WIIS

多変数関数

多変数の定数関数の極限

目次

関連知識

Mailで保存
Xで共有

多変数の定数関数の極限

多変数関数\(f:\mathbb{R} ^{n}\supset X\rightarrow \mathbb{R} \)が定数関数であるものとします。つまり、ある\(c\in \mathbb{R} \)が存在して、任意の\(x\in X\)に対して、\begin{equation*}f\left( x\right) =c
\end{equation*}が成り立つということです。\(f\)が点\(a\in \mathbb{R} ^{n}\)の周辺の任意の点において定義されている場合、\(f\)が\(x\rightarrow a\)のときに有限な実数へ収束するかどうか検討できますが、\(f\)は常に同一の値\(c\)をとることを踏まえると、\(f\)は\(x\rightarrow a\)のときに\(c\)へ収束しそうです。実際、これは正しい主張です。

命題(多変数の定数関数の極限)
関数\(f:\mathbb{R} ^{n}\supset X\rightarrow \mathbb{R} \)がそれぞれの\(x\in X\)に対して定める値が、ある定数\(c\in \mathbb{R} \)を用いて、\begin{equation*}f\left( x\right) =c
\end{equation*}と表されるものとする。\(f\)が点\(a\in \mathbb{R} ^{n}\)の周辺の任意の点において定義されているならば、\begin{equation*}\lim_{x\rightarrow a}f\left( x\right) =c
\end{equation*}が成り立つ。

証明

プレミアム会員専用コンテンツです
ログイン】【会員登録

例(多変数の定数関数の極限)
関数\(f:\mathbb{R} ^{n}\rightarrow \mathbb{R} \)がそれぞれの\(x\in \mathbb{R} ^{n}\)に対して定める値が、ある定数\(c\in \mathbb{R} \)を用いて、\begin{equation*}f\left( x\right) =c
\end{equation*}と表されるものとします。定義域\(\mathbb{R} ^{n}\)は開集合であるため、点\(a\in \mathbb{R} ^{n}\)を任意に選んだとき、\(f\)は\(a\)の周辺にある任意の点において定義されています。したがって上の命題より、\begin{equation*}\lim_{x\rightarrow a}f\left( x\right) =c
\end{equation*}が成り立ちます。

例(多変数の定数関数の極限)
関数\(f:\mathbb{R} ^{2}\rightarrow \mathbb{R} \)はそれぞれの\(\left( x,y\right) \in \mathbb{R} ^{2}\)に対して、\begin{equation*}f\left( x,y\right) =3
\end{equation*}を定めるものとします。定義域\(\mathbb{R} ^{2}\)は開集合であるため、点\(\left( a,b\right) \in \mathbb{R} ^{2}\)を任意に選んだとき、\(f\)は点\(\left( a,b\right) \)の周辺の任意の点において定義されています。しかも\(f\)は定数関数であるため、上の命題より、\begin{equation*}\lim_{\left( x,y\right) \rightarrow \left( a,b\right) }f\left( x,y\right) =3
\end{equation*}が成り立ちます。

例(多変数の定数関数の極限)
関数\(f:\mathbb{R} ^{2}\rightarrow \mathbb{R} \)はそれぞれの\(\left( x,y\right) \in \mathbb{R} ^{2}\)に対して、\begin{equation*}f\left( x,y\right) =\left\{
\begin{array}{cc}
0 & if\ \left( x,y\right) =\left( 0,0\right) \\
1 & if\ \left( x,y\right) \not=\left( 0,0\right)
\end{array}\right.
\end{equation*}を定めるものとします。点\(\left( 0,0\right) \)とは異なる点\(\left( a,b\right) \in \mathbb{R} ^{2}\backslash \left\{ \left( 0,0\right) \right\} \)を任意に選びます。\(\mathbb{R} ^{2}\backslash \left\{ \left( 0,0\right) \right\} \)は開集合であることから、\(f\)は点\(\left( a,b\right) \)の周辺の任意の点において定義されているとともに、そのような任意の点\(\left( x,y\right) \)において\(f\left(x,y\right) =1\)が成り立つため、定数関数の極限より、\begin{equation*}\lim_{\left( x,y\right) \rightarrow \left( a,b\right) }f\left( x,y\right) =1
\end{equation*}となります。点\(\left( 0,0\right) \)については、\(f\)の定義より、\(f\)は点\(\left( 0,0\right) \)の周辺の任意の点において定義されているとともに、そのような任意の点\(\left( x,y\right) \)において\(f\left( x,y\right) =1\)が成り立つため、定数関数の極限より、\begin{equation*}\lim_{\left( x,y\right) \rightarrow \left( 0,0\right) }f\left( x,y\right) =1
\end{equation*}となります。

