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補集合

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補集合

集合論では集合を被演算子とする集合演算(set operation)と呼ばれる演算を定義します。集合演算で使われる被演算子は\(c,\cap ,\cup ,\backslash ,\Delta \)などであり、これらを集合演算子(set operations)と呼びます。

集合演算子\(c\)を補集合(complement)と呼び、集合\(A\)に\(c\)を作用させることで得られる集合を\(A\)の補集合(complement of \(A\))と呼び、これを\(A^{c}\)と表記します。全体集合\(U\)と集合\(A\)が与えられたとき、\(A\)の補集合\(A^{c}\)とは、\(U\)の要素の中でも\(A\)の要素ではないものからなる集合\begin{equation*}
A^{c}=\left\{ x\in U\ |\ x\not\in A\right\}
\end{equation*}として定義されます。このとき、任意の\(x\in U\)に対して、\begin{equation*}
x\in A^{c}\Leftrightarrow x\not\in A
\end{equation*}という関係が成り立ちます。つまり、全体集合\(U\)の要素\(x\)を任意にとったとき、\(x\)が\(A \)の補集合の要素であることと\(x\)が\(A\)の要素でないことは必要十分です。

例(補集合)
全体集合が\(U=\{1,2,3,4,5,6\}\)であるとき、集合\(A=\{1,3,5\}\)の補集合は\(A^{c}=\{2,4,6\}\)です。
例(補集合)
全体集合が\(U=\left\{ a,b,c,d,e,f\right\} \)であるとき、集合\(A=\left\{ d,e,f\right\} \)の補集合は\(A^{c}=\left\{ a,b,c\right\} \)です。
例(補集合)
全体集合が\(U=\left[ 0,1\right] \)であるとき、集合\(A=\left[ 0,\frac{1}{2}\right] \)の補集合は\(A^{c}=\left( \frac{1}{2},1\right] \)です。
例(補集合)
全体集合\(U\)はすべての実数からなる集合であるものとします。\(A\)がすべての有理数からなる集合であるとき、その補集合\(A^{c}\)はすべての無理数からなる集合です。
例(補集合)
全体集合\(U\)はすべての人間からなる集合であるものとします。\(A\)がすべての\(50\)歳以上の人間からなる集合であるとき、その補集合\(A^{c}\)はすべての\(49\)歳以下の人間からなる集合です。

 

補集合の内包的表現

全体集合が\(U\)であるとします。このとき、議論の対象である集合を内包的に表現することは、何らかの命題関数\(P\left( x\right) \)を導入した上で、\(U\)の要素の中でも命題\(P\left( x\right) \)が真になるようなものからなる集合\begin{equation*}
A=\left\{ x\in U\ |\ P\left( x\right) \right\}
\end{equation*}を考えることを意味します。では、この集合\(A\)の補集合\(A^{c}\)はどのような形で内包的に表現できるでしょうか。任意の\(x\in U\)に対して、\begin{eqnarray*}
x\in A^{c} &\Leftrightarrow &x\not\in A\quad \because A^{c}\text{の定義} \\
&\Leftrightarrow &\lnot P\left( x\right) \quad \because A\text{の定義}
\end{eqnarray*}となるため、\begin{equation*}
A^{c}=\left\{ x\in U\ |\ \lnot P\left( x\right) \right\}
\end{equation*}となります。つまり、全体集合\(U\)に属する要素の中でも命題\(\lnot P\left( x\right) \)が真、すなわち命題\(P\left( x\right) \)が偽になるような要素\(x\)からなる集合が\(A^{c}\)です。補集合\(c\)という集合演算は否定\(\lnot \)から間接的に定義可能であるということです。

図:補集合
図:補集合

同じことを視覚的に表現します。全体集合\(U\)が上の長方形の領域として描かれているものとします。集合\(A\)が命題関数\(P\left( x\right) \)から内包的に定義されているとき、\(A\)は命題\(P\left( x\right) \)が真になるような値\(x\in U\)からなる集合、すなわち命題関数\(P\left( x\right) \)の真理集合\(\phi \left( P\right) \)と一致します。これは上図において白い領域として描かれています。一方、補集合\(A^{c}\)は命題関数\(\lnot P\left( x\right) \)の真理集合\(\phi \left( \lnot P\right) \)と一致し、これは上図においてグレーの領域として描かれています。

