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多変数関数

多変数の定数関数

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多変数の定数関数

多変数関数\(f:\mathbb{R} ^{n}\supset X\rightarrow \mathbb{R} \)がそれぞれの\(x\in X\)に対して定める値が、ある特定の実数\(c\in \mathbb{R} \)を用いて、\begin{equation*}f\left( x\right) =c
\end{equation*}という形で表すことができるとき、\(f\)を定数関数(constant function)と呼びます。つまり、定数関数とは入力する\(x\)の値によらず出力される値\(f\left( x\right) \)が常に一定であるような多変数関数です。

例(定数関数)
関数\(f:\mathbb{R} ^{n}\rightarrow \mathbb{R} \)がそれぞれの\(x\in \mathbb{R} ^{n}\)に対して定める値が、特定の実数\(c\in \mathbb{R} \)を用いて、\begin{equation*}f\left( x\right) =c
\end{equation*}であるとき、この\(f\)は定数関数です。つまり、定数関数は\(\mathbb{R} ^{n}\)上に定義可能です。
例(定数関数)
2変数関数\(f:\mathbb{R} ^{2}\rightarrow \mathbb{R} \)が定数関数であることとは、ある\(c\in \mathbb{R} \)が存在して、任意の\(\left( x,y\right) \in \mathbb{R} ^{2}\)に対して、\begin{equation*}f\left( x,y\right) =c
\end{equation*}が成り立つことを意味します。

例(定数関数)
3変数関数\(f:\mathbb{R} ^{2}\rightarrow \mathbb{R} \)が定数関数であることとは、ある\(c\in \mathbb{R} \)が存在して、任意の\(\left( x,y,z\right) \in \mathbb{R} ^{3}\)に対して、\begin{equation*}f\left( x,y,z\right) =c
\end{equation*}が成り立つことを意味します。

例(定数関数)
試験を受けた\(10\)人の学生による得点を成分とするベクトルを、\begin{equation*}x=\left( x_{1},\cdots ,x_{10}\right) \in X
\end{equation*}で表記します。先生がすべての学生に対して試験の得点とは関係なく必ず単位を与える場合、試験結果\(x\in X\)のもとで単位を得る学生の人数は、\begin{equation*}f\left( x\right) =10
\end{equation*}となります。この多変数関数\(f:\mathbb{R} ^{10}\supset X\rightarrow \mathbb{R} \)は定数関数です。
例(定数関数)
関数\(f:\mathbb{R} ^{2}\rightarrow \mathbb{R} \)がそれぞれの\(\left( x,y\right) \in \mathbb{R} ^{2}\)に対して定める値が、\begin{equation*}f\left( x,y\right) =\left\{
\begin{array}{cc}
1 & \left( if\ xy\geq 0\right) \\
0 & \left( if\ xy<0\right)
\end{array}\right.
\end{equation*}であるものとします。この関数\(f\)は定数関数ではありませんが、\(f\)の定義域を縮小して得られる関数\begin{eqnarray*}f &:&\left\{ \left( x,y\right) \in \mathbb{R} ^{2}\ |\ xy\geq 0\right\} \rightarrow \mathbb{R} \\
f &:&\left\{ \left( x,y\right) \in \mathbb{R} ^{2}\ |\ xy<0\right\} \rightarrow \mathbb{R} \end{eqnarray*}はいずれも定数関数です。

 

多変数の定数関数のグラフ

関数\(f:\mathbb{R} ^{n}\supset X\rightarrow \mathbb{R} \)が定数関数であるものとします。つまり、ある\(c\in \mathbb{R} \)が存在して、任意の\(x\in X\)に対して、\begin{equation*}f\left( x\right) =c
\end{equation*}が成り立つということです。\(f\)のグラフは、\begin{eqnarray*}G\left( f\right) &=&\left\{ \left( x,y\right) \in X\times \mathbb{R} \ |\ y=f\left( x\right) \right\} \\
&=&\left\{ \left( x,y\right) \in X\times \mathbb{R} \ |\ y=c\right\} \\
&=&\left\{ \left( x,c\right) \ |\ x\in X\right\}
\end{eqnarray*}となります。特に、定義域が\(\mathbb{R} ^{n}\)である場合には、\begin{equation*}G\left( f\right) =\left\{ \left( x,c\right) \ |\ x\in \mathbb{R} ^{n}\right\}
\end{equation*}となります。

例(多変数の定数関数のグラフ)
関数\(f:\mathbb{R} ^{2}\rightarrow \mathbb{R} \)はそれぞれの\(\left( x,y\right) \in \mathbb{R} ^{2}\)に対して、\begin{equation*}
f\left( x,y\right) =3
\end{equation*}を定めるものとします。この関数のグラフは、\begin{equation*}
G\left( f\right) =\left\{ \left( x,y,c\right) \ |\ x\in \mathbb{R} \wedge y\in \mathbb{R} \right\}
\end{equation*}ですが、これは以下のように図示されます。

図:定数関数
図:定数関数

 

