集合の定義と表記
与えられた条件を満たす対象をすべて集めたものを集合と呼びます。集合は命題関数から定義することもできます。集合の表記方法としては、外延的表記と内包的表記があります。
集合と呼ばれる概念を定義した上で、代表的な集合について解説します。
与えられた条件を満たす対象をすべて集めたものを集合と呼びます。集合は命題関数から定義することもできます。集合の表記方法としては、外延的表記と内包的表記があります。
集合 A,B について、A のすべての要素が同時に B の要素でもある場合には A は B の部分集合であると言います。
集合A,Bについて、Aの要素とBの要素が完全に一致する場合にはAとBは等しいといい、そのことをA=Bで表します。AとBが等しいことを、AがBの部分集合であるとともにBがAの部分集合であることとして表現することもできます。
議論の対象となるすべての要素からなる集合を全体集合と呼びます。全体集合は命題関数の変数の定義域と実質的に同じ概念です。
要素を1つも持たない集合を空集合と呼びます。空集合を特徴づける論理式は恒偽式です。空集合は任意の集合の部分集合です。
命題関数の真理集合として集合を定義するアプローチはラッセルのパラドクスと呼ばれる問題を引き起こします。このような問題を解消する一つの方法は、集合という概念を公理から定義するというものです。
集合を被演算子とする演算について解説します。
集合 A に属さない要素からなる集合を A の補集合と呼びます。集合 A が命題関数 P(x) から内包的に定義されるとき、A の補集合とは、命題 P(x) が偽になるような要素 x からなる集合です。
集合 A,B の双方に属する要素からなる集合を A と B の共通部分と呼びます。集合 A が命題関数 P(x) から、集合 B が命題関数 Q(x) からそれぞれ内包的に定義されるとき、A と B の共通部分は 2 つの命題 P(x), Q(x) がともに真になるような要素 x からなる集合です。
集合 A,B の少なくとも一方に属する要素からなる集合を A と B の和集合と呼びます。 A が命題関数 P(x) から、集合 B が命題関数 Q(x) からそれぞれ内包的に定義されるとき、A と B の和集合は 2 つの命題 P(x),Q(x) の少なくとも一方が真になるような要素 x からなる集合です。
集合 A に属するが集合 B には属さない要素からなる集合を A と B の差集合と呼び、これを A\B と表記します。A が命題関数 P(x) から、集合 B が命題関数 Q(x) からそれぞれ内包的に定義されるとき、A と B の差集合は P(x) が真で Q(x) が偽であるような要素 x からなる集合です。
集合 A,B のどちらか一方だけに属する要素からなる集合を A と B の対称差と呼びます。集合 A が命題関数 P(x) から、集合 B が命題関数 Q(x) から内包的に定義されるとき、A と B の対称差は P(x) と Q(x) のどちらか一方だけが真になるような要素 x からなる集合です。
集合を変形していく上で役に立つ代表的な法則を紹介します。
集合どうしが等しいことを示す = を二項関係とみなしたとき、これは同値関係です。つまり、集合の相等関係は反射律、対称律、推移律を満たします。
同じ集合どうしの共通部分や和集合をとると、それはいずれももとの集合と等しい集合になります。共通部分や和集合が満たすこのような性質をベキ等律と呼びます。
和集合や共通部分は集合の順序を入れ替えても集合として等しいままです。共通部分や和集合が満たすこのような性質を交換律と呼びます。
集合 A,B,C が与えられたとき、その中から隣り合う 2 つの集合 A,B を選んで共通部分を適用すれば A∩B を得ます。この集合と残された集合 C に対して再び共通部分を作用させれば (A∩B)∩C を得ます。一方、最初に B,C に対して共通部分を作用させれば最終的に A∩(B∩C) を得ます。この 2 つの集合が一致するというのが結合律の主張です。和集合∪に関しても同様の性質が成り立ちます。
和集合と共通部分の間には分配律と呼ばれる性質が成り立ちます。
