集合 A と集合 B の直積の部分集合を A から B への関係と呼びます。特に、集合 A から 集合 A への関係を二項関係と呼びます。
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関係

一般に、複数の物事が互いに関わり合っている状態を関係(relation)と呼びますが、これは数学的にどのように定式化できるでしょうか。いくつか具体例を挙げた上で、後に話を一般化します。

例(婚姻関係)
婚姻関係は二人のヒトの間に成立する典型的な関係です。話を単純化するため、ここでは異性間の婚姻について考えます。男性の集合\(M\)と女性の集合\(W\)が与えられたとき、男性\(m\in M\)と女性\(w\in W\)をそれぞれ任意に選んだ上で、それらを成分とする順序対\(\left( m,w\right) \)を作ります。男性\(m\)と女性\(w\)は夫婦であるか否かのどちらか一方です。そこで、夫婦であるような男女を成分とする順序対\(\left( m,w\right) \)からなる集合を、\begin{equation*}
R=\left\{ \left( m,w\right) \in M\times W\ |\ m\text{と}w\text{は夫婦である}\right\}
\end{equation*}と定義します。これは\(M\times W\)の部分集合です。このとき、任意の男女\(m,w\)について、\begin{eqnarray*}
\left( m,w\right) &\in &R\Leftrightarrow m\text{と}w\text{は夫婦である} \\
\left( m,w\right) &\not\in &R\Leftrightarrow m\text{と}w\text{は夫婦ではない}
\end{eqnarray*}という関係が成り立ちます。このような\(M\times W\)の部分集合\(R\)が与えられれば、任意の男女\(m,w\)について、彼らが夫婦であるか否かを判定できます。したがって、この集合\(R\)は婚姻関係を総体的に記述することに成功しています。
例(大小関係)
大小関係は二つの数の間に成立する典型的な関係です。偶数の集合\(E\)と奇数の集合\(O\)が与えられたとき、偶数\(e\in E\)と奇数\(o\in O\)をそれぞれ任意に選んだ上で、それらを成分とする順序対\(\left( e,o\right) \)を作ります。\(e<o\)は成立するか否かのどちらか一方です。例えば、\(\left( e,o\right) =\left( 2,3\right) \)については\(2<3\)が成立する一方で、\(\left( e,o\right) =\left( 2,1\right) \)については\(2<1\)は成立しません。そこで、\(e<o\)が成立するような順序対\(\left( e,o\right) \)からなる集合を、\begin{equation*}
R=\left\{ \left( e,o\right) \in E\times O\ |\ e<o\right\}
\end{equation*}と定義します。これは\(E\times O\)の部分集合です。このとき、任意の偶数\(e\)と奇数\(o\)について、\begin{eqnarray*}
\left( e,o\right) &\in &R\Leftrightarrow e<o \\
\left( e,o\right) &\not\in &R\Leftrightarrow \lnot \left( e<o\right)
\Leftrightarrow e>o
\end{eqnarray*}という関係が成り立ちます。このような\(E\times O\)の部分集合\(R\)が与えられれば、任意の偶数\(e\)と奇数\(o\)について、どちらが大きいかを判定できます。したがって、この集合\(R\)は偶数と奇数の間の大小関係を総体的に記述することに成功しています。

