収束する多変数関数と順序
定義域を共有する2つの多変数関数\(f,g:\mathbb{R} ^{n}\supset X\rightarrow \mathbb{R} \)の間に以下の条件\begin{equation*}\left( a\right) \ \forall x\in X:f\left( x\right) \leq g\left( x\right)
\end{equation*}が成り立つものとします。つまり、関数\(f,g\)の定義域\(X\)上の値\(x\)を任意に選んだとき、それに対して\(g\)が定める値\(g\left( x\right) \)が\(f\)が定める値\(f\left( x\right) \)以上になるということです。加えて、点\(a\in \mathbb{R} ^{n}\)について、\(x\rightarrow a\)のときに関数\(f,g\)はともに有限な実数へ収束するものとします。つまり、\begin{eqnarray*}&&\left( b\right) \ \lim_{x\rightarrow a}f\left( x\right) \in \mathbb{R} \\
&&\left( c\right) \ \lim_{x\rightarrow a}g\left( x\right) \in \mathbb{R} \end{eqnarray*}がともに成り立つということです。以上の条件が満たされる場合、\(f\)と\(g\)の極限についても、\begin{equation*}\lim_{x\rightarrow a}f\left( x\right) \leq \lim_{x\rightarrow a}g\left(
x\right)
\end{equation*}という大小関係が保持されることが保証されます。
\end{equation*}が成り立つものとする。加えて、点\(a\in \mathbb{R} ^{n}\)について\(x\rightarrow a\)のときに\(f,g\)はともに有限な実数へ収束するならば、それらの極限についても、\begin{equation*}\lim_{x\rightarrow a}f\left( x\right) \leq \lim_{x\rightarrow a}f\left(
x\right)
\end{equation*}が成り立つ。
\end{equation}が成り立つものとします。加えて、点\(a\in \mathbb{R} ^{n}\)について、\(x\rightarrow a\)のときに\(f,g\)はともに有限な実数へ収束するものとします。\(\left( 1\right) \)が成り立つ場合には、\begin{equation*}\forall x\in X:f\left( x\right) \leq g\left( x\right)
\end{equation*}もまた明らかに成り立つため、先の命題より、\begin{equation*}
\lim_{x\rightarrow a}f\left( x\right) \leq \lim_{x\rightarrow a}f\left(
x\right)
\end{equation*}が成り立つことが保証されます。
収束する有界な多変数関数の極限と上界・下界の関係
関数\(f:\mathbb{R} ^{n}\supset X\rightarrow \mathbb{R} \)は上に有界であるものとします。つまり、\begin{equation*}\exists U\in \mathbb{R} ,\ \forall x\in X:f\left( x\right) \leq U
\end{equation*}が成り立つということです。これは\(f\left( x\right) \)がある実数\(U\)以下の値のみをとり得ることを意味します。また、\(U\)を\(f\)の上界と呼びます。加えて、点\(a\in \mathbb{R} ^{n}\)について、\(x\rightarrow a\)のときに\(f\)は有限な実数へ収束するものとします。このとき、\(f\)の極限もまた上界\(U\)以下になること、すなわち、\begin{equation*}\lim_{x\rightarrow a}f\left( x\right) \leq U
\end{equation*}が成り立つことが先の命題より導かれます。
下に有界な収束関数についても同様の主張が成り立ちます。具体的には、関数\(f:\mathbb{R} ^{n}\supset X\rightarrow \mathbb{R} \)は下に有界であるものとします。つまり、\begin{equation*}\exists L\in \mathbb{R} ,\ \forall x\in X:L\leq f\left( x\right)
\end{equation*}が成り立つということです。これは\(f\left( x\right) \)がある実数\(L\)以上の値のみをとり得ることを意味します。また、\(L\)を\(f\)の下界と呼びます。加えて、点\(a\in \mathbb{R} ^{n}\)について、\(x\rightarrow a\)のときに\(f\)は有限な実数へ収束するものとします。このとき、\(f\)の極限もまた下界\(L\)以上になること、すなわち、\begin{equation*}L\leq \lim_{x\rightarrow a}f\left( x\right)
\end{equation*}が成り立つことが先の命題より導かれます。
\end{equation*}が成り立つ。また、\(f\)が下に有界であるならば、その下界\(L\in \mathbb{R} \)を任意に選んだときに、\begin{equation*}L\leq \lim_{x\rightarrow a}f\left( x\right)
\end{equation*}が成り立つ。
はさみうちの定理
定義域を共有する3つの関数\(f,g,h:\mathbb{R} ^{n}\supset X\rightarrow \mathbb{R} \)の間に以下の条件\begin{equation*}\left( a\right) \ \forall x\in X:f\left( x\right) \leq g\left( x\right) \leq
h\left( x\right)