例(補集合)
集合\(A\)が、\begin{equation*}
A=\left\{ x\in \mathbb{R} \ |\ x>1\right\}
\end{equation*}と内包的に定義されているとき、その補集合は、\begin{equation*}
A^{c}=\left\{ x\in \mathbb{R} \ |\ x\leq 1\right\}
\end{equation*}となります。
例(補集合)
集合\(A\)が、\begin{equation*}
A=\left\{ x\in \mathbb{Z}\ |\ x\text{は偶数}\right\}
\end{equation*}と内包的に定義されているとき、その補集合は、\begin{eqnarray*}
A^{c} &=&\left\{ x\in \mathbb{Z}\ |\ x\text{は偶数ではない}\right\}
\\
&=&\left\{ x\in \mathbb{Z}\ |\ x\text{は奇数}\right\}
\end{eqnarray*}となります。
例(補集合)
任意の\(x\in U\)に対して、\begin{eqnarray*}x\in U^{c} &\Leftrightarrow &x\not\in U\quad \because \text{補集合の定義} \\
&\Leftrightarrow &\bot \quad \because x\in U\text{は恒真式} \\
&\Leftrightarrow &x\in \phi \quad \because x\in \phi \text{は恒偽式}
\end{eqnarray*}となるため、\begin{equation*}
U^{c}=\phi
\end{equation*}が成り立ちます。つまり、全体集合の補集合は空集合と一致します。同様にして、\begin{equation*}
\phi ^{c}=U
\end{equation*}が成り立つことも示されます(演習問題にします)。つまり、空集合の補集合は全体集合と一致します。

 

補集合と包含関係

全体集合を\(U\)とします。集合\(A,B\)が\(A\subset B\)を満たす場合、任意の\(x\in U\)に対して、\begin{eqnarray*}
x\in B^{c} &\Leftrightarrow &x\not\in B\quad \because c\text{の定義} \\
&\Rightarrow &x\not\in A\quad \because A\subset B \\
&\Leftrightarrow &x\in A^{c}\quad \because c\text{の定義}
\end{eqnarray*}となりますが、これは\(B^{c}\subset A^{c}\)が成り立つことを意味します。逆に\(B^{c}\subset A^{c}\)が成り立つ場合、 任意の\(x\in U\)に対して、\begin{eqnarray*}
x\in A &\Leftrightarrow &x\not\in A^{c}\quad \because c\text{の定義} \\
&\Rightarrow &x\not\in B^{c}\quad \because B^{c}\subset A^{c} \\
&\Leftrightarrow &x\in B\quad \because c\text{の定義}
\end{eqnarray*}となりますが、これは\(A\subset B\)が成り立つことを意味します。つまり、\(A\)が\(B\)の部分集合であることと、\(B\)の補集合が\(A\)の補集合の部分集合であることは必要十分です。

命題(補集合と包含関係)
集合\(A,B\)を任意に選んだとき、\(B^{c}\subset A^{c}\)が成り立つことは、\(A\subset B\)が成り立つための必要十分条件である。
例(補集合と包含関係)
全体集合\(U\)はある小学校の全校生徒からなる集合であるものとします。小学校の学年は、低学年(1〜2年生)・中学年(3〜4年生)・高学年(5〜6年生)に分類されます。集合\(A,B\)をそれぞれ、\begin{eqnarray*}
A &=&\left\{ x\in U\ |\ x\text{は1年生}\right\} \\
B &=&\left\{ x\in U\ |\ x\text{は低学年}\right\}
\end{eqnarray*}とおくと\(A\subset B\)が成り立ちます。このとき、\begin{eqnarray*}
A^{c} &=&\left\{ x\in U\ |\ x\text{は2年生以上}\right\} \\
B^{c} &=&\left\{ x\in U\ |\ x\text{は中学年以上}\right\}
\end{eqnarray*}となりますが、明らかに\(B^{c}\subset A^{c}\)です。逆も成立します。この結果は上の命題と整合的です。

 

