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多変数関数の微分

1変数の陰関数

目次

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2変数の方程式が定める1変数の陰関数

2次元ユークリッド空間\(\mathbb{R} ^{2}\)もしくはその部分集合\(X\times Y\)上に定義された2変数関数\begin{equation*}F:\mathbb{R} ^{2}\supset X\times Y\rightarrow \mathbb{R} \end{equation*}が与えられた状況を想定します。つまり、この関数\(F\)はそれぞれの\(\left( x,y\right) \in X\times Y\)に対して、\begin{equation*}F\left( x,y\right) \in \mathbb{R} \end{equation*}を値として定めるということです。以上の関数\(F\)が与えられれば、そこから以下のような方程式\begin{equation*}F\left( x,y\right) =0
\end{equation*}を定義できます。

関数\(F:\mathbb{R} ^{2}\supset X\times Y\rightarrow \mathbb{R} \)は変数\(\left( x,y\right) \)の値に応じて様々な値をとり得ますが、点\(\left( x,y\right) \in X\times Y\)が具体的に与えられたとき、それを方程式\(F\left( x,y\right) =0\)に代入して得られる等式は成立するとは限りません。一方、点\(\left( x,y\right) \)を方程式\(F\left( x,y\right) =0\)に代入して得られる等式が成立する場合、そのような点\(\left( x,y\right) \)を方程式\(F\left( x,y\right) =0\)の(solution)と呼んだり、点\(\left( x,y\right) \)は方程式\(F\left( x,y\right) =0\)を満たす(satisfies)などと言います。

例(2変数関数が定義する方程式の解)
関数\(F:\mathbb{R} ^{2}\rightarrow \mathbb{R} \)はそれぞれの\(\left( x,y\right) \in \mathbb{R} ^{2}\)に対して、\begin{equation*}F\left( x,y\right) =x^{2}+y^{2}-1
\end{equation*}を定めるものとします。この関数\(F\)から以下の方程式\begin{equation*}F\left( x,y\right) =0
\end{equation*}すなわち、\begin{equation*}
x^{2}+y^{2}-1=0
\end{equation*}を定義します。点\(\left(1,0\right) \in \mathbb{R} ^{2}\)に関しては、\begin{eqnarray*}F\left( 1,0\right) &=&1^{2}+0^{2}-1\quad \because F\text{の定義} \\
&=&0
\end{eqnarray*}となるため、この点\(\left( 1,0\right) \)は方程式\(F\left( x,y\right) =0\)の解です。点\(\left( 0,1\right) \in \mathbb{R} ^{2}\)に関しては、\begin{eqnarray*}F\left( 0,1\right) &=&0^{2}+1^{2}-1\quad \because F\text{の定義} \\
&=&0
\end{eqnarray*}となるため、この点\(\left( 0,1\right) \)もまた方程式\(F\left(x,y\right) =0\)の解です。点\(\left(1,1\right) \in \mathbb{R} ^{2}\)に関しては、\begin{eqnarray*}F\left( 1,1\right) &=&1^{2}+1^{2}-1\quad \because F\text{の定義} \\
&=&1 \\
&\not=&0
\end{eqnarray*}となるため、この点\(\left( 1,1\right) \)は方程式\(F\left( x,y\right) =0\)の解ではありません。

関数\(F:\mathbb{R} ^{2}\supset X\times Y\rightarrow \mathbb{R} \)から方程式\(F\left( x,y\right) =0\)が定義されている状況を想定します。\(X\)上の点\(x\)が与えられたとき、それに対して点\(\left(x,y\right) \)が方程式\(F\left( x,y\right) =0\)の解になるような\(Y\)上の点\(y\)は存在するとは限りませんし、そのような点\(y\)が存在する場合にも一意的に定まるとは限りません。つまり、\(x\in X\)が与えられたとき、以下の集合\begin{equation*}\left\{ y\in Y\ |\ F\left( x,y\right) =0\right\}
\end{equation*}は1点集合であるとは限らず、空集合になったり、複数の要素を持つ集合になり得るということです。以下の例より明らかです。

例(2変数関数が定義する方程式の解)
関数\(F:\mathbb{R} ^{2}\rightarrow \mathbb{R} \)はそれぞれの\(\left( x,y\right) \in \mathbb{R} ^{2}\)に対して、\begin{equation*}F\left( x,y\right) =x^{2}+y^{2}-1
\end{equation*}を定めるものとします。この関数\(F\)から方程式\(F\left( x,y\right) =0\)すなわち、\begin{equation*}x^{2}+y^{2}-1=0
\end{equation*}を定義します。\(x\)の値として\(1\)に注目したとき、それに対して\(F\left(1,y\right) =0\)すなわち、\begin{equation*}1^{2}+y^{2}-1=0
\end{equation*}を満たす\(y\)の値は\(0\)だけであるため、\begin{equation*}\left\{ y\in Y\ |\ F\left( 1,y\right) =0\right\} =\left\{ 0\right\}
\end{equation*}となります。また、\(x\)の値として\(0\)に注目したとき、それに対して\(F\left( 0,y\right) =0\)すなわち、\begin{equation*}0^{2}+y^{2}-1=0
\end{equation*}を満たす\(y\)の値は\(1\)と\(-1\)であるため、\begin{equation*}\left\{ y\in Y\ |\ F\left( 0,y\right) =0\right\} =\left\{ 1,-1\right\}
\end{equation*}となります。さらに、\(x\)の値として\(2\)に注目したとき、それに対して\(F\left( 2,y\right) =0\)すなわち、\begin{equation*}2^{2}+y^{2}-1=0
\end{equation*}を満たす\(y\)の値は存在しないため、\begin{equation*}\left\{ y\in Y\ |\ F\left( 2,y\right) =0\right\} =\phi
\end{equation*}となります。

