選択公理

  1. 数学
  2. 集合
  3. 集合
  4. 選択公理

無限個の非空集合が与えられたとき、それぞれの集合から要素を 1 つずつ順番に選び出そうとしても、集合の個数は無限であるため、そのような操作が可能であるかどうかは必ずしも明らかではありません。そのような理念上の操作が可能であることを認めることを選択公理と呼びます。

2019年10月17日:公開

選択公理

集合族\(\{X_{\lambda }\}_{\lambda \in \Lambda }\)の直積集合は、\begin{equation*}
\prod_{\lambda \in \Lambda }X_{\lambda }=\{(x_{\lambda })_{\lambda \in \Lambda }\ |\ \forall \lambda \in \Lambda :x_{\lambda }\in X_{\lambda }\}
\end{equation*}と定義されるため、\begin{equation*}
\left( \exists \lambda \in \Lambda :X_{\lambda }=\phi \right) \ \Rightarrow \ \prod_{\lambda \in \Lambda }X_{\lambda }=\phi
\end{equation*}が成り立ちます。ではこの命題の逆に相当する以下の命題\begin{equation*}
\prod_{\lambda \in \Lambda }X_{\lambda }=\phi \ \Rightarrow \ \left( \exists \lambda \in \Lambda :X_{\lambda }=\phi \right)
\end{equation*}は成り立つでしょうか。見通しをよくするために、対偶\begin{equation*}
\left( \forall \lambda \in \Lambda :X_{\lambda }\not=\phi \right) \ \Rightarrow \ \prod_{\lambda \in \Lambda }X_{\lambda }\not=\phi
\end{equation*}をとります。つまり、集合族\(\{X_{\lambda }\}_{\lambda \in \Lambda }\)の要素であるそれぞれの集合\(X_{\lambda }\)が空集合でなければ、この集合族の直積\(\prod_{\lambda \in \Lambda }X_{\lambda }\)もまた空集合ではないという主張です。この主張を公理として認める場合には、これを選択公理(axiom of choice)と呼びます。

添字集合が有限集合\(\Lambda =\{1,\cdots ,n\}\)である場合には、非空の集合\(X_{1},\cdots ,X_{n}\)から要素を 1 つずつ順番に\(x_{1},\cdots ,x_{n}\)と選べば、集合の個数は有限なので、最終的にすべての要素を 1 つずつ選ぶことができます。つまり、それらの要素を成分とする\(n\)組\(\left( x_{1},\cdots ,x_{n}\right) \)を選び出すことができるため、直積\(\prod_{i=1}^{n}X_{i}\)は非空集合になります。つまり、\(\Lambda \)が有限集合の場合には選択公理は明らかに真です。

一方、添字集合\(\Lambda \)が無限集合である場合には、それぞれの非空の集合\(X_{\lambda }\ \left( \lambda \in \Lambda \right) \)から要素を 1 つずつ順番に選び出そうとしても、集合の個数は無限なので操作は有限回で終了しません。したがって、最終的にすべての集合から要素を 1 つずつ選ぶことができるかどうかは必ずしも明らかではありません。選択公理を公理として認めることとは、無限個の非空の集合から要素を 1 つずつ選び出すといういわば理念上の操作が可能であることを認めるということを意味します。

 

選択関数

それぞれの\(\lambda \in \Lambda \)に対して\(X_{\lambda }\)が非空集合であるような集合族\(\{X_{\lambda }\}_{\lambda \in \Lambda }\)が与えられられたとき、\begin{equation*}
\forall \lambda \in \Lambda :f\left( \lambda \right) \in X_{\lambda }
\end{equation*}を満たす写像\(f:\Lambda \rightarrow \bigcup_{\lambda \in \Lambda }X_{\lambda }\)が存在する場合には、これを\(\{X_{\lambda }\}_{\lambda \in \Lambda }\)の選択関数(choice function)と呼びます。これは、添字集合\(\Lambda \)に属するそれぞれの添字\(\lambda \)に対して集合\(X_{\lambda }\)に属する要素を1つずつ選び取る写像です。

それぞれの\(\lambda \in \Lambda \)に対して\(X_{\lambda }\)が非空集合であるような集合族\(\{X_{\lambda }\}_{\lambda \in \Lambda }\)に対して、その選択関数\(f\)が存在する場合には、それぞれの\(\lambda \in \Lambda \)に対して\(f\left( \lambda \right) \in X_{\lambda }\)が定まるため、\begin{equation*}
(f\left( \lambda \right) )_{\lambda \in \Lambda }\in \prod_{\lambda \in \Lambda }X_{\lambda }
\end{equation*}すなわち\(\prod_{\lambda \in \Lambda }X_{\lambda }\not=\phi \)となり選択公理が成り立ちます。逆に、選択公理が成り立つ場合には成分の族\begin{equation*}
\left( x_{\lambda }\right) _{\lambda \in \Lambda }\in \prod_{\lambda \in \Lambda }X_{\lambda }
\end{equation*}が存在するため、写像\(f:\Lambda \rightarrow \bigcup_{\lambda \in \Lambda }X_{\lambda }\)を、\begin{equation*}
\forall \lambda \in \Lambda :f\left( \lambda \right) =x_{\lambda }
\end{equation*}を満たすものとして定義すれば、この\(f\)は選択関数としての要件を満たします。したがって、選択公理は選択関数を用いて以下のように表現可能です。

命題(命題関数)
集合族\(\{X_{\lambda }\}_{\lambda \in \Lambda }\)はそれぞれの\(\lambda \in \Lambda \)について\(X_{\lambda }\not=\phi \)を満たすものとする。これに対して選択関数\(f:\Lambda \rightarrow \bigcup_{\lambda \in \Lambda }X_{\lambda }\)が存在することは、選択公理が成り立つための必要十分条件である。

次回からは関係について学びます。
次へ進む 演習問題(プレミアム会員限定)

ワイズをさらに活用するための会員サービス

ユーザー名とメールアドレスを入力して一般会員に無料登録すれば、質問やコメントを投稿できるようになります。さらに、有料(500円/月)のプレミアム会員へアップグレードすることにより、プレミアムコンテンツ(命題の証明や演習問題、解答など)にアクセスできます。
会員サービス

ディスカッションに参加しますか?

質問やコメントを投稿するにはログインが必要です。
ログイン

現在地
  1. 数学
  2. 集合
  3. 集合
  4. 選択公理
目次
アカウント
ログイン