教材一覧
教材一覧
教材検索
DERIVATIVES OF MULTIVARIABLE FUNCTIONS

勾配ベクトル(グラディエント)

目次

< 前のページ
次のページ >
Share on twitter
Twitterで共有
Share on email
メールで共有

勾配ベクトル

多変数関数\(f:\mathbb{R} ^{n}\supset X\rightarrow \mathbb{R} \)が定義域上の点\(a\in X\)においてすべての変数\(x_{k}\ \left( k=1,\cdots ,n\right) \)に関して偏微分可能である場合には、すなわち、点\(a\)において任意の変数\(x_{k}\)に関する偏微分係数\begin{equation*}f_{x_{k}}\left( a\right) =\frac{\partial f\left( a\right) }{\partial x_{k}}\in \mathbb{R} \end{equation*}が存在する場合には、それらを成分とする\(n\)次元ベクトル\begin{equation*}\left( f_{x_{1}}\left( a\right) ,\cdots ,f_{x_{n}}\left( a\right) \right)
=\left( \frac{\partial f\left( a\right) }{\partial x_{1}},\cdots ,\frac{\partial f\left( a\right) }{\partial x_{n}}\right) \in \mathbb{R} ^{n}
\end{equation*}が存在します。これを\(f\)の点\(a\)における勾配ベクトル(gradient vector at \(a\))やグラディエント・ベクトルなどと呼び、\begin{equation*}\nabla f\left( a\right) ,\quad \mathrm{grad}f\left( a\right)
\end{equation*}などで表記します。ちなみに、記号\(\nabla \)はナブラ(nabla)と読みます。また、勾配ベクトル\(\nabla f\left( a\right) \)が存在する場合には、すなわち関数\(f\)が点\(a\)において任意の変数\(x_{k}\)について偏微分可能である場合には、\(f\)は\(a\)において偏微分可能である(partiallydifferentiable at \(a\))と言います。

例(勾配ベクトル)
変数\(f:\mathbb{R} ^{2}\rightarrow \mathbb{R} \)はそれぞれの\(\left( x,y\right) \in \mathbb{R} ^{2}\)に対して、\begin{equation*}f\left( x,y\right) =xy
\end{equation*}を定めるものとします。点\(\left( a,b\right) \in \mathbb{R} ^{2}\)を任意に選んだとき、\begin{eqnarray*}\nabla f\left( a,b\right) &=&\left( \frac{\partial f\left( a,b\right) }{\partial x},\frac{\partial f\left( a,b\right) }{\partial y}\right) \quad
\because \text{勾配ベクトルの定義} \\
&=&\left( \left. \frac{df\left( x,b\right) }{dx}\right\vert _{x=a},\left.
\frac{df\left( a,y\right) }{dx}\right\vert _{y=b}\right) \quad \because
\text{偏微分と微分の関係} \\
&=&\left( \left. \frac{d}{dx}xb\right\vert _{x=a},\left. \frac{d}{dx}ay\right\vert _{y=b}\right) \quad \because f\text{の定義}
\\
&=&\left( \left. b\right\vert _{x=a},\left. a\right\vert _{y=b}\right) \quad
\because \text{単項式関数の微分} \\
&=&\left( b,a\right)
\end{eqnarray*}となりますが、これは\(\mathbb{R} ^{2}\)の点であるため\(f\)は点\(\left( a,b\right) \)において偏微分可能です。例えば、点\(\left( 1,1\right) \)における勾配ベクトルは、\begin{equation*}\nabla f\left( 1,1\right) =\left( 1,1\right)
\end{equation*}であり、点\(\left( -1,2\right) \)における勾配ベクトルは、\begin{equation*}\nabla f\left( -1,2\right) =\left( 2,-1\right)
\end{equation*}です。