多変数の定数関数との合成関数

ベクトル値関数\(f:\mathbb{R} \supset X\rightarrow \mathbb{R} ^{n}\)を任意に選びます。また、多変数関数\(g:\mathbb{R} ^{n}\supset Y\rightarrow \mathbb{R} \)が定数関数であるものとします。つまり、\begin{equation}\exists c\in \mathbb{R} ,\ \forall x\in Y:g\left( x\right) =c \quad \cdots (1)
\end{equation}であるということです。このとき、\begin{equation*}
f\left( X\right) \subset Y
\end{equation*}が成り立つ場合には合成関数\begin{equation*}
g\circ f:\mathbb{R} \supset X\rightarrow \mathbb{R} \end{equation*}が定義可能であり、これはそれぞれの\(x\in X\)に対して、\begin{eqnarray*}\left( g\circ f\right) \left( x\right) &=&g\left( f\left( x\right) \right)
\quad \because \text{合成関数の定義} \\
&=&c\quad \because \left( 1\right)
\end{eqnarray*}を定めます。つまり、ベクトル値関数\(f\)と多変数の定数関数\(g\)の合成関数\(g\circ f\)は1変数の定数関数です。

例(多変数の定数関数との合成関数)
ベクトル値関数\(f:\mathbb{R} \rightarrow \mathbb{R} ^{2}\)はそれぞれの\(x\in \mathbb{R} \)に対して、\begin{equation*}f\left( x\right) =\left( x,x^{2}\right)
\end{equation*}を定め、多変数関数\(g:\mathbb{R} ^{2}\rightarrow \mathbb{R} \)はそれぞれの\(\left( x,y\right) \in \mathbb{R} ^{2}\)に対して、\begin{equation*}g\left( x,y\right) =1
\end{equation*}を定めるものとします。合成関数\(g\circ f:\mathbb{R} \rightarrow \mathbb{R} \)はそれぞれの\(x\in \mathbb{R} \)に対して、\begin{eqnarray*}\left( g\circ f\right) \left( x\right) &=&g\left( f\left( x\right) \right)
\quad \because \text{合成関数の定義} \\
&=&1\quad \because f\text{の定義}
\end{eqnarray*}を定めるため、これは定数関数であるとともに、\begin{equation*}
g\circ f=g
\end{equation*}が成り立ちます。

多変数関数\(f:\mathbb{R} ^{n}\supset X\rightarrow \mathbb{R} \)が定数関数であるものとします。\begin{equation}\exists c\in \mathbb{R} ,\ \forall x\in X:f\left( x\right) =c \quad \cdots (1)
\end{equation}が成り立つということです。また、1変数関数\(g:\mathbb{R} \supset Y\rightarrow \mathbb{R} \)を任意に選びます。このとき、\begin{equation*}f\left( X\right) \subset Y
\end{equation*}すなわち、\begin{equation*}
c\in Y
\end{equation*}が成り立つ場合には合成関数\begin{equation*}
g\circ f:\mathbb{R} ^{n}\supset X\rightarrow \mathbb{R} \end{equation*}が定義可能であり、これはそれぞれの\(x\in X\)に対して、\begin{eqnarray*}\left( g\circ f\right) \left( x\right) &=&g\left( f\left( x\right) \right)
\quad \because \text{合成関数の定義} \\
&=&g\left( c\right) \quad \because \left( 1\right)
\end{eqnarray*}を定めます。つまり、多変数の定数関数\(f\)と1変数関数\(g\)の合成関数\(g\circ f\)は多変数の定数関数です。

例(多変数の定数関数との合成関数)
多変数関数\(f:\mathbb{R} ^{2}\rightarrow \mathbb{R} \)はそれぞれの\(\left( x,y\right) \in \mathbb{R} ^{2}\)に対して、\begin{equation*}f\left( x,y\right) =1
\end{equation*}を定め、1変数関数\(g:\mathbb{R} \rightarrow \mathbb{R} \)はそれぞれの\(x\in \mathbb{R} \)に対して、\begin{equation*}g\left( x\right) =x^{2}+x+1
\end{equation*}を定めるものとします。合成関数\(g\circ f:\mathbb{R} ^{2}\rightarrow \mathbb{R} \)はそれぞれの\(\left( x,y\right) \in \mathbb{R} ^{2}\)に対して、\begin{eqnarray*}\left( g\circ f\right) \left( x,y\right) &=&g\left( f\left( x,y\right)
\right) \quad \because \text{合成関数の定義} \\
&=&g\left( 1\right) \quad \because f\text{の定義} \\
&=&1^{2}+1+1\quad \because g\text{の定義} \\
&=&3
\end{eqnarray*}を定めるため、これは定数関数です。

 

演習問題

問題(定数関数による像)
関数\(f:\mathbb{R} ^{n}\supset X\rightarrow \mathbb{R} \)が定数関数であるものとします。つまり、\begin{equation*}\exists c\in \mathbb{R} ,\ \forall x\in X:f\left( x\right) =c
\end{equation*}が成り立つということです。始集合の部分集合\(Y\subset X\)を任意に選んだ上で、\(f\)による像\(f\left( Y\right) \)を求めてください。また、\(f\)の値域\(R\left(f\right) \)を求めてください。
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問題(定数関数による逆像)
関数\(f:\mathbb{R} ^{n}\supset X\rightarrow \mathbb{R} \)が定数関数であるものとします。つまり、\begin{equation*}\exists c\in \mathbb{R} ,\ \forall x\in X:f\left( x\right) =c
\end{equation*}が成り立つということです。終集合の要素\(y\in \mathbb{R} \)を任意に選んだ上で、その逆像\(f^{-1}\left( y\right) \)を求めてください。また、終集合の部分集合\(Y\subset \mathbb{R} \)を任意に選んだ上で、その逆像\(f^{-1}\left( Y\right) \)を求めてください。
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