以上の2つの例が示唆するように、2つの集合\(A,B\)が与えられたとき、それらの要素の間の関係は、直積\(A\times B\)の部分集合\begin{equation*}
R\subset A\times B
\end{equation*}を用いて総体的に記述できます。このような事情を念頭においた上で、一般に、問題としている2つの集合\(A,B\)が与えられたとき、\(A\)から\(B\)への関係(relation from \(A\) to \(B\))という概念を直積\(A\times B\)の部分集合\(R\)として定義します。\(A\)の要素\(a\)と\(B\)の要素\(b\)をそれぞれ任意に選んだとき、順序対\(\left( a,b\right) \)が関係\(R\)の要素である場合、\(a\)と\(b\)は\(R\)のもとで関係を持つ(related)と言い、このことを\(R\left( a,b\right) \)や\(aRb\)で表記します。つまり、\begin{equation*}
R\left( a,b\right) \Leftrightarrow aRb\Leftrightarrow \left( a,b\right) \in R
\end{equation*}です。逆に、順序対\(\left( a,b\right) \)が関係\(R\)の要素でない場合、\(a\)と\(b\)は\(R\)のもとで関係を持たない(not related)と言い、このことを\(\lnot R\left( a,b\right) \)や\(\lnot \left( aRb\right) \)で表記します。つまり、\begin{equation*}
\lnot R\left( a,b\right) \Leftrightarrow \lnot \left( aRb\right)
\Leftrightarrow \left( a,b\right) \not\in R
\end{equation*}です。\(A\)から\(B\)への関係\(R\)について、\(A\)を\(R\)の始集合(initial set)と呼び、\(B\)を\(R\)の終集合(final set)と呼びます。正式には、始集合が\(A\)で終集合が\(B\)であるような関係を\(\left( R,A,B\right) \)と表記しますが、始集合と終集合が文脈から明らかである場合、これをシンプルに\(R\)と表記できます。

例(関係)
始集合が\(M=\left\{ m_{1},m_{2},m_{3}\right\} \)であり、終集合が\(W=\left\{ w_{1},w_{2},w_{3}\right\} \)である関係\(R\)を、それぞれの\(\left( m,w\right) \in M\times W\)について、\begin{equation*}
R\left( m,w\right) \Leftrightarrow m\text{と}w\text{は夫婦である}
\end{equation*}を満たすものとして定義します。仮に、\(m_{1}\)と\(w_{2}\)、\(m_{2}\)と\(w_{3}\)がそれぞれ夫婦であり、他の全員が独身であるならば、\begin{eqnarray*}
R &=&\left\{ \left( m,w\right) \in M\times W\ |\ m\text{と}w\text{は夫婦である}\right\} \\
&=&\left\{ \left( m_{1},w_{2}\right) ,\left( m_{2},w_{3}\right) \right\}
\end{eqnarray*}となります。
例(関係)
始集合が\(A=\left\{ 1,3,5\right\} \)であり、終集合が\(B=\left\{ 2,4,6\right\} \)である関係\(R\)を、それぞれの\(\left( a,b\right) \in A\times B\)について、\begin{equation*}
R\left( a,b\right) \Leftrightarrow a<b
\end{equation*}を満たすものとして定義します。このとき、\begin{eqnarray*}
R &=&\left\{ \left( a,b\right) \in A\times B\ |\ a<b\right\} \\
&=&\left\{ \left( 1,2\right) ,\left( 1,4\right) ,\left( 1,6\right) ,\left(
3,4\right) ,\left( 3,6\right) ,\left( 5,6\right) \right\}
\end{eqnarray*}となります。
例(関係)
始集合が\(A=\left\{ 1,3,5\right\} \)であり、終集合が\(B=\left\{ 2,4,6\right\} \)である関係\(R\)を、それぞれの\(\left( a,b\right) \in A\times B\)について、\begin{equation*}
R\left( a,b\right) \Leftrightarrow a=b
\end{equation*}を満たすものとして定義します。このとき、\begin{eqnarray*}
R &=&\left\{ \left( a,b\right) \in A\times B\ |\ a=b\right\} \\
&=&\phi
\end{eqnarray*}となります。

以上の例では「婚姻関係」「大小関係」「相等関係」など、私たちがすでに慣れ親しんでいる具体的な関係を数学的な関係として定式化しましたが、数学においては、2つの集合の直積の部分集合であれば、それはいかなるものでも関係とみなされる点に注意してください。

