教材一覧
STATIC GAME OF INCOMPLETE INFORMATION

支配純粋戦略均衡

Share on twitter
Twitterで共有
Share on email
メールで共有

支配純粋戦略

問題としている戦略的状況が不完備情報の静学ゲームであり、それがベイジアンゲーム\(G=\left( I,\left\{ A_{i}\right\} _{i\in I},\left\{\Theta _{i}\right\} _{i\in I},\left\{ u_{i}\right\} _{i\in I}\right) \)として表現されているものとします。任意のプレイヤーの行動集合は共有知識であるため、プレイヤー\(i\in I\)は他のプレイヤーたちが選び得る行動の組からなる集合\(A_{-i}\)を把握していますが、ゲームの静学性より、他のプレイヤーたちが実際に選ぶ行動の組\(a_{-i}\in A_{-i}\)を事前に観察することはできません。また、任意のプレイヤーのタイプ集合は共有知識であるため、プレイヤー\(i\)は他のプレイヤーたちのタイプの組からなる集合\(\Theta _{-i}\)を把握していますが、ゲームの不完備性より、他のプレイヤーたちの真のタイプの組\(\theta _{-i}^{\ast }\in \Theta _{-i}\)を事前に観察することはできません。このような状況において、プレイヤー\(i\)は何らかの純粋戦略\(s_{i}:\Theta _{i}\rightarrow A_{i}\)を選択しますが、これは自身のそれぞれのタイプ値\(\theta _{i}\in \Theta _{i}\)に対して、そのときに自分が選択するであろう行動\(s_{i}\left( \theta _{i}\right) \in A_{i}\)を包括的に指定する行動計画に相当します。プレイヤー\(i\)は自身の真のタイプ\(\theta _{i}^{\ast }\)を知っていますが、純粋戦略\(s_{i}\)のもとでは、真のタイプ\(\theta _{i}^{\ast }\)のもとでの行動\(s_{i}\left( \theta_{i}^{\ast }\right) \)を指定するだけでなく、真のタイプとは限らないそれぞれのタイプ\(\theta _{i}\)に対しても、その場合に自分が選ぶであろう行動\(s_{i}\left( \theta _{i}\right) \)をそれぞれ指定する必要があります。

以上を踏まえた上で、プレイヤー\(i\in I\)のある純粋戦略\(s_{i}\in S_{i}\)に注目します。つまり、仮にプレイヤー\(i\)のタイプが\(\theta _{i}\in \Theta _{i}\)である場合、プレイヤー\(i\)は行動\(s_{i}\left( \theta _{i}\right) \in A_{i}\)を選ぶということです。加えて、他のプレイヤーたちのタイプの組が\(\theta _{-i}\in \Theta _{-i}\)であり、他のプレイヤーたちが選ぶ行動の組が\(a_{-i}\in A_{-i}\)であるものと仮定します。以上のタイプの組から構成される状態\(\theta _{I}=\left( \theta _{i},\theta_{-i}\right) \)におけるプレイヤー\(i\)の利得関数は\(u_{i}\left( \cdot ,\theta _{I}\right) \)であるため、以上の想定のもとでプレイヤー\(i\)が得る利得は、\begin{equation*}u_{i}\left( s_{i}\left( \theta _{i}\right) ,a_{-i},\theta _{I}\right)
\end{equation*}であり、プレイヤー\(i\)はこの利得を事前に把握しています。他の任意の\(\theta _{i},\theta _{-i},a_{-i}\)についても同様です。ただ、自分のタイプ\(\theta _{i}\)や他のプレイヤーたちのタイプ\(\theta _{-i}\)、さらには他のプレイヤーたちが選ぶ行動の組\(a_{-i}\)に関わらず、問題としている純粋戦略\(s_{i}\)のもとで上の利得が最大化されることが保証される場合には、すなわち、\begin{equation*}\forall \theta _{i}\in \Theta _{i},\ \forall \theta _{-i}\in \Theta _{-i},\
\forall a_{-i}\in A_{-i},\ \forall a_{i}\in A_{i}:u_{i}\left( s_{i}\left(
\theta _{i}\right) ,a_{-i},\theta _{i},\theta _{-i}\right) \geq u_{i}\left(
a_{i},a_{-i},\theta _{i},\theta _{-i}\right)
\end{equation*}すなわち、\begin{equation*}
\forall \theta _{I}\in \Theta _{I},\ \forall a_{-i}\in A_{-i},\ \forall
a_{i}\in A_{i}:u_{i}\left( s_{i}\left( \theta _{i}\right) ,a_{-i},\theta
_{I}\right) \geq u_{i}\left( a_{i},a_{-i},\theta _{I}\right)
\end{equation*}が成り立つのであれば、\(s_{i}\)をプレイヤー\(i\)の支配純粋戦略(dominant pure strategy)と呼びます。特に、プレイヤー\(i\)の利得関数\(u_{i}\)に関して私的価値の仮定が成り立つ場合には、\(u_{i}\)の形状は他のプレイヤーたちのタイプの組\(\theta _{-i}\)に依存せず、自身のタイプ\(\theta _{i}\)にのみ依存するため、上の条件を、\begin{equation*}\forall \theta _{i}\in \Theta _{i},\ \forall a_{-i}\in A_{-i},\ \forall
a_{i}\in A_{i}:u_{i}\left( s_{i}\left( \theta _{i}\right) ,a_{-i},\theta
_{i}\right) \geq u_{i}\left( a_{i},a_{-i},\theta _{i}\right)
\end{equation*}と言い換えることができます。

