ユークリッド空間もしくはその部分集合を定義域とし、値として実数をとるような写像をスカラー場と呼びます。多くの場合、スカラー場は多変数関数とも呼ばれます。
本節ではスカラー場が有限な実数へ収束することの意味や、スカラー場が連続であることの意味を解説します。本節を読み進める前に、数列や関数、およびユークリッド空間や点列に関する知識が必要です。また、本節で得られる知識は後にスカラー場の微分(全微分・方向微分・偏微分)について学ぶ上での前提知識となります。
スカラー場の変数であるベクトルがある点に限りなく近づくにつれて、スカラー場の値がある有限な実数へ限りなく近づくとき、そのスカラー場は収束すると言います。
スカラー場と連続関数の合成関数として表現されるようなスカラー場に関しては、連続関数の性質を利用することにより比較的簡単にその極限を求めることができます。
スカラー場(多変数関数)が収束しないことを証明するためには、変数が点に近づくある経路のもとで関数の値が有限な値へ収束しないことを示したり、複数の経路のもとで異なる有限の値へ収束することを示すことになります。
スカラー場がある点の周辺の任意の点において定義されていない場合でも、変数がその点に限りなく近づく経路が存在する場合には、スカラー場の極限を定義することができます。
基本的なスカラー場の収束可能性を検討した上で、それらの知識を土台により広範なスカラー場の極限を求める方法を解説します。
入力したベクトルに対して、その特定の成分を値として返すスカラー場(多変数関数)が有限な実数へ収束することを示すとともに、その結果を用いて様々なスカラー場の極限を求める方法を解説します。
収束する2つのスカラー場の和として定義されるスカラー場もまた収束します。また、この事実と連続関数の性質を利用して、より広範なスカラー場の極限を求める方法を解説します。
収束するスカラー場どうしの差として定義されるスカラー場もまた収束することを示します。また、その事実と連続関数の性質を利用して、より広範なスカラー場の極限を求める方法を解説します。
収束するスカラー場どうしの積として定義されるスカラー場もまた収束します。また、この事実と連続関数の性質を利用し、より広範なスカラー場の極限を求める方法を解説します。
収束するスカラー場どうしの商として定義されるスカラー場もまた収束します。また、この事実と連続関数の性質を利用し、より広範なスカラー場の極限を求める方法を解説します。
スカラー場が連続であることの意味を定義します。
スカラー場が定義域上の点において有限な極限を持つとともに、それがその点におけるスカラー場の値と一致する場合、スカラー場はその点において連続であると言います。