(R\)のもとで\(R\left( a,b\right) \)が成り立つような順序対\(\left( a,b\right) \)の成分を入れ替えた順序対\(\left( b,a\right) \)からなる集合が\(R^{-1}\)です。

例(逆関係)
始集合が\(M=\left\{ m_{1},m_{2},m_{3}\right\} \)であり、終集合が\(W=\left\{ w_{1},w_{2},w_{3}\right\} \)である関係\(R\)を、それぞれの\(\left( m,w\right) \in M\times W\)について、\begin{equation*}
R\left( m,w\right) \Leftrightarrow m\text{は}w\text{の夫である}
\end{equation*}を満たすものとして定義します。仮に、\(m_{1}\)と\(w_{2}\)、\(m_{2}\)と\(w_{3}\)がそれぞれ夫婦であり、他の全員が独身であるならば、\begin{equation*}
R=\left\{ \left( m_{1},w_{2}\right) ,\left( m_{2},w_{3}\right) \right\}
\end{equation*}となります。\(R\)の成分である順序対\(\left( m,w\right) \)の成分を入れ替えた順序対\(\left( w,m\right) \)からなる集合が逆関係\(R^{-1}\)であるため、\begin{equation*}
R^{-1}=\left\{ \left( w_{2},m_{1}\right) ,\left( w_{3},m_{2}\right) \right\}
\end{equation*}となります。実際、\(m\)が\(w\)の夫であることと、\(w\)が\(m\)の妻であることは必要十分であるため、\(R\)の逆関係\(R^{-1}\)は、それぞれの\(\left( w,m\right) \in W\times M\)について、\begin{equation*}
R^{-1}\left( w,m\right) \Leftrightarrow w\text{は}m\text{の妻である}
\end{equation*}を満たすものとして定義されます。
例(逆関係)
始集合が\(A=\left\{ 1,3,5\right\} \)であり、終集合が\(B=\left\{ 2,4,6\right\} \)である関係\(R\)を、それぞれの\(\left( a,b\right) \in A\times B\)について、\begin{equation*}
R\left( a,b\right) \Leftrightarrow a<b
\end{equation*}を満たすものとして定義します。このとき、\begin{equation*}
R=\left\{ \left( 1,2\right) ,\left( 1,4\right) ,\left( 1,6\right) ,\left(
3,4\right) ,\left( 3,6\right) ,\left( 5,6\right) \right\}
\end{equation*}となります。\(R\)の成分である順序対\(\left( a,b\right) \)の成分を入れ替えた順序対\(\left( b,a\right) \)からなる集合が逆関係\(R^{-1}\)であるため、\begin{equation*}
R^{-1}=\left\{ \left( 2,1\right) ,\left( 4,1\right) ,\left( 6,1\right)
,\left( 4,3\right) ,\left( 6,3\right) ,\left( 6,5\right) \right\}
\end{equation*}となります。実際、\(a<b\)と\(b>a\)は必要十分であるため、\(R\)の逆関係\(R^{-1}\)は、それぞれの\(\left( b,a\right) \in B\times A\)について、\begin{equation*}
R^{-1}\left( b,a\right) \Leftrightarrow b>a
\end{equation*}を満たすものとして定義されます。

 

二項関係の逆関係

二項関係も関係であるため、その逆関係を考えることができます。集合\(A\)上の関係\(R\)は直積\(A\times A\)の部分集合として定義されますが、\(R\)の逆関係\(R^{-1}\)もまた\(A\times A\)の部分集合であり、順序対\(\left( y,x\right) \in A\times A\)を任意に選んだとき、両者の間には、\begin{equation*}
\left( y,x\right) \in R^{-1}\Leftrightarrow \left( x,y\right) \in R
\end{equation*}すなわち、\begin{equation}
R^{-1}\left( y,x\right) \Leftrightarrow R\left( x,y\right) \tag{1}
\end{equation}という関係が成り立ちます。定義より、\begin{eqnarray*}
R^{-1} &=&\left\{ \left( y,x\right) \in A\times A\ |\ R^{-1}\left(
y,x\right) \right\} \\
&=&\left\{ \left( y,x\right) \in A\times A\ |\ R\left( x,y\right) \right\}
\quad \because \left( 1\right)
\end{eqnarray*}となります。