支配純粋戦略のもとで最大化されるものは中間期待利得ではなく利得であることから、これはプレイヤーの信念に依存しない概念です。プレイヤー\(i\)が支配純粋戦略\(s_{i}\)を持つ場合には、自分のタイプ\(\theta _{i}\)や他のプレイヤーたちのタイプ\(\theta _{-i}\)がどのようなものであるかに関わらず、また、自分がどのような信念\(f_{i}\)を持っているかに関わらず、さらには他のプレイヤーたちがいかなる行動\(a_{-i}\)を選ぶかに関わらず、自分は\(s_{i}\)にしたがって行動を選択すれば自身の利得を常に最大化できることが保証されています。したがって、プレイヤー\(i\)が支配純粋戦略を持つ場合、プレイヤー\(i\)は他のプレイヤーのタイプや行動を読んだり予想する必要さえありません。

 

支配純粋戦略を探す方法

ベイジアンゲーム\(G\)において、プレイヤー\(i\in I\)の純粋戦略\(s_{i}\in S_{i}\)が支配純粋戦略であるものとします。つまり、\begin{equation*}\forall \theta _{I}\in \Theta _{I},\ \forall a_{-i}\in A_{-i},\ \forall
a_{i}\in A_{i}:u_{i}\left( s_{i}\left( \theta _{i}\right) ,a_{-i},\theta
_{I}\right) \geq u_{i}\left( a_{i},a_{-i},\theta _{I}\right)
\end{equation*}が成り立つということです。ここで、状態\(\theta _{I}\in \Theta _{I}\)を任意に選び、そこでの状態ゲーム\(G\left( \theta _{I}\right) \)を考えると、\begin{equation*}\forall a_{-i}\in A_{-i},\ \forall a_{i}\in A_{i}:u_{i}\left( s_{i}\left(
\theta _{i}\right) ,a_{-i},\theta _{I}\right) \geq u_{i}\left(
a_{i},a_{-i},\theta _{I}\right)
\end{equation*}が成り立ちますが、これは\(s_{i}\left( \theta _{i}\right) \)が\(G\left(\theta _{I}\right) \)における支配純粋戦略であることを意味します。任意の状態\(\theta _{I}\)において同様の議論が成立するため、結局、ベイジアンゲームにおいて\(s_{i}\)が支配純粋戦略であることは、任意の状態ゲーム\(G\left( \theta _{I}\right) \)において\(s_{i}\left( \theta _{i}\right) \)が支配純粋戦略であることを意味します。逆も明らかに成立するため以下の命題を得ます。つまり、不完備情報ゲームにおける支配純粋戦略は、完備情報ゲームにおける支配純粋戦略の拡張であるということです。

