部分集合
集合\(A\)のすべての要素が集合\(B\)の要素でもある場合には、すなわち、以下の全称命題\begin{equation}\forall x\in A:x\in B \quad \cdots (1)
\end{equation}が真である場合には、\(A\)は\(B\)の部分集合(subset)であるといい、そのことを、\begin{equation*}A\subset B
\end{equation*}で表記します。
逆に、集合\(A\)が集合\(B\)の部分集合でないことは、\(\left( 1\right) \)の否定である以下の存在命題\begin{equation*}\exists x\in A:x\not\in B
\end{equation*}が真であることを意味します。つまり、\(A\)の要素である一方で\(B\)の要素ではないものが存在するということです。このことを、\begin{equation*}A\not\subset B
\end{equation*}で表記します。
A &=&\left\{ 1,3,5\right\} \\
B &=&\left\{ 1,2,3,4,5\right\}
\end{eqnarray*}に注目したとき、\(A\)の任意の要素は\(B\)の要素でもあるため、\begin{equation*}A\subset B
\end{equation*}が成り立ちます。その一方で、\(2\in B\)かつ\(2\not\in A\)であるため\(B\subset A\)は成り立たず、したがって、\begin{equation*}B\not\subset A
\end{equation*}が成り立ちます。
A=\{\text{北海道},\text{青森},\text{秋田},\text{岩手},\text{山形},\cdots \}
\end{equation*}で表記し、日本の関東地方にあるすべての都道府県からなる集合を、\begin{equation*}
B=\{\text{茨城},\text{栃木},\text{群馬},\text{埼玉},\text{千葉},\text{東京},\text{神奈川}\}
\end{equation*}で表記します。関東地方にある都道府県は日本の都道府県でもあるため、\begin{equation*}
B\subset A
\end{equation*}が成り立ちます。一方、関東地方以外の地方にある日本の都道府県が存在するため\(A\subset B\)は成り立たず、したがって、\begin{equation*}A\not\subset B
\end{equation*}が成り立ちます。
部分集合の内包的表現
集合\(A,B\)がそれぞれ、\begin{eqnarray*}A &=&\left\{ x\in X\ |\ P\left( x\right) \right\} \\
B &=&\left\{ x\in X\ |\ Q\left( x\right) \right\}
\end{eqnarray*}という形で変数\(x\)に関する命題関数\(P\left( x\right) ,Q\left(x\right) \)を用いて内包的に定義されているものとします。ただし、\(X\)は変数\(x\)の定義域です。つまり、任意の\(x\in X\)について、\begin{eqnarray*}x &\in &A\Leftrightarrow P\left( x\right) \\
x &\in &B\Leftrightarrow Q\left( x\right)
\end{eqnarray*}を満たすものとして集合\(A,B\)をそれぞれ定義するということです。先に、\(A\)が\(B\)の部分集合であることを、\begin{equation*}\forall x\in A:x\in B
\end{equation*}が成り立つこととして定義しましたが、これを以下の形で表現することもできます。
B &=&\left\{ x\in X\ |\ Q\left( x\right) \right\}
\end{eqnarray*}と内包的に定義されているものとする。このとき、以下の3つの命題\begin{eqnarray*}
&&\left( a\right) \ A\subset B \\
&&\left( b\right) \ \forall x\in X:\left( x\in A\Rightarrow x\in B\right) \\
&&\left( c\right) \ \forall x\in X:\left[ P\left( x\right) \Rightarrow
Q\left( x\right) \right] \end{eqnarray*}はお互いに必要十分である。
集合\(A,B\)が命題関数を用いて、\begin{eqnarray*}A &=&\left\{ x\in X\ |\ P\left( x\right) \right\} \\
B &=&\left\{ x\in X\ |\ Q\left( x\right) \right\}
\end{eqnarray*}と定義されている場合、\(A\)が\(B\)の部分集合であることは以下の命題\begin{equation}\forall x\in X:\left[ P\left( x\right) \Rightarrow Q\left( x\right) \right]
\quad \cdots (1)
\end{equation}が真であることを意味することが明らかになりました。したがって、\(A\)が\(B\)の部分集合であることを示すためには、\(P\left( x\right) \)を満たす任意の値\(x\in X\)について\(Q\left( x\right) \)が成り立つことを示せばよいということになります。
逆に、集合\(A\)が集合\(B\)の部分集合ではないことと、\(\left( 1\right) \)の否定である以下の命題\begin{equation*}\exists x\in X:\left[ P\left( x\right) \wedge \lnot Q\left( x\right) \right] \end{equation*}が真であることを意味します。したがって、\(A\)が\(B\)の部分集合ではないことを示すためには、\(P\left( x\right) \)を満たす一方で\(Q\left( x\right) \)を満たさないような値\(x\in X\)が存在することを示せばよいということになります。