例(関係)
集合\(A=\left\{ 1,2,3,4,5\right\} \)と集合\(B=\left\{ a,b,c,e,d\right\} \)が与えられたとき、\begin{equation*}
R=\left\{ \left( 1,b\right) ,\left( 1,c\right) ,\left( 3,d\right) ,\left(
4,1\right) ,\left( 5,a\right) \right\}
\end{equation*}は直積\(A\times B\)の部分集合であるため、これは\(A\)から\(B\)への関係です。また、空集合は任意の集合の部分集合であるため、\begin{equation*}
\phi \subset A\times B
\end{equation*}が成り立ちます。したがって、\(\phi \)もまた\(A\)から\(B\)への関係です。さらに、\begin{equation*}
A\times B\subset A\times B
\end{equation*}という関係が成り立つため、\(A\times B\)もまた\(A\)から\(B\)への関係です。同様に、\(A\times B\)の任意の部分集合は\(A\)から\(B\)への関係です。

 

二項関係

関係の始集合と終集合は異なる集合である必要はありません。始集合と終集合が同一の集合\(A\)である場合、そのような関係\(R\)を\(A\)上の二項関係(binary relation)と呼びます。これは直積\(A\times A\)の部分集合\begin{equation*}
R\subset A\times A
\end{equation*}として定義されます。関係の場合と同様に、集合\(A\)上の二項関係\(R\)についても、それぞれの順序対\(\left( x,y\right) \in A\times A\)について、\begin{eqnarray*}
R\left( x,y\right) &\Leftrightarrow &xRy\Leftrightarrow \left( x,y\right)
\in R \\
\lnot R\left( x,y\right) &\Leftrightarrow &\lnot \left( xRy\right)
\Leftrightarrow \left( x,y\right) \not\in R
\end{eqnarray*}と表記します。

