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不確実性下の意思決定

不確実性を評価する選好関係の連続性

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連続性を満たす選好関係

クジ集合\(\mathcal{L}\)上に選好関係\(\succsim \)が定義されているとき、任意のクジ\(L,L^{\prime },L^{\prime \prime }\in \mathcal{L}\)に対して、以下の2つの集合\begin{eqnarray*}U\left( L\right) &=&\left\{ c\in \left[ 0,1\right] \ |\ cL^{\prime }+\left(
1-c\right) L^{\prime \prime }\succsim L\right\} \\
L\left( L\right) &=&\left\{ c\in \left[ 0,1\right] \ |\ L\succsim
cL^{\prime }+\left( 1-c\right) L^{\prime \prime }\right\}
\end{eqnarray*}がともに\(\mathbb{R} \)上の閉集合であるならば、\(\succsim \)は連続性(continuity)を満たすと言います。

閉集合について復習しながら\(\succsim \)の連続性の意味を確認します。閉集合は様々な形で表現できますが、ここでは数列を用いた定義を採用します。クジ\(L,L^{\prime },L^{\prime \prime }\in \mathcal{L}\)を任意に選んだ上で、以下の集合\begin{equation*}U\left( L\right) =\left\{ c\in \left[ 0,1\right] \ |\ cL^{\prime }+\left(
1-c\right) L^{\prime \prime }\succsim L\right\}
\end{equation*}を定義します。これは\(\mathbb{R} \)の部分集合です。その上で、\(U\left( L\right) \)の点を項とする収束数列\(\left\{c_{n}\right\} \)を任意に選びます。つまり、\begin{eqnarray*}&&\left( a\right) \ \forall n\in \mathbb{N} :c_{n}\in U\left( L\right) \\
&&\left( b\right) \ \lim_{n\rightarrow \infty }c_{n}\in \mathbb{R} \end{eqnarray*}をともに満たす数列\(\left\{ c_{n}\right\} \)を任意に選ぶということです。一般に、このような収束数列の極限は\(U\left( L\right) \)の点であるとは限りませんが、仮にこのような収束数列の極限が\(U\left( L\right) \)の点であることが保証されるならば、すなわち、\begin{equation*}\left( c\right) \ \lim_{n\rightarrow \infty }c_{n}\in U\left( L\right)
\end{equation*}が成り立つならば、\(U\left( L\right) \)は\(\mathbb{R} \)上の閉集合であると言います。連続性の意味を理解するために、完備性を満たす一方で連続性を満たさない選好関係\(\succsim \)のもとでどのようなことが起こり得るかを考えます。連続性の定義より、この場合、\(\left( a\right) ,\left( b\right) \)を満たす一方で\(\left( c\right) \)を満たさない数列\(\left\{ c_{n}\right\} \)が存在するはずです。集合\(U\left( L\right) \)の定義より、数列\(\left\{ c_{n}\right\} \)が\(\left( a\right) \)を満たすことは、\begin{equation*}\forall n\in \mathbb{N} :c_{n}L^{\prime }+\left( 1-c_{n}\right) L^{\prime \prime }\succsim L
\end{equation*}が成り立つことを意味します。\(\left( b\right) \)より\(\left\{ c_{n}\right\} \)は収束するため、その極限\(\lim\limits_{n\rightarrow\infty }c_{n}\)は有限な実数であるとともに、\(\lim\limits_{n\rightarrow \infty }c_{n}\)から限りなく近い場所に\(\left\{ c_{n}\right\} \)の項が無数に存在します。言い換えると、\(\lim\limits_{n\rightarrow \infty }c_{n}\)から限りなく近い場所にある無数個の実数\(c_{n}\)について、\begin{equation*}c_{n}L^{\prime }+\left( 1-c_{n}\right) L^{\prime \prime }\succsim L
\end{equation*}が成り立つということです。一方、\(\left( c\right) \)が成り立たないことは、\begin{equation*}\lim_{n\rightarrow \infty }c_{n}L^{\prime }+\left( 1-\lim_{n\rightarrow
\infty }c_{n}\right) L^{\prime \prime }\succsim L
\end{equation*}を意味しますが、\(\succsim \)が完備性を満たす場合には排除性が成り立つため、このとき、\begin{equation*}L\succ \lim_{n\rightarrow \infty }c_{n}L^{\prime }+\left(
1-\lim_{n\rightarrow \infty }c_{n}\right) L^{\prime \prime }
\end{equation*}が成り立ちます。

