教材一覧
教材一覧
教材検索
DERIVATIVES OF MULTIVARIABLE FUNCTIONS

偏微分可能性と連続性

目次

Share on twitter
Twitterで共有
Share on email
メールで共有

偏微分可能性と連続性

1変数関数\(f:\mathbb{R} \supset X\rightarrow \mathbb{R} \)が定義域上の点\(a\in X\)において微分可能である場合、\(f\)は点\(a\)において連続であることが保証されます。では、多変数関数\(f:\mathbb{R} ^{n}\supset X\rightarrow \mathbb{R} \)が定義域上の点\(a\in X\)において偏微分可能である場合、\(f\)は点\(a\)において連続であることが保証されるのでしょうか。

例(偏微分可能性と連続性)
1変数関数\(f:\mathbb{R} \supset X\rightarrow \mathbb{R} \)は特別な多変数関数であるため(\(n=1\)の場合の多変数関数)、偏微分可能性を検討できます。\(f\)が点\(a\in X\)において偏微分可能である場合、\begin{equation}\frac{\partial f\left( a\right) }{\partial x}\in \mathbb{R} \quad \cdots (1)
\end{equation}が成り立ちます。その一方で、\begin{eqnarray*}
\frac{\partial f\left( a\right) }{\partial x} &=&\left. \frac{df\left(
x\right) }{dx}\right\vert _{x=a}\quad \because \text{偏微分と微分の関係} \\
&=&\frac{df\left( a\right) }{dx}
\end{eqnarray*}が成り立つため、これと\(\left( 1\right) \)より、\begin{equation*}\frac{df\left( a\right) }{dx}\in \mathbb{R} \end{equation*}を得ます。つまり、\(f\)は点\(a\)において微分可能です。1変数関数に関しては微分可能性は連続性を含意するため、\(f\)が点\(a\)において連続であることが明らかになりました。

1変数関数に関しては、偏微分可能性は微分可能性を含意することが明らかになりました。2つ以上の変数を持つ関数に関しても同様の主張は成り立つのでしょうか。まずは、偏微分可能かつ連続な多変数関数の例を挙げます。

例(偏微分可能性と連続性)
2変数関数\(f:\mathbb{R} ^{2}\rightarrow \mathbb{R} \)はそれぞれの\(\left( x,y\right) \in \mathbb{R} ^{2}\)に対して、\begin{equation*}f\left( x,y\right) =x^{2}+xy+y^{2}
\end{equation*}を定めるものとします。\(f\)は多変数の多項式関数であるため\(\mathbb{R} ^{2}\)上で連続です。同時に、\(f\)は\(\mathbb{R} ^{2}\)上で偏微分可能であり、勾配ベクトル場\(\nabla f:\mathbb{R} ^{2}\rightarrow \mathbb{R} \)はそれぞれの\(\left( x,y\right) \in \mathbb{R} ^{2}\)に対して、\begin{eqnarray*}\nabla f\left( x,y\right) &=&\left( \frac{\partial f\left( x,y\right) }{\partial x},\frac{\partial f\left( x,y\right) }{\partial y}\right) \\
&=&\left( 2x+y,x+2y\right)
\end{eqnarray*}を定めます。

実際には、2つ以上の変数を持つ多変数関数に関しては、偏微分可能性は必ずしも連続性を含意しません。以下の例より明らかです。

例(偏微分可能性と連続性)
2変数関数\(f:\mathbb{R} ^{2}\rightarrow \mathbb{R} \)はそれぞれの\(\left( x,y\right) \in \mathbb{R} ^{2}\)に対して、\begin{equation*}f\left( x,y\right) =\left\{
\begin{array}{cc}
\frac{xy}{x^{2}+y^{2}} & \left( if\ \left( x,y\right) \not=\left( 0,0\right)
\right) \\
0 & \left( if\ \left( x,y\right) =\left( 0,0\right) \right)
\end{array}\right.
\end{equation*}を定めるものとします。\(f\)は偏微分可能であり、変数\(x\)に関する偏導関数\(f_{x}:\mathbb{R} ^{2}\rightarrow \mathbb{R} \)はそれぞれの\(\left( x,y\right) \in \mathbb{R} ^{2}\)に対して、\begin{equation*}f_{x}\left( x,y\right) =\left\{
\begin{array}{cc}
\frac{y^{3}-x^{2}y}{\left( x^{2}+y^{2}\right) ^{2}} & \left( if\
y\not=0\right) \\
0 & \left( if\ y=0\right)
\end{array}\right.
\end{equation*}を定め、変数\(y\)に関する偏導関数\(f_{y}:\mathbb{R} ^{2}\rightarrow \mathbb{R} \)はそれぞれの\(\left( x,y\right) \in \mathbb{R} ^{2}\)に対して、\begin{equation*}f_{y}\left( x,y\right) =\left\{
\begin{array}{cc}
\frac{x^{3}-xy^{2}}{\left( x^{2}+y^{2}\right) ^{2}} & \left( if\
x\not=0\right) \\
0 & \left( if\ x=0\right)
\end{array}\right.
\end{equation*}を定めます(演習問題)。したがって、\(f\)は点\(\left( 0,0\right) \)において偏微分可能です。一方、\(f\)は点\(\left( 0,0\right) \)において連続ではありません。実際、\(f\)の定義より、\begin{equation*}f\left( 0,0\right) =0
\end{equation*}が成り立つ一方で、点\(\left( x,y\right) \)を以下の\(\mathbb{R} ^{2}\)の部分集合\begin{equation*}\left\{ \left( x,y\right) \in \mathbb{R} ^{2}\ |\ x=y\right\}
\end{equation*}上の点をとりながら\(\left( 0,0\right) \)へ限りなく近づける場合、\begin{eqnarray*}\left( x,y\right) \rightarrow \left( 0,0\right) &\Leftrightarrow &\left(
x,x\right) \rightarrow \left( 0,0\right) \quad \because x=y \\
&\Leftrightarrow &x\rightarrow 0
\end{eqnarray*}であることに留意すると、\begin{eqnarray*}
\lim_{\left( x,y\right) \rightarrow \left( 0,0\right) }f\left( x,y\right)
&=&\lim_{\left( x,y\right) \rightarrow \left( 0,0\right) }\left( \frac{xy}{x^{2}+y^{2}}\right) \quad \because f\text{の定義} \\
&=&\lim_{x\rightarrow 0}\left( \frac{x^{2}}{x^{2}+x^{2}}\right) \quad
\because x=y \\
&=&\lim_{x\rightarrow 0}\left( \frac{1}{2}\right) \\
&=&\frac{1}{2}
\end{eqnarray*}となりますが、これは\(f\left( 0,0\right) \)と一致しません。したがって、\(f\)は点\(\left( 0,0\right) \)において連続でないことが明らかになりました。

