集合の直積

2 つの要素 a,b の順序を考慮して組にしたものを順序対と呼びます。また、集合 A,B の要素からなるすべての順序対からなる集合を A と B の直積と呼びます。
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順序対

2つの要素\(a,b\)が与えられたとき、これらを並べる順番を考慮した上で組にしたものを順序対(ordered pair)と呼びます。具体的には、1番目の要素が\(a\)で2番目の要素が\(b\)であるような順序対を、\begin{equation*}
\left( a,b\right)
\end{equation*}と表記します。この場合、\(a\)を第1成分(first entry)と呼び、\(b\)を第2成分(second entry)と呼びます。一方、第1成分が\(b\)で第2成分が\(a\)であるような順序対は、\begin{equation*}
\left( b,a\right)
\end{equation*}と表記されます。

例(順序対)
整数\(1,2\)を成分とする順序対としては、\begin{equation*}
\left( 1,2\right) ,\quad \left( 2,1\right)
\end{equation*}の2つが存在します。また、整数\(3\)を成分とする順序対としては、\begin{equation*}
\left( 3,3\right)
\end{equation*}の1つが存在します。

 

順序対の固有性

2つの順序対\(\left( a,b\right) ,\left( c,d\right) \)が等しい(equal)こととは、それらの対応する成分どうしが等しいこととして定義されます。つまり、\begin{equation*}
\left( a,b\right) =\left( c,d\right) \Leftrightarrow \left( a=c\wedge
b=d\right)
\end{equation*}を満たすものとして順序対どうしの相等関係\(=\)を定義するということです。この性質を順序対の固有性(characteristic property)と呼びます。このとき、\begin{equation*}
\left( a,b\right) \not=\left( c,d\right) \Leftrightarrow \left( a\not=c\vee
b\not=d\right)
\end{equation*}という関係もまた成り立ちます。つまり、2つの順序対の対応する成分の中に異なるものが存在するとき、それらは異なる順序対とみなされます。

例(順序対の固有性)
要素\(a,b\)が与えられたとき、順序対の固有性より、\begin{equation*}
\left( a,b\right) \not=\left( b,a\right) \Leftrightarrow a\not=b
\end{equation*}という関係が成り立ちます。つまり、\(a\)と\(b\)が異なる要素である場合には\(\left( a,b\right) \)と\(\left(b,a\right) \)を異なる順序対として認識するということです。これは、順序対が2つの要素を並べる順番を考慮した上で組にしたものであることと整合的です。同時に、\begin{equation*}
\left( a,b\right) =\left( b,a\right) \Leftrightarrow a=b
\end{equation*}という関係も成り立ちます。つまり、\(a\)と\(b\)が等しい場合には\(\left( a,b\right) \)と\(\left( b,a\right) \)もまた等しくなります。これもまた当然です。

 

集合の直積

2つの集合\(A,B\)が任意に与えられたとき、\(A\)の要素\(a\)と\(B\)の要素\(b\)を1つずつ選べば、そこから順序対\(\left( a,b\right) \)を作ることができます。このような順序対をすべて集めてできる集合を\(A\)と\(B\)の直積(direct product)やカルテシアン積(Cartesian product)などと呼び、\begin{equation*}
A\times B
\end{equation*}で表記します。つまり、\begin{equation*}
A\times B=\left\{ \left( a,b\right) \ |\ a\in A\wedge b\in B\right\}
\end{equation*}です。

例(集合の直積)
集合\(A,B\)がそれぞれ、\begin{eqnarray*}
A &=&\left\{ a,b,c\right\} \\
B &=&\left\{ 1,2\right\}
\end{eqnarray*}で与えられているとき、\begin{eqnarray*}
A\times B &=&\left\{ \left( a,1\right) ,\left( a,2\right) ,\left( b,1\right)
,\left( b,2\right) ,\left( c,1\right) ,\left( c,2\right) \right\} \\
B\times A &=&\left\{ \left( 1,a\right) ,\left( 1,b\right) ,\left( 1,c\right)
,\left( 2,a\right) ,\left( 2,b\right) ,\left( 2,c\right) \right\} \\
A\times A &=&\left\{ \left( a,a\right) ,\left( a,b\right) ,\left( a,c\right)
,\left( b,a\right) ,\left( b,b\right) ,\left( b,c\right) ,\left( c,a\right)
,\left( c,b\right) ,\left( c,c\right) \right\} \\
B\times B &=&\left\{ \left( 1,1\right) ,\left( 1,2\right) ,\left( 2,1\right)
,\left( 2,2\right) \right\}
\end{eqnarray*}などとなります。

2つの集合\(A,B\)からは以下の2つの直積\begin{eqnarray*}
A\times B &=&\left\{ \left( a,b\right) \ |\ a\in A\wedge b\in B\right\} \\
B\times A &=&\left\{ \left( b,a\right) \ |\ b\in B\wedge a\in A\right\}
\end{eqnarray*}が定義可能です。\(A\not=B\)の場合、\(A\times B\)と\(B\times A\)のどちらか一方だけの要素であるような順序対が存在するため(演習問題として扱います)、\begin{equation*}
A\not=B\Rightarrow A\times B\not=B\times A
\end{equation*}という関係が成り立ちます。一方、\(A=B\)の場合、\(A\times B\)と\(B\times A\)はお互いに同じ順序対だけ要素として持つため(演習問題として扱います)、\begin{equation*}
A=B\Rightarrow A\times B=B\times A
\end{equation*}という関係が成り立ちます。特に、同じ集合\(A\)どうしの直積\(A\times A\)を\(A^{2}\)と表記します。つまり、\begin{equation*}
A^{2}=\left\{ \left( a_{1},a_{2}\right) \ |\ a_{1}\in A\wedge a_{2}\in
A\right\}
\end{equation*}です。

例(集合の直積)
すべての実数からなる集合を\(\mathbb{R}\)で表します。これは数直線上のすべての点からなる集合です。このとき、\begin{equation*}\mathbb{R} ^{2}=\left\{ \left( x,y\right) \ |\ x\in \mathbb{R} \wedge y\in \mathbb{R} \right\}
\end{equation*}となります。つまり、\(\mathbb{R}^{2}\)は実数を成分とする座標\(\left( x,y\right) \)からなる集合であり、これは2次元平面上のすべての点からなる集合です。
例(集合の直積)
空集合\(\phi \)も集合であるため、それと任意の集合\(A\)の直積\(A\times \phi \)をとることができます。このとき、任意の順序対\(\left( x,y\right) \)について、\begin{eqnarray*}
\left( x,y\right) \in A\times \phi &\Leftrightarrow &x\in A\wedge x\in \phi
\quad \because \times \text{の定義} \\
&\Leftrightarrow &x\in A\wedge \bot \quad \because \phi \text{の定義} \\
&\Leftrightarrow &\bot \quad \because \text{恒偽式}\bot
\text{の性質} \\
&\Leftrightarrow &\left( x,y\right) \in \phi \quad \because \phi \text{の定義}
\end{eqnarray*}となるため、\begin{equation*}
A\times \phi =\phi
\end{equation*}が成り立ちます。つまり、任意の集合と空集合の直積は空集合です。同様に考えると、任意の集合\(A\)について、\begin{equation*}
A\times \phi =\phi \times A=\phi \times \phi =\phi
\end{equation*}が成り立つことが示されます(演習問題として扱います)。

次回は有限集合族の直積集合について学びます。

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