集合の相等変換
集合\(A\)に属する要素と集合\(B\)に属する要素が完全に一致する場合には\(A\)と\(B\)は集合として等しい(set equality)と言い、そのことを、\begin{equation*}A=B
\end{equation*}で表記します。全体集合が\(U\)である場合、集合\(A,B\)が等しいことと、\begin{equation*}\forall x\in U:\left( x\in A\Leftrightarrow x\in B\right)
\end{equation*}が成り立つことは必要十分です。
\end{equation*}が成り立ちます。実際、任意の\(x\in U\)について、\begin{eqnarray*}x\in A\cap A &\Leftrightarrow &x\in A\wedge x\in A\quad \because \text{共通部分の定義} \\
&\Leftrightarrow &x\in A\quad \because \text{ベキ等律}
\end{eqnarray*}となるため、\begin{equation*}
A\cap A=A
\end{equation*}であることが示されました。
\end{equation*}が成り立ちます。実際、任意の\(x\in U\)について、\begin{eqnarray*}x\in A\cap A &\Leftrightarrow &x\in A\wedge x\in A\quad \because \text{共通部分の定義} \\
&\Leftrightarrow &x\in A\quad \because \text{ベキ等律} \\
&\Leftrightarrow &x\in A\vee x\in A\quad \because \text{ベキ等律} \\
&\Leftrightarrow &x\in A\cup A\quad \because \text{和集合の定義}
\end{eqnarray*}となるため、\begin{equation*}
A\cap A=A\cup A
\end{equation*}であることが示されました。
集合\(A,B\)が等しい場合には、すなわち、\begin{equation*}A=B
\end{equation*}が成り立つ場合には、\(A\)に含まれる要素と\(B\)に含まれる要素が完全に一致するため、両者は交換可能です。そこで、与えられた集合をそれと等しい集合に変換することを集合の相等変換(set equality)と呼ぶこととします。
集合\(A\)は何らかの集合\(B\)に集合演算子を作用させることにより得られる集合であるものとします。\(B\)と等しい集合\(B^{\prime }\)が存在するものとします。さらに、\(A\)中の\(B\)を\(B^{\prime }\)に相等変換することにより得られる集合を\(A^{\prime }\)で表記します。\(B\)と\(B^{\prime }\)は集合として等しいため、この場合、\begin{equation*}A=A^{\prime }
\end{equation*}が成り立ちます。
\end{equation}に注目します。先に示したように、\begin{equation}
B\cap B=B \quad \cdots (2)
\end{equation}が成り立ちます。\(\left(2\right) \)を用いて\(\left( 1\right) \)を相等変換することにより、\begin{equation*}A\cup \left( B\cap B\right) =A\cup B
\end{equation*}を得ます。
集合の相等関係の反射律
集合\(A\)を任意に選んだとき、\begin{equation*}A=A
\end{equation*}が成り立つことが保証されます。つまり、任意の集合は自身と等しいということです。集合の相等関係\(=\)が満たす以上の性質を反射律(reflexive law)と呼びます。
\end{equation*}が成り立つ。
以上の命題は、任意の集合は自身へ相等変換可能であることを保証します。
\end{equation*}が成り立ちます。
\end{equation*}が成り立ちます。
集合の相等関係の対称律
集合\(A,B\)を任意に選んだとき、\begin{equation*}A=B
\end{equation*}が成り立つ場合には、\begin{equation*}
B=A
\end{equation*}もまた成り立つことが保証されます。つまり、\(A\)が\(B\)と等しい場合には、逆に、\(B\)が\(A\)と等しいことも保証されるということです。集合の相等関係\(=\)が満たす以上の性質を対称律(symmetric law)と呼びます。
\end{equation*}が成り立つ。
以上の命題は、集合\(A,B\)が与えられたとき、\(A\)が\(B\)へ相等変換可能である場合には、逆に、\(B\)が\(A\)へ相等変換可能であることを保証します。
\end{equation*}が成り立つことは先に示した通りです。したがって、対称律より、\begin{equation*}
A=A\cap A
\end{equation*}もまた成り立ちます。
\end{equation*}が成り立つことは先に示した通りです。したがって、対称律より、\begin{equation*}
A\cup A=A\cap A
\end{equation*}もまた成り立ちます。
集合の相等関係の推移律
集合\(A,B,C\)を任意に選んだとき、\begin{eqnarray*}A &=&B \\
B &=&C
\end{eqnarray*}がともに成り立つ場合には、\begin{equation*}
A=C
\end{equation*}もまた成り立つことが保証されます。つまり、\(A\)が\(B\)と等しく、\(B\)が\(C\)と等しい場合には、\(A\)が\(C\)と等しいことが保証されるということです。集合の相等関係\(=\)が満たす以上の性質を推移律(transitive law)と呼びます。
\end{equation*}が成り立つ。
B^{c} &=&C\cap D
\end{eqnarray*}がともに成り立つ場合には、\(=\)の推移律より、\begin{equation*}A=C\cap D
\end{equation*}が成り立ちます。
C &=&B \quad \cdots (2)
\end{eqnarray}がともに成り立つものとします。\(\left( 2\right) \)および\(=\)の対称律より、\begin{equation*}B=C
\end{equation*}を得ます。これと\(\left(1\right) \)および\(=\)の推移律より、このとき、\begin{equation*}A=C
\end{equation*}が成り立ちます。
\end{equation}が成り立つものとします。集合\(C\)について、\(=\)の反射律より、\begin{equation}A\cap C=A\cap C \quad \cdots (2)
\end{equation}が成り立ちます。\(\left(1\right) \)を用いて\(A\cap C\)を相等変換すると、\begin{equation}A\cap C=B\cap C \quad \cdots (3)
\end{equation}を得ます。\(\left( 2\right) ,\left( 3\right) \)および\(=\)の推移律より、このとき、\begin{equation*}A\cap C=B\cap C
\end{equation*}が成り立ちます。
集合\(A,B,C\)が与えられたとき、\begin{equation*}A=B=C
\end{equation*}という形で\(A\)から出発して相等変換を繰り返し最終的に\(C\)へ至った場合、\(=\)の推移律より、出発点\(A\)と終着点\(C\)は等しいことが保証されます。
3個以上の集合\(A_{1},A_{2},\cdots ,A_{n}\)についても、\begin{equation*}A_{1}=A_{2}=\cdots =A_{n}
\end{equation*}という形で\(A_{1}\)から出発して相等変換を繰り返し最終的に\(A_{n}\)へ至った場合、\(=\)の推移律より、出発点\(A_{1}\)と終着点\(A_{n}\)は等しいことが保証されます。
2つの集合\(A,B\)が等しいこと、すなわち、\begin{equation}A=B \quad \cdots (1)
\end{equation}が成り立つことを示そうとしている状況を想定します。これを直接示すことが困難である場合、別の集合\(C\)を仲介させて、\begin{eqnarray}A &=&C \quad \cdots (2) \\
C &=&B \quad \cdots (3)
\end{eqnarray}をともに示しても構いません。なぜなら、\(\left( 2\right) \)と\(\left( 3\right) \)がともに成り立つ場合、\(=\)の推移律より\(\left( 1\right) \)が成り立つことが保証されるからです。
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