WIIS

多変数関数

多変数の座標関数

目次

関連知識

前のページ:

多変数の定数関数

次のページ:

多変数の多項式関数

Mailで保存
Xで共有

多変数の座標関数

1変数関数\(f:\mathbb{R} \supset X\rightarrow \mathbb{R} \)が恒等関数であることとは、任意の\(x\in X\)に対して、\begin{equation*}f\left( x\right) =x
\end{equation*}が成り立つこととして定義されます。つまり、恒等関数とは入力した値と同じ値を返す関数です。一方、多変数関数\(f:\mathbb{R} ^{n}\supset X\rightarrow \mathbb{R} \)の入力値は\(n\)次元ベクトル\(\left( x_{1},\cdots ,x_{n}\right) \in X\)である一方、出力される値\(f\left( x_{1},\cdots ,x_{n}\right) \in \mathbb{R} \)は実数であるため、入力した値をそのまま返すような多変数関数を定義できません。ただ、\(n\)個の変数\(x_{1},\cdots ,x_{n}\)の中の特定の変数\(x_{k}\ \left( k=1,\cdots ,n\right) \)に注目した上で、入力した\(n\)次元ベクトル\(\left( x_{1},\cdots ,x_{n}\right)\in X\)に対して、その第\(k\)成分の値\begin{equation*}f\left( x_{1},\cdots ,x_{n}\right) =x_{k}
\end{equation*}を返す多変数関数\(f:\mathbb{R} ^{n}\supset X\rightarrow \mathbb{R} \)を定義することはできます。そこで、このような多変数関数を変数\(x_{k}\)に関する座標関数(coordinate function)と呼ぶこととします。

例(多変数の座標関数)
関数\(f:\mathbb{R} ^{n}\rightarrow \mathbb{R} \)がそれぞれの\(x\in \mathbb{R} ^{n}\)に対して定める値が、\begin{equation*}f\left( x\right) =x_{k}
\end{equation*}であるとき、この\(f\)は変数\(x_{k}\)に関する座標関数です。つまり、座標関数は\(\mathbb{R} ^{n}\)上に定義可能です。
例(多変数の座標関数)
2変数関数\(f:\mathbb{R} ^{2}\rightarrow \mathbb{R} \)がそれぞれの\(\left( x,y\right) \in \mathbb{R} ^{2}\)に対して定める値が、\begin{equation*}f\left( x,y\right) =x
\end{equation*}であるならば、これは変数\(x\)に関する座標関数です。このとき、\begin{eqnarray*}f\left( 1,1\right) &=&f\left( 1,0\right) =f\left( 1,-1\right) =1 \\
f\left( 0,1\right) &=&f\left( 0,0\right) =f\left( 0,-1\right) =0 \\
f\left( -1,1\right) &=&f\left( -1,0\right) =f\left( -1,-1\right) =-1
\end{eqnarray*}などが成り立ちます。また、2変数関数\(g:\mathbb{R} ^{2}\rightarrow \mathbb{R} \)はそれぞれの\(\left( x,y\right) \in \mathbb{R} ^{2}\)に対して定める値が、\begin{equation*}g\left( x,y\right) =y
\end{equation*}であるならば、これは変数\(y\)に関する座標関数です。このとき、\begin{eqnarray*}g\left( 1,1\right) &=&g\left( 0,1\right) =g\left( -1,1\right) =1 \\
g\left( 1,0\right) &=&g\left( 0,0\right) =g\left( -1,0\right) =0 \\
g\left( 1,-1\right) &=&g\left( 0,-1\right) =g\left( -1,-1\right) =-1
\end{eqnarray*}などが成り立ちます。

例(多変数の座標関数)
入力したGPS座標\(\left( x,y\right) \)に対して、その経度\begin{equation*}f\left( x,y\right) =x
\end{equation*}を返す2変数関数\(f\)は変数\(x\)に関する恒等関数です。また、入力したGSP座標\(\left( x,y\right) \)に対して、その緯度\begin{equation*}g\left( x,y\right) =y
\end{equation*}を返す2変数関数\(g\)は変数\(y\)に関する恒等関数です。
例(多変数の座標関数)
多変数関数\(f:\mathbb{R} ^{n}\supset X\rightarrow \mathbb{R} \)はそれぞれの\(x\in X\)に対して、\begin{equation*}f\left( x\right) =x\cdot e_{k}
\end{equation*}を定めるものとします。ただし、\(\cdot \)は内積を表す記号であり、\(e_{k}\)は第\(k\)成分が\(1\)であり、それ以外のすべての成分が\(0\)であるような\(n\)次元ベクトル\begin{equation*}e_{k}=\left( 0,\cdots ,0,1,0,\cdots ,0\right)
\end{equation*}です。このとき、任意の\(x\in X\)に対して、\begin{eqnarray*}f\left( x\right) &=&\left( x_{1},\cdots ,x_{k-1},x_{k},x_{k+1},\cdots
,x_{n}\right) \cdot \left( 0,\cdots ,0,1,0,\cdots ,0\right) \quad \because f\text{の定義} \\
&=&x_{k}\quad \because \text{内積の定義}
\end{eqnarray*}となるため、この関数\(f\)は変数\(x_{k}\)に関する座標関数です。

