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MULTIVARIABLE FUNCTION

多変数の有理関数(分数関数)

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多変数の有理関数

復習になりますが、スカラー場\(f:\mathbb{R} ^{n}\supset X\rightarrow \mathbb{R} \)が多項式関数であることとは、\(f\)がそれぞれの\(x\in X\)に対して定める値が、非負の整数\(n\in \mathbb{Z} _{+}\)と実数\(c_{k_{1},\cdots ,k_{n}}\in \mathbb{R} \ \left( k_{i}=0,1,\cdots ,n\right) \)を用いて、\begin{equation*}f\left( x\right) =\sum_{k_{1}=0}^{n}\cdots \sum_{k_{n}=0}^{n}c_{k_{1},\cdots
,k_{n}}x_{1}^{k_{1}}\cdots x_{n}^{k_{n}}
\end{equation*}という形で表すことができることを意味します。

定義域を共有する2つの多項式関数\(f:\mathbb{R} ^{n}\supset X\rightarrow \mathbb{R} \)と\(g:\mathbb{R} ^{n}\supset X\rightarrow \mathbb{R} \backslash \left\{ 0\right\} \)が与えられたとき、それぞれの\(x\in X\)に対して、\begin{equation*}h\left( x\right) =\frac{f\left( x\right) }{g\left( x\right) }
\end{equation*}を定める新たなスカラー場\(h:\mathbb{R} ^{n}\supset X\rightarrow \mathbb{R} \)が定義可能です。このようなスカラー場\(h\)を有理関数(rational function)や分数関数(rational function)などと呼びます。ゼロで割ることはできないため、有理関数の分母を構成するスカラー場\(g\)はゼロを値としてとりません。

例(多変数の有理関数)
スカラー場\(f:\mathbb{R} ^{2}\rightarrow \mathbb{R} \)がそれぞれの\(\left( x,y\right) \in \mathbb{R} ^{2}\)に対して定める値が、\begin{equation*}f\left( x,y\right) =\frac{xy}{x^{2}+y^{2}+1}
\end{equation*}であるならば、この\(f\)は有理関数です。
例(多変数の有理関数)
ある商品を生産するために必要な固定費用(生産量に依存しない一定の費用)は\(x\geq 0\)であり、さらに、商品1個あたり費用\(y\geq 0\)が追加的に必要であるものとします。商品の生産量が\(z\geq 0\)であるとき、商品\(1\)個あたりの平均生産費用は、\begin{equation*}f\left( x,y,z\right) =\frac{x+yz}{z}
\end{equation*}となります。このスカラー場\(f:\mathbb{R} _{+}^{3}\rightarrow \mathbb{R} \)は有理関数です。
例(多変数の有理関数)
密度(density)\(d\)は質量(mass)\(m\)と体積(volume)\(v\)を用いて、\begin{equation*}d=\frac{m}{v}
\end{equation*}と定義されます。対象の質量が\(m\)で体積が\(v\)であるとき、その密度は、\begin{equation*}f\left( m,v\right) =\frac{m}{v}
\end{equation*}で与えられますが、この\(f\)は変数\(m,v\)に関する有理関数です。また、対象の密度が\(d\)で質量が\(m\)であるとき、その体積は、\begin{equation*}g\left( d,m\right) =\frac{m}{d}
\end{equation*}で与えられますが、この\(g\)は変数\(d,m\)に関する有理関数です。また、対象の密度が\(d\)で体積が\(v\)であるとき、その質量は、\begin{equation*}h\left( d,v\right) =d\cdot v
\end{equation*}で与えられますが、この\(h\)は変数\(d,v\)に関する多項式関数です。
例(多変数の有理関数)
1人が単位時間当たりに行うことができる作業量の平均を作業能率(rate of work)と呼び、これを\(r\)で表記します。また、全員による作業時間(time)の合計を\(t\)で表記します。このとき、作業量(amount of work done)\(w\)を、\begin{equation*}w=r\cdot t
\end{equation*}と定義します。つまり、作業能率が\(r\)で作業時間が\(t\)であるときに得られる作業量は、\begin{equation*}f\left( r,t\right) =r\cdot t
\end{equation*}で与えられますが、この\(f\)は変数\(r,t\)に関する多項式関数です。作業量が\(w\)で作業能率が\(r\)であるとき、その作業を行うのに必要な作業時間は、\begin{equation*}g\left( w,r\right) =\frac{w}{r}
\end{equation*}で与えられますが、この\(g\)は変数\(w,r\)に関する有理関数です。作業量\(w\)の仕事をするのに全員で作業時間\(t\)がかかった場合の作業能率は、\begin{equation*}h\left( w,t\right) =\frac{w}{t}
\end{equation*}で与えられますが、この\(h\)は変数\(w,t\)に関する有理関数です。
例(多変数の有理関数)
多変数の多項式関数\(f:\mathbb{R} ^{n}\supset X\rightarrow \mathbb{R} \)が与えられたとき、それぞれの\(x\in X\)に対して、\begin{equation*}f\left( x\right) =\frac{f\left( x\right) }{1}
\end{equation*}という関係が成り立ちます。右辺は多項式関数\(f\)と定数関数\(1\)の商ですが、定数関数は特別な多項式関数であるため右辺は有理関数です。したがって、それと一致する\(f\)もまた有理関数です。つまり、多項式関数は有理関数の特殊ケースです。

