WIIS

多変数関数の微分

多変数関数の定数倍の全微分

目次

関連知識

Mailで保存
Xで共有

多変数関数の定数倍の全微分

多変数関数\(f:\mathbb{R} ^{n}\supset X\rightarrow \mathbb{R} \)と実数\(c\in \mathbb{R} \)が与えられたとき、それぞれの\(x\in X\)に対して、\begin{equation*}\left( cf\right) \left( x\right) =cf\left( x\right) \in \mathbb{R} \end{equation*}を定める新たな多変数関数\(cf:\mathbb{R} ^{n}\supset X\rightarrow \mathbb{R} \)が定義可能です。

関数\(f\)が定義域上の点\(a\in X\)の周辺の任意の点において定義されているとともに、その点\(a\)において全微分可能であるならば、そこでの全微分係数に相当する有限な点\begin{eqnarray*}f^{\prime }\left( a\right) &=&\nabla f\left( a\right) \quad \because \text{全微分と偏微分の関係} \\
&=&\left. \left( \frac{\partial f\left( x\right) }{\partial x_{1}},\cdots ,\frac{\partial f\left( x\right) }{\partial x_{n}}\right) \right\vert _{x=a}
\\
&\in &\mathbb{R} ^{n}
\end{eqnarray*}が存在します。以上の条件が成り立つとき、関数\(cf\)もまた点\(a\)において全微分可能であることが保証されるとともに、そこでの全微分係数が、\begin{eqnarray*}\left( cf\right) ^{\prime }\left( a\right) &=&cf^{\prime }\left( a\right)
\\
&=&c\nabla f\left( a\right) \\
&=&c\left. \left( \frac{\partial f\left( x\right) }{\partial x_{1}},\cdots ,\frac{\partial f\left( x\right) }{\partial x_{n}}\right) \right\vert
\end{eqnarray*}として定まることが保証されます。

命題(多変数関数の定数倍の全微分)
関数\(f:\mathbb{R} ^{n}\supset X\rightarrow \mathbb{R} \)と実数\(c\in \mathbb{R} \)が与えられたとき、そこから関数\(cf:\mathbb{R} ^{n}\supset X\rightarrow \mathbb{R} \)を定義する。\(f\)が定義域上の点\(a\in X\)において全微分可能であるならば、\(cf\)もまた点\(a\)において全微分可能であり、そこでの全微分係数は、\begin{eqnarray*}\left( cf\right) ^{\prime }\left( a\right) &=&cf^{\prime }\left( a\right)
\\
&=&c\nabla f\left( a\right)
\end{eqnarray*}を満たす。

証明

プレミアム会員専用コンテンツです
ログイン】【会員登録

つまり、点\(a\)において全微分可能な関数\(f\)の定数倍の形をしている関数\(cf\)が与えられたとき、\(cf\)もまた点\(a\)において全微分可能であることが保証されるとともに、点\(a\)における\(f\)の全微分係数すなわち勾配ベクトルを定数\(c\)倍すれば、点\(a\)における\(cf\)の全微分係数が得られることを上の命題は保証しています。したがって、何らかの関数\(f\)の定数倍の形をしている関数\(cf\)の全微分可能性を検討する際には、全微分の定義にさかのぼって考える前に、まずは\(c\)と\(f\)を分けた上で、\(f\)が全微分可能であることを検討すればよいということになります。

例(多変数関数の定数倍の全微分)
関数\(f:\mathbb{R} ^{n}\supset X\rightarrow \mathbb{R} \)と実数\(c\in \mathbb{R} \)から関数\begin{equation*}cf:\mathbb{R} ^{n}\supset X\rightarrow \mathbb{R} \end{equation*}を定義します。\(f\)が定義域\(X\)上で全微分可能である場合、先の命題より、\(cf\)もまた定義域\(X\)上で全微分可能であり、全導関数\(\left( cf\right)^{\prime }:\mathbb{R} ^{n}\supset X\rightarrow \mathbb{R} ^{n}\)はそれぞれの\(x\in X\)に対して、\begin{eqnarray*}\left( cf\right) ^{\prime }\left( x\right) &=&cf^{\prime }\left( x\right)
\\
&=&c\nabla f\left( x\right) \\
&=&c\left( \frac{\partial f\left( x\right) }{\partial x_{1}},\cdots ,\frac{\partial f\left( x\right) }{\partial x_{n}}\right)
\end{eqnarray*}を定めます。