関数\(F:\mathbb{R} ^{2}\supset X\times Y\rightarrow \mathbb{R} \)から方程式\(F\left( x,y\right) =0\)を定義したとき、それぞれの点\(x\in X\)に対して定義される以下の集合\begin{equation*}\left\{ y\in Y\ |\ F\left( x,y\right) =0\right\}
\end{equation*}は非空であるとは限らないことを確認しました。一方、上の集合が非空になるような\(X\)上の点\(x\)を集めてできる集合を\(I\subset X\)で表記します。つまり、以下の条件\begin{equation*}\forall x\in I,\ \exists y\in Y:F\left( x,y\right) =0
\end{equation*}を満たす\(X\)の部分集合\(I\)をとるということです。この場合、それぞれの\(x\in I\)に対して\(F\left(x,y\right) =0\)を満たす\(y\in Y\)を1つずつ選ぶことができるため、それぞれの\(x\in I\)に対して、以下の条件\begin{equation*}f\left( x\right) =y\quad \text{s.t.}\quad F\left( x,y\right) =0
\end{equation*}すなわち、\begin{equation*}
F\left( x,f\left( x\right) \right) =0
\end{equation*}を満たす値\(f\left( x\right) \in Y\)を1つずつ定める1変数関数\begin{equation*}f:X\supset I\rightarrow \mathbb{R} \end{equation*}が定義可能です。このような関数\(f\)を方程式\(F\left( x,y\right) =0\)が定める陰関数(implicit function)と呼びます。

改めて整理すると、2変数関数\(F:\mathbb{R} ^{2}\supset X\times Y\rightarrow \mathbb{R} \)から方程式\(F\left( x,y\right) =0\)を定義したとき、1変数関数\(f:\mathbb{R} \supset I\rightarrow \mathbb{R} \)が方程式\(F\left( x,y\right) =0\)が定める陰関数であることとは、以下の2つの条件\begin{eqnarray*}&&\left( a\right) \ I\subset X \\
&&\left( b\right) \ \forall x\in I:F\left( x,f\left( x\right) \right) =0
\end{eqnarray*}がともに成り立つことを意味します。

方程式\(F\left( x,y\right) =0\)が与えられたとき、これを変数\(y\)について解いて\(y=f\left( x\right) \)とすることができるのであれば、\begin{equation*}F\left( x,y\right) =0\Leftrightarrow y=f\left( x\right)
\end{equation*}という関係が成り立つため、このとき、\begin{equation*}
F\left( x,f\left( x\right) \right) =0
\end{equation*}となります。したがってこの場合、\(f\)は方程式\(F\left( x,y\right) =0\)が定める陰関数の候補になります。

例(2変数の方程式が定める1変数の陰関数)
関数\(F:\mathbb{R} ^{2}\rightarrow \mathbb{R} \)はそれぞれの\(\left( x,y\right) \in \mathbb{R} ^{2}\)に対して、\begin{equation*}F\left( x,y\right) =x+y
\end{equation*}を定めるものとします。この関数\(F\)から方程式\(F\left( x,y\right) =0\)すなわち、\begin{equation*}x+y=0
\end{equation*}を定義します。この方程式を\(y\)について解くと、\begin{equation*}y=-x
\end{equation*}を得ます。そこで、それぞれの\(x\in \mathbb{R} \)に対して、\begin{equation*}f\left( x\right) =-x
\end{equation*}を定める関数\(f:\mathbb{R} \rightarrow \mathbb{R} \)を定義すれば、任意の\(x\in \mathbb{R} \)に対して、\begin{eqnarray*}F\left( x,f\left( x\right) \right) &=&F\left( x,-x\right) \quad \because f\text{の定義} \\
&=&x-x\quad \because F\text{の定義} \\
&=&0
\end{eqnarray*}が成り立つため、この関数\(f\)は方程式\(F\left(x,y\right) =0\)が定める陰関数です。

 