例(偏微分係数)
関数\(f:\mathbb{R} ^{2}\rightarrow \mathbb{R} \)はそれぞれの\(\left( x,y\right) \in \mathbb{R} ^{2}\)に対して、\begin{equation*}f\left( x,y\right) =x^{2}+y^{3}
\end{equation*}を定めるものとします。点\(\left( a,b\right) \in \mathbb{R} ^{2}\)を任意に選んだとき、\begin{eqnarray*}\nabla f\left( a,b\right) &=&\left( \frac{\partial f\left( a,b\right) }{\partial x},\frac{\partial f\left( a,b\right) }{\partial y}\right) \quad
\because \text{勾配ベクトルの定義} \\
&=&\left( \left. \frac{df\left( x,b\right) }{dx}\right\vert _{x=a},\left.
\frac{df\left( a,y\right) }{dy}\right\vert _{y=b}\right) \quad \because
\text{偏微分と微分の関係} \\
&=&\left( \left. \frac{d}{dx}\left( x^{2}+b^{3}\right) \right\vert
_{x=a},\left. \frac{d}{dy}\left( a^{2}+y^{3}\right) \right\vert
_{y=b}\right) \quad \because f\text{の定義} \\
&=&\left( \left. 2x\right\vert _{x=a},\left. 3y^{2}\right\vert _{y=b}\right)
\quad \because \text{多項式関数の微分} \\
&=&\left( 2a,3b^{2}\right)
\end{eqnarray*}となりますが、これは\(\mathbb{R} ^{2}\)の点であるため\(f\)は点\(\left( a,b\right) \)において偏微分可能です。例えば、点\(\left( 1,1\right) \)における勾配ベクトルは、\begin{equation*}\nabla f\left( 1,1\right) =\left( 2,3\right)
\end{equation*}であり、点\(\left( -1,2\right) \)における勾配ベクトルは、\begin{equation*}\nabla f\left( -1,2\right) =\left( -2,12\right)
\end{equation*}です。

 

勾配ベクトル場

繰り返しになりますが、多変数関数\(f:\mathbb{R} ^{n}\supset X\rightarrow \mathbb{R} \)が定義域上の点\(a\in X\)において偏微分可能であることとは、\(f\)が点\(a\)において任意の変数\(x_{k}\)について偏微分可能であることを意味し、このとき、点\(a\)における勾配ベクトル\begin{equation*}\nabla f\left( a\right) =\left( \frac{\partial f\left( a\right) }{\partial
x_{1}},\cdots ,\frac{\partial f\left( a\right) }{\partial x_{n}}\right) \in \mathbb{R} ^{n}
\end{equation*}が存在します。偏微分係数が存在する場合には1つの実数して定まるため、勾配ベクトルが存在する場合には\(\mathbb{R} ^{n}\)の1つの点として定まります。以上を踏まえると、\(f\)が偏微分可能な点からなる集合を\(Y\subset X\)で表記するとき、それぞれの\(x\in Y\)に対して、そこでの勾配ベクトル\(\nabla f\left( x\right) \in \mathbb{R} ^{n}\)を値として定める多変数のベクトル値関数(ベクトル場)\begin{equation*}\nabla f:\mathbb{R} ^{n}\supset Y\rightarrow \mathbb{R} ^{n}
\end{equation*}が定義可能です。これを\(f\)の勾配ベクトル場(gradient vector field)と呼び、\begin{equation*}\nabla f\left( x\right) ,\quad \mathrm{grad}f\left( x\right)
\end{equation*}などで表記します。

一般に、関数\(f\)は定義域\(X\)上の任意の点において偏微分可能であるとは限りません。定義域\(X\)の中に関数\(f\)が偏微分可能ではない点が存在する場合、すなわち、\(X\)の少なくとも1つの点において少なくとも1つの変数について\(f\)が偏微分可能ではない場合、勾配ベクトル場\(\nabla f\)の定義域\(Y\)は\(X\)の真部分集合になります。関数\(f\)の勾配ベクトル場\(\nabla f\)は、もとの関数\(f\)が偏微分可能な点においてのみ定義されるベクトル場であるということです。一方、関数\(f\)の定義域\(X\)と勾配ベクトル場\(\nabla f\)の定義域\(Y\)が一致する場合、すなわち、関数\(f\)が定義域\(X\)上の任意の点において偏微分可能である場合、\(f\)は\(X\)上で偏微分可能である(partially differentiable)と言います。また、関数\(f\)の勾配ベクトル場\(\nabla f\)を求めることを\(f\)を偏微分する(partial differentiate)と言います。