 

変数が定義域の境界点に限りなく近づく場合の定数関数の極限

以下は境界点における極限の例です。

例(多変数の定数関数の極限)
関数\(f:\mathbb{R} ^{2}\supset \left[ 0,1\right] \times \left[ 0,1\right] \rightarrow \mathbb{R} \)はそれぞれの\(\left( x,y\right) \in \left[ 0,1\right] \times \left[ 0,1\right] \)に対して、\begin{equation*}f\left( x,y\right) =2
\end{equation*}を定めるものとします。定義域の内点\(\left(a,b\right) \in \left( 0,1\right) \times \left( 0,1\right) \)を任意に選んだとき、内点の定義より、\(f\)は点\(\left( a,b\right) \)の周辺の任意の点において定義されているとともに、そのような任意の点\(\left(x,y\right) \)において\(f\left( x,y\right) =2\)となるため、定数関数の極限より、\begin{equation*}\lim_{\left( x,y\right) \rightarrow \left( a,b\right) }f\left( x,y\right) =2
\end{equation*}となります。では、\(\left( x,y\right) \)が定義域の境界点に限りなく近づく場合にはどうでしょうか。例えば、点\(\left(1,1\right) \)は\(f\)の定義域の境界点であるため、\(f\)は点\(\left( 1,1\right) \)の周辺の任意の点において定義されているとは言えません。この場合、\(\left(x,y\right) \rightarrow \left( 1,1\right) \)の場合の\(f\)の極限とは、変数\(\left(x,y\right) \)が\(x\leq 1\)かつ\(y\leq 1\)かつ\(\left( x,y\right) \not=\left( 1,1\right) \)を満たしながら\(\left( 1,1\right) \)へ限りなく近づく場合の\(f\)の極限に相当します。以上を踏まえた上で、\begin{eqnarray*}&&\left( a\right) \ \forall v\in \mathbb{N} :x_{v}\leq 1 \\
&&\left( b\right) \ \forall v\in \mathbb{N} :y_{v}\leq 1 \\
&&\left( c\right) \ \forall v\in \mathbb{N} :\left( x_{v},y_{v}\right) \not=\left( 1,1\right) \\
&&\left( d\right) \ \lim_{v\rightarrow \infty }\left( x_{v},y_{v}\right)
=\left( 1,1\right)
\end{eqnarray*}を満たす点列\(\left\{ \left(x_{v},y_{v}\right) \right\} \)を任意に選びます。このとき、数列\(\left\{ f\left( x_{v},y_{v}\right) \right\} \)について、\begin{eqnarray*}\lim_{v\rightarrow \infty }f\left( x_{v},y_{v}\right) &=&\lim_{v\rightarrow
\infty }2\quad \because \left( a\right) ,\left( b\right) ,\left( c\right)
\text{および}f\text{の定義} \\
&=&2
\end{eqnarray*}となるため、\begin{equation*}
\lim_{\left( x,y\right) \rightarrow \left( 1,1\right) }f\left( x,y\right) =2
\end{equation*}が成り立つことが示されました。他の境界点についても同様に考えます。

 