命題(支配純粋戦略)
ベイジアンゲーム\(G\)において、プレイヤー\(i\in I\)の純粋戦略\(s_{i}\in S_{i}\)が支配純粋戦略であることは、任意の状態\(\theta _{I}\in \Theta _{I}\)において、\(s_{i}\left( \theta _{i}\right) \in A\)が状態ゲーム\(G\left( \theta _{I}\right) \)における支配純粋戦略であるための必要十分条件である。

以上の命題より、ベイジアンゲーム\(G\)が与えられたとき、それぞれの状態ゲーム\(G\left(\theta _{I}\right) \)における支配純粋戦略に相当する行動\(a_{i}\)を特定した上で、それぞれの\(\theta _{I}\in \Theta _{I}\)に対して\(s_{i}\left( \theta _{I}\right) =a_{i}\)を定める\(s_{i}\)を構成すれば、そのような任意の\(s_{i}\)が\(G\)における支配純粋戦略であることが保証されます。以下が具体例です。

例(支配純粋戦略)
ベイジアンゲーム\(G\)のプレイヤー集合が\(I=\{1,2\}\)、行動集合が\(A_{1}=A_{2}=\{a,b\}\)、タイプ集合が\(\Theta _{1}=\left\{ \theta_{11},\theta _{12}\right\} \)かつ\(\Theta _{2}=\left\{ \theta_{21}\right\} \)であるものとします。この場合、2通りの状態\(\left( \theta _{11},\theta _{21}\right) \)と\(\left( \theta _{12},\theta _{21}\right) \)が存在します。状態ゲーム\(G\left( \theta _{11},\theta _{21}\right) \)は以下の利得行列

\begin{array}{ccc}
\hline
1\diagdown 2 & a & b \\ \hline
a & 2,1 & 2,0 \\ \hline
b & 0,1 & 2,1 \\ \hline
\end{array}

\(G\left( \theta _{11},\theta _{21}\right) \)

として、状態ゲーム\(G\left( \theta _{12},\theta _{21}\right) \)は以下の利得行列

\begin{array}{ccc}
\hline
1\diagdown 2 & a & b \\ \hline
a & 2,0 & 2,1 \\ \hline
b & 0,0 & 2,1 \\ \hline
\end{array}

\(G\left( \theta _{12},\theta _{21}\right) \)

としてそれぞれ与えられているものとします。プレイヤー\(1\)は支配純粋戦略を持つでしょうか。状態ゲーム\(G\left( \theta _{11},\theta _{21}\right) \)において、プレイヤー\(1\)は支配純粋戦略\(a\)を持ちます。もう一方の状態ゲーム\(G\left( \theta _{12},\theta _{21}\right) \)においても、プレイヤー\(1\)は支配純粋戦略\(a\)を持ちます。したがって、\begin{equation*}s_{1}=\left( s_{1}\left( \theta _{11}\right) ,s_{1}\left( \theta
_{12}\right) \right) =\left( a,a\right)
\end{equation*}を満たす純粋戦略\(s_{1}\)はもとのベイジアンゲーム\(G\)においてプレイヤー\(1\)の支配純粋戦略です。

先の命題は、ベイジアンゲームにおいて支配純粋戦略が存在しないことを示す上でも有用です。例えば、与えられたベイジアンゲーム\(G\)の何らかの状態ゲーム\(G\left( \theta_{I}\right) \)においてプレイヤー\(i\)が支配純粋戦略を持たない場合、プレイヤー\(i\)はもとのベイジアンゲーム\(G\)において支配純粋戦略を持ちません。以下が具体例です。

例(支配純粋戦略)
ベイジアンゲーム\(G\)のプレイヤー集合が\(I=\{1,2\}\)、行動集合が\(A_{1}=A_{2}=\{a,b\}\)、タイプ集合が\(\Theta _{1}=\left\{ \theta_{11},\theta _{12}\right\} \)かつ\(\Theta _{2}=\left\{ \theta_{21}\right\} \)であるものとします。この場合、2通りの状態\(\left( \theta _{11},\theta _{21}\right) \)と\(\left( \theta _{12},\theta _{21}\right) \)が存在します。状態ゲーム\(G\left( \theta _{11},\theta _{21}\right) \)は以下の利得行列

\begin{array}{ccc}
\hline
1\diagdown 2 & a & b \\ \hline
a & 2,1 & 1,0 \\ \hline
b & 0,1 & 1,1 \\ \hline
\end{array}

