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集合

可算集合族の直積(カルテシアン積)

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要素の列

無限個であるとともに\(1,2,3,\cdots \)と数えることができる要素が与えられたとき、それらの要素の個数は可算(countable)であると言います。「可算」とは数えられるという意味であり、要素の個数が可算であるとは、それらの要素を\(1,2,3,\cdots \)と数えていくことが可能であることを意味します。ただし、可算は無限を同時に意味するため、可算個の要素を最後まで数え尽くすことはできません。いずれにせよ、可算個の要素が与えられたとき、これらを並べる順番を考慮した上で組にしたものを要素の列(sequence)や無限列(infinite sequence)などと呼びます。要素の列を定めることとは、無限個の自然数\(1,2,3,\cdots \)に対して\(a_{1},a_{2},a_{3},\cdots \)という要領で要素を1つずつ割り当てることを意味します。以上を踏まえた上で、要素の列を、\begin{equation*}\left( a_{1},a_{2},a_{3},\cdots \right) ,\quad \left( a_{n}\right)
_{n=1}^{\infty },\quad (a_{n})_{n\in \mathbb{N} }
\end{equation*}などで表記します。議論の対象である要素の組が無限列であることが文脈から明らかである場合、それをシンプルに、\begin{equation*}
\left( a_{n}\right)
\end{equation*}と表記することもできます。要素の列\(\left(a_{n}\right) _{n=1}^{\infty }\)を構成する\(n\)番目の要素\(a_{n}\)を第\(n\)項(\(n\) th term)と呼びます。

例(要素の列)
要素の列\(\left( a_{n}\right) _{n=1}^{\infty }\)の第\(n\)項が、\begin{equation*}a_{n}=\frac{1}{n}
\end{equation*}と定義されているとき、この要素の列を具体的に表記すると、\begin{equation*}
\left( \frac{1}{1},\frac{1}{2},\frac{1}{3},\cdots \right)
\end{equation*}となります。

例(要素の列)
要素の列\(\left( a_{n}\right) _{n=1}^{\infty }\)が与えられたとき、それに対して新たな要素の列\(\left( b_{n}\right) _{n=1}^{\infty }\)を、任意の\(n\)に対して、\begin{equation*}b_{n}=a_{2n}
\end{equation*}を満たすものとして定義します。このとき、\begin{equation*}
\left( b_{n}\right) _{n=1}^{\infty }=\left( a_{2n}\right) _{n=1}^{\infty
}=\left( a_{2},a_{4},a_{6},\cdots \right)
\end{equation*}となります。

 

要素の列の固有性

2つの要素の列\(\left( a_{n}\right)_{n=1}^{\infty },\left( b_{n}\right) _{n=1}^{\infty }\)が等しい(equal)こととは、それらの対応する項どうしが等しいこととして定義されます。つまり、\begin{equation*}\left( a_{n}\right) _{n=1}^{\infty }=\left( b_{n}\right) _{n=1}^{\infty
}\Leftrightarrow \forall n\in \mathbb{N} :a_{n}=b_{n}
\end{equation*}を満たすものとして要素の列どうしの相等関係\(=\)を定義するということです。この性質を要素の列の固有性(characteristic property)と呼びます。このとき、\begin{equation*}\left( a_{n}\right) _{n=1}^{\infty }\not=\left( b_{n}\right) _{n=1}^{\infty
}\Leftrightarrow \exists n\in \mathbb{N} :a_{n}\not=b_{n}
\end{equation*}という関係もまた成り立ちます。つまり、2つの要素の列の対応する項の中に異なるものが存在するとき、それらは異なる要素の列とみなされます。

例(要素の列の固有性)
以下の2つの要素の列\begin{eqnarray}
&&\left( a_{1},\cdots ,a_{i},\cdots ,a_{j},\cdots ,a_{n},\cdots \right)
\quad \cdots (1) \\
&&\left( a_{1},\cdots ,a_{j},\cdots ,a_{i},\cdots ,a_{n},\cdots \right)
\quad \cdots (2)
\end{eqnarray}について考えます。つまり、\(\left( 1\right) \)の第\(i\)項と第\(j\)項を入れ替えたものが\(\left( 2\right) \)です。このとき、要素の列の固有性より、\begin{equation*}\left( 1\right) \not=\left( 2\right) \Leftrightarrow a_{i}\not=a_{j}
\end{equation*}という関係が成り立ちます。\(a_{i}\)と\(a_{j}\)が異なる要素である場合には\(\left( 1\right) \)と\(\left( 2\right) \)を異なる要素の列として認識するということです。これは、要素の列が無限個の要素を並べる順番を考慮した上で組にしたものであることと整合的です。同時に、\begin{equation*}\left( 1\right) =\left( 2\right) \Leftrightarrow a_{i}=a_{j}
\end{equation*}という関係もまた成り立ちます。つまり、\(a_{i}\)と\(a_{j}\)が等しい場合には\(\left( 1\right) \)と\(\left( 2\right) \)もまた等しくなります。これもまた当然です。

 