結論を整理すると、選好関係\(\succsim \)が完備性を満たす一方で連続性を満たさない場合、実数\(\lim\limits_{n\rightarrow \infty }c_{n}\)に限りなく近い無数個の実数\(c_{n}\)について、クジ\(c_{n}L^{\prime }+\left( 1-c_{n}\right) L^{\prime \prime }\)はクジ\(L\)以上に望ましいのですが、それら無数個の実数\(c_{n}\)に限りなく近い実数\(\lim\limits_{n\rightarrow \infty }c_{n}\)については、先とは反対に、クジ\(\lim\limits_{n\rightarrow \infty }L^{\prime }+\left(1-\lim\limits_{n\rightarrow \infty }\right) L^{\prime \prime }\)はクジ\(L\)よりも望ましくないということになります。つまり、2つのクジ\(L^{\prime },L^{\prime \prime }\)を組み合せる割合をわずかに変化させただけで、クジに対する好みが大きく変化してしまうということです。逆に言えば、連続性の仮定は意思決定主体によるクジどうしを比較する選好が連続的に変化することを保証します。もう一方の集合\begin{equation*}L\left( L\right) =\left\{ c\in \left[ 0,1\right] \ |\ L\succsim cL^{\prime
}+\left( 1-c\right) L^{\prime \prime }\right\}
\end{equation*}についても同様の議論が成立します。

 

連続性の含意

選好関係\(\succsim \)の完備性と連続性から、無差別関係に関する以下の命題\begin{equation*}\forall L,L^{\prime },L^{\prime \prime }\in \mathcal{L}:\left[ L^{\prime
}\succsim L\succsim L^{\prime \prime }\Rightarrow \exists c\in \left[ 0,1\right] :L\sim cL^{\prime }+\left( 1-c\right) L^{\prime \prime }\right] \end{equation*}を導くことができます。つまり、\(L^{\prime }\succsim L\succsim L^{\prime \prime }\)を満たす3つのクジ\(L,L^{\prime },L^{\prime \prime }\)を任意に選んだとき、その中で最も望ましいクジ\(L^{\prime }\)と最も望ましくないクジ\(L^{\prime \prime }\)を適当な割合で組み合せれば、2番目に望ましいクジ\(L\)と同じ程度に望ましいクジ\(cL^{\prime }+\left(1-c\right) L^{\prime \prime }\)を作れることが保証されるということです。

命題(連続性の含意)
クジ集合\(\mathcal{L}\)上の選好関係\(\succsim \)が完備性と連続性を満たす場合には、\begin{equation*}\forall L,L^{\prime },L^{\prime \prime }\in \mathcal{L}:\left[ L^{\prime
}\succsim L\succsim L^{\prime \prime }\Rightarrow \exists c\in \left[ 0,1\right] :L\sim cL^{\prime }+\left( 1-c\right) L^{\prime \prime }\right] \end{equation*}が成り立つ。

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効用関数を用いた連続性の特徴づけ

結果集合\(X\)が有限集合\begin{equation*}X=\left\{ x_{1},\cdots ,x_{N}\right\}
\end{equation*}である場合、それぞれのクジ\(L\in \mathcal{L}\)を\(N\)次元ベクトル\begin{equation*}L=\left( L\left( x_{1}\right) ,\cdots ,L\left( x_{N}\right) \right) \in \mathbb{R} ^{N}
\end{equation*}と同一視できるため、クジ集合\(\mathcal{L}\)上の選好関係\(\succsim \)を表す効用関数\(U:\mathcal{L}\rightarrow \mathbb{R} \)が存在する場合、それは\(\mathbb{R} ^{N}\)次元ベクトルを変数として持つ多変数関数となります。したがって、その連続性を議論することができます。