例(多変数関数の定数倍の全微分)
関数\(f:\mathbb{R} ^{n}\supset X\rightarrow \mathbb{R} \)が定義域\(X\)上で全微分可能であるものとします。この場合、先の命題より、関数\begin{equation*}-f:\mathbb{R} ^{n}\supset X\rightarrow \mathbb{R} \end{equation*}もまた定義域\(X\)上で全微分可能であり、全導関数\(\left( -f\right) ^{\prime }:\mathbb{R} ^{n}\supset X\rightarrow \mathbb{R} ^{n}\)はそれぞれの\(x\in X\)に対して、\begin{eqnarray*}\left( -f\right) ^{\prime }\left( x\right) &=&-\nabla f\left( x\right)
\quad \because \text{関数の定数倍の全微分} \\
&=&-\left( \frac{\partial f\left( x\right) }{\partial x_{1}},\cdots ,\frac{\partial f\left( x\right) }{\partial x_{n}}\right) \\
&=&\left( -\frac{\partial f\left( x\right) }{\partial x_{1}},\cdots ,-\frac{\partial f\left( x\right) }{\partial x_{n}}\right)
\end{eqnarray*}を定めます。

例(多変数関数の定数倍の全微分)
関数\(f:\mathbb{R} ^{2}\rightarrow \mathbb{R} \)はそれぞれの\(\left( x,y\right) \in \mathbb{R} ^{2}\)に対して、\begin{equation*}f\left( x,y\right) =-\frac{x^{2}+y^{3}+1}{2}
\end{equation*}を定めるものとします。\(f\)は多変数の多項式関数の定数倍であるため全微分可能であり、全導関数\(f^{\prime }:\mathbb{R} ^{2}\rightarrow \mathbb{R} ^{2}\)はそれぞれの\(\left( x,y\right) \in \mathbb{R} ^{2}\)に対して、\begin{eqnarray*}f^{\prime }\left( x,y\right) &=&-\frac{1}{2}\nabla \left(
x^{2}+y^{3}+1\right) \quad \because \text{関数の定数倍の全微分} \\
&=&-\frac{1}{2}\left( \frac{\partial }{\partial x}\left(
x^{2}+y^{3}+1\right) ,\frac{\partial }{\partial y}\left(
x^{2}+y^{3}+1\right) \right) \\
&=&-\frac{1}{2}\left( 2x,3y^{2}\right) \\
&=&\left( -x,-\frac{3}{2}y^{2}\right)
\end{eqnarray*}を定めます。

例(多変数関数の定数倍の全微分)
関数\(f:\mathbb{R} ^{2}\rightarrow \mathbb{R} \)はそれぞれの\(\left( x,y\right) \in \mathbb{R} ^{2}\)に対して、\begin{equation*}f\left( x,y\right) =\frac{\sin \left( x^{2}y^{3}\right) }{\pi }
\end{equation*}を定めるものとします。\(f\)は多変数の単項式関数と正弦関数の合成関数の定数倍であるため全微分可能であり、全導関数\(f^{\prime }:\mathbb{R} ^{2}\rightarrow \mathbb{R} ^{2}\)はそれぞれの\(\left( x,y\right) \in \mathbb{R} ^{2}\)に対して、\begin{eqnarray*}f^{\prime }\left( x,y\right) &=&\frac{1}{\pi }\nabla \sin \left(
x^{2}y^{3}\right) \quad \because \text{関数の定数倍の全微分} \\
&=&\frac{1}{\pi }\left( \frac{\partial }{\partial x}\sin \left(
x^{2}y^{3}\right) ,\frac{\partial }{\partial y}\sin \left( x^{2}y^{3}\right)
\right) \\
&=&\frac{1}{\pi }\left( 2xy^{3}\cos \left( x^{2}y^{3}\right)
,3x^{2}y^{2}\cos \left( x^{2}y^{3}\right) \right) \\
&=&\left( \frac{2xy^{3}\cos \left( x^{2}y^{3}\right) }{\pi },\frac{3x^{2}y^{2}\cos \left( x^{2}y^{3}\right) }{\pi }\right)
\end{eqnarray*}を定めます。

