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PROBABILITY

確率

OVERVIEW

確率

公理主義的な確率論について解説します。確率空間の概念を定義した上で、確率空間の公理をもとに、確率空間が満たす基本的な性質を証明します。

TABLE OF CONTENTS

目次

EVENT

確率の場

確率の定義について述べる前に、まずは確率の測定対象となる現象を定式化します。

標本空間と事象

起こり得るすべての結果は分かっていても、その中のどの結果が実際に起こるかはランダムネスによって支配されている実験や観察を試行と呼びます。試行によって起こり得る個々の結果を標本点と呼び、すべての標本点からなる集合を標本集合と呼びます。試行によって起こり得る現象は標本空間の部分集合として定式化され、それを事象と呼びます。

部分事象

ある事象 A が別の事象 B の部分集合であるとき、A は B の部分事象であるといいます。A が B の部分事象であることは、試行のもとで A が起こる場合には B も必ず起こることを意味します。

等しい事象

事象 A に属する標本点と事象 B に属する標本点が完全に一致するとき、A と B は等しいと言います。これは、A が B の部分事象であるとともに、B が A の部分事象であることを意味します。

全事象

標本空間はそれ自身の部分集合であることから、これもまた事象です。標本空間を事象とみなしたとき、それを全事象と呼びます。全事象は試行によって必ず起こる現象に相当する事象です。

空事象

空集合は任意の集合の部分集合であることから、標本空間の部分集合でもあり、したがって事象です。空集合を事象とみなしたとき、それを空事象と呼びます。空事象は試行によって決して起こらない現象に相当する事象です。

SET OPERATIONS

事象演算

事象は標本空間の部分集合として定義されるため、事象を対象とする集合演算を行うことができます。

余事象

事象 A の補集合として定義される事象を A の余事象と呼びます。これは「事象 A が起こらない」という現象に相当する事象です。

積事象(排反事象)

事象 A と事象 B の共通部分として定義される事象を A と B の積事象と呼びます。これは「A と B の双方が起こる」という現象に相当する事象です。また、A と B の積事象が空事象であるとき、A と B はお互いに排反事象であると言います。

和事象

事象 A と事象 B の和集合として定義される事象を A と B の和事象と呼びます。これは「A と B の少なくとも一方が起こる」という現象に相当する事象です。

差事象

事象 A と事象 B の差集合として定義される事象を A と B の差事象と呼びます。これは「A は起こるが B は起こらない」という現象に相当する事象です。

対称差事象

事象 A と事象 B の対称差として定義される事象を A と B の対称差事象と呼びます。これは「A と B の少なくとも一方が起こるが両者が同時には起こらない」という現象に相当する事象です。

PROBABILITY

確率の解釈

確率をどのように定義すべきか、基本的な考え方をいくつか紹介します。

先験的確率(ラプラスの確率)

試行に関する標本空間に含まれる標本点はいずれも同じ程度の確かさで起こるという仮定のもと、問題としている事象に含まれる標本点の個数と、標本空間に含まれる標本点の個数の比として事象の確率を定める立場を経験的確率やラプラスの確率と呼びます。

数え上げに関する和の法則

何かを1つ選択する場合の選び方の数を求める際には、すべての選択肢を互いに交わらない複数のグループに分類した上で、それぞれのグループに含まれる選択肢の数を数え、それらの和をとります。これを和の法則と呼びます。

数え上げに関する積の法則

複数の選択肢のグループから1つずつ選択する場合の選び方の数を求めるためには、それぞれのグループに含まれる選択肢の数を数え、それらの積をとります。これを積の法則と呼びます。

順列とその個数

有限n個の要素を持つ集合から1つずつ順番に、合計k個の要素を重複しない形で選んだ上で、このk個の要素を選んだ順番に並べることで得られる要素の列を順列と呼びます。

組合せとその個数

有限n個の要素を持つ集合からk個の要素を選べば、このk個の要素からなるもとの集合の部分集合が得られますが、これを組合せと呼びます。

経験的確率

同一条件のもとで何回でも繰り返すことができ、なおかつ、各回においてどの標本点が起こるかが互いに干渉しないような試行を実際に繰り返したときに、事象と整合的な標本点が出た回数と試行回数の比が一定の値に収束するならば、その極限を事象の確率と定める立場を経験的確率と呼びます。

公理主義的確率

確率の概念を解釈する先験的確率や経験的確率などの他にも存在しますが、いずれも一長一短であり、結局のところ、確率とは何かという議論の最終的な結論は見えそうにありません。そこでコルモゴロフは、確率の概念を具体的に解釈するのではなく、最初にいくつかの公理を設定して、それらを満たす対象を確率とみなす公理主義的立場を採用しました。

PROBABILITY SPACE

確率空間の定義

公理主義的確率論の立場から確率の概念を定式化します。

有限型確率空間

標本空間が有限集合であるとき、その任意の部分集合を事象として考察対象に含めることができます。その上で、標本空間のベキ集合上に集合関数を定義した上で、それが確率論の公理と呼ばれる性質を満たすものと定めます。こうして得られる概念を有限確率空間と呼びます。