例(二項関係)
ある街の住人からなる集合\(A\)上の二項関係\(R\)を、それぞれの\(\left( x,y\right) \in A\times A\)について、\begin{equation*}
R\left( x,y\right) \Leftrightarrow x\text{と}y\text{は知り合い}
\end{equation*}を満たすものとして定義します。このとき、\begin{equation*}
R=\left\{ \left( x,y\right) \in A\times A\ |\ x\text{と}y\text{は知り合い}\right\}
\end{equation*}となります。\(a\)さんと\(b\)さんが知りあいならば\(\left( a,b\right) \in R\)と\(\left( b,a\right) \in R\)がともに成り立つ一方、\(a\)さんと\(c\)さんが知り合いでなければ\(\left( a,c\right) \not\in R\)と\(\left( c,a\right) \not\in R\)がともに成り立ちます。
例(二項関係)
実数空間\(\mathbb{R}\)上の二項関係\(R\)を、それぞれの\(\left( x,y\right) \in \mathbb{R} \times \mathbb{R} \)について、\begin{equation*}
R\left( x,y\right) \Leftrightarrow x<y
\end{equation*}を満たすものとして定義します。ただし、\(<\)は実数どうしを比較する狭義大小関係です。このとき、\begin{equation*}
R=\left\{ \left( x,y\right) \in \mathbb{R} \times \mathbb{R} \ |\ x<y\right\}
\end{equation*}となります。例えば、\(\left( 1,2\right) \in R\)ですが\(\left( 2,1\right) \not\in R\)です。
例(二項関係)
すべての集合を要素として持つ集合族\(\mathfrak{A}\)上の二項関係\(R\)を、それぞれの\(\left( A,B\right) \in \mathfrak{A}\times \mathfrak{A}\)について、\begin{equation*}
R\left( A,B\right) \Leftrightarrow A\subset B
\end{equation*}を満たすものとして定義します。ただし、\(\subset \)は包含関係です。このとき、\begin{equation*}
R=\left\{ \left( A,B\right) \in \mathfrak{A}\times \mathfrak{A}\ |\ A\subset
B\right\}
\end{equation*}となります。例えば、\(\left( \{1\},\{1,2\}\right) \in R\)ですが\(\left( \{1,2\},\{1\}\right) \not\in R\)です。
例(二項関係)
自然数空間\(\mathbb{N}\)上の二項関係\(R\)を、それぞれの\(\left( x,y\right) \in \mathbb{N} \times \mathbb{N} \)について、\begin{equation*}
R\left( x,y\right) \Leftrightarrow x|y
\end{equation*}を満たすものとして定義します。ただし、\(x|y\)は\(y\)が\(x\)で割り切れることを表す記号です。このとき、\begin{equation*}
R=\left\{ \left( x,y\right) \in \mathbb{N} \times \mathbb{N} \ |\ x|y\right\}
\end{equation*}となります。例えば、\(\left( 3,6\right) \in R\)ですが\(\left( 3,7\right) \not\in R\)です。
例(二項関係)
実数空間\(\mathbb{R}\)上の二項関係\(R\)を、それぞれの\(\left( x,y\right) \in \mathbb{R} \times \mathbb{R} \)について、\begin{equation*}
R\left( x,y\right) \Leftrightarrow x^{2}+y^{2}=1
\end{equation*}を満たすものとして定義します。このとき、\begin{equation*}
R=\left\{ \left( x,y\right) \in \mathbb{R} \times \mathbb{R} \ |\ x^{2}+y^{2}=1\right\}
\end{equation*}となります。例えば、\(\left( 0,-1\right) \in R\)ですが\(\left( 1,-1\right) \not\in R\)です。
例(二項関係)
集合\(A\)上の二項関係\(R\)が、それぞれの\(\left( x,y\right) \in A\times A\)について、\begin{equation*}
R\left( x,y\right) \Leftrightarrow x=y
\end{equation*}を満たすものとして定義されているとき、すなわち、\(x\)と\(y\)が等しいとき、そしてその場合にのみ\(R\)のもとで\(x\)と\(y\)は関係を持つものとして定義されているとき、この\(R\)を恒等関係(identity relation)と呼びます。集合\(A\)上の恒等関係\(R\)もまた通常の二項関係と同様、直積\(A\times A\)の部分集合として定義されますが、これを特に、\begin{equation*}
\Delta _{A}=\left\{ \left( x,y\right) \in A\times A\ |\ x=y\right\}
\end{equation*}で表し、これを対角集合(diagonal)と呼びます。

 

関係の定義域

集合\(A\)から集合\(B\)への関係\(R\)が与えられたとき、\(R\)のもとで何らかの\(B\)の要素と関係を持つ\(A\)の要素からなる集合を、\begin{eqnarray*}
D\left( R\right) &=&\left\{ a\in A\ |\ \exists b\in B:\left( a,b\right) \in
R\right\} \\
&=&\left\{ a\in A\ |\ \exists b\in B:R\left( a,b\right) \right\}
\end{eqnarray*}で表し、これを\(R\)の定義域(domain)と呼びます。定義より、任意の\(a\in A\)について、\begin{eqnarray*}
a\in D\left( R\right) &\Leftrightarrow &\exists b\in B:\left( a,b\right)
\in R \\
&\Leftrightarrow &\exists b\in B:R\left( a,b\right)
\end{eqnarray*}という関係が成り立ちます。つまり、\(R\)の定義域とは、\(R\)の要素であるそれぞれの順序対の第1成分からなる集合です。