陰関数は一意的に定まるとは限らない

陰関数は一意的に定まるとは限りません。以下の例より明らかです。

例(陰関数は一意的に定まるとは限らない)
関数\(F:\mathbb{R} ^{2}\rightarrow \mathbb{R} \)はそれぞれの\(\left( x,y\right) \in \mathbb{R} ^{2}\)に対して、\begin{equation*}F\left( x,y\right) =x^{2}+y^{2}-1
\end{equation*}を定めるものとします。この関数\(F\)から方程式\(F\left( x,y\right) =0\)すなわち、\begin{equation*}x^{2}+y^{2}-1=0
\end{equation*}を定義します。この方程式を\(y\)について解くと、\begin{equation*}y^{2}=1-x^{2}
\end{equation*}すなわち、\begin{equation*}
y=\pm \left( 1-x^{2}\right) ^{\frac{1}{2}}
\end{equation*}を得ます。そこで、変数\(x\)がとり得る値の範囲を\(\left[ -1,1\right] \)に制限した上で、それぞれの\(x\in \left[ -1,1\right] \)に対して、\begin{equation*}f\left( x\right) =\left( 1-x^{2}\right) ^{\frac{1}{2}}
\end{equation*}を定める関数\(f:\mathbb{R} \supset \left[ -1,1\right] \rightarrow \mathbb{R} \)を定義すれば、任意の\(x\in \left[ -1,1\right] \)に対して、\begin{eqnarray*}F\left( x,f\left( x\right) \right) &=&F\left( x,\left( 1-x^{2}\right) ^{\frac{1}{2}}\right) \quad \because f\text{の定義} \\
&=&x^{2}+\left[ \left( 1-x^{2}\right) ^{\frac{1}{2}}\right] ^{2}-1\quad
\because F\text{の定義} \\
&=&x^{2}+\left( 1-x^{2}\right) -1 \\
&=&0
\end{eqnarray*}となるため、この関数\(f\)は方程式\(F\left( x,y\right) =0\)が定める陰関数です。また、それぞれの\(x\in \left[-1,1\right] \)に対して、\begin{equation*}g\left( x\right) =-\left( 1-x^{2}\right) ^{\frac{1}{2}}
\end{equation*}を定める関数\(g:\mathbb{R} \supset \left[ -1,1\right] \rightarrow \mathbb{R} \)を定義すれば、任意の\(x\in \left[ -1,1\right] \)に対して、\begin{eqnarray*}F\left( x,g\left( x\right) \right) &=&F\left( x,-\left( 1-x^{2}\right) ^{\frac{1}{2}}\right) \quad \because g\text{の定義} \\
&=&x^{2}+\left[ -\left( 1-x^{2}\right) ^{\frac{1}{2}}\right] ^{2}-1\quad
\because F\text{の定義} \\
&=&x^{2}+\left( 1-x^{2}\right) -1 \\
&=&0
\end{eqnarray*}となるため、この関数\(g\)もまた方程式\(F\left(x,y\right) =0\)が定める陰関数です。\(f\)と\(g\)は異なる関数であるため、方程式\(F\left( x,y\right) =0\)が定める陰関数は一意的であるとは限らないことが明らかになりました。

 

陰関数を特定できるとは限らない

繰り返しになりますが、方程式\(F\left( x,y\right) =0\)が与えられたとき、これを変数\(y\)について解いて\(y=f\left( x\right) \)とすることができるのであれば、\begin{equation*}F\left( x,y\right) =0\Leftrightarrow y=f\left( x\right)
\end{equation*}という関係が成り立つため、このとき、\begin{equation*}
F\left( x,f\left( x\right) \right) =0
\end{equation*}となります。したがってこの場合、\(f\)は方程式\(F\left( x,y\right) =0\)が定める陰関数の候補となります。ただ、方程式\(F\left( x,y\right) =0\)を\(y\)について解くことは必ずしも容易ではないため、陰関数を具体的に特定できるとは限りません。以下の例より明らかです。

例(陰関数を特定できるとは限らない)
関数\(F:\mathbb{R} ^{2}\rightarrow \mathbb{R} \)はそれぞれの\(\left( x,y\right) \in \mathbb{R} ^{2}\)に対して、\begin{equation*}F\left( x,y\right) =x^{6}-4x^{2}-2y^{3}+y
\end{equation*}を定めるものとします。この関数\(F\)から方程式\(F\left( x,y\right) =0\)すなわち、\begin{equation*}x^{6}-4x^{2}-2y^{3}+y=0
\end{equation*}を定義します。この方程式を\(y\)について解くのは容易ではないため、方程式\(F\left( x,y\right) =0\)が定める陰関数を具体的に特定できません。

 

演習問題

問題(陰関数)
関数\(F:\mathbb{R} \times \mathbb{R} \backslash \left\{ 0\right\} \rightarrow \mathbb{R} \)はそれぞれの\(\left( x,y\right) \in \mathbb{R} \times \mathbb{R} \backslash \left\{ 0\right\} \)に対して、\begin{equation*}F\left( x,y\right) =\frac{x}{y^{3}}-1
\end{equation*}を定めるものとします。方程式\(F\left( x,y\right) =0\)が定める陰関数\(y=f\left( x\right) \)を特定してください。
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問題(陰関数)
関数\(F:\mathbb{R} ^{2}\rightarrow \mathbb{R} \)はそれぞれの\(\left( x,y\right) \in \mathbb{R} ^{2}\)に対して、\begin{equation*}F\left( x,y\right) =x^{2}+y^{3}-4
\end{equation*}を定めるものとします。方程式\(F\left( x,y\right) =0\)が定める陰関数\(y=f\left( x\right) \)を特定してください。
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