例(勾配ベクトル場)
関数\(f:\mathbb{R} ^{2}\rightarrow \mathbb{R} \)はそれぞれの\(\left( x,y\right) \in \mathbb{R} ^{2}\)に対して、\begin{equation*}f\left( x,y\right) =xy
\end{equation*}を定めるものとします。先に示したように、\(f\)は任意の点\(\left(a,b\right) \in \mathbb{R} ^{2}\)において偏微分可能であり、そこでの勾配ベクトルは、\begin{equation*}\nabla f\left( a,b\right) =\left( b,a\right)
\end{equation*}となります。したがって、\(f\)は偏微分可能であり、勾配ベクトル場\(\nabla f:\mathbb{R} ^{2}\rightarrow \mathbb{R} ^{2}\)はそれぞれの\(\left( x,y\right) \in \mathbb{R} ^{2}\)に対して、\begin{equation*}\nabla f\left( x,y\right) =\left( y,x\right)
\end{equation*}を定めます。

例(勾配ベクトル場)
関数\(f:\mathbb{R} ^{2}\rightarrow \mathbb{R} \)はそれぞれの\(\left( x,y\right) \in \mathbb{R} ^{2}\)に対して、\begin{equation*}f\left( x,y\right) =x^{2}+y^{3}
\end{equation*}を定めるものとします。先に示したように、\(f\)は任意の点\(\left(a,b\right) \in \mathbb{R} ^{2}\)において偏微分可能であり、そこでの勾配ベクトルは、\begin{equation*}\nabla f\left( a,b\right) =\left( 2a,3b^{2}\right)
\end{equation*}となります。したがって、\(f\)は偏微分可能であり、勾配ベクトル場\(\nabla f:\mathbb{R} ^{2}\rightarrow \mathbb{R} ^{2}\)はそれぞれの\(\left( x,y\right) \in \mathbb{R} ^{2}\)に対して、\begin{equation*}\nabla f\left( x,y\right) =\left( 2x,3y^{2}\right)
\end{equation*}を定めます。

例(勾配ベクトル場)
関数\(f:\mathbb{R} ^{2}\rightarrow \mathbb{R} \)はそれぞれの\(\left( x,y\right) \in \mathbb{R} ^{2}\)に対して、\begin{equation*}f\left( x,y\right) =\left\vert x-y\right\vert
\end{equation*}を定めるものとします。\(a=b\)を満たす任意の点\(\left( a,b\right) \in \mathbb{R} ^{2}\)において\(f\)は変数\(x,y\)のいずれに関しても偏微分可能ではない一方、\(a\not=b\)を満たす任意の点\(\left( a,b\right) \in \mathbb{R} ^{2}\)において\(f\)は偏微分可能であり、そこでの勾配ベクトルは、\begin{equation*}\nabla f\left( a,b\right) =\left( \frac{a-b}{\left\vert a-b\right\vert },\frac{b-a}{\left\vert a-b\right\vert }\right)
\end{equation*}となります。したがって、勾配ベクトル場\(\nabla f\)の定義域は、\begin{equation*}Y=\left\{ \left( x,y\right) \in \mathbb{R} ^{2}\ |\ x\not=y\right\}
\end{equation*}であり、\(\nabla f\)はそれぞれの\(\left( x,y\right) \in Y\)に対して、\begin{equation*}\nabla f\left( x,y\right) =\left( \frac{x-y}{\left\vert x-y\right\vert },\frac{y-x}{\left\vert x-y\right\vert }\right) \in \mathbb{R} ^{2}
\end{equation*}を定めます。これは関数\(f\)の定義域と勾配ベクトル場\(\nabla f\)の定義域が異なるケースです。

