行列の定義
実数を長方形に配列したものを行列と呼びます。行列を構成する横並びの実数の組を行列の行と呼び、行列を構成する縦並びの実数の組を行列の列と呼びます。
行列と呼ばれる概念を定義するとともに、関連する基本概念について解説します。
実数を長方形に配列したものを行列と呼びます。行列を構成する横並びの実数の組を行列の行と呼び、行列を構成する縦並びの実数の組を行列の列と呼びます。
同じ大きさを持つ2つの行列が与えられたとき、対応する成分どうしを足すことにより得られる新たな行列を行列どうしの和と呼びます。また、2つの行列に対してそれらの和を定める演算を行列加法と呼びます。行列集合は行列加法に関して可換群をなします。
同じ大きさを持つ2つの行列が与えられたとき、対応する成分どうしを引くことにより得られる新たな行列を行列どうしの差と呼びます。また、2つの行列に対してそれらの差を定める演算を行列減法と呼びます。
行列とスカラーが与えられたとき、行列のそれぞれの成分をスカラー倍することで新たに得られる行列をもとの行列のスカラー倍と呼びます。また、スカラーと行列に対してスカラー倍を定める演算をスカラー乗法と呼びます。
列の個数と行の個数が一致する2つの行列に対して行列の乗法と呼ばれる演算を定義した上で、その基本的な性質を確認します。
行列のij成分とji成分を入れ替えることで得られる行列を転置行列と呼びます。転置の基本的な性質を確認します。
行の個数と列の個数が一致する行列を正方行列と呼びます。
実数を正方形に配置したものを正方行列と呼びます。三角行列、対角行列、単位行列などはいずれも正方行列です。
正方行列Aに対して、それとの積が単位行列になるような正方行列Bが存在する場合、Aを正則行列や可逆行列などと呼び、BをAの逆行列と呼びます。
実行列空間について解説します。
実数を成分とする行列からなる集合上に行列加法とスカラー乗法と呼ばれている演算が定義されている場合、そのような集合を実行列空間と呼びます。実行列空間はベクトル空間です。
実行列空間の部分空間と呼ばれる概念を定義するとともに、部分空間の具体例を提示し、部分空間であることを判定する方法について解説します。
実行列空間において、行列のスカラー倍どうしの和として表される行列を線型結合と呼びます。実行列空間の部分集合に属する行列の線型結合をすべて集めてできる集合を線型スパンと呼びます。
実行列空間において、行列どうしが線型従属ないし線型独立であることを定義するとともに、その意味を解説します。
実行列空間を張る線型独立な行列集合を基底と呼びます。また、実行列空間を張るために必要な行列の個数の最小値を次元と呼びます。
行列のすべての行(列)からなる集合の線型スパンを行列の行空間(列空間)と呼び、行空間(列空間)の次元を行列の行階数(列階数)と呼びます。行階数と列階数は常に一致するため、その共通の値を行列の階数と呼びます。
行列の基本操作や階段行列などについて解説します。
行列の2つの行を入れ替える、特定の行に非ゼロのスカラーを掛ける、ある行に別の行のスカラー倍を加える、などの操作を総称して行基本操作と呼びます。
単位行列に対して行基本操作の中の1つを適用することに得られる行列を行基本行列と呼びます。行列に対して行基本操作を適用することは、基本行列とその行列の行列積をとることと操作として一致します。
行列の2つの列を入れ替える、特定の列に非ゼロのスカラーを掛ける、ある列に別の列のスカラー倍を加える、などの操作を総称して列基本操作と呼びます。
階段行列と呼ばれる行列のクラスを定義するとともに、基本行操作を通じて行列を階段行列へ変形する方法を解説します。
行列にガウス・ジョルダンの消去法を適用することで得られる行既約な階段行列はもとの行列と行同値であるような唯一の行既約な階段行列です。その階段行列に含まれる非ゼロベクトルな行の個数はもとの行列の階数と一致します。
正方行列の行標準形が単位行列であることは、その行列が正則であるための必要十分条件です。行標準形を導出するための行簡約をそのまま単位行列に適用すれば逆行列が得られます。
行列の行空間の基底、行列の列空間の基底、ベクトル集合の線型スパンの基底などを特定する方法について解説します。
本節を学ぶ上で必要となる前提知識はありません。
本節で得た知識は以下の分野を学ぶ上での基礎になります。
命題論理の基本単位が命題変数であったのに対し、述語論理では命題関数と呼ばれる概念が基本単位となります。それにより扱うことのできる言明の範囲が広がるとともに、量化と呼ばれる操作が可能になります。