距離空間という概念を定義します。
距離空間上の点列の極限に関する性質に関して解説します。
距離空間上の点列のすべての項を集めてできる集合が有界である場合、その点列は有界であると言います。収束する点列は常に有界ですが、有界な点列は収束するとは限りません。
部分距離空間上の点列が収束する場合、その点列はもとの距離空間上においても収束します。その一方で、部分距離空間上の点列がもとの距離空間上において収束する場合、その点列は部分空間上において収束するとは限りません。
実ベクトル空間上に定義可能な距離関数としてはユークリッド距離関数、マンハッタン距離関数、チェビシェフ距離関数などが存在しますが、これらの距離が定義された距離空間における点列の収束判定方法について解説します。
部分列について解説します。
距離空間上の点列から無限個の項を抜き出して順番を保ったまま並べることで得られる新たな点列を部分列と呼びます。部分列を合成写像として定義するとともに、部分列の一般項を特定する方法を解説します。
距離空間上の点列が収束することと、その任意の部分列がもとの点列の極限と同じ極限へ収束することは必要十分です。以上の事実は、収束する点列の極限を特定したり、点列が収束しないことを示す上で有用です。
実数空間やユークリッド空間ではボルツァーノ=ワイエルシュトラスの定理が成り立つ一方、距離空間では成り立つとは限りません。つまり、距離空間上の有界点列は収束する部分列を持つとは限りません。
コーシー列について解説します。
距離空間上のコーシー列は有界である一方、有界な点列はコーシー列であるとは限りません。したがって、有界ではない点列はコーシー列ではありません。
距離空間上の収束点列はコーシー列であることが保証されますが、コーシー列は収束するとは限りません。ある距離空間において任意のコーシー列がその距離空間上の点に収束することが保証される場合、そのような距離空間は完備であると言います。
距離空間の部分集合が全有界集合であることと、その集合上の任意の点列がコーシー列であるような部分列を持つことは必要十分です。また、距離空間が全有界であることと、その距離空間上の任意の点列がコーシー列であるような部分列を持つことは必要十分です。
以下の分野の知識があると本節の内容を円滑に学習できます。
実数を特徴づける公理を出発点とした上で、実数空間上に定義された演算、順序、そして実数の連続性などについて議論します。さらに、数列や収束列、実数空間上の位相、実数空間上に定義された関数の性質などについて議論します。
本節で得た知識は以下の分野を学ぶ上での土台になります。
ユークリッド空間上の無限個の点を順番に並べたものを点列と呼びます。点列は実数列を一般化した概念です。ここでは点列が収束することの意味を定義した上で、収束点列の性質について解説します。
実数空間もしくはその部分集合を定義とし、ユークリッド空間を終集合とする写像を曲線やベクトル値関数などと呼びます。ここでは曲線の収束や連続性などについて解説します。
多変数関数(スカラー場)という概念を定義するとともに、多変数関数が有限な実数へ収束すること、および連続であることの意味を定義した上で、連続な多変数関数の性質について解説します。
本節では多変数のベクトル値関数(ベクトル場)が収束することの意味や、連続であることの意味を解説します。本節で得られる知識は後に多変数のベクトル値関数の微分について学ぶ際の前提知識となります。