\(G\left( \theta _{11},\theta _{21}\right) \)

として、状態ゲーム\(G\left( \theta _{12},\theta _{21}\right) \)は以下の利得行列

\begin{array}{ccc}
\hline
1\diagdown 2 & a & b \\ \hline
a & 2,0 & 2,1 \\ \hline
b & 0,0 & 2,1 \\ \hline
\end{array}

\(G\left( \theta _{12},\theta _{21}\right) \)

としてそれぞれ与えられているものとします。プレイヤー\(1\)は支配純粋戦略を持つでしょうか。状態ゲーム\(G\left( \theta _{11},\theta _{21}\right) \)において、プレイヤー\(1\)は支配純粋戦略を持たないため、もとのベイジアンゲーム\(G\)においてもプレイヤー\(1\)は支配純粋戦略を持ちません。

また、与えられたベイジアンゲーム\(G\)の異なる2つの状態ゲーム\(G\left( \theta _{I}\right) ,G\left( \theta _{I}^{\prime }\right) \)においてプレイヤー\(i\)がそれぞれ支配純粋戦略を持つ場合でも、ベイジアンゲーム\(G\)においてそれらを選択できるような純粋戦略が存在しない場合、プレイヤー\(i\)はもとのベイジアンゲーム\(G\)において支配純粋戦略を持ちません。以下が具体例です。

例(支配純粋戦略)
ベイジアンゲーム\(G\)のプレイヤー集合が\(I=\{1,2\}\)、行動集合が\(A_{1}=A_{2}=\{a,b\}\)、タイプ集合が\(\Theta _{1}=\left\{ \theta_{11},\theta _{12}\right\} \)かつ\(\Theta _{2}=\left\{ \theta_{21}\right\} \)であるものとします。この場合、2通りの状態\(\left( \theta _{11},\theta _{21}\right) \)と\(\left( \theta _{12},\theta _{21}\right) \)が存在します。状態ゲーム\(G\left( \theta _{11},\theta _{21}\right) \)は以下の利得行列

\begin{array}{ccc}
\hline
1\diagdown 2 & a & b \\ \hline
a & 2,1 & 2,0 \\ \hline
b & 0,1 & 2,1 \\ \hline
\end{array}

\(G\left( \theta _{11},\theta _{21}\right) \)

として、状態ゲーム\(G\left( \theta _{12},\theta _{21}\right) \)は以下の利得行列

\begin{array}{ccc}
\hline
1\diagdown 2 & a & b \\ \hline
a & 2,0 & 2,1 \\ \hline
b & 0,0 & 2,1 \\ \hline
\end{array}

\(G\left( \theta _{12},\theta _{21}\right) \)

としてそれぞれ与えられているものとします。プレイヤー\(2\)は支配純粋戦略を持つでしょうか。状態ゲーム\(G\left( \theta _{11},\theta _{21}\right) \)において、プレイヤー\(2\)は支配純粋戦略\(a\)を持ちます。もう一方の状態ゲーム\(G\left( \theta _{12},\theta _{21}\right) \)において、プレイヤー\(2\)は支配純粋戦略\(b\)を持ちます。しかし、そもそもプレイヤー\(2\)はプレイヤー\(1\)のタイプを観察できず、その任意の純粋戦略\(s_{2}\)のもとでは2つの状態ゲームに対して同一の行動を指定せざるを得ないため、任意の状態ゲームに対してそこでの支配純粋戦略を指定するような純粋戦略は存在しません。つまり、プレイヤー\(2\)は支配純粋戦略を持ちません。

 