 

演習問題

問題(多変数関数の定数倍の全微分)
関数\(f:\mathbb{R} ^{2}\rightarrow \mathbb{R} \)はそれぞれの\(\left( x,y\right) \in \mathbb{R} ^{2}\)に対して、\begin{equation*}f\left( x,y\right) =-e^{x^{2}+y^{3}}
\end{equation*}を定めるものとします。全導関数\(f^{\prime }\)を求めてください。
解答を見る

プレミアム会員専用コンテンツです
ログイン】【会員登録

問題(多変数関数の定数倍の全微分)
関数\(f:\mathbb{R} ^{2}\rightarrow \mathbb{R} \)はそれぞれの\(\left( x,y\right) \in \mathbb{R} ^{2}\)に対して、\begin{equation*}f\left( x,y\right) =\frac{\sin \left( 3x^{2}+xy^{2}+y+1\right) }{\pi }
\end{equation*}を定めるものとします。全導関数\(f^{\prime }\)を求めてください。
解答を見る

プレミアム会員専用コンテンツです
ログイン】【会員登録

問題(多変数関数の定数倍の全微分)
関数\(f:\mathbb{R} ^{2}\rightarrow \mathbb{R} \)はそれぞれの\(\left( x,y\right) \in \mathbb{R} ^{2}\)に対して、\begin{equation*}f\left( x,y\right) =-\frac{\ln \left( x^{2}+y^{4}+1\right) }{e}
\end{equation*}を定めるものとします。全導関数\(f^{\prime }\)を求めてください。
解答を見る

プレミアム会員専用コンテンツです
ログイン】【会員登録

問題(多変数関数の定数倍の全微分)
関数\(f:\mathbb{R} ^{2}\rightarrow \mathbb{R} \)はそれぞれの\(\left( x,y\right) \in \mathbb{R} ^{2}\)に対して、\begin{equation*}f\left( x,y\right) =-\left( x^{2}+y^{4}+1\right) ^{\pi }
\end{equation*}を定めるものとします。全導関数\(f^{\prime }\)を求めてください。
解答を見る

プレミアム会員専用コンテンツです
ログイン】【会員登録

問題(多変数関数の定数倍の全微分)
関数\(f:\mathbb{R} ^{2}\rightarrow \mathbb{R} \)はそれぞれの\(\left( x,y\right) \in \mathbb{R} ^{2}\)に対して、\begin{equation*}f\left( x,y\right) =-\frac{\cos \left( x^{4}+x^{2}y^{2}+y^{4}\right) }{3}
\end{equation*}を定めるものとします。全導関数\(f^{\prime }\)を求めてください。
解答を見る

プレミアム会員専用コンテンツです
ログイン】【会員登録

問題(多変数関数の定数倍の全微分)
関数\(f:\mathbb{R} ^{2}\rightarrow \mathbb{R} \)はそれぞれの\(\left( x,y\right) \in \mathbb{R} ^{2}\)に対して、\begin{equation*}f\left( x,y\right) =-e^{\frac{x+y}{2}}
\end{equation*}を定めるものとします。全導関数\(f^{\prime }\)を求めてください。
解答を見る

プレミアム会員専用コンテンツです
ログイン】【会員登録

関連知識

Mailで保存
Xで共有

質問とコメント

プレミアム会員専用コンテンツです

会員登録

有料のプレミアム会員であれば、質問やコメントの投稿と閲覧、プレミアムコンテンツ(命題の証明や演習問題とその解答)へのアクセスなどが可能になります。

ワイズのユーザーは年齢・性別・学歴・社会的立場などとは関係なく「学ぶ人」として対等であり、お互いを人格として尊重することが求められます。ユーザーが快適かつ安心して「学ぶ」ことに集中できる環境を整備するため、広告やスパム投稿、他のユーザーを貶めたり威圧する発言、学んでいる内容とは関係のない不毛な議論などはブロックすることになっています。詳細はガイドラインをご覧ください。

誤字脱字、リンク切れ、内容の誤りを発見した場合にはコメントに投稿するのではなく、以下のフォームからご連絡をお願い致します。

プレミアム会員専用コンテンツです
ログイン】【会員登録