多変数関数をあたかも1変数関数のように見なした場合に得られる微分概念を偏微分と呼びます。1変数関数において微分可能性は連続性を含意するのに対し、多変数関数において偏微分性は連続性を含意しません。
スカラー場(多変数関数)が定義域上の任意の点においてある変数に関して偏微分可能であるならば、定義域上のそれぞれの点に対してそこでのその変数に関する偏微分係数を定めるスカラー場が定義可能です。これを偏導関数と呼びます。
スカラー場(多変数関数)が定義域上の点においてすべての変数に関して偏微分可能であるならば、そこの点におけるそれぞれの変数に関する偏微分係数からなるベクトルが存在します。これを勾配ベクトルと呼びます。また、スカラー場の定義域上のそれぞれの点に対してそこでの勾配ベクトルを定めるベクトル場を勾配ベクトル場と呼びます。
1変数関数が定義域上の点において微分可能である場合にはその点において連続であることが保証される一方、スカラー場(多変数関数)に関しては、偏微分可能な点において連続であるとは限りません。
多変数関数の変数を特定のベクトルの方向へ移動する状況を想定した微分概念を方向微分と呼びます。偏微分と同様、方向微分もまた連続性を必ずしも含意しません。
スカラー場(多変数関数)が定義域上の任意の点においてある方向に関して方向微分可能であるならば、定義域上のそれぞれの点に対してそこでのその方向に関する方向微分係数を定めるスカラー場が定義可能です。これを方向導関数と呼びます。
スカラー場(多変数関数)が定義域上の点において任意の方向に関して方向微分可能である場合においても、そのスカラー場はその点において連続であるとは限りません。
微分可能性から連続性を導くためには偏微分や方向微分とは異なる微分概念が要請されます。それを全微分と呼ばれる概念として定式化します。
スカラー場(多変数関数)が偏微分可能もしくは方向微分可能である場合においても連続であるとは限りません。微分可能性から連続性を導くためには新たな微分概念が必要であるため、それを全微分と呼ばれる概念として定式化します。
スカラー場(多変数関数)が定義域上の点において全微分可能である場合、その点において偏微分可能であることが保証されるとともに、そこでの全微分係数と勾配ベクトルは一致します。
スカラー場(多変数関数)が定義域上の点において全微分可能であるとき、そのスカラー場はその点において任意の方向に関して方向微分可能であるとともに、方向微分係数は勾配ベクトルと方向ベクトルの内積と一致します。