B &=&\left\{ x\in \mathbb{R} \ |\ x\geq 0\right\}
\end{eqnarray*}と定義されているものとします。ただし、\(\mathbb{R} \)はすべての実数からなる集合です。まずは、\begin{equation*}A\subset B
\end{equation*}が成り立つことを示します。先の命題より、これは、\begin{equation}
\forall x\in \mathbb{R} :\left( x>0\Rightarrow x\geq 0\right) \quad \cdots (1)
\end{equation}が真であることを意味するため、これを示すことが目標です。実際、\(x>0\)を満たす実数\(x\in \mathbb{R} \)を任意に選んだとき\(x\geq 0\)が明らかに成り立つため\(\left( 1\right) \)は真であり、したがって\(A\subset B\)であることの証明が完了しました。続いて、\begin{equation*}B\not\subset A
\end{equation*}が成り立つことを示します。先の命題より、これは、\begin{equation*}
\forall x\in \mathbb{R} :\left( x\geq 0\Rightarrow x>0\right)
\end{equation*}が偽であること、すなわち、その否定である、\begin{equation}
\exists x\in \mathbb{R} :\left[ x\geq 0\wedge \lnot \left( x>0\right) \right] \quad \cdots (2)
\end{equation}が真であることを意味するため、これを示すことが目標です。実際、\(0\in \mathbb{R} \)に注目すると、\(0\geq 0\)と\(\lnot \left( 0>0\right) \)はともに成り立つため\(\left( 2\right) \)は真であり、したがって\(B\not\subset A\)であることの証明が完了しました。
B &=&\left\{ x\in \mathbb{Z} \ |\ x\text{は偶数}\right\}
\end{eqnarray*}と定義されているものとします。ただし、\(\mathbb{Z} \)はすべての整数からなる集合です。まずは、\begin{equation*}A\subset B
\end{equation*}が成り立つことを示します。先の命題より、これは、\begin{equation}
\forall x\in \mathbb{Z} :\left( x\text{は}4\text{で割り切れる}\Rightarrow x\text{は偶数}\right) \quad \cdots (1)
\end{equation}が真であることを意味するため、これを示すことが目標です。実際、\(4\)で割り切れる整数\(x\in \mathbb{Z} \)を任意に選んだとき、これは何らかの整数\(k\in \mathbb{Z} \)を用いて、\begin{equation*}x=4k
\end{equation*}という形で表現できます。すると、\begin{equation*}
x=2\left( 2k\right)
\end{equation*}を得ますが、以上の事実は\(x\)が偶数であることを意味します。したがって\(\left( 1\right) \)は真であり、\(A\subset B\)であることの証明が完了しました。続いて、\begin{equation*}B\not\subset A
\end{equation*}が成り立つことを示します。先の命題より、これは、\begin{equation*}
\forall x\in \mathbb{Z} :\left( x\text{は偶数}\Rightarrow x\text{は}4\text{で割り切れる}\right)
\end{equation*}が偽であること、すなわち、その否定である、\begin{equation}
\exists x\in \mathbb{Z} :\left( x\text{は偶数}\wedge x\text{は}4\text{で割り切れない}\right) \quad \cdots (2)
\end{equation}が真であることを意味するため、これを示すことが目標です。実際、\(2\in \mathbb{Z} \)に注目すると、\(2\)は偶数であるとともに\(4\)では割り切れないため\(\left( 2\right) \)は真であり、したがって\(B\not\subset A\)であることの証明が完了しました。
演習問題
B &=&\left\{ 9,11,13\right\} \\
C &=&\left\{ 3,5,9\right\} \\
D &=&\left\{ 11,13\right\}
\end{eqnarray*}とします。このとき、以下の主張はそれぞれ真偽のどちらであるか、理由とともに答えてください。
- \(C\subset A\)
- \(B\subset A\)
- \(A\not\subset B\)
- \(D\not\subset B\)
- \(\{3\}\subset A\)
- \(\{1,2\}\subset A\)
- \(\{1\}\in A\)
- \(\{3\}\in A\)
- \(\{1,2,3\}\subset A\)
- \(\{1\}\subset A\)
B &=&\left\{ x\in \mathbb{Z} \ |\ x\text{は}6\text{で割り切れる}\right\}
\end{eqnarray*}と定義するとき、\(A\subset B\)が成り立つことを証明してください。ただし、\(\mathbb{Z} \)はすべての整数からなる集合です。
B &=&\left\{ x\in \mathbb{Z} \ |\ x\text{は偶数}\right\}
\end{eqnarray*}と定義するとき、\(A\)は\(B \)の部分集合ではないことを示してください。ただし、\(\mathbb{Z} \)はすべての整数からなる集合です。
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