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定数関数の極限

目次

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定数関数

スカラー場\(f:\mathbb{R}^{n}\supset X\rightarrow \mathbb{R}\)がそれぞれの\(x\in X\)に対して定める値が、定数\(c\in \mathbb{R}\)を用いて、\begin{equation*}
f\left( x\right) =c
\end{equation*}という形で表すことができるとき、\(f\)を定数関数(constant function)と呼びます。つまり、定数関数とは入力する点\(x\)によらず出力される値\(f\left( x\right) \)が一定であるようなスカラー場です。

例(定数関数)
スカラー場\(f:\mathbb{R}^{2}\rightarrow \mathbb{R}\)がそれぞれの\(\left( x,y\right) \in \mathbb{R}^{2}\)に対して定める値が、\begin{equation*}
f\left( x,y\right) =2
\end{equation*}であるとき、この\(f\)は定数関数です。
例(定数関数)
スカラー場\(f:\mathbb{R}^{3}\rightarrow \mathbb{R}\)がそれぞれの\(\left( x,y,z\right) \in \mathbb{R}^{3}\)に対して定める値が、\begin{equation*}
f\left( x,y,z\right) =\frac{\pi }{3}
\end{equation*}であるとき、この\(f\)は定数関数です。
例(定数関数)
スカラー場\(f:\mathbb{R}^{2}\rightarrow \mathbb{R}\)がそれぞれの\(\left( x,y\right) \in \mathbb{R}^{2}\)に対して定める値が、\begin{equation*}
f\left( x,y\right) =\left\{
\begin{array}{cc}
0 & if\ \left( x,y\right) =\left( 0,0\right) \\
1 & if\ \left( x,y\right) \not=\left( 0,0\right)
\end{array}\right.
\end{equation*}であるものとします。このスカラー場\(f\)は定数関数ではありませんが、\(f\)の定義域を縮小して得られるスカラー場\begin{eqnarray*}
f &:&\mathbb{R}^{2}\backslash \left\{ \left( 0,0\right) \right\} \rightarrow \mathbb{R}\\
f &:&\left\{ \left( 0,0\right) \right\} \rightarrow \mathbb{R}\end{eqnarray*}はいずれも定数関数です。

 

定数関数の極限

スカラー場\(f:\mathbb{R}^{n}\supset X\rightarrow \mathbb{R}\)が定数関数であるものとします。つまり、ある\(c\in \mathbb{R}\)が存在して、任意の\(x\in X\)に対して、\begin{equation*}
f\left( x\right) =c
\end{equation*}が成り立つということです。\(f\)が点\(a\in \mathbb{R}^{n}\)の周辺の任意の点において定義されているとき、\(f\)が\(x\rightarrow a\)のときに有限な実数へ収束するかどうかを検討できますが、\(f\)は常に同一の値\(c\)をとることを踏まえると、\(f\)は\(x\rightarrow a\)のときに\(c\)へ収束しそうです。実際、これは正しい主張です。証明は以下の通りです。

目標は以下の論理式\begin{equation*}
\forall \varepsilon >0,\ \exists \delta >0,\ \forall x\in X:\left[ 0<d\left(
x,a\right) <\delta \Rightarrow \left\vert f\left( x\right) -c\right\vert
<\varepsilon \right] \end{equation*}が真であることを示すことです。\(\varepsilon >0\)を任意に選んだとき、任意の\(x\in X\)に対して、\begin{eqnarray*}
\left\vert f\left( x\right) -c\right\vert &=&\left\vert c-c\right\vert
\quad \because \text{定数関数}f\text{の定義} \\
&=&0 \\
&<&\varepsilon
\end{eqnarray*}が成り立つため証明が完了しました。

命題(定数関数の極限)

スカラー場\(f:\mathbb{R}^{n}\supset X\rightarrow \mathbb{R}\)がそれぞれの\(x\in X\)に対して定める値が、ある定数\(c\in \mathbb{R}\)を用いて、\begin{equation*}
f\left( x\right) =c
\end{equation*}と表されるものとする。\(f\)が点\(a\in \mathbb{R}\)の周辺にある任意の点において定義されているとき、\(f\)は\(x\rightarrow a\)のときに有限な実数へ収束し、\begin{equation*}
\lim_{x\rightarrow a}f\left( x\right) =c
\end{equation*}が成り立つ。

例(定数関数の極限)
スカラー場\(f:\mathbb{R}^{2}\rightarrow \mathbb{R}\)はそれぞれの\(\left( x,y\right) \in \mathbb{R}^{2}\)に対して、\begin{equation*}
f\left( x,y\right) =2
\end{equation*}を定めるものとします。\(\mathbb{R}^{2}\)は開集合であるため、点\(\left( a,b\right) \in \mathbb{R}^{2}\)を任意に選んだとき、\(f\)は\(\left( a,b\right) \)の周辺にある任意の点において定義されています。したがって上の命題より、\begin{equation*}
\lim_{\left( x,y\right) \rightarrow \left( a,b\right) }f\left( x,y\right) =2
\end{equation*}が成り立ちます。