例(関係の定義域)
始集合が\(M=\left\{ m_{1},m_{2},m_{3}\right\} \)であり、終集合が\(W=\left\{ w_{1},w_{2},w_{3}\right\} \)である関係\(R\)を、それぞれの\(\left( m,w\right) \in M\times W\)について、\begin{equation*}
R\left( m,w\right) \Leftrightarrow m\text{と}w\text{は夫婦である}
\end{equation*}を満たすものとして定義します。仮に、\(m_{1}\)と\(w_{2}\)、\(m_{2}\)と\(w_{3}\)がそれぞれ夫婦であり、他の全員が独身であるならば、\begin{equation*}
R=\left\{ \left( m_{1},w_{2}\right) ,\left( m_{2},w_{3}\right) \right\}
\end{equation*}となるため、\(R\)の定義域は、\begin{equation*}
D\left( R\right) =\left\{ m_{1},m_{2}\right\}
\end{equation*}です。これは結婚している男性からなる集合です。
例(関係の定義域)
始集合が\(A=\left\{ 1,3,5\right\} \)であり、終集合が\(B=\left\{ 2,4,6\right\} \)である関係\(R\)を、それぞれの\(\left( a,b\right) \in A\times B\)について、\begin{equation*}
R\left( a,b\right) \Leftrightarrow a<b
\end{equation*}を満たすものとして定義します。このとき、\begin{equation*}
R=\left\{ \left( 1,2\right) ,\left( 1,4\right) ,\left( 1,6\right) ,\left(
3,4\right) ,\left( 3,6\right) ,\left( 5,6\right) \right\}
\end{equation*}となるため、\(R\)の定義域は、\begin{equation*}
D\left( R\right) =\left\{ 1,3,5\right\}
\end{equation*}です。

二項関係も関係であるため、その定義域を考えることができます。具体的には、集合\(A\)上の二項関係\(R\)の定義域は、\begin{eqnarray*}
D\left( R\right) &=&\left\{ x\in A\ |\ \exists y\in A:\left( x,y\right) \in
R\right\} \\
&=&\left\{ x\in A\ |\ \exists y\in A:R\left( x,y\right) \right\}
\end{eqnarray*}と定義されます。

例(二項関係の定義域)
集合\(A=\left\{ 1,2,3,4\right\} \)上の関係\(R\)を、それぞれの\(\left( x,y\right) \in A\times A\)について、\begin{equation*}
R\left( x,y\right) \Leftrightarrow x|y
\end{equation*}を満たすものとして定義します。ただし、\(x|y\)は\(y\)が\(x\)で割り切れることを表す記号です。このとき、\begin{equation*}
R=\left\{ \left( 1,1\right) ,\left( 1,2\right) ,\left( 1,3\right) ,\left(
1,4\right) ,\left( 2,2\right) ,\left( 2,4\right) ,\left( 3,3\right) ,\left(
4,4\right) \right\}
\end{equation*}となるため、\(R\)の定義域は、\begin{equation*}
D\left( R\right) =\left\{ 1,2,3,4\right\}
\end{equation*}です。
例(二項関係の定義域)
集合\(A\)上の恒等関係\(R\)は、それぞれの\(\left( x,y\right) \in A\times A\)について、\begin{equation*}
R\left( x,y\right) \Leftrightarrow x=y
\end{equation*}を満たすものとして定義されます。このとき、\begin{equation*}
\Delta _{R}=\left\{ \left( x,y\right) \in A\times A\ |\ x=y\right\}
\end{equation*}となるため、\(R\)の定義域は、\begin{equation*}
D\left( R\right) =A
\end{equation*}です。つまり、集合\(A\)上の恒等関係\(R\)の定義域は\(A\)と一致します。

 

関係の値域

集合\(A\)から集合\(B\)への関係\(R\)が与えられたとき、\(R\)のもとで何らかの\(A\)の要素と関係を持つ\(B\)の要素からなる集合を、\begin{eqnarray*}
R\left( R\right) &=&\left\{ b\in B\ |\ \exists a\in A:\left( a,b\right) \in
R\right\} \\
&=&\left\{ b\in B\ |\ \exists a\in A:R\left( a,b\right) \right\}
\end{eqnarray*}で表し、これを\(R\)の値域(range)と呼びます。定義より、任意の\(b\in B\)について、\begin{eqnarray*}
b\in R\left( R\right) &\Leftrightarrow &\exists a\in A:\left( a,b\right)
\in R \\
&\Leftrightarrow &\exists a\in A:R\left( a,b\right)
\end{eqnarray*}という関係が成り立ちます。つまり、\(R\)の定義域とは、\(R\)の要素であるそれぞれの順序対の第2成分からなる集合です。