 

演習問題

問題(勾配ベクトル)
関数\(f:\mathbb{R} ^{2}\rightarrow \mathbb{R} \)はそれぞれの\(\left( x,y\right) \in \mathbb{R} ^{2}\)に対して、\begin{equation*}f\left( x,y\right) =x^{3}y^{2}+x
\end{equation*}を定めるものとします。\(f\)の勾配ベクトル場\(\nabla f\)を求めてください。
解答を見る

プレミアム会員専用コンテンツです
ログイン】【会員登録

問題(勾配ベクトル)
関数\(f:\mathbb{R} ^{2}\rightarrow \mathbb{R} \)はそれぞれの\(\left( x,y\right) \in \mathbb{R} ^{2}\)に対して、\begin{equation*}f\left( x,y\right) =\sin \left( x+xy\right)
\end{equation*}を定めるものとします。\(f\)の勾配ベクトル場\(\nabla f\)を求めてください。
解答を見る

プレミアム会員専用コンテンツです
ログイン】【会員登録

問題(勾配ベクトル)
関数\(f:\mathbb{R} ^{3}\supset X\rightarrow \mathbb{R} \)はそれぞれの\(\left( x,y,z\right) \in X\)に対して、\begin{equation*}f\left( x,y\right) =x^{2}y\ln \left( yz\right)
\end{equation*}を定めるものとします。ただし、\(X\)は\(f\)の定義域です。\(f\)の勾配ベクトル場\(\nabla f\)を求めてください。
解答を見る

プレミアム会員専用コンテンツです
ログイン】【会員登録

次回は多変数関数の偏微分可能性と連続性の関係について解説します。

< 前のページ
次のページ >
Share on twitter
Twitterで共有
Share on email
メールで共有
DISCUSSION

質問とコメント

プレミアム会員専用コンテンツです
ログイン】【会員登録

RELATED KNOWLEDGE

関連知識

偏微分
多変数関数の偏微分

多変数関数が与えられたとき、1つの変数以外のすべての変数の値を固定し、あたかも1変数関数であるかのようにみなした上で定義される微分概念を偏微分と呼びます。

スカラー場の連続性
偏微分可能性と連続性

1変数関数に関しては微分可能性や偏微分可能性が連続性を含意する一方、2つ以上の変数を持つ多変数関数に関しては、偏微分可能性は連続性を必ずしも含意しません。

偏微分
高階の偏微分

多変数関数の偏導関数が偏微分可能である場合には偏導関数の偏導関数が得られますが、これを2階の偏導関数と呼びます。同様に、3階の偏導関数、4階の偏導関数なども定義可能です。これらを高階の偏導関数と呼びます。

ヘッセ行列
ヘッセ行列

多変数関数が任意の2つの変数の組み合わせに関して2階偏微分可能である場合には、2階偏微分係数を成分として持つ正方行列が定義可能です。これをヘッセ行列と呼びます。

偏微分
多変数関数の連続微分可能性

多変数関数が偏微分可能であることに加えてすべての変数に関する偏導関数が連続である場合、その関数は連続微分可能であると言います。

偏微分
偏微分の順序(クレローの定理)

開集合上に定義されたn階連続微分可能な多変数関数に関しては、n個の変数の順序によらず、n階偏導関数はすべて一致します。これをクレローの定理と呼びます。

偏微分
多変数関数の全微分と偏微分の関係

多変数関数が全微分可能である場合には偏微分可能であることが保証される一方、その逆は成り立つとは限りません。ただ、多変数関数が連続微分可能である場合には全微分可能であることが保証される一方、その逆は成り立つとは限りません。

凸関数・凹関数
連続微分可能な多変数の凸関数・凹関数

定義域がユークリッド空間上の非空な開凸集合であるとともに連続微分可能である場合に、その関数が(狭義)凸関数であることや(狭義)凹関数であることを判定する方法を解説します。

スカラー場の微分