\end{equation*}が成り立つものとします。つまり、関数\(f,g,h\)の定義域\(X\)上の値\(x\)を任意に選んだとき、それに対して\(g\)が定める値\(g\left( x\right) \)は\(f\)が定める値\(f\left( x\right) \)と\(h\)が定める値\(h\left( x\right) \)に挟まれるということです。加えて、点\(a\in \mathbb{R} ^{n}\)について、\(x\rightarrow a\)のときに両端の関数\(f,h\)はともに有限かつ同一の極限\(b\in \mathbb{R} \)へ収束するものとします。つまり、\begin{equation*}\left( b\right) \ \lim_{x\rightarrow a}f\left( x\right) =\lim_{x\rightarrow
a}h\left( x\right) =b\in \mathbb{R} \end{equation*}が成り立つということです。以上の条件が満たされる場合、間に挟まれる関数\(g\)もまた\(x\rightarrow a\)のときに有限な極限へ収束するとともに、その極限が\(b\)と一致することが保証されます。つまり、\begin{equation*}\lim_{x\rightarrow a}g\left( x\right) =b
\end{equation*}が成り立つということです。これをはさみうちの定理(squeeze theorem)と呼びます。
\end{equation*}が成り立つものとする。加えて、点\(a\in \mathbb{R} ^{n}\)について\(x\rightarrow a\)のときに関数\(f,h\)がともに有限かつ同一の極限\(b\in \mathbb{R} \)へ収束するならば、関数\(g\)もまた\(x\rightarrow a\)のときに\(b\)へ収束する。
\end{equation*}を定めるものとします。この関数\(f\)の\(\left(x,y\right) \rightarrow \left( 0,0\right) \)のときの極限を求めようとしている状況を想定してください。正弦関数の定義より、\begin{equation*}-1\leq \sin \left( \frac{1}{x^{2}+\left\vert y\right\vert }\right) \leq 1
\end{equation*}が成り立ちます。さらに、\(x^{4}\geq 0\)であるため、\begin{equation*}-x^{4}\leq x^{4}\sin \left( \frac{1}{x^{2}+\left\vert y\right\vert }\right)
\leq x^{4}
\end{equation*}を得ます。さらに、\begin{eqnarray*}
\lim_{\left( x,y\right) \rightarrow \left( 0,0\right) }\left( -x^{4}\right)
&=&-0^{4}=0 \\
\lim_{\left( x,y\right) \rightarrow \left( 0,0\right) }x^{4} &=&0^{4}=0
\end{eqnarray*}であるため、はさみうちの定理より、\begin{equation*}
\lim_{\left( x,y\right) \rightarrow \left( 0,0\right) }x^{4}\sin \left(
\frac{1}{x^{2}+\left\vert y\right\vert }\right) =0
\end{equation*}が成り立ちます。
絶対値定理
関数\(f:\mathbb{R} ^{n}\supset X\rightarrow \mathbb{R} \)が与えられたとき、それぞれの\(x\in X\)に対して、\begin{equation*}-\left\vert f\left( x\right) \right\vert \leq f\left( x\right) \leq
\left\vert f\left( x\right) \right\vert
\end{equation*}という関係が明らかに成り立ちます。点\(a\in \mathbb{R} ^{n}\)において、\begin{equation}\lim_{x\rightarrow a}\left\vert f\left( x\right) \right\vert =0 \quad \cdots (1)
\end{equation}が成り立つのであれば、\begin{eqnarray*}
\lim_{x\rightarrow a}\left( -\left\vert f\left( x\right) \right\vert \right)
&=&-\lim_{x\rightarrow a}\left\vert f\left( x\right) \right\vert \quad
\because \text{収束する多変数関数の定数倍} \\
&=&-0\quad \because \left( 1\right) \\
&=&0
\end{eqnarray*}もまた明らかに成り立つため、はさみうちの定理より、関数\(f\)についても、\begin{equation*}\lim_{x\rightarrow a}f\left( x\right) =0
\end{equation*}が成り立ちます。これを絶対値定理(absolute value theorem)と呼びます。つまり、関数\(f\left( x\right) \)が\(x\rightarrow a\)のときに\(0\)へ収束することを示すためには、関数\(\left\vert f\left( x\right)\right\vert \)が\(x\rightarrow a\)のときに\(0\)へ収束することを示してもよいということです。
\lim_{x\rightarrow a}f\left( x\right) =0
\end{equation*}が成り立つ。
演習問題
\lim_{\left( x,y\right) \rightarrow \left( 0,0\right) }\frac{x^{6}+x^{2}y^{4}}{x^{2}+y^{2}}
\end{equation*}
\lim_{\left( x,y\right) \rightarrow \left( 0,0\right) }\frac{x^{2}y^{3}}{2x^{2}+y^{2}}
\end{equation*}
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