演習問題

問題(多変数の定数関数の極限)
関数\(f:\mathbb{R} ^{n}\supset X\rightarrow \mathbb{R} \)がそれぞれの\(x\in X\)に対して定める値が、ある定数\(c\in \mathbb{R} \)を用いて、\begin{equation*}f\left( x\right) =c
\end{equation*}と表されるものとします。\(f\)が点\(a\in \mathbb{R} ^{n}\)の周辺の任意の点において定義されているならば、\begin{equation*}\lim_{x\rightarrow a}f\left( x\right) =c
\end{equation*}が成り立つことを本文中では点列を用いて証明しましたが、同じことをイプシロン・デルタ論法を用いて証明してください。

解答を見る

プレミアム会員専用コンテンツです
ログイン】【会員登録

問題(多変数の定数関数の極限)
関数\(f:\mathbb{R} ^{2}\rightarrow \mathbb{R} \)はそれぞれの\(\left( x,y\right) \in \mathbb{R} ^{2}\)に対して、\begin{equation*}f\left( x,y\right) =\left\{
\begin{array}{ll}
0 & \left( if\ xy<0\right) \\
1 & \left( if\ xy\geq 0\right)
\end{array}\right.
\end{equation*}を定めるものとします。以下の極限\begin{equation*}
\lim_{\left( x,y\right) \rightarrow \left( 0,0\right) }f\left( x,y\right)
\end{equation*}は有限な実数として定まるでしょうか。議論してください。

解答を見る

プレミアム会員専用コンテンツです
ログイン】【会員登録

問題(多変数の定数関数の極限)
関数\(f:\mathbb{R} ^{2}\supset \left[ 0,1\right] \times \left[ 0,1\right] \rightarrow \mathbb{R} \)はそれぞれの\(\left( x,y\right) \in \left[ 0,1\right] \times \left[ 0,1\right] \)に対して、\begin{equation*}f\left( x,y\right) =2
\end{equation*}を定めるものとします。以下の極限\begin{equation*}
\lim_{\left( x,y\right) \rightarrow \left( 0,1\right) }f\left( x,y\right)
\end{equation*}は有限な実数として定まるでしょうか。議論してください。

解答を見る

プレミアム会員専用コンテンツです
ログイン】【会員登録

問題(多変数の定数関数の極限)
関数\(f:\mathbb{R} _{+}^{2}\rightarrow \mathbb{R} \)はそれぞれの\(\left( x,y\right) \in \mathbb{R} _{+}^{2}\)に対して、\begin{equation*}f\left( x,y\right) =\left\{
\begin{array}{ll}
0 & \left( if\ xy<0\right) \\
1 & \left( if\ xy\geq 0\right)
\end{array}\right.
\end{equation*}を定めるものとします。以下の極限\begin{equation*}
\lim_{\left( x,y\right) \rightarrow \left( 0,0\right) }f\left( x,y\right)
\end{equation*}は有限な実数として定まるでしょうか。議論してください。

解答を見る

プレミアム会員専用コンテンツです
ログイン】【会員登録

関連知識

Mailで保存
Xで共有

質問とコメント

プレミアム会員専用コンテンツです

会員登録

有料のプレミアム会員であれば、質問やコメントの投稿と閲覧、プレミアムコンテンツ(命題の証明や演習問題とその解答)へのアクセスなどが可能になります。

ワイズのユーザーは年齢・性別・学歴・社会的立場などとは関係なく「学ぶ人」として対等であり、お互いを人格として尊重することが求められます。ユーザーが快適かつ安心して「学ぶ」ことに集中できる環境を整備するため、広告やスパム投稿、他のユーザーを貶めたり威圧する発言、学んでいる内容とは関係のない不毛な議論などはブロックすることになっています。詳細はガイドラインをご覧ください。

誤字脱字、リンク切れ、内容の誤りを発見した場合にはコメントに投稿するのではなく、以下のフォームからご連絡をお願い致します。

プレミアム会員専用コンテンツです
ログイン】【会員登録