可算集合族の直積

可算個の集合を要素として持つ集合族、すなわち可算集合族\(\{A_{n}\}_{n=1}^{\infty }\)が与えられたとき、その要素であるそれぞれの集合\(A_{n}\)から要素\(a_{n}\)を1つずつ選べば、そこから要素の列\(\left( a_{n}\right) _{n=1}^{\infty }\)を作ることができます。このような要素の列をすべて集めてできる集合を\(\left\{ A_{n}\right\}_{n=1}^{\infty }\)の直積(direct product)やカルテシアン積(Cartesian product)などと呼び、\begin{equation*}\prod_{n=1}^{\infty }A_{n}
\end{equation*}で表記します。つまり、\begin{equation*}
\prod_{n=1}^{\infty }A_{n}=\left\{ \left( a_{n}\right) _{n=1}^{\infty }\ |\
\forall n\in \mathbb{N} :a_{n}\in A_{n}\right\}
\end{equation*}です。この直積を構成する\(n\)番目の集合\(A_{n}\)を第\(n\)因子(\(n\)-th factor)と呼びます。

例(可算集合族の直積)
可算集合族\(\{A_{n}\}_{n=1}^{\infty }\)の要素であるそれぞれの集合が、それぞれの\(n\)に対して、\begin{equation*}A_{n}=\left\{ 1,2,\cdots ,n\right\}
\end{equation*}と定義されているものとします。このとき、\begin{equation*}
\prod_{n=1}^{\infty }A_{n}=\left\{ \left( a_{n}\right) _{n=1}^{\infty }\ |\
\forall n\in \mathbb{N} :a_{n}\in \left\{ 1,2,\cdots ,n\right\} \right\}
\end{equation*}となります。したがって、例えば、\begin{eqnarray*}
\left( 1,1,1,\cdots \right) &\in &\prod_{n=1}^{\infty }A_{n} \\
\left( 1,2,3,\cdots \right) &\in &\prod_{n=1}^{\infty }A_{n}
\end{eqnarray*}などが成り立ちます。

可算集合族\(\{A_{n}\}_{n=1}^{\infty }\)は無限個の集合を要素として持つため、それらの並べる順番を考慮すると、そこから無限通りの直積をつくることができます。その中でも以下の2つの直積\begin{eqnarray}&&A_{1}\times \cdots \times A_{i}\times \cdots \times A_{j}\times \cdots
\times A_{n}\times \cdots \quad \cdots (1) \\
&&A_{1}\times \cdots \times A_{j}\times \cdots \times A_{i}\times \cdots
\times A_{n}\times \cdots \quad \cdots (2)
\end{eqnarray}に注目します。つまり、\(\left( 1\right) \)の第\(i\)因子と第\(j\)因子を入れ替えたものが\(\left( 2\right) \)です。\(A_{i}\not=A_{j}\)の場合、\(\left( 1\right) \)と\(\left( 2\right) \)のどちらか一方だけの要素であるような要素の列が存在するため、\begin{equation*}A_{i}\not=A_{j}\Rightarrow \left( 1\right) \not=\left( 2\right)
\end{equation*}という関係が成り立ちます。一方、\(A_{i}=A_{j}\)の場合、\(\left( 1\right) \)と\(\left( 2\right) \)はお互い同じ要素の列だけを要素として持つため、\begin{equation*}A_{i}=A_{j}\Rightarrow \left( 1\right) =\left( 2\right)
\end{equation*}という関係が成り立ちます。特に、可算集合族\(\{A_{n}\}_{n=1}^{\infty }\)の要素である集合\(A_{i}\)がすべて同一の集合\(A\)である場合、この集合族の直積\(A^{\infty }\)と表記します。つまり、\begin{equation*}A^{\infty }=\left\{ \left( a_{n}\right) _{n=1}^{\infty }\ |\ \forall n\in \mathbb{N} :a_{n}\in A\right\}
\end{equation*}です。

例(可算集合族の直積)
すべての実数からなる集合を\(\mathbb{R} \)で表します。これは数直線上のすべての点からなる集合です。このとき、\begin{equation*}\mathbb{R} ^{\infty }=\left\{ \left( a_{n}\right) _{n=1}^{\infty }\ |\ \forall n\in \mathbb{N} :a_{n}\in \mathbb{R} \right\}\end{equation*}となります。これは無限個の実数の列(実数列)をすべて集めてできる集合です。

例(可算集合族の直積)
可算集合族\(\{A_{n}\}_{n=1}^{\infty }\)の要素である集合\(A_{n}\)の中に空集合が存在するものとします。ここでは\(A_{1}=\phi \)とします。このとき、任意の要素の列\(\left( a_{n}\right) _{n=1}^{\infty }\)について、\begin{eqnarray*}\left( a_{n}\right) _{n=1}^{\infty }\in \prod_{n=1}^{\infty }A_{n}
&\Leftrightarrow &a_{1}\in \phi \wedge \forall n\in \left\{ 2,3,\cdots
\right\} :a_{n}\in A_{n} \\
&\Leftrightarrow &\bot \wedge \forall n\in \left\{ 2,3,\cdots \right\}
:a_{n}\in A_{n}\quad \because \text{空集合の定義(}\bot \text{は恒偽式)} \\
&\Leftrightarrow &\bot \quad \because \text{恒等律} \\
&\Leftrightarrow &\left( a_{n}\right) _{n=1}^{\infty }\in \phi \quad
\because \text{空集合の定義}
\end{eqnarray*}となるため、\begin{equation*}
\prod_{n=1}^{\infty }A_{n}=\phi
\end{equation*}が成り立ちます。つまり、可算集合族の要素の中に空集合が存在する場合、その可算集合族の直積は空集合になります。

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