例(二項関係の逆関係)
すべての集合を要素として持つ集合族\(\mathfrak{A} \)上の二項関係\(R\)を、それぞれの\(\left( A,B\right) \in \mathfrak{A}\times \mathfrak{A}\)について、\begin{equation*}
R\left( A,B\right) \Leftrightarrow A\subset B
\end{equation*}を満たすものとして定義します。ただし、\(\subset \)は包含関係です。このとき、\begin{equation*}
R=\left\{ \left( A,B\right) \in \mathfrak{A}\times \mathfrak{A}\ |\ A\subset
B\right\}
\end{equation*}であるため、\(R\)の逆関係\(R^{-1}\)は、\begin{eqnarray*}
R^{-1} &=&\left\{ \left( B,A\right) \in \mathfrak{A}\times \mathfrak{A}\ |\
A\subset B\right\} \quad \because R^{-1}\text{の定義} \\
&=&\left\{ \left( B,A\right) \in \mathfrak{A}\times \mathfrak{A}\ |\
B\supset A\right\} \quad \because A\subset B\Leftrightarrow B\supset A
\end{eqnarray*}となります。つまり、\(R\)の逆関係\(R^{-1}\)は、それぞれの\(\left( B,A\right) \in \mathfrak{A}\times \mathfrak{A}\)について、\begin{equation*}
R^{-1}\left( B,A\right) \Leftrightarrow B\supset A
\end{equation*}を満たすものとして定義されます。
例(二項関係の逆関係)
集合\(A\)上の恒等関係\(R\)は、それぞれの\(\left( x,y\right) \in A\times A\)について、\begin{equation*}
R\left( x,y\right) \Leftrightarrow x=y
\end{equation*}を満たすものとして定義されます。このとき、\begin{equation*}
R=\left\{ \left( x,y\right) \in A\times A\ |\ x=y\right\}
\end{equation*}であるため、\(R\)の逆関係\(R^{-1}\)は、\begin{eqnarray*}
R^{-1} &=&\left\{ \left( y,x\right) \in A\times A\ |\ x=y\right\} \quad
\because R^{-1}\text{の定義} \\
&=&\left\{ \left( y,x\right) \in A\times A\ |\ y=x\right\} \quad \because
x=y\Leftrightarrow y=x
\end{eqnarray*}となります。つまり、\(R\)の逆関係\(R^{-1}\)は、それぞれの\(\left( y,x\right) \in A\times A\)について、\begin{equation*}
R^{-1}\left( y,x\right) \Leftrightarrow y=x
\end{equation*}を満たすものとして定義されます。

 

逆関係の定義域と値域

復習になりますが、始集合が\(A\)で終集合が\(B\)である関係\(R\)の定義域とは、\(R\)のもとで何らかの\(B\)の要素と関係を持つ\(A\)の要素からなる集合\begin{equation*}
D\left( R\right) =\left\{ a\in A\ |\ \exists b\in B:R\left( a,b\right)
\right\}
\end{equation*}と定義され、\(R\)の値域とは、\(R\)のもとで何らかの\(A\)の要素と関係を持つ\(B\)の要素からなる集合\begin{equation*}
R\left( R\right) =\left\{ b\in B\ |\ \exists a\in A:R\left( a,b\right)
\right\}
\end{equation*}と定義されます。

集合\(A\)から集合\(B\)への関係\(R\)が与えられたとき、その逆関係\(R^{-1}\)は始集合が\(B\)で終集合が\(A\)である関係です。したがって、逆関係についても定義域や値域を考えることができます。具体的には、\(R^{-1}\)の定義域とは、\(R^{-1}\)のもとで何らかの\(A\)の要素と関係を持つ\(B\)の要素からなる集合\begin{equation*}
D\left( R^{-1}\right) =\left\{ b\in B\ |\ \exists a\in A:R^{-1}\left(
b,a\right) \right\}
\end{equation*}であり、\(R^{-1}\)の値域とは、\(R^{-1}\)のもとで何らかの\(B\)の要素と関係を持つ\(A\)の要素からなる集合\begin{equation*}
R\left( R^{-1}\right) =\left\{ a\in A\ |\ \exists b\in B:R^{-1}\left(
b,a\right) \right\}
\end{equation*}です。