 

多変数の座標関数のグラフ

関数\(f:\mathbb{R} ^{n}\supset X\rightarrow \mathbb{R} \)が変数\(x_{k}\)に関する座標関数であるものとします。つまり、任意の\(x\in X\)に対して、\begin{equation*}f\left( x\right) =x_{k}
\end{equation*}が成り立つということです。\(f\)のグラフは、\begin{eqnarray*}G\left( f\right) &=&\left\{ \left( x,y\right) \in X\times \mathbb{R} \ |\ y=f\left( x\right) \right\} \\
&=&\left\{ \left( x,y\right) \in X\times \mathbb{R} \ |\ y=x_{k}\right\} \\
&=&\left\{ \left( x,x_{k}\right) \ |\ x\in X\right\}
\end{eqnarray*}となります。特に、定義域が\(\mathbb{R} ^{n}\)である場合には、\begin{equation*}G\left( f\right) =\left\{ \left( x,x_{k}\right) \ |\ x\in \mathbb{R} ^{n}\right\}
\end{equation*}となります。

例(多変数の座標関数のグラフ)
関数\(f:\mathbb{R} ^{2}\rightarrow \mathbb{R} \)はそれぞれの\(\left( x,y\right) \in \mathbb{R} ^{2}\)に対して、\begin{equation*}f\left( x,y\right) =x
\end{equation*}を定めるものとします。この関数のグラフは、\begin{equation*}
G\left( f\right) =\left\{ \left( x,y,x\right) \ |\ x\in \mathbb{R} \wedge y\in \mathbb{R} \right\}
\end{equation*}ですが、これは以下のように図示されます。

図:多変数の座標関数
図:多変数の座標関数

関数\(g:\mathbb{R} ^{2}\rightarrow \mathbb{R} \)はそれぞれの\(\left( x,y\right) \in \mathbb{R} ^{2}\)に対して定める値が、\begin{equation*}g\left( x,y\right) =y
\end{equation*}を定めるものとします。この関数のグラフは、\begin{equation*}
G\left( g\right) =\left\{ \left( x,y,y\right) \ |\ x\in \mathbb{R} \wedge y\in \mathbb{R} \right\}
\end{equation*}ですが、これは以下のように図示されます。

図:多変数の座標関数
図:多変数の座標関数

 

多変数の座標関数との合成関数

ベクトル値関数\(f:\mathbb{R} \supset X\rightarrow \mathbb{R} ^{n}\)を任意に選びます。また、多変数関数\(g:\mathbb{R} ^{n}\supset Y\rightarrow \mathbb{R} \)が変数\(x_{k}\)に関する座標関数であるものとします。つまり、\begin{equation}\forall x\in Y:g\left( x\right) =x_{k} \quad \cdots (1)
\end{equation}であるということです。このとき、\begin{equation*}
f\left( X\right) \subset Y
\end{equation*}が成り立つ場合には合成関数\begin{equation*}
g\circ f:\mathbb{R} \supset X\rightarrow \mathbb{R} \end{equation*}が定義可能であり、これはそれぞれの\(x\in X\)に対して、\begin{eqnarray*}\left( g\circ f\right) \left( x\right) &=&g\left( f\left( x\right) \right)
\quad \because \text{合成関数の定義} \\
&=&f_{k}\left( x\right) \quad \because \left( 1\right)
\end{eqnarray*}を定めます。ただし、\(f_{k}\left( x\right) \)はベクトル\(f\left( x\right) \)の第\(k\)成分に相当する実数です。つまり、ベクトル値関数\(f\)と多変数の座標関数\(g\)の合成関数\(g\circ f\)は\(f\)の成分関数です。

例(多変数の座標関数との合成関数)
ベクトル値関数\(f:\mathbb{R} \rightarrow \mathbb{R} ^{2}\)はそれぞれの\(x\in \mathbb{R} \)に対して、\begin{equation*}f\left( x\right) =\left( x,x^{2}\right)
\end{equation*}を定め、多変数関数\(g:\mathbb{R} ^{2}\rightarrow \mathbb{R} \)はそれぞれの\(\left( x,y\right) \in \mathbb{R} ^{2}\)に対して、\begin{equation*}g\left( x,y\right) =x
\end{equation*}を定めるものとします。合成関数\(g\circ f:\mathbb{R} \rightarrow \mathbb{R} \)はそれぞれの\(x\in \mathbb{R} \)に対して、\begin{eqnarray*}\left( g\circ f\right) \left( x\right) &=&g\left( f\left( x\right) \right)
\quad \because \text{合成関数の定義} \\
&=&g\left( x,x^{2}\right) \quad \because f\text{の定義} \\
&=&x\quad \because f\text{の定義}
\end{eqnarray*}を定めますが、これは\(f\)の成分関数\(f_{1}:\mathbb{R} \rightarrow \mathbb{R} \)に他なりません。