上の命題は、定数関数\(f\)が問題としている点\(a\)の周辺にある任意の点において定義されている場合にのみ適用可能です。\(f\)が\(a\)の周辺の点において定義されていない場合、そもそも\(x\rightarrow a\)のときの極限を考えることさえできません。

例(定数関数の極限)
スカラー場\(f:\mathbb{R}^{2}\supset X\rightarrow \mathbb{R}\)はそれぞれの\(\left( x,y\right) \in X\)に対して、\begin{equation*}
f\left( x,y\right) =2
\end{equation*}を定めるものとします。ただし、\(f\)の定義域は、\begin{equation*}
X=\left[ 0,1\right] \times \left[ 0,1\right] \end{equation*}です。定義域\(X\)の内部は、\begin{equation*}
X^{i}=\left( 0,1\right) \times \left( 0,1\right)
\end{equation*}です。定義域の内点\(\left( a,b\right) \in X^{i}\)を任意に選んだとき、\(f\)は\(\left( a,b\right) \)の周辺にある任意の点において定義されているため、先の命題より、\begin{equation*}
\lim_{\left( x,y\right) \rightarrow \left( a,b\right) }f\left( x,y\right) =2
\end{equation*}が成り立ちます。一方、定義域の境界点\(\left( 1,1\right) \)に注目したとき、\(f\)は点\(\left( 1,1\right) \)の周辺にある任意の点において定義されているとはいないため、そもそも、\(\left( x,y\right) \rightarrow \left( 1,1\right) \)のときの\(f\)の極限を考えることができません。

以下はもう少し複雑な場合です。

例(定数関数の極限)
スカラー場\(f:\mathbb{R}^{2}\rightarrow \mathbb{R}\)がそれぞれの\(\left( x,y\right) \in \mathbb{R}^{2}\)に対して定める値が、\begin{equation*}
f\left( x,y\right) =\left\{
\begin{array}{cc}
0 & if\ \left( x,y\right) =\left( 0,0\right) \\
1 & if\ \left( x,y\right) \not=\left( 0,0\right)
\end{array}\right.
\end{equation*}であるものとします。このスカラー場\(f\)は定数関数ではありませんが、\(f\)の定義域を縮小して得られるスカラー場\begin{eqnarray*}
f &:&\mathbb{R}^{2}\backslash \left\{ \left( 0,0\right) \right\} \rightarrow \mathbb{R}\\
f &:&\left\{ \left( 0,0\right) \right\} \rightarrow \mathbb{R}\end{eqnarray*}はいずれも定数関数です。点\(\left( a,b\right) \in \mathbb{R}^{2}\)が\(a\not=0\)かつ\(b\not=0\)を満たす場合、\(\left( a,b\right) \)は\(\mathbb{R}^{2}\backslash \left\{ \left( 0,0\right) \right\} \)の内点であるため、定数関数\(f:\mathbb{R}^{2}\backslash \left\{ \left( 0,0\right) \right\} \rightarrow \mathbb{R}\)は\(\left( a,b\right) \)の周辺の任意の点において定義されています。したがって先の命題より、\begin{equation*}
\lim_{\left( x,y\right) \rightarrow \left( a,b\right) }f\left( x,y\right) =1
\end{equation*}が成り立ちます。一方、\(a=0\)と\(b=0\)の少なくとも一方を満たす点\(\left( a,b\right) \)は\(\mathbb{R}^{2}\backslash \left\{ \left( 0,0\right) \right\} \)や\(\left\{ \left( 0,0\right) \right\} \)の内点ではないため、そこでの極限を求める際に先の命題を利用できず、関数の極限の定義にさかのぼって考える必要があります。詳細は演習問題にしますが、そのような\(\left( a,b\right) \)についても、\begin{equation*}
\lim_{\left( x,y\right) \rightarrow \left( a,b\right) }f\left( x,y\right) =1
\end{equation*}が成り立ちます。

 

演習問題

問題(定数関数の極限)
スカラー場\(f:\mathbb{R}^{2}\rightarrow \mathbb{R}\)がそれぞれの\(\left( x,y\right) \in \mathbb{R}^{2}\)に対して定める値が、\begin{equation*}
f\left( x,y\right) =\left\{
\begin{array}{cc}
0 & if\ \left( x,y\right) =\left( 0,0\right) \\
1 & if\ \left( x,y\right) \not=\left( 0,0\right)
\end{array}\right.
\end{equation*}であるものとします。点\(\left( a,b\right) \in \mathbb{R}^{2}\)を任意に選んだとき、\begin{equation*}
\lim_{\left( x,y\right) \rightarrow \left( a,b\right) }f\left( x,y\right) =1
\end{equation*}が成り立つことを証明してください。
証明

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次回は入力したベクトルに対して、その特定の成分を返すベクトル場の極限について考えます。

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