支配純粋戦略均衡

繰り返しになりますが、ベイジアンゲーム\(G\)においてプレイヤー\(i\in I\)の純粋戦略\(s_{i}^{\ast }\in S_{i}\)支配純粋戦略であることとは、\begin{equation*}\forall \theta _{I}\in \Theta _{I},\ \forall a_{-i}\in A_{-i},\ \forall
a_{i}\in A_{i}:u_{i}\left( s_{i}^{\ast }\left( \theta _{i}\right)
,a_{-i},\theta _{I}\right) \geq u_{i}\left( a_{i},a_{-i},\theta _{I}\right)
\end{equation*}が成り立つことを意味します。さて、プレイヤーたちの純粋戦略の組\(s_{I}^{\ast }\in S_{I}\)において、任意のプレイヤー\(i\)の純粋戦略\(s_{i}^{\ast }\)が支配純粋戦略になっているならば、すなわち、\begin{equation*}\forall i\in I,\ \forall \theta _{I}\in \Theta _{I},\ \forall a_{-i}\in
A_{-i},\ \forall a_{i}\in A_{i}:u_{i}\left( s_{i}^{\ast }\left( \theta
_{i}\right) ,a_{-i},\theta _{I}\right) \geq u_{i}\left( a_{i},a_{-i},\theta
_{I}\right)
\end{equation*}が成り立つならば、\(s_{I}^{\ast }\)を\(G\)の支配純粋戦略均衡(dominant pure strategy equilibrium)と呼びます。特に、任意のプレイヤーの利得関数に関して私的価値の仮定が成り立つ場合には、上の条件を、\begin{equation*}\forall i\in I,\ \forall \theta _{I}\in \Theta _{I},\ \forall a_{-i}\in
A_{-i},\ \forall a_{i}\in A_{i}:u_{i}\left( s_{i}^{\ast }\left( \theta
_{i}\right) ,a_{-i},\theta _{i}\right) \geq u_{i}\left( a_{i},a_{-i},\theta
_{i}\right)
\end{equation*}と言い換えることができます。

支配純粋戦略均衡\(s_{I}^{\ast}\)が存在する場合には、任意のプレイヤー\(i\)について、自分のタイプ\(\theta _{i}\)や他のプレイヤーたちのタイプ\(\theta _{-i}\)がどのようなものであるかに関わらず、また、自分がどのような信念\(f_{i}\)を持っているかに関わらず、さらに、他のプレイヤーたちがいかなる行動\(a_{-i}\)を選ぶかに関わらず、プレイヤー\(i\)は均衡戦略\(s_{i}^{\ast }\)にしたがって行動を選択すれば自身の利得を常に最大化できます。つまり、支配純粋戦略均衡\(s_{I}^{\ast }\)が存在する場合には、プレイヤーたちはタイプや信念、さらには行動を読み合う必要がないため、理論が予測する均衡\(s_{I}^{\ast }\)が高い精度で実現します。

ベイジアンゲーム\(G\)において、プレイヤーたちの純粋戦略の組\(s_{I}^{\ast }\in S_{I}\)が支配純粋戦略均衡であるものとします。つまり、\begin{equation*}\forall i\in I,\ \forall \theta _{I}\in \Theta _{I},\ \forall a_{-i}\in
A_{-i},\ \forall a_{i}\in A_{i}:u_{i}\left( s_{i}^{\ast }\left( \theta
_{i}\right) ,a_{-i},\theta _{I}\right) \geq u_{i}\left( a_{i},a_{-i},\theta
_{I}\right)
\end{equation*}が成り立つということです。ここで、状態\(\theta _{I}\in \Theta _{I}\)を任意に選び、そこでの状態ゲーム\(G\left( \theta _{I}\right) \)を考えると、\begin{equation*}\forall i\in I,\ \forall a_{-i}\in A_{-i},\ \forall a_{i}\in
A_{i}:u_{i}\left( s_{i}^{\ast }\left( \theta _{i}\right) ,a_{-i},\theta
_{I}\right) \geq u_{i}\left( a_{i},a_{-i},\theta _{I}\right)
\end{equation*}が成り立ちますが、これは\(s_{I}^{\ast }\left( \theta _{I}\right) =\left(s_{i}^{\ast }\left( \theta _{i}\right) \right) _{i\in I}\)が\(G\left(\theta _{I}\right) \)における支配純粋戦略均衡であることを意味します。任意の状態\(\theta _{I}\)において同様の議論が成立するため、結局、ベイジアンゲームにおいて\(s_{I}^{\ast }\)が支配純粋戦略均衡であることは、任意の状態ゲーム\(G\left( \theta _{I}\right) \)において\(s_{I}^{\ast}\left( \theta _{I}\right) \)が支配純粋戦略均衡であることを意味します。逆も明らかに成立するため以下の命題を得ます。つまり、不完備情報ゲームにおける支配純粋戦略均衡は、完備情報ゲームにおける支配純粋戦略均衡の拡張であるということです。

