集合

集合論は数学の土台です。あらゆる数学的概念は集合を用いて記述できます。ここでは集合を定義した上で、集合演算とその性質について学び、さらには集合族や直積集合、関係などについて学びます。

学習内容

集合

集合と呼ばれる概念を定義した上で、代表的な集合について解説します。

集合の定義と表記

与えられた条件を満たす対象をすべて集めたものを集合と呼びます。集合は命題関数から定義することもできます。集合の表記方法としては、外延的表記と内包的表記があります。

部分集合(包含関係)

集合 A,B について、A のすべての要素が同時に B の要素でもある場合には A は B の部分集合であると言います。

集合の相等(等しい集合)

集合A,Bについて、Aの要素とBの要素が完全に一致する場合にはAとBは等しいといい、そのことをA=Bで表します。AとBが等しいことを、AがBの部分集合であるとともにBがAの部分集合であることとして表現することもできます。

全体集合

議論の対象となるすべての要素からなる集合を全体集合と呼びます。全体集合は命題関数の変数の定義域と実質的に同じ概念です。

空集合

要素を1つも持たない集合を空集合と呼びます。空集合を特徴づける論理式は恒偽式です。空集合は任意の集合の部分集合です。

ラッセルのパラドクス

命題関数の真理集合として集合を定義するアプローチはラッセルのパラドクスと呼ばれる問題を引き起こします。このような問題を解消する一つの方法は、集合という概念を公理から定義するというものです。

集合演算

集合を被演算子とする演算について解説します。

補集合

集合 A に属さない要素からなる集合を A の補集合と呼びます。集合 A が命題関数 P(x) から内包的に定義されるとき、A の補集合とは、命題 P(x) が偽になるような要素 x からなる集合です。

共通部分

集合 A,B の双方に属する要素からなる集合を A と B の共通部分と呼びます。集合 A が命題関数 P(x) から、集合 B が命題関数 Q(x) からそれぞれ内包的に定義されるとき、A と B の共通部分は 2 つの命題 P(x), Q(x) がともに真になるような要素 x からなる集合です。

和集合

集合 A,B の少なくとも一方に属する要素からなる集合を A と B の和集合と呼びます。 A が命題関数 P(x) から、集合 B が命題関数 Q(x) からそれぞれ内包的に定義されるとき、A と B の和集合は 2 つの命題 P(x),Q(x) の少なくとも一方が真になるような要素 x からなる集合です。

差集合

集合 A に属するが集合 B には属さない要素からなる集合を A と B の差集合と呼び、これを A\B と表記します。A が命題関数 P(x) から、集合 B が命題関数 Q(x) からそれぞれ内包的に定義されるとき、A と B の差集合は P(x) が真で Q(x) が偽であるような要素 x からなる集合です。

対称差

集合 A,B のどちらか一方だけに属する要素からなる集合を A と B の対称差と呼びます。集合 A が命題関数 P(x) から、集合 B が命題関数 Q(x) から内包的に定義されるとき、A と B の対称差は P(x) と Q(x) のどちらか一方だけが真になるような要素 x からなる集合です。

集合の変形

集合を変形していく上で役に立つ代表的な法則を紹介します。

集合の相等変換

集合どうしが等しいことを示す = を二項関係とみなしたとき、これは同値関係です。つまり、集合の相等関係は反射律、対称律、推移律を満たします。

集合演算におけるベキ等律

同じ集合どうしの共通部分や和集合をとると、それはいずれももとの集合と等しい集合になります。共通部分や和集合が満たすこのような性質をベキ等律と呼びます。

集合演算における交換律

和集合や共通部分は集合の順序を入れ替えても集合として等しいままです。共通部分や和集合が満たすこのような性質を交換律と呼びます。

集合演算における結合律

集合 A,B,C が与えられたとき、その中から隣り合う 2 つの集合 A,B を選んで共通部分を適用すれば A∩B を得ます。この集合と残された集合 C に対して再び共通部分を作用させれば (A∩B)∩C を得ます。一方、最初に B,C に対して共通部分を作用させれば最終的に A∩(B∩C) を得ます。この 2 つの集合が一致するというのが結合律の主張です。和集合∪に関しても同様の性質が成り立ちます。

集合演算における分配律

和集合と共通部分の間には分配律と呼ばれる性質が成り立ちます。

集合演算における吸収律

集合 A が与えられたとき、それと任意の集合 B の和集合 A∪B をとります。さらに、この集合ともとの集合 A の共通部分 A∩(A∪B)をとると、集合 A∪B は吸収されて A に戻ってしまうというのが吸収律の主張です。和集合と共通部分を入れ替えた主張も同じく成り立ちます。