上の例が示唆するように、2つ以上の変数を持つ多変数関数\(f:\mathbb{R} ^{n}\supset X\rightarrow \mathbb{R} \)が定義域上の点\(a\in X\)において偏微分可能である場合、\(f\)は\(a\)において連続であるとは限りません。偏微分可能性は多変数関数\(f\)をあたかも特定の変数\(x_{k}\)に関する1変数関数とみなした上で\(x_{k}\)を動かした場合の\(f\left(x\right) \)の挙動に関する性質である一方、多変数関数\(f\)の連続性はすべての変数\(x_{1},\cdots ,x_{n}\)を同時に動かした場合の\(f\left( x\right) \)の挙動に関する性質であるため、偏微分可能性は連続性を必ずしも含意しません。したがって、一般の多変数関数に関して微分可能性から連続性を導くためには、偏微分とは異なる微分概念、すなわちすべての変数を同時に動かす状況を想定した微分概念が必要です。これを全微分と呼びますが、全微分に関しては場を改めて解説します。

 

演習問題

問題(偏微分可能性と連続性)
関数\(f:\mathbb{R} ^{2}\rightarrow \mathbb{R} \)はそれぞれの\(\left( x,y\right) \in \mathbb{R} ^{2}\)に対して、\begin{equation*}f\left( x,y\right) =\left\{
\begin{array}{ll}
\frac{xy^{2}}{x^{2}+y^{4}} & \left( if\ \left( x,y\right) \not=\left(
0,0\right) \right) \\
0 & \left( if\ \left( x,y\right) =\left( 0,0\right) \right)
\end{array}\right.
\end{equation*}を定めるものとします。この関数\(f\)は点\(\left(0,0\right) \)において偏微分可能である一方で連続ではないことを示してください。
解答を見る

プレミアム会員専用コンテンツです
ログイン】【会員登録

次回は偏微分可能な関数どうしの演算について解説します。

Share on twitter
Twitterで共有
Share on email
メールで共有
DISCUSSION

質問とコメント

プレミアム会員専用コンテンツです
ログイン】【会員登録

RELATED KNOWLEDGE

関連知識

偏微分
多変数関数の偏微分

多変数関数が与えられたとき、1つの変数以外のすべての変数の値を固定し、あたかも1変数関数であるかのようにみなした上で定義される微分概念を偏微分と呼びます。

偏微分
勾配ベクトル(グラディエント)

多変数関数が定義域上の点においてすべての変数に関して偏微分可能である場合、その点におけるそれぞれの変数に関する偏微分係数を成分とするベクトルが存在します。これを勾配ベクトル(グラディエント)と呼びます。

偏微分
高階の偏微分

多変数関数の偏導関数が偏微分可能である場合には偏導関数の偏導関数が得られますが、これを2階の偏導関数と呼びます。同様に、3階の偏導関数、4階の偏導関数なども定義可能です。これらを高階の偏導関数と呼びます。

ヘッセ行列
ヘッセ行列

多変数関数が任意の2つの変数の組み合わせに関して2階偏微分可能である場合には、2階偏微分係数を成分として持つ正方行列が定義可能です。これをヘッセ行列と呼びます。

偏微分
多変数関数の連続微分可能性

多変数関数が偏微分可能であることに加えてすべての変数に関する偏導関数が連続である場合、その関数は連続微分可能であると言います。

偏微分
偏微分の順序(クレローの定理)

開集合上に定義されたn階連続微分可能な多変数関数に関しては、n個の変数の順序によらず、n階偏導関数はすべて一致します。これをクレローの定理と呼びます。

スカラー場の連続性
方向微分可能性と連続性

スカラー場(多変数関数)が定義域上の点において任意の方向に関して方向微分可能である場合においても、そのスカラー場はその点において連続であるとは限りません。

偏微分
多変数関数の全微分と偏微分の関係

多変数関数が全微分可能である場合には偏微分可能であることが保証される一方、その逆は成り立つとは限りません。ただ、多変数関数が連続微分可能である場合には全微分可能であることが保証される一方、その逆は成り立つとは限りません。

スカラー場の連続性
多変数関数の全微分可能性と連続性

スカラー場(多変数関数)が定義域上の点において全微分可能であるとき、そのスカラー場はその点において連続であることが保証されます。

スカラー場の微分