可算型確率空間

標本空間が可算集合であるとき、その任意の部分集合を事象として考察対象に含めることができます。その上で、標本空間のベキ集合上に集合関数を定義した上で、それが確率論の公理と呼ばれる性質を満たすものと定めます。こうして得られる概念を可算確率空間と呼びます。

確率空間の定義と具体例

標本空間が非可算集合であるとき、その任意の部分集合を事象として考察対象に含めると問題が生じます。そこで、σ-代数と呼ばれる集合系を事象空間として採用し、その上に確率論の公理を満たす集合関数を定義します。

空事象の確率

空事象は可測であり、その確率はゼロです。これらのことを確率論の公理から示します。

和事象の確率

和事象は可測です。排反事象の和事象の確率を知る上で確率関数の加法性が役に立ち、排反であるとは限らない事象の和事象に関しては劣加法性や加法定理が役に立ちます。

余事象の確率

確率論の公理より、任意の事象の余事象は可測です。さらに、事象 A の余事象の確率は、全事象の確率に相当する 1 から事象 A の確率を引くことで得られます。これを確率論の公理から示します。

積事象の確率

積事象は可測です。2つの事象の確率とそれらの和事象の確率が分かっている場合、積事象の確率は加法定理から導くことができます。和事象の確率が不明である場合、ボンフェローニの不等式を利用すれば積事象の確率の範囲を絞ることができます。

差事象の確率

差事象は可測です。事象 A,B の差事象の確率は、事象 A の確率から積事象の確率を引くことにより得られます。

対称差事象の確率

対称差事象は可測です。対称差事象の確率は、それぞれの事象の確率の和から、積事象の確率の2倍を引くことにより得られます。

事象の単調列と確率測度の連続性

可算個の事象からなる事象列が単調増加列もしくは単調減少列である場合には、その和事象や積事象の確率に関して、連続性と呼ばれる性質が成り立ちます。

零事象・ほとんど確実な事象

可測事象の確率が0である場合、そのような事象を零事象と呼びます。また、可測事象の確率が1である場合、そのような事象をほぼ確実な事象と呼びます。

CONDITIOINAL PROBABILITY

条件付き確率

事象の確率を評価する際に、別の事象が起こっていることが判明している場合には、条件付き確率と呼ばれる概念のもとで確率を評価します。

条件付き確率の定義と具体例

試行によって事象 A が起きているか否かは観察できないものの、何らかの事情により、別の事象 B が起きているか否かは観察可能である場合(もしくは、事象 B が起きているものと仮定する場合)には、事象 A が起こる確率を条件付き確率という概念のもとで評価することができます。

全確率の定理

ある事象の確率を直接求めることが困難である場合、起こり得るすべての状況が排反事象に分割可能であれば、問題としている事象を分割することにより、その確率を容易に求めることができます。

ベイズの定理

「事象Aが起きたという前提のもと、その後に事象Bが起こる確率」が判明している場合には、ベイズの定理を利用することにより、「事象Bが起きたことが観察された場合、それ以前に、前提として事象Aが起こっていた確率」を特定できます。

INDEPENDENCE OF EVENTS

事象の独立性

事象が独立であることの意味を定義します。

2つの事象の独立性

事象Bが起こるかどうかが事象Aが起こる確率に影響を与えない場合、これらの事象は独立であると言います。これは、2つの事象の積事象の確率が個々の事象の確率の積と一致することとして定式化されます。

INDEPENDENCE OF FAMILY OF EVENTS

事象族の独立性

事象族が独立であることの意味を定義します。

ディンキン族定理(π-λ定理)

乗法族(π-族)とディンキン族(λ-族)および完全加法族(σ-代数)などの概念を定義するとともに、これらの概念の間に成立する関係について解説します。

有限個の事象族の独立性(有限個の事象族が生成するσ-代数どうしの独立性)

有限個の事象族から選ばれた事象どうしが独立になることが保証される場合、それらの事象族は独立であると言います。有限個の事象族が独立であり、各々が積事象について閉じているとともに全体事象を要素として持つ場合、それらから生成されるσ-代数もまた独立になることが保証されます。

コルモゴロフの0-1の法則(事象族の末尾事象の確率)

可算事象族の要素である無限個の事象の影響を受ける一方で、有限個の事象の影響を受けない事象を末尾事象と呼びます。可算事象族が独立である場合、その任意の末尾事象の確率は0または1のどちらか一方に定まります。これをコルモゴロフの0-1の法則と呼びます。

SPECIAL FUNCTION

特別な関数

確率や統計で頻繁に用いられる特別な関数について解説します。

ガンマ関数の定義と性質

ガンマ関数と呼ばれる関数を定義するとともに、その基本的な性質について解説します。ガンマ関数は階乗関数の一般化です。

RELATED KNOWLEDGE

関連知識

REQUIRED KNOWLEDGE

前提知識

本節を学ぶ上で以下の知識が役に立ちます。

ADVANCED KNOWLEDGE

発展知識

本節で得た知識は以下の分野を学ぶ上での基礎になります。

述語論理

命題論理の基本単位が命題変数であったのに対し、述語論理では命題関数と呼ばれる概念が基本単位となります。それにより扱うことのできる言明の範囲が広がるとともに、量化と呼ばれる操作が可能になります。

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