集合演算におけるド・モルガンの法則

和集合の補集合は補集合の共通部分に等しく、共通部分の補集合は補集合の和集合に等しくなります。これをド・モルガンの法則と呼びます。

全体集合・空集合と補集合

ある集合とその補集合の共通部分は空集合になります。また、ある集合とその補集合の和集合は全体集合になります。これを補集合法則と呼びます。

二重補集合の法則

集合の補集合は集合であるため、さらにその補集合をとることができます。そして、この集合はもとの集合と等しいことが保証されます。補集合が満たすこのような性質を二重補集合の法則と呼びます。

集合演算における対偶律

集合の包含関係について、その逆、裏、対偶を定義するとともに、包含関係とその対偶は必要十分であり、逆と裏は必要十分であることを示します。

集合演算における双対原理

等しい 2 つの集合が与えられたとき、それらの双対をとるとそれらもまた等しくなります。これを双対原理と呼びます。

集合族

集合を要素として持つ集合を集合族と呼びます。

集合の直積

集合や集合族の直積などを定義します。

2つの集合の直積(カルテシアン積)

2 つの要素 a,b の順序を考慮して組にしたものを順序対と呼びます。また、集合 A,B の要素からなるすべての順序対からなる集合を A と B の直積と呼びます。

有限集合族の直積(カルテシアン積)

有限集合族を構成するそれぞれの集合の要素からなる n-組 をすべて集めてできる集合を有限集合族の直積と呼びます。

可算集合族の直積(カルテシアン積)

可算集合族を構成するそれぞれの集合の要素からなる無限列をすべて集めてできる集合を可算集合族の直積と呼びます。

一般の集合族の直積(カルテシアン積)

集合族を構成するそれぞれの集合の要素からなる添字集合によって添字付けられた成文の族をすべて集めてできる集合を集合族の直積と呼びます。

直積の補集合

集合の直積の補集合は、個々の集合の補集合の直積と一致するとは限りません。集合の直積の補集合は、個々の集合の補集合と全体集合の直積どうしの和集合として表現することはできます。

直積の差集合

直積どうしの差集合は差集合どうしの直積と一致するとは限りません。直積どうしの差集合は、差集合との直積どうしの和集合として表現することはできます。

選択公理

無限個の非空集合が与えられたとき、それぞれの集合から要素を 1 つずつ順番に選び出そうとしても、集合の個数は無限であるため、そのような操作が可能であるかどうかは必ずしも明らかではありません。そのような理念上の操作が可能であることを認めることを選択公理と呼びます。

集合列の極限

集合列の上極限・下極限・極限について解説します。

確認テスト

集合に関する確認テストです。

学習ガイド

なぜ集合論を学ぶのか|大学数学の共通言語としての集合論

集合論は単なる数学の一分野ではありません。現代数学では、数・関数・図形・ベクトルなどの多くの対象が集合によって記述されます。本記事では、なぜ大学数学で集合論を学ぶのか、そして集合論が微分積分学・線形代数学・位相空間論・実数論などとどのように関わっているのかを解説します。

経済学のための数学|経済学部生が学ぶべき数学と学習順序

経済学では、市場や企業、消費者の行動を数学的に分析します。そのため、大学レベルの経済学を理解するには数学の知識が欠かせません。本記事では、経済学を学ぶために必要な数学分野とその学習順序を解説します。

大学の数学カリキュラムとWIISのカリキュラムは何が違うのか

多くの大学では入学後すぐに微分積分学や線形代数学を学び、その後に実数論や位相空間論などの理論的な科目へ進みます。一方、WIISでは論理学・集合論の後に実数論を学び、その上で微分積分学へ進むカリキュラムを採用しています。本記事では、それぞれの考え方とWIISの学習順序のメリットについて解説します。

最新の議論

関連分野

論理学

論理学は、数学における証明や推論の基礎となる分野です。命題論理や述語論理を通じて、論理式、真理値、量化記号、証明の考え方を体系的に解説します。大学数学や理論的な学問を学ぶための出発点となる教材を提供しています。

写像

写像とは集合のそれぞれの要素に対して別の集合の要素を1つずつ定める規則のことです。関数を一般化した概念が写像です。

関係

複数の物事が互いに関わり合っている状態を「関係」と呼びますが、これは数学的には2つの集合の直積の部分集合として定義されます。関係や二項関係、同値関係、順序関係など代表的な関係について解説します。

集合の濃度

集合の濃度とは要素の個数を一般化した概念であり、これを用いることにより無限どうしを比較できるようになります。

順序集合

順序集合は、集合の要素同士を比較できるようにした数学的構造です。自然数の大小関係から、集合の包含関係、実数の順序、線形代数学や位相空間論で登場する様々な構造まで、多くの数学は順序の概念の上に成り立っています。

このページの目次