例(関係の値域)
始集合が\(M=\left\{ m_{1},m_{2},m_{3}\right\} \)であり、終集合が\(W=\left\{ w_{1},w_{2},w_{3}\right\} \)である関係\(R\)を、それぞれの\(\left( m,w\right) \in M\times W\)について、\begin{equation*}
R\left( m,w\right) \Leftrightarrow m\text{と}w\text{は夫婦である}
\end{equation*}を満たすものとして定義します。仮に、\(m_{1}\)と\(w_{2}\)、\(m_{2}\)と\(w_{3}\)がそれぞれ夫婦であり、他の全員が独身であるならば、\begin{equation*}
R=\left\{ \left( m_{1},w_{2}\right) ,\left( m_{2},w_{3}\right) \right\}
\end{equation*}となるため、\(R\)の値域は、\begin{equation*}
R\left( R\right) =\left\{ w_{2},w_{3}\right\}
\end{equation*}です。これは結婚している女性からなる集合です。
例(関係の値域)
始集合が\(A=\left\{ 1,3,5\right\} \)であり、終集合が\(B=\left\{ 2,4,6\right\} \)である関係\(R\)を、それぞれの\(\left( a,b\right) \in A\times B\)について、\begin{equation*}
R\left( a,b\right) \Leftrightarrow a<b
\end{equation*}を満たすものとして定義します。このとき、\begin{equation*}
R=\left\{ \left( 1,2\right) ,\left( 1,4\right) ,\left( 1,6\right) ,\left(
3,4\right) ,\left( 3,6\right) ,\left( 5,6\right) \right\}
\end{equation*}となるため、\(R\)の値域は、\begin{equation*}
R\left( R\right) =\left\{ 2,4,6\right\}
\end{equation*}です。

二項関係も関係であるため、その値域を考えることができます。具体的には、集合\(A\)上の二項関係\(R\)の値域は、\begin{eqnarray*}
R\left( R\right) &=&\left\{ y\in A\ |\ \exists x\in A:\left( x,y\right) \in
R\right\} \\
&=&\left\{ y\in A\ |\ \exists x\in A:R\left( x,y\right) \right\}
\end{eqnarray*}と定義されます。

例(二項関係の値域)
集合\(A=\left\{ 1,2,3,4\right\} \)上の関係\(R\)を、それぞれの\(\left( x,y\right) \in A\times A\)について、\begin{equation*}
R\left( x,y\right) \Leftrightarrow x|y
\end{equation*}を満たすものとして定義します。ただし、\(x|y\)は\(y\)が\(x\)で割り切れることを表す記号です。このとき、\begin{equation*}
R=\left\{ \left( 1,1\right) ,\left( 1,2\right) ,\left( 1,3\right) ,\left(
1,4\right) ,\left( 2,2\right) ,\left( 2,4\right) ,\left( 3,3\right) ,\left(
4,4\right) \right\}
\end{equation*}となるため、\(R\)の値域は、\begin{equation*}
R\left( R\right) =\left\{ 1,2,3,4\right\}
\end{equation*}です。
例(二項関係の値域)
集合\(A\)上の恒等関係\(R\)は、それぞれの\(\left( x,y\right) \in A\times A\)について、\begin{equation*}
R\left( x,y\right) \Leftrightarrow x=y
\end{equation*}を満たすものとして定義されます。このとき、\begin{equation*}
\Delta _{R}=\left\{ \left( x,y\right) \in A\times A\ |\ x=y\right\}
\end{equation*}となるため、\(R\)の値域は、\begin{equation*}
R\left( R\right) =A
\end{equation*}です。つまり、集合\(A\)上の恒等関係\(R\)の値域は\(A\)と一致します。

次回は逆関係について解説します。

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