例(逆関係の定義域と値域)
集合\(A=\left\{ 1,3,5\right\} \)から集合\(B=\left\{ 2,4,6\right\} \)への関係\(R\)を、それぞれの\(\left( a,b\right) \in A\times B\)について、\begin{equation*}
R\left( a,b\right) \Leftrightarrow a<b
\end{equation*}を満たすものとして定義します。このとき、\begin{equation*}
R=\left\{ \left( 1,2\right) ,\left( 1,4\right) ,\left( 1,6\right) ,\left(
3,4\right) ,\left( 3,6\right) ,\left( 5,6\right) \right\}
\end{equation*}となります。定義域と値域はそれぞれ、\begin{eqnarray*}
D\left( R\right) &=&\left\{ 1,3,5\right\} \\
R\left( R\right) &=&\left\{ 2,4,6\right\}
\end{eqnarray*}です。\(R\)の逆関係\(R^{-1}\)は、\begin{equation*}
R^{-1}=\left\{ \left( 2,1\right) ,\left( 4,1\right) ,\left( 6,1\right)
,\left( 4,3\right) ,\left( 6,3\right) ,\left( 6,5\right) \right\}
\end{equation*}であり、その定義域と値域はそれぞれ、\begin{eqnarray*}
D\left( R^{-1}\right) &=&\left\{ 2,4,6\right\} \\
R\left( R^{-1}\right) &=&\left\{ 1,3,5\right\}
\end{eqnarray*}です。ここでは、\(R\)の定義域と\(R^{-1}\)の値域が一致し、\(R\)の値域と\(R^{-1}\)の定義域が一致しています。

二項関係の逆関係についても、定義域や値域が同様にして定義されます。復習になりますが、集合\(A\)上の二項関係\(R\)の定義域は、\begin{equation*}
D\left( R\right) =\left\{ x\in A\ |\ \exists y\in A:R\left( x,y\right)
\right\}
\end{equation*}と定義され、\(R\)の値域は、\begin{equation*}
R\left( R\right) =\left\{ y\in B\ |\ \exists x\in A:R\left( x,y\right)
\right\}
\end{equation*}と定義されます。逆関係\(R^{-1}\)もまた\(A\)上の関係であり、その定義域は、\begin{equation*}
D\left( R^{-1}\right) =\left\{ y\in A\ |\ \exists x\in A:R^{-1}\left(
y,x\right) \right\}
\end{equation*}と定義され、値域は、\begin{equation*}
R\left( R^{-1}\right) =\left\{ x\in A\ |\ \exists y\in A:R^{-1}\left(
y,x\right) \right\}
\end{equation*}と定義されます。

例(二項関係の逆関係の定義域と値域)
集合\(A=\left\{ 1,2,3\right\} \)上の二項関係\(R\)が、\begin{equation*}
R=\left\{ \left( 1,2\right) ,\left( 1,3\right) ,\left( 2,3\right) \right\}
\end{equation*}で与えられているとき、その定義域と値域は、\begin{eqnarray*}
D\left( R\right) &=&\left\{ 1,2\right\} \\
R\left( R\right) &=&\left\{ 2,3\right\}
\end{eqnarray*}です。\(R\)の逆関係\(R^{-1}\)は、\begin{equation*}
R^{-1}=\left\{ \left( 2,1\right) ,\left( 3,1\right) ,\left( 3,2\right)
\right\}
\end{equation*}であり、その定義域と値域は、\begin{eqnarray*}
D\left( R^{-1}\right) &=&2,3 \\
R\left( R\right) &=&1,2
\end{eqnarray*}です。ここでは、\(R\)の定義域と\(R^{-1}\)の値域が一致し、\(R\)の値域と\(R^{-1}\)の定義域が一致しています。

これまで扱ったいずれの例においても、関係\(R\)の定義域と逆関係\(R^{-1}\)の値域は一致し、\(R\)の値域と\(R^{-1}\)の定義域は一致していますが、こうした関係は常に成立します。実際、集合\(A\)から集合\(B\)への関係\(R\)と、その逆関係\(R^{-1}\)が与えられたとき、任意の\(a\in A\)について、\begin{eqnarray*}
a\in D\left( R\right) &\Leftrightarrow &\exists b\in B:R\left( a,b\right)
\quad \because D\left( R\right) \text{の定義} \\
&\Leftrightarrow &\exists b\in B:R^{-1}\left( b,a\right) \quad \because
R^{-1}\text{の定義} \\
&\Leftrightarrow &a\in R\left( R^{-1}\right) \quad \because R\left(
R^{-1}\right) \text{の定義}
\end{eqnarray*}となるため、\begin{equation*}
D\left( R\right) =R\left( R^{-1}\right)
\end{equation*}という関係が成り立ちます。また、\begin{equation*}
R\left( R\right) =D\left( R^{-1}\right)
\end{equation*}が成り立つことも同様にして示すことができます(演習問題にします)。

命題(関係と逆関係の関係)
集合\(A\)から集合\(B\)への関係\(R\)が任意に与えられたとき、その逆関係\(R^{-1}\)との間に以下が成り立つ。\begin{eqnarray*}
\left( a\right) \ D\left( R\right) &=&R\left( R^{-1}\right) \\
\left( B\right) \ R\left( R\right) &=&D\left( R^{-1}\right)
\end{eqnarray*}
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次回は合成関係について解説します。

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