命題(支配純粋戦略均衡)
ベイジアンゲーム\(G\)において、プレイヤーたちの純粋戦略の組\(s_{I}^{\ast }\in S_{I}\)が支配純粋戦略均衡であることは、任意の状態\(\theta _{I}\in \Theta _{I}\)において、\(s_{I}^{\ast }\left( \theta_{I}\right) \in A_{I}\)が状態ゲーム\(G\left( \theta _{I}\right) \)における支配純粋戦略均衡であるための必要十分条件である。
例(支配純粋戦略均衡)
ベイジアンゲーム\(G\)のプレイヤー集合が\(I=\{1,2\}\)、行動集合が\(A_{1}=A_{2}=\{a,b\}\)、タイプ集合が\(\Theta _{1}=\left\{ \theta_{11},\theta _{12}\right\} \)かつ\(\Theta _{2}=\left\{ \theta_{21}\right\} \)であるものとします。この場合、2通りの状態\(\left( \theta _{11},\theta _{21}\right) \)と\(\left( \theta _{12},\theta _{21}\right) \)が存在します。状態ゲーム\(G\left( \theta _{11},\theta _{21}\right) \)は以下の利得行列

\begin{array}{ccc}
\hline
1\diagdown 2 & a & b \\ \hline
a & 2,0 & 2,1 \\ \hline
b & 0,1 & 2,1 \\ \hline
\end{array}

\(G\left( \theta _{11},\theta _{21}\right) \)

として、状態ゲーム\(G\left( \theta _{12},\theta _{21}\right) \)は以下の利得行列

\begin{array}{ccc}
\hline
1\diagdown 2 & a & b \\ \hline
a & 2,0 & 2,1 \\ \hline
b & 0,0 & 2,2 \\ \hline
\end{array}

\(G\left( \theta _{12},\theta _{21}\right) \)

としてそれぞれ与えられているものとします。このゲーム\(G\)に支配純粋戦略均衡は存在するでしょうか。プレイヤー\(1\)は状態ゲーム\(G\left( \theta _{11},\theta _{21}\right) \)において支配純粋戦略\(a\)を持ち、状態ゲーム\(G\left( \theta _{12},\theta _{21}\right) \)において支配純粋戦略\(a\)を持ちます。したがって、\begin{equation*}s_{1}=\left( s_{1}\left( \theta _{11}\right) ,s_{1}\left( \theta
_{12}\right) \right) =\left( a,a\right)
\end{equation*}を満たす純粋戦略\(s_{1}\)はもとのベイジアンゲーム\(G\)においてプレイヤー\(1\)の支配純粋戦略です。プレイヤー\(2\)は状態ゲーム\(G\left( \theta _{11},\theta_{21}\right) \)において支配純粋戦略\(b\)を持ち、状態ゲーム\(G\left( \theta _{12},\theta _{21}\right) \)において支配純粋戦略\(b\)を持ちます。したがって、\begin{equation*}s_{2}=\left( s_{2}\left( \theta _{21}\right) \right) =\left( b\right)
\end{equation*}を満たす純粋戦略\(s_{2}\)はもとのベイジアンゲーム\(G\)においてプレイヤー\(2\)の支配純粋戦略です。したがって、以上の純粋戦略の組\(\left( s_{1},s_{2}\right) \)は\(G\)の支配純粋戦略です。

先に例を通じて確認したように、ベイジアンゲームにおいてそれぞれのプレイヤーは支配純粋戦略を持つとは限りません。したがって、ベイジアンゲームには支配純粋戦略均衡は存在するとは限らないということになります。

 

演習問題

問題(支配戦略均衡)
ベイジアンゲーム\(G\)のプレイヤー集合が\(I=\{1,2\}\)、行動集合が\(A_{1}=A_{2}=\{a,b\}\)、タイプ集合が\(\Theta _{1}=\left\{ \theta_{11},\theta _{12}\right\} \)かつ\(\Theta _{2}=\left\{ \theta_{21},\theta _{22}\right\} \)であるものとします。この場合、4通りの状態が存在します。状態ゲーム\(G\left(\theta _{11},\theta _{21}\right) \)は以下の利得行列

\begin{array}{ccc}
\hline
1\diagdown 2 & a & b \\ \hline
a & 2,2 & 2,0 \\ \hline
b & 0,1 & 2,1 \\ \hline
\end{array}

