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差集合

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差集合

集合演算子\(\backslash \)を差集合(difference)と呼び、集合\(A,B\)に\(\backslash \)を作用させることで得られる集合を\(A\)と\(B\)の差集合(difference of \(A\ \)and \(B\))と呼び、これを\(A\backslash B\)と表記します。全体集合\(U\)と集合\(A,B\)が与えられたとき、\(A\)と\(B\)の差集合とは、\(A\)に属するが\(B\)には属さない要素からなる集合\begin{equation*}A\backslash B=\left\{ x\in U\ |\ x\in A\wedge x\not\in B\right\}
\end{equation*}として定義されます。このとき、任意の\(x\in U\)に対して、\begin{eqnarray*}x\in A\backslash B &\Leftrightarrow &\left( x\in A\wedge x\not\in B\right)
\quad \because \text{差集合の定義} \\
&\Leftrightarrow &x\in A\cap B^{c}\quad \because \text{補集合および共通部分の定義}
\end{eqnarray*}となるため、\begin{equation*}
A\backslash B=A\cap B^{c}
\end{equation*}という関係が成り立つことが明らかになりました。この事実は、差集合\(\backslash \)という集合演算は補集合\(c\)と共通部分\(\cap \)から間接的に定義可能であることを意味します。したがって、補集合と共通部分さえ定義されていれば差集合を新たな集合演算として定義する必要はありません。とは言え、差集合を独立した集合演算として定義しておくと便利ですので引き続き\(\backslash \)を利用します。

例(差集合)
集合\(A=\{1,2,4,6,a\}\)と集合\(B=\{4,a,b,c,d,e\}\)に関する差集合は、\begin{eqnarray*}A\backslash B &=&\left\{ 1,2,6\right\} \\
B\backslash A &=&\left\{ b,c,d,e\right\}
\end{eqnarray*}などとなります。
例(差集合)
集合\(A=\{1,2,3\}\)と集合\(B=\{4,5,6\}\)に関する差集合は、\begin{equation*}A\backslash B=B\backslash A=\phi
\end{equation*}となります。
例(差集合)
集合\(A=\left[ 0,2\right] \)と集合\(B=\left[ 1,3\right] \)に関する差集合は、\begin{eqnarray*}A\backslash B &=&[0,2) \\
B\backslash A &=&(2,3] \end{eqnarray*}などとなります。
例(差集合)
全体集合\(U\)と集合\(A\)について、\begin{equation*}A^{c}=U\backslash A
\end{equation*}という関係が成り立ちます(厳密な証明は演習問題にします)。つまり、補集合は差集合から間接的に定義可能です。
例(差集合)
全体集合\(U\)はすべての人間からなる集合であるものとします。\(A\)はすべての\(20\)歳以上の人間からなる集合であり、\(B\)はすべての男性からなる集合であるとき、\begin{eqnarray*}A\backslash B &=&\left\{ x\in U\ |\ x\text{は}20\text{歳以上の非男性}\right\} \\
B\backslash A &=&\left\{ x\in U\ |\ x\text{は}19\text{歳以下の男性}\right\} \\
A^{c}\backslash B &=&\left\{ x\in U\ |\ x\text{は}19\text{歳以下の非男性}\right\} \\
B^{c}\backslash A &=&\left\{ x\in U\ |\ x\text{は}19\text{歳以下の非男性}\right\}
\end{eqnarray*}などとなります。この例では、\begin{equation*}
A^{c}\backslash B=B^{c}\backslash A
\end{equation*}という関係が成立していますが、こうした関係は任意の集合\(A,B\)の間に成立するのでしょうか。演習問題にします

 