具体的には、効用関数\(U:\mathbb{R} ^{N}\supset \mathcal{L}\rightarrow \mathbb{R} \)が点\(a\in \mathcal{L}\)において連続であることとは、\(U\)が点\(a\)の周辺の任意の点において定義されているとともに、\(L\rightarrow a\)のときに\(U\left( L\right) \)が有限な実数へ収束するとともに、そこでの極限が\(U\left( a\right) \)と一致すること、すなわち、\begin{eqnarray*}&&\left( a\right) \ \lim_{L\rightarrow a}U\left( L\right) \in \mathbb{R} \\
&&\left( b\right) \ \lim_{L\rightarrow a}U\left( L\right) =U\left( a\right)
\end{eqnarray*}がともに成り立つことを意味します。イプシロン・デルタ論法を用いてこれを表現すると、\begin{equation*}
\forall \varepsilon >0,\ \exists \delta >0,\ \forall L\in \mathcal{L}:\left[
d\left( L,a\right) <\delta \Rightarrow \left\vert U\left( L\right) -U\left(
a\right) \right\vert <\varepsilon \right] \end{equation*}となります。ただし、\(d\left( L,a\right) \)は2つの点\(L,a\)の間のユークリッド距離であり、\begin{equation*}d\left( L,a\right) =\sqrt{\sum_{n=1}^{N}\left( L\left( x_{n}\right)
-a_{i}\right) ^{2}}
\end{equation*}です。点列を用いて同じことを表現することもできます。つまり、点\(a\in \mathcal{L}\)に収束する\(\mathcal{L}\)上の点列\(\left\{L_{v}\right\} \)を任意に選んだときに、その点列と効用関数\(U\)を用いて定義される数列\(\left\{ U\left(L_{v}\right) \right\} \)が点\(U\left( a\right) \in \mathbb{R} \)に収束することは、\(U\)が点\(a\)において連続であるための必要十分条件です。

クジ集合\(\mathcal{L}\)上に定義された効用関数\(U:\mathcal{L}\rightarrow \mathbb{R} \)が定義域\(\mathcal{L}\)上の任意の点において連続であるとき、\(U\)は連続(continuous)であるといいます。

繰り返しになりますが、クジ集合\(\mathcal{L}\)上の選好関係\(\succsim \)が連続性を満たすこととは、任意のクジ\(L,L^{\prime },L^{\prime \prime }\in \mathcal{L}\)に対して、以下の2つの集合\begin{eqnarray*}U\left( L\right) &=&\left\{ c\in \left[ 0,1\right] \ |\ cL^{\prime }+\left(
1-c\right) L^{\prime \prime }\succsim L\right\} \\
L\left( L\right) &=&\left\{ c\in \left[ 0,1\right] \ |\ L\succsim
cL^{\prime }+\left( 1-c\right) L^{\prime \prime }\right\}
\end{eqnarray*}がともに\(\mathbb{R} \)上の閉集合であることを意味します。この選好関係\(\succsim \)を表す効用関数\(U:\mathcal{L}\rightarrow \mathbb{R} \)が存在するとともに、それが連続関数である場合、\(\succsim \)は連続性を満たすことが保証されます。

命題(連続な効用関数によって表現される選好関係の連続性)
結果集合\(X\)が有限集合であるとともに、クジ集合\(\mathcal{L}\)上の選好関係\(\succsim \)を表現する効用関数\(U:\mathcal{L}\rightarrow \mathbb{R} \)が存在するとともに\(U\)が連続関数であるならば、\(\succsim \)は連続性を満たす。
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結果集合\(X\)が有限集合であるとともに、クジ集合\(\mathcal{L}\)上の選好関係\(\succsim \)を表す効用関数\(U:\mathcal{L}\rightarrow \mathbb{R} \)が存在するものとします。2つのクジ\(L,L^{\prime }\in \mathcal{L}\)を任意に選び、さらに、以下の条件\begin{equation*}0\leq c\leq 1
\end{equation*}を満たす実数\(c\in \mathbb{R} \)を任意に選びます。このとき、以下の関係\begin{equation*}U\left( cL+\left( 1-c\right) L^{\prime }\right) =cU\left( L\right) +\left(
1-c\right) U\left( L^{\prime }\right)
\end{equation*}が常に成り立つ場合、\(U\)は線型性(linearity)を満たすと言います。\(U\)が線型性を満たすことは\(U\)が期待効用関数であるための必要十分条件です。また、以下で示すように、\(U\)が線型性を満たす場合には\(U\)は連続関数です。したがって、選好関係を表す期待効用関数が存在する場合にも、選好関係は連続性を満たします。

命題(期待効用関数によって表現される選好関係の連続性)
結果集合\(X\)が有限集合であるとともに、クジ集合\(\mathcal{L}\)上の選好関係\(\succsim \)を表現する期待効用関数\(U:\mathcal{L}\rightarrow \mathbb{R} \)が存在する場合には、\(\succsim \)は連続性を満たす。
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以上の命題は、選好関係を表す効用関数ないし期待効用関数が存在することを前提とした主張であることに注意してください。選好関係を表す効用関数や期待効用関数が存在するための条件については場を改めて詳しく解説します。

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