命題関数の真理集合として集合を定義するアプローチはラッセルのパラドクスと呼ばれる矛盾を引き起こします。そこで、公理主義のもとで集合を定義するアプローチを採用する場合があります。

2019年1月11日:公開

ラッセルのパラドクス

これまでは命題関数の真理集合として集合を定義するアプローチを採用しましたが、実はこのようなアプローチはラッセルのパラドクス(Russell’s paradox)と呼ばれる矛盾を引き起こします。

命題関数\(P\left( x\right) \)の変数\(x\)の定義域\(U\)はあらゆる集合を要素として持つ集合であるものとします。つまり、\begin{equation*}
x\in U\ \overset{def}{\Leftrightarrow }\ x\text{は集合}
\end{equation*}と定義します。また、命題関数\(P\left( x\right) \)を、\begin{equation*}
P\left( x\right) :x\not\in x
\end{equation*}と定義します。つまり、集合\(x\)が集合\(x\)自身の要素ではない場合には命題\(P\left( x\right) \)が真になるということです。

この命題関数\(P\left( x\right) \)から集合\(X=\left\{ x\in U\ |\ P\left( x\right) \right\} \)を定義すると矛盾が導かれます。具体的には、まず、\(X\)は集合ですから\(U\)の定義より\(X\in U\)が成り立ちます。このとき、この要素\(X\in U\)に関する命題\begin{equation*}
P\left( X\right) :X\not\in X
\end{equation*}は真か偽のどちらか一方です。

\(P\left( X\right) \)すなわち\(X\not\in X\)が真である場合には、\(X\)の定義より命題\(P\left( X\right) \)は偽です。つまり \(X\in X\)が成り立ちますが、これは\(X\not\in X\)と矛盾します。したがって、\(P\left( X\right) \)は真ではありません。

\(P\left( X\right) \)すなわち\(X\not\in X\)が偽である場合には、その否定\(X\in X\)は真です。\(X\)の定義より、これは命題\(P\left( X\right) \)が真であることを意味します。つまり\(\ X\not\in X\)が成り立ちますが、これは\(X\in X\)が真であることと矛盾します。したがって、\(P\left( X\right) \)は偽でもありません。

\(P\left( X\right) \)は真と偽のどちらでもないことが示されましたが、これは矛盾です。したがって、命題関数から集合を定義する手法には問題があることが明らかになりました。

 

公理主義的集合論

ラッセルのパラドクスを回避するためには、命題関数から集合を定義するというアプローチとは別の方法によって集合を定義する必要があります。

例えば、公理主義によってラッセルのパラドクスを回避するアプローチがあります。ZFC公理系はそのような公理系の 1 つです。ただし、ここでは公理主義的な集合論には立ち入らず、命題関数から集合を定義するアプローチをこのまま採用します。少なくとも以下で行う議論の範囲においては、このようなアプローチを採用しても問題は起こりません。

次回から集合演算について学びます。

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