事象 A,B の差事象 A\B の確率は、事象 A の確率から積事象 A∩B の確率を引くことにより得られます。

減法性

差事象は可測

確率空間\((\Omega ,\mathcal{F},P)\)が与えられたとき、事象\(A,B\in \mathcal{F}\)を任意にとると、公理\(\left( M_{2}\right) \)より\(A^{c}\in \mathcal{F}\)かつ\(B^{c}\in \mathcal{F}\)が成り立ちます。可算個の事象\(A^{c},B^{c},\phi ,\phi ,\cdots \in \mathcal{F}\)について、公理\(\left( M_{3}\right) \)より、\begin{eqnarray*}
A^{c}\cup B^{c} &=&A^{c}\cup B^{c}\cup \left( \bigcup\limits_{i=3}^{\infty
}\phi \right) \\
&\in &\mathcal{F\quad \because }\left( M_{3}\right)
\end{eqnarray*}が成り立ちます。すると公理\(\left( M_{2}\right) \)より\(\left( A^{c}\cup B^{c}\right) ^{c}\in \mathcal{F}\)が成り立ちますが、ド・モルガンの法則より、\begin{eqnarray*}
\left( A^{c}\cup B^{c}\right) ^{c} &=&\left( A^{c}\right) ^{c}\cap \left(
B^{c}\right) ^{c} \\
&=&A\cap B
\end{eqnarray*}となるため\(A\cap B\in \mathcal{F}\)であることが示されました。つまり、\(\mathcal{F}\)は積事象\(\cap \)について閉じています。

命題(積事象は可測)
確率空間\((\Omega ,\mathcal{F},P)\)において、事象\(A,B\in \mathcal{F}\)を任意にとると、\begin{equation*}
A\cap B\in \mathcal{F}
\end{equation*}が成り立つ。
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再び事象\(A,B\in \mathcal{F}\)を任意にとり、その差集合\(A\backslash B=A\cap B^{c}\)をとります。公理\(\left( M_{2}\right) \)より\(B^{c}\in \mathcal{F}\)です。\(A,B^{c}\in \mathcal{F}\)ですが、先に示したように\(\mathcal{F}\)は\(\cap \)について閉じているため、\(A\cap B^{c}\in \mathcal{F}\)すなわち\(A\backslash B\in \mathcal{F}\)が成り立ちます。

命題(差事象は可測)
確率空間\((\Omega ,\mathcal{F},P)\)において、事象\(A,B\in \mathcal{F}\)を任意にとると、\begin{equation*}
A\backslash B\in \mathcal{F}
\end{equation*}が成り立つ。
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減法性(差事象の確率)

確率空間\((\Omega ,\mathcal{F},P)\)が与えられたとき、先に示したように事象空間\(\mathcal{F}\)は差事象\(\backslash \)について閉じているため、任意の事象\(A,B\in \mathcal{F}\)に対して\(A\backslash B\in \mathcal{F}\)です。したがって、確率関数\(P\)は差事象が起こる確率\(P\left( A\backslash B\right) \)を評価できるはずですが、その値はどうなるでしょうか。これも確率論の公理、もしくはそこから導かれた命題から導く必要があります。

事象\(A,B\in \mathcal{F}\)を任意にとると、\(A\backslash B=A\cap B^{c}\)という関係が成り立つため、\begin{equation}
P\left( A\backslash B\right) =P\left( A\cap B^{c}\right) \tag{1}
\end{equation}が成り立ちます。また、\(A=\left( A\cap B\right) \cup \left( A\cap B^{c}\right) \)という関係が成り立ちます。確率論の公理から\(P\)の有限加法性が導かれることはすでに示しました。\(A\cap B\)と\(A\cap B^{c}\)は排反な事象であるため、\(P\)の有限加法性より、\begin{align*}
P\left( A\right) & =P\left( \left( A\cap B\right) \cup \left( A\cap
B^{c}\right) \right) \\
& =P\left( A\cap B\right) +P\left( A\cap B^{c}\right) \\
& =P\left( A\cap B\right) +P\left( A\backslash B\right)
\end{align*}すなわち、\begin{equation*}
P\left( A\backslash B\right) =P\left( A\right) -P\left( A\cap B\right)
\end{equation*}が成り立ちます。これを減法性(addition theorem)と呼びます。

命題(減法性)
確率空間\((\Omega ,\mathcal{F},P)\)において、事象\(A,B\in \mathcal{F}\)を任意にとると、\begin{equation*}
P\left( A\backslash B\right) =P\left( A\right) -P\left( A\cap B\right)
\end{equation*}が成り立つ。
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特に、事象\(A,B\)が\(B\subset A\)を満たす場合には\(A\cap B=B\)となるため、上の命題より以下を得ます。

命題(減法性の特殊ケース)
確率空間\((\Omega ,\mathcal{F},P)\)において、\(B\subset A\)を満たす事象\(A,B\in \mathcal{F}\)を任意にとると、\begin{equation*}
P\left( A\backslash B\right) =P\left( A\right) -P\left( B\right)
\end{equation*}が成り立つ。
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つまり、\(B\)が\(A\)の部分事象である場合には、差事象\(A\backslash B\)の確率、すなわち\(A\)が起こって\(B\)が起こらない確率は、\(A\)の確率から\(B\)の確率を引くことにより得られます。

次回は積事象の確率に関する加法定理について解説します。

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