補集合の要素の個数

集合\(A\)の要素の個数を\(\left\vert A\right\vert \)で表記します。\(A\)が有限集合であるならば、すなわち\(A\)の要素の個数が有限であるならば\(\left\vert A\right\vert \)は非負の整数です。全体集合\(U\)が有限集合である場合、任意の集合\(A\subset U\)もまた有限集合です。補集合\(A^{c}\)は\(U\)の要素の中でも\(A\)の要素ではないものを集めてできる集合であるため、\begin{equation*}
\left\vert A^{c}\right\vert =\left\vert U\right\vert -\left\vert
A\right\vert
\end{equation*}という関係が成り立ちます。つまり、全体集合\(U\)が有限集合である場合、集合\(A\)を任意に選んだとき、補集合\(A^{c}\)の要素の個数は\(U\)の要素の個数から\(A\)の要素の個数を引くことで得られます。

例(補集合の要素の個数)
\(2\)桁の自然数のうち、\(7\)の倍数の個数と\(7\)で割り切れない数の個数をそれぞれ求めます。全体集合\(U\)は\(2\)桁の自然数からなる集合\begin{equation*}
U=\left\{ 10,11,\cdots ,99\right\}
\end{equation*}であるため、その要素の個数は、\begin{equation}
\left\vert U\right\vert =99-10+1=90 \quad \cdots (1)
\end{equation}です。\(7\)の倍数であるような\(2\)桁の自然数からなる集合を、\begin{eqnarray*}
A &=&\left\{ 14,21,\cdots ,98\right\} \\
&=&\left\{ 7n\ |\ n=2,3,\cdots ,14\right\}
\end{eqnarray*}で表すならば、その要素の個数は、\begin{equation}
\left\vert A\right\vert =14-2+1=13 \quad \cdots (2)
\end{equation}となります。\(7\)で割り切れない\(2\)桁の自然数からなる集合は\(A\)の補集合であるため、その要素の個数は、\begin{eqnarray*}
\left\vert A^{c}\right\vert &=&\left\vert U\right\vert -\left\vert
A\right\vert \\
&=&90-13\quad \because \left( 1\right) ,\left( 2\right) \\
&=&77
\end{eqnarray*}となります。

 

演習問題

問題(補集合)
全体集合\(U\)と集合\(A,B\)がそれぞれ、\begin{eqnarray*}
U &=&\left\{ 0,1,2,3,4,5,6,7,8\right\} \\
A &=&\left\{ 0,2,4,6,8\right\} \\
B &=&\left\{ 1,3,5,7\right\}
\end{eqnarray*}で与えられているとき、以下のそれぞれの集合を外延的に表記してください。

  1. \(A^{c}\)
  2. \(\left( A^{c}\right) ^{c}\)
  3. \(B^{c}\)
  4. \(\left( B^{c}\right) ^{c}\)
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問題(補集合)
全体集合\(U\)と空集合\(\phi \)の間には以下の関係\begin{eqnarray*}&&\left( a\right) \ U^{c}=\phi \\
&&\left( b\right) \ \phi ^{c}=U
\end{eqnarray*}がともに成り立つことを証明してください。

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問題(補集合)
全体集合\(U\)が有限集合である場合、集合\(A\)の補集合の要素の個数は、\begin{equation*}
\left\vert A^{c}\right\vert =\left\vert U\right\vert -\left\vert
A\right\vert
\end{equation*}となります。以上を踏まえたとき、集合\(A\)の要素の個数について、\begin{equation*}
\left\vert A\right\vert =\left\vert U\right\vert -\left\vert
A^{c}\right\vert
\end{equation*}が成り立つことを証明してください。
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問題(補集合)
全体集合\(U\)と集合\(A,B^{c}\)がそれぞれ、\begin{eqnarray*}
U &=&\left\{ x\in \mathbb{Z} \ |\ -4\leq x\leq 7\right\} \\
A &=&\left\{ -4,-2,0,2,4,5,6\right\} \\
B^{c} &=&\left\{ -3,-2,-1,2,3\right\}
\end{eqnarray*}で与えられているものとします。ただし、\(\mathbb{Z}\)はすべての整数からなる集合です。このとき、\(\left\vert A^{c}\right\vert \)と\(\left\vert B\right\vert \)をそれぞれ求めてください。
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次回は共通部分について学びます。

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