差集合の内包的表現

全体集合が\(U\)であるものとします。議論の対象である2つの集合\(A,B\)を内包的に表現することは、何らかの命題関数\(P\left( x\right) ,Q\left( x\right) \)を導入した上で、\(U\)の中でも命題\(P\left( x\right) ,Q\left( x\right) \)が真になるような要素\(x\)からなる集合\begin{eqnarray*}A &=&\left\{ x\in U\ |\ P\left( x\right) \right\} \\
B &=&\left\{ x\in U\ |\ Q\left( x\right) \right\}
\end{eqnarray*}をそれぞれ考えることを意味します。では、これらの集合\(A,B\)の差集合\(A\backslash B\)はどのような形で内包的に表現できるのでしょうか。任意の\(x\in U\)に対して、\begin{eqnarray*}x\in A\backslash B &\Leftrightarrow &x\in A\wedge x\not\in B\quad \because
\text{差集合の定義} \\
&\Leftrightarrow &P\left( x\right) \wedge \lnot Q\left( x\right) \quad
\because A,B\text{の定義}
\end{eqnarray*}となるため、\begin{equation*}
A\backslash B=\left\{ x\in U\ |\ P\left( x\right) \wedge \lnot Q\left(
x\right) \right\}
\end{equation*}となります。つまり、全体集合\(U\)に属する要素の中でも命題\(P\left(x\right) \)が真で命題\(Q\left( x\right) \)が偽になるような要素\(x\in U\)からなる集合が\(A\backslash B\)です。差集合\(\backslash \)という集合演算は否定\(\lnot \)と論理積\(\wedge \)から間接的に定義可能であるということです。

図:差集合
図:差集合

同じことを視覚的に確認します。全体集合\(U\)が上図の長方形の領域として描かれているものとします。集合\(A\)が命題関数\(P\left( x\right) \)から内包的に定義されているとき、\(A\)は命題\(P\left( x\right) \)が真になるような値\(x\in U\)からなる集合、すなわち\(P\left( x\right) \)の真理集合\(\phi \left( P\right) \)と一致します。同様に、集合\(B\)が命題関数\(Q\left( x\right) \)から内包的に定義されているとき、\(B\)は\(Q\left(x\right) \)の真理集合\(\phi \left( Q\right) \)と一致します。一方、差集合\(A\backslash B\)は論理式\(P\left( x\right) \wedge \lnot Q\left( x\right) \)の真理集合\(\phi \left( P\wedge \lnot Q\right) \)と一致し、これは上図においてグレーの領域として描かれています。

