集合の濃度
2つの集合の間に全単射が存在する場合には、それらの集合の濃度は等しいと言います。集合の濃度が等しいことを二項関係と解釈したとき、これは反射律・対称律・推移律を満たす同値関係です。
集合の濃度と呼ばれる概念を定義した上で、それをもとに集合を有限集合と無限集合の2種類に分類します。
2つの集合の間に全単射が存在する場合には、それらの集合の濃度は等しいと言います。集合の濃度が等しいことを二項関係と解釈したとき、これは反射律・対称律・推移律を満たす同値関係です。
集合Aから集合Bへの単射が存在する場合、Aの濃度はBの濃度以下であると言います。濃度の大小関係を二項関係とみなしたとき、これは反射律・反対称律・推移律・完備律を満たす全順序関係です。
集合Aの濃度が集合Bの濃度以下であるともに両者の濃度が等しくない場合、Aの濃度はBの濃度よりも小さいと言います。濃度の狭義大小関係を二項関係とみなしたとき、これは非対称律、推移律および三分律を満たす狭義全順序関係です。
有限個の要素を持つ集合を有限集合と呼びます。
有限個の要素を持つ集合を有限集合と呼びます。有限集合の濃度を有限濃度と呼びます。有限集合どうしの濃度が等しいことと、それらの集合に含まれる要素の個数が等しいことは必要十分です。
有限集合Aの部分集合Bもまた有限集合であるとともに、Bの濃度はAの濃度以下です。また、有限集合Aの真部分集合Bもまた有限集合であるとともに、Bの濃度はAの濃度よりも小さいです。
有限個の有限集合の和集合もまた有限集合であることを示すとともに、その濃度を具体的に求める方法(包除原理)について解説します。
有限個の有限集合の直積集合もまた有限集合であることを示すとともに、その濃度を具体的に求める方法について解説します。
集合A,Bがともに有限集合であるとともにAの濃度がBの濃度よりも大きい場合にはAからBへの単射は存在しません。これを鳩の巣原理やディリクレの箱入れ原理などと呼びます。
自然数集合と等しい濃度を持つ集合を可算集合と呼びます。
有限集合ではない集合、つまり無限個の要素を持つ集合を無限集合と呼びます。無限集合のすべての要素を数え上げることはできないため、無限集合の濃度を 1 つの自然数として表すことはできません。ただ、2 つの無限集合が与えられたとき、それらが等しい濃度を持つかどうかを調べることはできます。
すべての自然数からなる集合と等しい濃度を持つ集合を可算集合や可付番集合と呼びます。可算集合には無限個の要素が含まれるため、すべての要素を数え尽くすことはできませんが、要素を1番目から順番に数えることはできます。
有限濃度よりも大きく可算濃度よりも小さい無限濃度は存在しません。つまり、可算濃度は最小の無限濃度です。そこで、有限集合と可算集合を総称して高々可算集合と呼びます。
有限集合とその真部分集合の濃度は一致しない一方で、可算集合とその無限真部分集合の濃度は一致することが保証されます。
2つの可算集合の和集合、有限個の可算集合の和集合、可算個の可算集合の和集合はいずれも可算集合になります。
有限個の可算集合の直積は可算集合です。
可算集合とは異なる無限集合を非可算集合と呼びます。その中でも、実数集合と等しい濃度を持つ集合を連続体と呼びます。
可算集合は無限集合の中でも最小の濃度を持つ集合です。では、可算集合よりも大きい濃度を持つ無限集合は存在するのでしょうか。可算集合ではない無限集合を非可算集合と呼びます。非可算集合は存在することを対角線論法により証明します。
実数空間と等しい濃度を持つ無限集合を連続体と呼びます。連続体濃度は可算濃度よりも大きい濃度です。実数空間上の任意の区間は連続体です。
任意の集合に対して、それよりも大きい濃度を持つ集合が必ず存在します。これをカントールの定理と呼びます。したがって、可算集合や連続体とは異なる無限集合が存在します。
可算濃度より大きく連続体濃度よりも小さい濃度を持つ無限集合は存在しないという主張を連続体仮説と呼びます。
集合の濃度を対象とする演算について解説します。
数え上げに関する和の法則を拡張する形で、集合の濃度を対象とした加法(濃度の和)を定義します。
数え上げに関する積の法則を拡張する形で、集合の濃度を対象とした乗法(濃度の積)を定義します。
自然数どうしの累乗を拡張する形で、集合の濃度を対象としたべき乗を定義します。
本節を学ぶ上で以下の知識が役に立ちます。
本節で得た知識は以下の分野を学ぶ上での基礎になります。
実数を無限小数として定義する場合、実数に関する議論はすべて無限小数に関する議論として行うことになり面倒です。そこで代替的な方法として公理主義的なアプローチのもとで実数を定義します。ここでは実数を特徴づける公理について解説します。
長さや面積、体積などはいずれも同一種類の小さい量を加え合わせることでより大きな量をつくることができるという意味において外延的な量です。一般に、外延量は測度と呼ばれる概念として一般化されます。ここでは実数空間(数直線)の部分集合を測定対象とするルベーグ測度について解説します。
公理主義的な確率論について解説します。具体的には、確率空間や確率関数などの概念を定義した上で、確率空間の公理をもとに、確率空間が満たす基本的な性質を証明します。