集合を表記する方法は大きく分けて 2 通りあります。1 つ目は、集合に属する個々の要素を具体的に列挙する方法であり、これを外延的表記と呼びます。2 つ目は、集合を定義する命題関数を特定する方法であり、これを内包的表記と呼びます。

2019年1月10日:公開

外延的表記

集合に属する個々の要素を具体的に列挙することにより集合を表現する方法を外延的表記(extensive notation)と呼びます。具体的には、ある条件を満たす対象が\(a,b,c,\cdots \)であるとき、その条件を満たす対象からなる集合\(X\)を外延的表記によって表現すると、\begin{equation*}
X=\{a,b,c,\cdots \}
\end{equation*}となります。つまり、集合に属する要素を\(,\)で区切って並べた上で、それらを\(\{\ \}\)で囲みます。

外延的表記のもとでは、集合に属する要素を並べる順序を変えても集合としては同じです。例えば、\begin{equation*}
\{1,2,3,4\}=\{2,4,1,3\}=\{4,3,2,1\}
\end{equation*}という関係が成立します。

外延的表記のもとでは同じ要素を重複して書くことは禁じられていませんが、同じ対象をいくつ書いてもその効果は 1 つだけ書いたときと同じです。例えば、\begin{equation*}
\{1,1,1,2,2,3,4\}=\{1,2,3,4\}
\end{equation*}という関係が成立します。

 

内包的表記

集合を定義する命題関数を用いて集合を表現する方法を内包的表記(intensive notation)と呼びます。具体的には、変数\(x\in U\)に関する命題関数\(P\left( x\right) \)に関して、命題\(P\left( x\right) \)が真になるような\(U\)の要素\(x\)からなる集合を、\begin{equation}
X=\{x\in U\ |\ P(x)\} \tag{1}
\end{equation}で表します。

集合を規定する命題関数の変数を表す記号として何を採用してもかまいません。例えば、\begin{equation*}
\{x\in U\ |\ P(x)\}=\{y\in U\ |\ P\left( y\right) \}=\{z\in U\ |\ P\left(
z\right) \}
\end{equation*}という関係が成り立ちます。

内包的表記によって変数\(x\in U\)に関する命題関数\(P\left( x\right) \)から集合\(X\)を定義する場合、正確には、\begin{equation*}
X=\{x\in U\ |\ P\left( x\right) \text{は真}\}
\end{equation*}と表記すべきですが、慣習的に\(\left( 1\right) \)の表記を利用します。つまり、\(\left( 1\right) \)における\(P\left( x\right) \)は、\(U\)の要素\(x\)に関する命題\(P\left( x\right) \)が真であることを表す記号として使われています。

変数\(x\in U\)に関する命題関数\(P\left( x\right) \)から集合\(X\)を定義する場合、変数\(x\)の定義域\(U\)が文脈から明らかである場合には、それを省略して、\begin{equation*}
X=\{x\ |\ P(x)\}
\end{equation*}と表すこともできます。

例(集合の表記)
すべての偶数からなる集合\(X\)を外延的表記で表現すると、\begin{equation*}
X=\{2,4,6,\cdots \}
\end{equation*}となりますが、同じ集合\(X\)を内包的表記で表現すると、\begin{equation*}
X=\{x\in \mathbb{Z}
\ |\ x\text{は偶数}\}
\end{equation*}となります。
例(集合の表記)
すべての無理数からなる集合\(X\)を外延的表記で表現すると、\begin{equation*}
X=\{\sqrt{2},\pi ,e,\cdots \}
\end{equation*}となりますが、同じ集合\(X\)を内包的表記で表現すると、\begin{equation*}
X=\{x\in \mathbb{R} \ |\ x\text{は無理数}\}
\end{equation*}となります。

 

外延的表記と内包的表記の比較

外延的表記を使うと集合に属する個々の要素が一目瞭然であることから、外延的表記は内包的表記よりも分かりやすさの面で優れています。その反面、外延的表記では表現が難しい集合を内包的表記はシンプルに表現できるケースがあります。例えば、すべての正三角形からなる集合\(X\)を表現しようとするとき、三角形をすべて列挙するのは不可能です。一方、内包的表記を使えば、例えば、\begin{equation*}
X=\{\Delta ABC\ |\ AB=BC=AC\}
\end{equation*}などと表現できます。

変数\(x\in U\)に関する命題関数\(P\left( x\right) \)から集合\(X\)を定義した場合に、命題\(P(x)\)が真になる要素\(x\)を具体的に特定することが困難である場合には、その集合\(X\)を外延的表記によって表現することは困難です。一方、内包的表記を利用すれば、\begin{equation*}
X=\{x\in U\ |\ P(x)\}
\end{equation*}と容易に表現できます。つまり、内包的表記は外延的表記よりも表現手段として柔軟です。

変数\(x\in U\)に関する命題関数\(P\left( x\right) \)から集合\(X\)を内包的表記によって表現したとき、それぞれの要素\(x\in U\)について、\begin{equation*}
x\in X\text{ }\Leftrightarrow \ P(x)
\end{equation*}という関係が成り立ちます。このような関係を利用すれば、集合に関する議論を命題関数に関する議論に置き換えることができるため、述語論理に関する知識を用いて集合に関する議論を展開できます。つまり、内包的表記は外延的表記よりも議論のツールとしても有用です。

次回は全体集合について学びます。

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