 

有理関数の定義域

繰り返しになりますが、スカラー場\(h:\mathbb{R} ^{n}\supset X\rightarrow \mathbb{R} \)が有理関数であるとは、\(h\)がそれぞれの\(x\in X\)に対して定める値が、多項式関数である\(f:\mathbb{R} ^{n}\supset X\rightarrow \mathbb{R} \)と\(g:\mathbb{R} ^{n}\supset X\rightarrow \mathbb{R} \backslash \left\{ 0\right\} \)を用いて、\begin{equation*}h\left( x\right) =\frac{f\left( x\right) }{g\left( x\right) }
\end{equation*}と表されることを意味します。ただ、ゼロで割ることはできないため、有理関数\(h\)は\(g\left( x\right) =0\)となるような点\(x\)において定義されません。言い換えると、\(h\)の定義域となり得る最大の集合は、\begin{equation*}X=\left\{ x\in \mathbb{R} ^{n}\ |\ g\left( x\right) \not=0\right\}
\end{equation*}です。

例(多変数の有理関数)
スカラー場\(f:\mathbb{R} ^{2}\supset X\rightarrow \mathbb{R} \)がそれぞれの\(\left( x,y\right) \in X\)に対して定める値が、\begin{equation*}f\left( x,y\right) =\frac{xy}{x+y}
\end{equation*}であるならば、この\(f\)は有理関数です。ただし、実数をゼロで割ることはできないため、\(f\)の定義域は、\begin{equation*}X=\left\{ \left( x,y\right) \in \mathbb{R} ^{2}\ |\ x+y\not=0\right\}
\end{equation*}です。

例(多変数の有理関数)
スカラー場\(f:\mathbb{R} ^{2}\supset X\rightarrow \mathbb{R} \)がそれぞれの\(\left( x,y\right) \in X\)に対して定める値が、\begin{equation*}f\left( x,y\right) =\frac{x^{2}y^{2}}{x^{4}+3y^{4}}
\end{equation*}であるならば、この\(f\)は有理関数です。ただし、実数をゼロで割ることはできないため、\(f\)の定義域は、\begin{eqnarray*}X &=&\left\{ \left( x,y\right) \in \mathbb{R} ^{2}\ |\ x^{4}+3y^{4}\not=0\right\} \\
&=&\left\{ \left( x,y\right) \in \mathbb{R} ^{2}\ |\ \left( x,y\right) \not=\left( 0,0\right) \right\} \\
&=&\mathbb{R} ^{2}\backslash \left\{ \left( 0,0\right) \right\}
\end{eqnarray*}です。一方、\begin{equation*}
f\left( x,y\right) =\left\{
\begin{array}{cc}
\frac{x^{2}y^{2}}{x^{4}+3y^{4}} & \left( if\ \left( x,y\right) \not=\left(
0,0\right) \right) \\
0 & \left( if\ \left( x,y\right) =\left( 0,0\right) \right)
\end{array}\right.
\end{equation*}と定めるのであれば、この\(f\)の定義域は\(\mathbb{R} ^{2}\)です。

 

演習問題

問題(多変数の有理関数)
多変数の有理関数の現実例を挙げてください。答案はコメント欄に投稿してください。

次回からスカラー場の収束可能性について解説します。

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