例(差集合)
集合\(A,B\)が、\begin{align*}A& =\left\{ x\in \mathbb{Z} \ |\ 1<x<10\right\} \\
B& =\left\{ x\in \mathbb{Z} \ |\ x\text{は}3\text{の倍数}\right\}
\end{align*}と内包的に定義されているものとします。ただし、\(\mathbb{Z} \)はすべての整数からなる集合を表す記号です。このとき、\begin{eqnarray*}A\backslash B &=&\left\{ x\in \mathbb{Z} \ |\ 1<x<10\wedge x\text{は}3\text{の倍数ではない}\right\} \\
&=&\left\{ 2,4,5,7,8\right\}
\end{eqnarray*}となります。
例(差集合)
集合\(A,B\)が、\begin{align*}A& =\left\{ x\in \mathbb{R} \ |\ 1<x<10\right\} \\
B& =\left\{ x\in \mathbb{R} \ |\ 4\leq x\leq 15\right\}
\end{align*}と内包的に定義されてるとき、任意の\(x\in \mathbb{R} \)に対して、\begin{eqnarray*}x\in A\backslash B &\Leftrightarrow &x\in A\wedge x\not\in B\quad \because
\text{差集合の定義} \\
&\Leftrightarrow &1<x<10\wedge \lnot \left( 4\leq x\leq 15\right) \quad
\because A,B\text{の定義} \\
&\Leftrightarrow &1<x<10\wedge \lnot \left( 4\leq x\wedge x\leq 15\right) \\
&\Leftrightarrow &1<x<10\wedge \left[ \lnot \left( 4\leq x\right) \vee \lnot
\left( x\leq 15\right) \right] \quad \because \text{ド・モルガンの法則} \\
&\Leftrightarrow &1<x<10\wedge \left( 4>x\vee x>15\right) \\
&\Leftrightarrow &\left( 1<x<10\wedge 4>x\right) \vee \left( 1<x<10\wedge
x>15\right) \quad \because \text{分配律} \\
&\Leftrightarrow &1<x<4\vee \bot \quad \because \bot \text{は恒偽式} \\
&\Leftrightarrow &1<x<4\quad \because \text{恒等律}
\end{eqnarray*}となるため、\begin{equation*}
A\backslash B=\left\{ x\in \mathbb{R} \ |\ 1<x<4\right\}
\end{equation*}となります。他方で、任意の\(x\in \mathbb{R} \)に対して、\begin{eqnarray*}x\in B\backslash A &\Leftrightarrow &x\in B\wedge x\not\in A\quad \because
\text{差集合の定義} \\
&\Leftrightarrow &4\leq x\leq 15\wedge \lnot \left( 1<x<10\right) \quad
\because A,B\text{の定義} \\
&\Leftrightarrow &4\leq x\leq 15\wedge \lnot \left( 1<x\wedge x<10\right) \\
&\Leftrightarrow &4\leq x\leq 15\wedge \left[ \lnot \left( 1<x\right) \vee
\lnot \left( x<10\right) \right] \quad \because \text{ド・モルガンの法則} \\
&\Leftrightarrow &4\leq x\leq 15\wedge \left( 1\geq x\vee x\geq 10\right) \\
&\Leftrightarrow &\left( 4\leq x\leq 15\wedge 1\geq x\right) \vee \left(
4\leq x\leq 15\wedge x\geq 10\right) \quad \because \text{分配律} \\
&\Leftrightarrow &\bot \vee 10\leq x\leq 15\quad \because \bot \text{は恒偽式} \\
&\Leftrightarrow &10\leq x\leq 15\quad \because \text{恒等律}
\end{eqnarray*}となるため、\begin{equation*}
B\backslash A=\left\{ x\in \mathbb{R} \ |\ 10\leq x\leq 15\right\}
\end{equation*}となります。
例(差集合)
集合\(A\)が任意に与えられたとき、任意の\(x\in U\)について、\begin{eqnarray*}x\in A\backslash \phi &\Leftrightarrow &x\in A\wedge x\not\in \phi \quad
\because \text{差集合の定義} \\
&\Leftrightarrow &x\in A\wedge \top \quad \because x\in \phi \text{は恒偽式} \\
&\Leftrightarrow &x\in A\quad \because \text{恒等律}
\end{eqnarray*}となるため、\begin{equation*}
A\backslash \phi =A
\end{equation*}が成り立ちます。つまり、任意の集合と空集合の差集合をとっても集合として変化しません。同様にして、\begin{equation*}
\phi \backslash A=\phi
\end{equation*}が成り立つことも示されます(演習問題にします)。つまり、空集合と任意の集合の差集合をとると空集合が得られます。
例(差集合)
集合\(A\)が任意に与えられたとき、任意の\(x\in U\)について、\begin{eqnarray*}x\in A\backslash U &\Leftrightarrow &x\in A\wedge x\not\in U\quad \because
\text{差集合の定義} \\
&\Leftrightarrow &x\in A\wedge \bot \quad \because x\in U\text{は恒真式} \\
&\Leftrightarrow &\bot \quad \because \text{恒等律} \\
&\Leftrightarrow &x\in \phi \quad \because x\in \phi \text{は恒偽式}
\end{eqnarray*}となるため、\begin{equation*}
A\backslash U=\phi
\end{equation*}が成り立ちます。つまり、任意の集合と全体集合の差集合をとると空集合が得られます。同様にして、\begin{equation*}
U\backslash A=A^{c}
\end{equation*}が成り立つことも示されます(演習問題にします)。つまり、全体集合と任意の集合の差集合をとるとその集合の補集合が得られます。

 

差集合による包含関係の定義

全体集合を\(U\)とします。\(A\subset B\)を満たす集合\(A,B\)を任意に選びます。これは、\begin{equation}B^{c}\subset A^{c} \quad \cdots (1)
\end{equation}と必要十分です。このとき、任意の\(x\in U\)に対して、\begin{eqnarray*}x\in A\backslash B &\Leftrightarrow &x\in A\wedge x\not\in B\quad \because
\text{差集合の定義} \\
&\Leftrightarrow &x\in A\wedge x\in B^{c}\quad \because \text{補集合の定義} \\
&\Rightarrow &x\in A\wedge x\in A^{c}\quad \because \left( 1\right) \\
&\Leftrightarrow &\bot \quad \because \text{矛盾律} \\
&\Leftrightarrow &x\in \phi \quad \because x\in \phi \text{は恒偽式}
\end{eqnarray*}となりますが、これは\(A\backslash B\subset \phi \)が成り立つことを意味します。また、空集合は任意の集合の部分集合であるため\(\phi \subset A\backslash B\)もまた成り立ちます。したがって、\(A\backslash B=\phi \)であることが示されました。結論を整理すると、任意の集合\(A,B\)について、\begin{equation*}A\subset B\Rightarrow A\backslash B=\phi
\end{equation*}が成り立つということです。逆に、\begin{equation*}
A\backslash B=\phi \Rightarrow A\subset B
\end{equation*}を示すこともできます(演習問題にします)。したがって以下の命題を得ます。