集合 A が与えられたとき、それと任意の集合 B の和集合 A∪B をとります。さらに、この集合ともとの集合 A の共通部分 A∩(A∪B)をとると、集合 A∪B は吸収されて A に戻ってしまうというのが吸収律の主張です。和集合と共通部分を入れ替えた主張も同じく成り立ちます。
和集合の補集合は補集合の共通部分に等しく、共通部分の補集合は補集合の和集合に等しくなります。これをド・モルガンの法則と呼びます。
ある集合とその補集合の共通部分は空集合になります。また、ある集合とその補集合の和集合は全体集合になります。これを補集合法則と呼びます。
任意の集合に対して、空集合との共通部分をとると空集合になり、全体集合との和集合をとると全体集合になります。また、任意の集合に対して、空集合との和集合や全体集合との共通部分をとるといずれももとの集合に戻ります。これを恒等法則と呼びます。
集合の補集合は集合であるため、さらにその補集合をとることができます。そして、この集合はもとの集合と等しいことが保証されます。補集合が満たすこのような性質を二重補集合の法則と呼びます。
集合の包含関係について、その逆、裏、対偶を定義するとともに、包含関係とその対偶は必要十分であり、逆と裏は必要十分であることを示します。
等しい 2 つの集合が与えられたとき、それらの双対をとるとそれらもまた等しくなります。これを双対原理と呼びます。
集合を要素として持つ集合を集合族と呼びます。
ある集合の要素がいずれも集合であるとき、それを集合族や集合の集合などと呼びます。集合族には有限集合族、可算集合族、添字付けられた集合族などがあります。
集合族の要素がいずれも集合 A の部分集合であるとき、その集合族を A の部分集合族と呼びます。特に、集合 A のすべての部分集合を要素として持つ A の部分集合族を A のベキ集合と呼びます。
集合族の要素であるすべての集合に含まれる要素からなる集合を集合族の共通部分と定義します。集合族の共通部分は、その集合族の要素である任意の集合に部分集合として含まれる集合の中でも最大のものです。
集合族の要素である少なくとも1つの集合に含まれる要素からなる集合を集合族の和集合と定義します。集合族の和集合は、その集合族の要素である任意の集合を部分集合として含む集合の中でも最小のものです。
通常の集合演算に関して成り立つ法則が、集合族の集合演算においても成り立ちます。ここでは集合族演算に関する分配律とド・モルガンの法則を示します。
集合や集合族の直積などを定義します。
2 つの要素 a,b の順序を考慮して組にしたものを順序対と呼びます。また、集合 A,B の要素からなるすべての順序対からなる集合を A と B の直積と呼びます。
有限集合族を構成するそれぞれの集合の要素からなる n-組 をすべて集めてできる集合を有限集合族の直積と呼びます。
可算集合族を構成するそれぞれの集合の要素からなる無限列をすべて集めてできる集合を可算集合族の直積と呼びます。
集合族を構成するそれぞれの集合の要素からなる添字集合によって添字付けられた成文の族をすべて集めてできる集合を集合族の直積と呼びます。
集合の直積の補集合は、個々の集合の補集合の直積と一致するとは限りません。集合の直積の補集合は、個々の集合の補集合と全体集合の直積どうしの和集合として表現することはできます。
直積どうしの差集合は差集合どうしの直積と一致するとは限りません。直積どうしの差集合は、差集合との直積どうしの和集合として表現することはできます。
無限個の非空集合が与えられたとき、それぞれの集合から要素を 1 つずつ順番に選び出そうとしても、集合の個数は無限であるため、そのような操作が可能であるかどうかは必ずしも明らかではありません。そのような理念上の操作が可能であることを認めることを選択公理と呼びます。
集合列の上極限・下極限・極限について解説します。
集合列の要素である無限個の集合の要素を集めてできる集合をもとの集合列の上極限と呼びます。また、集合列の要素である有限個の集合を除いたすべての集合の要素を集めてできる集合をもとの集合列の下極限と呼びます。
集合に関する確認テストです。
集合に関する確認テストです。難易度は学部の中間試験程度です。
集合に関する確認テストです。難易度は学部の中間試験程度です。