ある条件を満たす対象をすべて集めたものを集合と呼びます。集合は命題関数から定義することもできます。集合の表記方法としては、外延的表記と内包的表記があります。
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集合と外延的表記

ある条件を満たす対象をすべて集めたものを集合(set)と呼び、これをアルファベットの大文字\(A,B,C,\cdots \)で表します。

集合\(A\)に属する個々の対象を\(A\)の要素(element)やなどと呼びます。\(a\)が集合\(A\)の要素であることを\(a\in A\)で表し、\(a\)が集合\(A\)の要素でないことを\(a\not\in A\)で表します。

集合\(A,B\)がまったく同じ要素を持つとき、\(A\)と\(B\)は等しい(equal)といい、そのことを\(A=B\)と表記します。

集合を表現する際に、その集合の要素を具体的に列挙する方法を外延的表記(extensive notation)と呼びます。例えば、集合\(A\)の要素が\(1,2,3\)という 3 つの数字である場合には、そのことを、\begin{equation*}
A=\{1,2,3\}
\end{equation*}と表記します。つまり、集合の要素をコンマ\(,\)で区切って並べた上で、それらを波括弧\(\{\ \}\)で囲みます。

例(集合の外延的表記)
\(10\)以下の正の偶数からなる集合\(A\)は、\begin{equation*}
A=\{2,4,6,8,10\}
\end{equation*}となります。例えば、\(2\in A\)は成り立ちますが、\(3\in A\)は成り立ちません。つまり、\(3\not\in A\)が成り立ちます。
例(集合の外延的表記)
日本の関東地方にある都道府県からなる集合\(A\)は、\begin{equation*}
A=\{\text{茨城},\text{栃木},\text{群馬},\text{埼玉},\text{千葉},\text{東京},\text{神奈川}\}
\end{equation*}となります。例えば、東京\(\in A\)は成り立ちますが、北海道\(\in A\)は成り立ちません。つまり、北海道\(\not\in A\)が成り立ちます。

集合が数多くの要素を持つ場合など、すべての要素を列挙することが不可能である場合には、三点リーダー\(\cdots \)を利用します。例えば、集合\(A\)がすべての自然数を要素として持つ場合、すべての自然数を列挙することは不可能であるため、\begin{equation*}
A=\{1,2,3,\cdots \}
\end{equation*}などと表記します。

例(集合の外延的表記)
すべての正の偶数からなる集合\(A\)は、\begin{equation*}
A=\{2,4,6,8,10,\cdots \}
\end{equation*}となります。例えば、\(20\in A\)は成り立ちますが、\(21\in A\)は成り立ちません。つまり、\(21\not\in A\)が成り立ちます。
例(集合の外延的表記)
日本のすべての都道府県からなる集合\(A\)は、\begin{equation*}
B=\{\text{北海道},\text{青森},\text{秋田},\text{岩手},\text{山形},\cdots \}
\end{equation*}となります。例えば、東京\(\in A\)は成り立ちますが、ニューヨーク\(\in A\)は成り立ちません。つまり、ニューヨーク\(\not\in A\)が成り立ちます。

集合を外延的表記で表現するとき、集合の要素を並べる順番を変えても、集合としては等しいものと定めます。したがって、例えば、\begin{equation*}
\{1,2,3,4\}=\{2,4,1,3\}=\{4,3,2,1\}
\end{equation*}という関係が成り立ちます。

集合を外延的表記で表現するとき、同じ要素を重複して書くことは禁じられていませんが、同じ要素をいくつ書いても効果は 1 つだけ書いた場合と同じと定めます。したがって、例えば、\begin{equation*}
\{1,1,1,2,2,3,4\}=\{1,2,3,4\}
\end{equation*}という関係が成り立ちます。

 

集合と内包的表記

集合は命題関数から定義することができます。具体的には、定義域が\(X\)であるような変数\(x\)と、この変数\(x\)に関する命題関数\(P\left( x\right) \)が与えられたとき、命題\(P\left( x\right) \)の値が\(1\)になるような\(X\)の要素\(x\)をすべて集めれば、\(P\left( x\right) \)の真理集合に相当する 1 つの集合\(A\)が得られます。そこで、そのような集合を、\begin{equation}
A=\left\{ x\in X\ |\ P\left( x\right) \right\} \tag{1}
\end{equation}と表記します。このように、命題関数を用いて集合を表現する方法を内包的表記(intensive notation)と呼びます。

変数の定義域\(X\)に属するそれぞれの要素\(x\)について、排中律より、命題\(P\left( x\right) \)は真か偽のどちらか一方です。したがって、集合\(A\)を\(\left( 1\right) \)のように定義したとき、定義域\(X\)に属するそれぞれの要素\(x\)は、集合\(A\)に属するか否かのどちらか一方です。