命題(差集合による包含関係の定義)
集合\(A,B\)を任意に選んだとき、\begin{equation*}A\subset B\Leftrightarrow A\backslash B=\phi
\end{equation*}という関係が成り立つ。
証明
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上の命題は、包含関係\(\subset \)という概念が差集合\(\backslash \)という集合演算から間接的に定義可能であることを示唆します。つまり、\(\backslash \)が与えられたとき、任意の集合\(A,B\)に対して、\begin{equation*}A\subset B\Leftrightarrow A\backslash B=\phi
\end{equation*}を満たすものとして\(\subset \)を定義できるということです。

例(差集合と包含関係)
全体集合\(U\)はある小学校の全校生徒からなる集合であるものとします。小学校の学年は、低学年(1〜2年生)・中学年(3〜4年生)・高学年(5〜6年生)に分類されます。集合\(A,B\)をそれぞれ、\begin{eqnarray*}A &=&\left\{ x\in U\ |\ x\text{は1年生}\right\} \\
B &=&\left\{ x\in U\ |\ x\text{は低学年}\right\}
\end{eqnarray*}とおくと、\(A\subset B\)が成り立ちます。このとき、\begin{equation*}A\backslash B=\left\{ x\in U\ |\ x\text{は1年生だが低学年ではない}\right\}
\end{equation*}となりますが、明らかに\(A\backslash B=\phi \)です。この結果は上の命題と整合的です。

 

演習問題

問題(差集合)
集合\(A,B,C\)がそれぞれ、\begin{eqnarray*}A &=&\left\{ a,b,c,d,e\right\} \\
B &=&\left\{ d,e,f\right\} \\
C &=&\left\{ 1,2,3\right\}
\end{eqnarray*}で与えられているとき、以下のそれぞれの集合を外延的に表記してください。
  1. \(A\backslash B\)
  2. \(B\backslash A\)
  3. \(\left( A\backslash B\right) \cup \left( B\backslash A\right) \)
  4. \(A\backslash C\)
  5. \(\left( A\cap C\right) \cup \left( A\backslash C\right) \)
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問題(補集合と差集合の関係)
全体集合\(U\)と任意の集合\(A\)の間には、\begin{equation*}A^{c}=U\backslash A
\end{equation*}という関係が成り立つことを証明してください。
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問題(補集合と差集合の関係)
任意の集合\(A,B\)の間に、\begin{equation*}A^{c}\backslash B=B^{c}\backslash A
\end{equation*}という関係が成り立つことを証明してください。
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問題(差集合の性質)
任意の集合\(A\)について、\begin{eqnarray*}&&\left( a\right) \ A\backslash \phi =A \\
&&\left( b\right) \ \phi \backslash A=\phi \\
&&\left( c\right) \ A\backslash U=\phi \\
&&\left( d\right) \ U\backslash A=A^{c} \\
&&\left( e\right) \ A\backslash A=\phi
\end{eqnarray*}などが成り立つことを証明してください。
証明
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問題(差集合)
任意の集合\(A,B,C\)について、\begin{eqnarray*}&&\left( a\right) \ A=\left( A\cap B\right) \cup \left( A\backslash B\right)
\\
&&\left( b\right) \ A\cup B=\left( A\backslash B\right) \cup B \\
&&\left( c\right) \ B\cap \left( A\backslash B\right) =\phi
\end{eqnarray*}が成り立つことをそれぞれ証明してください。
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問題(差集合)
任意の集合\(A,B,C\)について、\begin{eqnarray*}\left( a\right) \ A &\subset &B\Rightarrow A\backslash C\subset B\backslash C
\\
\left( b\right) \ A &\subset &B\Rightarrow C\backslash B\subset C\backslash A
\end{eqnarray*}が成り立つことをそれぞれ証明してください。
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次回は対称差について学びます。

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