多変数関数\(f:\mathbb{R} ^{n}\supset X\rightarrow \mathbb{R} \)が変数\(x_{k}\)に関する座標関数であるものとします。つまり、\begin{equation*}\forall x\in X:f\left( x\right) =x_{k}
\end{equation*}が成り立つということです。また、1変数関数\(g:\mathbb{R} \supset Y\rightarrow \mathbb{R} \)を任意に選びます。このとき、\begin{equation*}f\left( X\right) \subset Y
\end{equation*}が成り立つ場合には合成関数\begin{equation*}
g\circ f:\mathbb{R} ^{n}\supset X\rightarrow \mathbb{R} \end{equation*}が定義可能であり、これはそれぞれの\(x\in X\)に対して、\begin{eqnarray*}\left( g\circ f\right) \left( x\right) &=&g\left( f\left( x\right) \right)
\quad \because \text{合成関数の定義} \\
&=&g\left( x_{k}\right) \quad \because f\text{の定義}
\end{eqnarray*}を定めます。

例(多変数の定数関数との合成関数)
多変数関数\(f:\mathbb{R} ^{2}\rightarrow \mathbb{R} \)はそれぞれの\(\left( x,y\right) \in \mathbb{R} ^{2}\)に対して、\begin{equation*}f\left( x,y\right) =y
\end{equation*}を定め、1変数関数\(g:\mathbb{R} \rightarrow \mathbb{R} \)はそれぞれの\(x\in \mathbb{R} \)に対して、\begin{equation*}g\left( x\right) =x^{2}+x+1
\end{equation*}を定めるものとします。合成関数\(g\circ f:\mathbb{R} ^{2}\rightarrow \mathbb{R} \)はそれぞれの\(\left( x,y\right) \in \mathbb{R} ^{2}\)に対して、\begin{eqnarray*}\left( g\circ f\right) \left( x,y\right) &=&g\left( f\left( x,y\right)
\right) \quad \because \text{合成関数の定義} \\
&=&g\left( y\right) \quad \because f\text{の定義} \\
&=&y^{2}+y+1\quad \because g\text{の定義}
\end{eqnarray*}を定めます。

 

演習問題

問題(座標関数による像)
関数\(f:\mathbb{R} ^{n}\rightarrow \mathbb{R} \)が変数\(x_{k}\)に関する座標関数であるものとします。つまり、\begin{equation*}\forall x\in \mathbb{R} ^{n}:f\left( x\right) =x_{k}
\end{equation*}が成り立つということです。始集合の部分集合\(X\subset \mathbb{R} ^{n}\)を任意に選んだ上で、\(f\)による像\(f\left( X\right) \)を求めてください。また、\(f\)の値域\(R\left( f\right) \)を求めてください。
解答を見る

プレミアム会員専用コンテンツです
ログイン】【会員登録

問題(座標関数による逆像)
関数\(f:\mathbb{R} ^{n}\rightarrow \mathbb{R} \)が変数\(x_{k}\)に関する座標関数であるものとします。つまり、\begin{equation*}\forall x\in \mathbb{R} ^{n}:f\left( x\right) =x_{k}
\end{equation*}が成り立つということです。終集合の要素\(y\in \mathbb{R} \)を任意に選んだ上で、その逆像\(f^{-1}\left( y\right) \)を求めてください。また、終集合の部分集合\(Y\subset \mathbb{R} \)を任意に選んだ上で、その逆像\(f^{-1}\left( Y\right) \)を求めてください。
解答を見る

プレミアム会員専用コンテンツです
ログイン】【会員登録

関連知識

前のページ:

多変数の定数関数

次のページ:

多変数の多項式関数

Mailで保存
Xで共有

質問とコメント

プレミアム会員専用コンテンツです

会員登録

有料のプレミアム会員であれば、質問やコメントの投稿と閲覧、プレミアムコンテンツ(命題の証明や演習問題とその解答)へのアクセスなどが可能になります。

ワイズのユーザーは年齢・性別・学歴・社会的立場などとは関係なく「学ぶ人」として対等であり、お互いを人格として尊重することが求められます。ユーザーが快適かつ安心して「学ぶ」ことに集中できる環境を整備するため、広告やスパム投稿、他のユーザーを貶めたり威圧する発言、学んでいる内容とは関係のない不毛な議論などはブロックすることになっています。詳細はガイドラインをご覧ください。

誤字脱字、リンク切れ、内容の誤りを発見した場合にはコメントに投稿するのではなく、以下のフォームからご連絡をお願い致します。

プレミアム会員専用コンテンツです
ログイン】【会員登録