不確実性下の意思決定

現実の様々な場面において行動と結果は1対1で対応しているとは限りません。ある行動を選択した場合、実際に起こり得る結果として複数の候補が存在し、なおかつ、その中のどの結果が実際に起こるかが完全に予測できない状況、すなわちランダムネスが成立している状況が起こり得るということです。以上の状況下における最適な意思決定について考えます。

学習内容

不確実性の定式化

リスクが存在する状況における選択肢をクジと呼ばれる概念として定式化します。

クジ(リスク下での選択肢の定式化)

リスクと不確実性の違いを解説するとともに、リスクが存在する状況における選択肢をクジと呼ばれる概念として定式化します。

複合クジと結果主義の仮定

リスクが存在する状況における選択肢をクジと呼ばれる概念として表現しましたが、何らかの確率分布にもとづいてクジをランダムに選ぶことも考えられるため、そのような意思決定を複合クジと呼ばれる概念として表現します。

期待値最大化原理の妥当性(サンクトペテルブルクのパラドクス)

行動を選択した場合に起こり得る結果が数値として表現できる場合には、クジを選択すれば結果の期待値を計算できます。ただ、人は期待値を最大化するような選択を行うとは限りません。

不確実性の評価

意思決定主体が持つ不確実性に対する好みの体系を選好関係や効用関数、期待利得関数などとして定式化します。

期待効用定理

意思決定主体の選好関係を表す効用関数や期待効用関数が存在するための条件を明らかにします。

不確実性を評価する選好関係の完備性

2つのクジを任意に選んだとき、意思決定主体が一方を他方以上に好むか、もしくは両者を同じ程度望ましいものと考えている場合には、主体の選好関係は完備性を満たすと言います。

不確実性を評価する選好関係の推移性

不確実性に直面する意思決定主体がクジどうしを比較する選好が循環しないことを保証するために、選好関係に対して推移性と呼ばれる性質を要求します。選好関係を表す効用関数が存在する場合、その選好は推移性を満たします。

不確実性を評価する選好関係の連続性

不確実性に直面する意思決定主体がクジどうしを比較する選好が連続的に変化することを保証するために、選好関係に対して連続性と呼ばれる性質を要求します。選好関係を表す連続な効用関数や期待効用関数が存在する場合、その選好は連続性を満たします。

不確実性を評価する選好関係の独立性

不確実性に直面する意思決定主体がクジどうしを比較する選好が満たすべき性質の1つである独立性の概念を定義するとともに、その性質を解説します。

期待効用定理(期待効用関数の存在条件)

不確実性に直面する意思決定主体がクジどうしを比較する選好を表す効用関数や期待効用関数が存在するための条件を明らかにします。

リスク選好

意思決定主体の選好関係を表す効用関数や期待効用関数が存在するための条件を明らかにします。

リスク回避的・リスク中立的・リスク愛好的

不確実性に直面する意思決定主体によるリスクに対する態度として、リスク回避的、リスク中立的、リスク愛好的などの概念を定義します。

クジの確実同値額(確実性等価)

主体にとってクジLを選択することと結果xを確実に得ることが無差別である場合、xをLの確実性等価と呼びます。クジの確実性等価とクジのもとでの結果の期待値を比較することにより、主体のリスク選好を特定できます。

BDMメカニズム(クジの確実同値額の測定実験)

主体にとってのクジの確実性等価を測定するためにはBDMメカニズム(Becker-DeGroot-Marschakメカニズム)と呼ばれる実験手法が有効です。BDMメカニズムは耐戦略性を満たすため、主体にとってクジの確実性等価を正直に表明することが支配戦略になります。

クジのリスクプレミアム(保険プレミアム)

クジのもとでの結果の期待値と確実同値額の差を、そのクジのリスクプレミアムと呼びます。クジのリスクプレミアムの符号を観察することにより、主体のリスク選好を特定できます。

クジの確率プレミアム

ある結果を確実に得ることと、その結果より望ましい結果と望ましくない結果が等確率で起こるクジを無差別にするための確率の調整幅を確率プレミアムと呼びます。確率プレミアムの符号を観察することにより、主体のリスク選好を特定できます。

アロー・プラットの絶対的リスク回避度

アロー・プラットの絶対的リスク回避度の符号を通じて主体のリスク選好(リスク回避的・中立的・愛好的)を判定できます。また、絶対的リスク回避度の値を通じてリスク回避の度合いを比較できます。

学習ガイド

経済学のための数学|経済学部生が学ぶべき数学と学習順序

経済学では、市場や企業、消費者の行動を数学的に分析します。そのため、大学レベルの経済学を理解するには数学の知識が欠かせません。本記事では、経済学を学ぶために必要な数学分野とその学習順序を解説します。

最新の議論

関連分野

消費者理論

消費者理論は、消費者が限られた所得の中でどのように商品やサービスを選択するのかを分析するミクロ経済学の基礎分野です。選好、効用、予算制約、無差別曲線、需要関数などの基本概念を通じて、合理的な意思決定の仕組みを体系的に学びます。

生産者理論

生産者理論は、企業が限られた資源を用いてどのように生産を行い、利潤を最大化するのかを分析するミクロ経済学の基礎分野です。生産関数、費用関数、利潤最大化、供給関数などの基本概念を通じて、企業の合理的な意思決定の仕組みを体系的に学びます。

市場均衡理論

市場均衡理論は、需要と供給の相互作用によって価格や取引量がどのように決定されるのかを分析するミクロ経済学の基礎分野です。部分均衡分析や一般均衡理論を通じて、市場がどのように資源を配分し、経済全体の均衡が成立する仕組みを体系的に学びます。

不完全競争市場

市場において商品が少数の生産者によって供給されている場合や商品の差別化が行われている場合などにはプライス・テイカーの仮定は成り立たず、生産者は価格を主体的に操作できます。そのような不完全競争市場における生産者の行動を分析します。

このページの目次