\(G\left( \theta _{11},\theta _{21}\right) \)

として、状態ゲーム\(G\left( \theta _{11},\theta _{22}\right) \)は以下の利得行列

\begin{array}{ccc}
\hline
1\diagdown 2 & a & b \\ \hline
a & 2,0 & 2,1 \\ \hline
b & 0,0 & 2,1 \\ \hline
\end{array}

\(G\left( \theta _{11},\theta _{22}\right) \)

として、状態ゲーム\(G\left( \theta _{12},\theta _{21}\right) \)は以下の利得行列

\begin{array}{ccc}
\hline
1\diagdown 2 & a & b \\ \hline
a & 3,1 & 2,0 \\ \hline
b & 5,1 & 4,1 \\ \hline
\end{array}

\(G\left( \theta _{12},\theta _{21}\right) \)

として、状態ゲーム\(G\left( \theta _{12},\theta _{22}\right) \)は以下の利得行列

\begin{array}{ccc}
\hline
1\diagdown 2 & a & b \\ \hline
a & 3,0 & 2,1 \\ \hline
b & 5,0 & 4,1 \\ \hline
\end{array}

\(G\left( \theta _{12},\theta _{22}\right) \)

としてそれぞれ与えられているものとします。このベイジアンゲーム\(G\)には支配純粋戦略均衡は存在するでしょうか。理由とともに答えてください。

解答を見る

プレミアム会員専用コンテンツです
ログイン】【会員登録

問題(支配戦略均衡)
ベイジアンゲーム\(G\)のプレイヤー集合が\(I=\{1,2\}\)、行動集合が\(A_{1}=A_{2}=\{a,b\}\)、タイプ集合が\(\Theta _{1}=\left\{ \theta_{11},\theta _{12}\right\} \)かつ\(\Theta _{2}=\left\{ \theta_{21},\theta _{22}\right\} \)であるものとします。この場合、4通りの状態が存在します。状態ゲーム\(G\left(\theta _{11},\theta _{21}\right) \)は以下の利得行列

\begin{array}{ccc}
\hline
1\diagdown 2 & a & b \\ \hline
a & 2,2 & 0,0 \\ \hline
b & 3,0 & 1,1 \\ \hline
\end{array}

\(G\left( \theta _{11},\theta _{21}\right) \)

として、状態ゲーム\(G\left( \theta _{11},\theta _{22}\right) \)は以下の利得行列

\begin{array}{ccc}
\hline
1\diagdown 2 & a & b \\ \hline
a & 2,1 & 0,0 \\ \hline
b & 3,0 & 1,2 \\ \hline
\end{array}

\(G\left( \theta _{11},\theta _{22}\right) \)

として、状態ゲーム\(G\left( \theta _{12},\theta _{21}\right) \)は以下の利得行列

\begin{array}{ccc}
\hline
1\diagdown 2 & a & b \\ \hline
a & 1,2 & 3,0 \\ \hline
b & 0,0 & 2,1 \\ \hline
\end{array}

\(G\left( \theta _{12},\theta _{21}\right) \)

として、状態ゲーム\(G\left( \theta _{12},\theta _{22}\right) \)は以下の利得行列

\begin{array}{ccc}
\hline
1\diagdown 2 & a & b \\ \hline
a & 1,1 & 3,0 \\ \hline
b & 0,0 & 2,2 \\ \hline
\end{array}

\(G\left( \theta _{12},\theta _{22}\right) \)

としてそれぞれ与えられているものとします。このベイジアンゲーム\(G\)には支配純粋戦略均衡は存在するでしょうか。理由とともに答えてください。

解答を見る

プレミアム会員専用コンテンツです
ログイン】【会員登録

次回は事後均衡と呼ばれる均衡概念について解説します。

質問・コメント(プレミアム会員限定) 次へ進む
Share on twitter
Twitterで共有
Share on email
メールで共有
RELATED KNOWLEDGE

関連知識

DISCUSSION

質問とコメント

プレミアム会員専用コンテンツです
ログイン】【会員登録