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集合

全体集合

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全体集合

集合について議論する際には、多くの場合、その集合が別の集合の部分集合であることを暗に想定しています。具体例を挙げると、すべての素数からなる集合\begin{equation*}
A=\left\{ 2,3,5,7,11,\cdots \right\}
\end{equation*}が与えられたとき、\(A\)に属さないもの、すなわち素数でないものを挙げよと問われたら、\(4,6,8\)など、素数ではない自然数を答えるのが自然です。このような答え方は、\(A\)がすべての自然数からなる集合\begin{equation*}\mathbb{N} \end{equation*}の部分集合であることを念頭においたものです。

そこで、議論の対象となるすべての集合を部分集合として持つような集合を全体集合(universal set)や普遍集合などと呼び、これを、\begin{equation*}
U
\end{equation*}で表記します。議論の対象となる集合\(A\)を任意に選ぶと、これと全体集合\(U\)の間には以下の関係\begin{equation*}A\subset U
\end{equation*}すなわち、\begin{equation*}
\forall x\in A:x\in U
\end{equation*}が成り立ちます。

全体集合は議論の対象となるすべての集合を部分集合として持つため、それらの集合の要素はいずれも全体集合の要素です。このような事情もあり、全体集合を、議論の対象となるすべての要素からなる集合とみなすこともできます。

例(全体集合)
ある図書館に所蔵されているすべての本を分野やテーマごとにいくつかの集合に分類しようとしている場合、全体集合はその図書館に所蔵されているすべての本からなる集合です。

例(全体集合)
スマートフォンのアドレス帳に登録されている人を友達や家族などの属性ごとにいくつかの集合に分類しようとしている場合、全体集合はスマートフォンのアドレス帳に登録されているすべての人からなる集合です。

例(全体集合)
全国の都道府県を地域ごとにいくつかの集合に分類しようとしている場合、全体集合はすべての都道府県からなる集合です。

例(全体集合)
\(\{1,3,5,8\}\)や\(\{0,-1,-2,-5\}\)など、整数を要素とする集合について議論しようとしている場合、全体集合はすべての整数からなる集合\(\mathbb{Z} \)です。この場合、すべての自然数からなる集合\(\mathbb{N} \)は全体集合ではありません。なぜなら、整数を要素とする集合を議論の対象としているとき、\(0\)や負の整数を要素として含む集合は議論の対象である一方、自然数集合\(\mathbb{N} \)はそれらを要素として持たないからです。

 

全体集合の内包的表現

全体集合が\(U\)である状況を想定します。何らかの集合\(A\)を内包的に表現することは、何らかの命題関数\(P\left(x\right) \)を導入した上で、全体集合\(U\)に属する要素の中でも命題\(P\left( x\right) \)が真になるようなものからなる集合\begin{equation*}A=\left\{ x\in U\ |\ P\left( x\right) \right\}
\end{equation*}として\(A\)を定義することを意味します。つまり、集合\(A\)を命題関数\(P\left( x\right) \)を用いて内包的に表現する場合、全体集合\(U\)は変数\(x\)の定義域と一致します。

では、全体集合\(U\)そのものはどのような形で内包的に表現できるでしょうか。全体集合\(U\)もまた何らかの命題関数\(Q\left( x\right) \)を用いて、\begin{equation*}U=\left\{ x\in U\ |\ Q\left( x\right) \right\}
\end{equation*}という形で表現されるものとします。このとき、\(x\in U\)を任意に選ぶと、\begin{equation*}x\in U\Leftrightarrow Q\left( x\right)
\end{equation*}という関係が成り立ちます。全体集合\(U\)は議論の対象となるすべての要素を持つ集合であるため\(x\in U\)は恒真式であり、したがってそれと必要十分な命題関数\(Q\left( x\right) \)もまた恒真式です。以上を踏まえると、全体集合\(U\)を定義する命題関数\(Q\left( x\right) \)は恒真式\(\top \)であり、したがって、全体集合を、\begin{equation*}U=\left\{ x\in U\ |\ \top \right\}
\end{equation*}という形で表現できます。

集合\(A\)が命題関数\(P\left( x\right) \)を用いて、\begin{equation}A=\left\{ x\in U\ |\ P\left( x\right) \right\} \quad \cdots (1)
\end{equation}と内包的に定義されているものとします。先の議論より、全体集合\(U\)を内包的に表現すると、\begin{equation}U=\left\{ x\in U\ |\ \top \right\} \quad \cdots (2)
\end{equation}となります。このとき、任意の\(x\in U\)について、\begin{eqnarray*}x\in A &\Leftrightarrow &P\left( x\right) \quad \because \left( 1\right) \\
&\Leftrightarrow &P\left( x\right) \wedge \top \quad \because \text{恒等律} \\
&\Rightarrow &\top \\
&\Leftrightarrow &x\in U\quad \because \left( 2\right)
\end{eqnarray*}となるため、\begin{equation*}
A\subset U
\end{equation*}を得ます。この結果は、全体集合が\(U\)が議論の対象となるすべての集合を部分集合として持つという事実と整合的です。

例(全体集合)
全体集合が\(U\)であるとき、集合\(A\)を、\begin{equation*}A=\left\{ x\in U\ |\ x=x\right\}
\end{equation*}と定義します。命題関数\begin{equation*}
x=x
\end{equation*}は恒真式であるため、この集合\(A\)は全体集合です。つまり、\begin{equation*}A=U
\end{equation*}が成り立ちます。

 

演習問題

問題(全体集合)
全体集合が\begin{equation*}
U=\left\{ 5,6,7,8,9,10,11,12\right\}
\end{equation*}であるとき、以下の集合\begin{eqnarray*}
A &=&\left\{ x\in U\ |\ x\text{は}60\text{の約数}\right\} \\
B &=&\left\{ x\in U\ |\ x\text{は素数}\right\}
\end{eqnarray*}の要素を具体的に特定してください。

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問題(全体集合)
全体集合が\(U\)であるとき、集合\(A\)を、\begin{equation*}A=\left\{ x\in U\ |\ \left\vert x\right\vert \leq 3\right\}
\end{equation*}と定義します。以下の問いに答えてください。

  1. 全体集合が\(U=\mathbb{N} \)であるとき、集合\(A\)の要素を具体的に特定してください。ただし、\(\mathbb{N} \)はすべての自然数からなる集合です。
  2. 全体集合が\(U=\mathbb{Z} \)であるとき、集合\(A\)の要素を具体的に特定してください。ただし、\(\mathbb{Z} \)はすべての整数からなる集合です。
  3. 全体集合が\(U=\mathbb{R} \)であるとき、集合\(A\)の要素を具体的に特定してください。ただし、\(\mathbb{R} \)はすべての実数からなる集合です。
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問題(全体集合)
全体集合\(U\)に関する以下の主張について、それが成り立つ場合には証明を行い、成り立たない場合には反例を提示してください。

  1. 任意の集合は全体集合\(U\)の部分集合である。
  2. 全体集合\(U\)を部分集合とする集合は存在しない。
  3. 全体集合\(U\)を部分集合とする集合は\(U\)だけである。
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