例(集合の内包的表記)
すべての正の整数からなる集合\(A\)を内包的表記で表現すると、\begin{equation*}
A=\{x\in \mathbb{Z} \ |\ x>0\}
\end{equation*}となります。ただし、\(\mathbb{Z}\)はすべての整数からなる集合を表す記号です。例えば、整数\(10\in \mathbb{Z} \)に関する命題\(10>0\)は真であるため、\(10\in A\)が成り立ちます。一方、整数\(-10\in \mathbb{Z} \)に関する命題\(-10<0\)は偽であるため、\(-10\not\in A\)が成り立ちます。
例(集合の内包的表記)
二次方程式\(x^{2}=1\)の実数解からなる集合\(A\)を内包的表記で表現すると、\begin{equation*}
A=\{x\in \mathbb{R} \ |\ x^{2}=1\}
\end{equation*}となります。ただし、\(\mathbb{R}\)はすべての実数からなる集合を表す記号です。例えば、実数\(-1\in \mathbb{R} \)に関する命題\(\left( -1\right) ^{2}=1\)は真であるため、\(1\in A\)が成り立ちます。一方、実数\(2\in \mathbb{R} \)に関する命題\(2^{2}=1\)は偽であるため、\(2\not\in A\)が成り立ちます。
例(集合の内包的表記)
日本の関東地方にある都道府県からなる集合\(A\)を内包的表記で表現すると、\begin{equation*}
A=\{x\in X\ |\ x\text{は関東地方にある}\}
\end{equation*}となります。ただし、\(X\)は日本のすべての都道府県からなる集合です。例えば、東京\(\in X\)に関する命題「東京は関東地方にある」は真であるため、東京\(\in A\)が成り立ちます。一方、北海道\(\in X\)に関する命題「北海道は関東地方にある」は偽であるため、北海道\(\not\in A\)が成り立ちます。

集合を内包的に表現するとき、集合を規定する命題関数の変数を表す記号として何を採用しても構わないものと定めます。したがって、例えば、\begin{eqnarray*}
\{x\in X\ |\ P(x)\} &=&\{y\in X\ |\ P\left( y\right) \} \\
&=&\{z\in X\ |\ P\left( z\right) \}
\end{eqnarray*}という関係が成り立ちます。

変数\(x\in X\)に関する命題関数\(P\left( x\right) \)から集合\(A\)を内包的に定義する場合、変数\(x\)の定義域\(X\)が文脈から明らかである場合には、それを省略して、\begin{equation*}
A=\{x\ |\ P(x)\}
\end{equation*}と表すこともできるものとします。

 

外延的表記と内包的表記の比較

外延的表記を使うと集合に属する個々の要素が一目瞭然であることから、外延的表記は内包的表記よりも分かりやすさの面で優れています。その反面、外延的表記では表現が難しい集合を内包的表記はシンプルに表現できるケースがあります。例えば、すべての正三角形からなる集合\(A\)表現しようとするとき、三角形をすべて列挙するのは不可能です。一方、内包的表記を使えば、例えば、\begin{equation*}
A=\{\Delta ABC\ |\ AB=BC=AC\}
\end{equation*}などと表現できます。

集合\(A\)は変数\(x\in X\)に関する命題関数\(P\left( x\right) \)から内包的に定義されるものとします。このとき、命題\(P(x)\)が真になるような\(X\)の要素\(x\)を具体的に特定することが困難である場合には、その集合\(A\)を外延的表記によって表現することは困難です。一方、内包的表記であれば、\(P\left( x\right) \)が真になるような\(x\)を具体的に特定する必要はなく、そのまま、\begin{equation*}
A=\{x\in X\ |\ P(x)\}
\end{equation*}と表現できます。つまり、内包的表記は外延的表記よりも表現手段として柔軟です。

変数\(x\in X\)に関する命題関数\(P\left( x\right) \)から集合\(A\)を、\begin{equation*}
A=\left\{ x\in X\ |\ P\left( x\right) \right\}
\end{equation*}を定義します。このとき、変数がとり得る値\(x\in X\)を任意に選ぶと、\begin{equation*}
x\in A\ \Leftrightarrow \ P\left( x\right)
\end{equation*}という関係が成り立ちます。つまり、\(x\)が\(A\)の要素であることとと、命題\(P\left( x\right) \)が真であることは必要十分です。逆に、\begin{equation*}
x\not\in A\ \Leftrightarrow \ \lnot P\left( x\right)
\end{equation*}という関係も成り立ちます。つまり、\(x\)が\(X\)の要素でないことと、命題\(P\left( x\right) \)の否定が真(命題\(P\left( x\right) \)が偽)であることは必要十分です。このような関係を利用すれば、集合に関する議論を命題関数に関する議論に置き換えることができるため、述語論理に関する知識を用いて集合に関する議論を展開できます。つまり、内包的表記は外延的表記よりも議論のツールとしても有用です。

次回は部分集合について学びます。

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