ユークリッド空間上の点列の項が先に進むにつれて特定の点に限りなく近づく場合、その数列は収束するといいます。
ユークリッド空間上の点列の項が先に進むにつれてある点に限りなく近づく場合、その点列は収束すると言います。また、点列の項が限りなく近づく先の点のことをその点列の極限と呼びます。点列の収束は数列の収束を一般化した概念です。
ユークリッド空間上の点列が収束することは、その点列のすべての座標数列が有限な実数へ収束することと必要十分です。したがって、点列が収束することを示すためには、そのすべての座標数列が収束することを示せばよいということになります。
ユークリッド空間上の点列のすべての項からなる集合が有界であるとき、その点列は有界であると言います。点列が有界であることと、その任意の座標数列が有界であることは必要十分です。収束する点列は常に有界である一方で、有界な点列は収束するとは限りません。
点列が収束するならば、その点列の一般項をスカラー倍して得られるベクトルを一般項とする点列もまた収束することが保証されます。同様に、収束する点列のスカラー商として定義される点列も収束します。
ユークリッド空間上の収束点列が2つ任意に与えられたとき、それらの一般項どうしのベクトル和を一般項とする点列もまた収束することが保証されます。同様に、収束する点列のベクトル差として定義される点列もまた収束します。
ユークリッド空間における 2 つの収束列が与えられたとき、任意番目の項について、一方の収束列の項が他方の収束列の項以上であるならば、それらの極限についても同様の大小関係が成り立ちます。また、ユークリッド空間における収束列についても、収束する数列と同様に、はさみうちの定理が成り立ちます。
点列が単調であることの意味を定義した上で、単調な点列が収束するための条件を明らかにします。
実数の連続性より、上に有界な単調増加数列や下に有界な単調減少数列はいずれも収束しますが、これらの事実を利用すると、ユークリッド空間における点列に関しても、上に有界な単調増加列や下に有界な単調減少列が収束することを示すことができます。
点列の部分列と呼ばれる概念を定義した上で、有界な点列は収束する部分列を持つことを示します。
ユークリッド空間における点列から無限個の項を抜き出して順番を保ったまま並べてできる点列をもとの点列の部分列と呼びます。点列の部分列は数列の部分列を一般化した概念です。
ユークリッド空間における点列に関してもボルツァーノ=ワイエルシュトラスの定理は成り立ちます。つまり、有界な点列は収束する部分列を持ちます。
数列がコーシー列であることと収束列であることが必要十分であることと同様、ユークリッド空間上の点列についても、それがコーシー列であることと収束列であることは必要十分です。
以下の分野の知識があると本節の内容を円滑に学習できます。
数列に関するテキストと演習問題です。数列という概念を定義した上で、さらに収束列、単調数列、区間列、部分列などについて学び、これらの概念を使って実数の連続性を表現できることを確認します。
n 次元空間上にベクトル加法やスカラー乗法などの演算や大小関係を定義すると、実順序ベクトル空間になります。実順序ベクトル空間上にユークリッド距離と呼ばれる概念を定義したものがユークリッド空間です。
本節で得た知識は以下の分野を学ぶ上での土台になります。
実数空間もしくはその部分集合を定義とし、ユークリッド空間を終集合とする写像を曲線やベクトル値関数などと呼びます。ここでは曲線の収束や連続性などについて解説します。
多変数関数(スカラー場)という概念を定義するとともに、多変数関数が有限な実数へ収束すること、および連続であることの意味を定義した上で、連続な多変数関数の性質について解説します。