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多変数関数

多変数関数の連続性と1変数関数の連続性の関係

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連続な多変数から生成される1変数関数の連続性

多変数関数\(f:\mathbb{R} ^{n}\supset X\rightarrow \mathbb{R} \)が与えられたとき、その定義域\(X\)において変数\(x_{k}\ \left( k=1,\cdots ,n\right) \)がとり得る値からなる集合を\(X_{k}\)で表記します。つまり、任意の\(x\in \mathbb{R} ^{n}\)について、\begin{equation*}x\in X\Leftrightarrow x_{k}\in X_{k}
\end{equation*}を満たすものとして\(X_{k}\subset \mathbb{R} \)を定義するということです。変数\(x_{k}\)以外のすべての変数からなる組を、\begin{equation*}x_{-k}=\left( x_{1},\cdots ,x_{k-1},x_{k+1},\cdots ,x_{n}\right)
\end{equation*}で表記し、\(x_{-k}\)がとり得る値からなる集合を、\begin{equation*}X_{-k}=X_{1}\times \cdots X_{k-1}\times X_{k+1}\times \cdots X_{n}
\end{equation*}で表記します。\(x_{-k}\in X_{-k}\)です。このとき、\begin{equation*}x=\left( x_{k},x_{-k}\right) \in X_{k}\times X_{-k}=X
\end{equation*}という関係が成り立ちます。

多変数関数\(f:\mathbb{R} ^{n}\supset X\rightarrow \mathbb{R} \)と定義域上の点\(a=\left(a_{k},a_{-k}\right) \in X\)が与えられたとき、それぞれの\(x_{k}\in X_{k}\)に対して、\begin{equation*}g\left( x_{k}\right) =f\left( x_{k},a_{-k}\right)
\end{equation*}を定める1変数関数\begin{equation*}
g:X_{k}\rightarrow \mathbb{R} \end{equation*}を定義します。これは多変数関数\(f\)において変数\(x_{k}\)以外のすべての変数\(x_{-k}\)の値を\(a_{-k}\)に固定することで得られる変数\(x_{k}\)に関する1変数関数です。

多変数関数\(f\left( x\right) \)が点\(a\)において連続である場合には、任意の変数\(x_{k}\)について、関数\(g\left( x_{k}\right) \)もまた点\(a_{k}\)において連続であることが保証されます。

命題(連続な多変数から生成される1変数関数の連続性)
多変数関数\(f:\mathbb{R} ^{n}\supset X\rightarrow \mathbb{R} \)と定義域上の点\(a=\left(a_{k},a_{-k}\right) \in X_{k}\times X_{-k}=X\)が与えられたとき、変数\(x_{k}\)を任意に選んだ上で、それぞれの\(x_{k}\in X_{k}\)に対して、\begin{equation*}g\left( x_{k}\right) =f\left( x_{k},a_{-k}\right)
\end{equation*}を定める1変数関数\(g:\mathbb{R} \supset X_{k}\rightarrow \mathbb{R} \)を定義する。\(f\)が点\(a\)において連続であるならば、\(g\)は点\(a_{k}\)において連続である。
証明

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関数\(g\)の定義を踏まえると、上の命題の主張は、多変数関数\(f\left(x\right) \)が点\(a\)において連続である場合、\(f\)において変数\(x_{k}\)以外のすべての変数\(x_{-k}\)の値を\(a_{-k}\)に固定し、\(f\)をあたかも変数\(x_{k}\)に関する1変数\(f\left( x_{k},a_{-k}\right) \)とみなせば、その1変数関数は点\(a_{k}\)において連続であることを意味します。

例(連続な多変数から生成される1変数関数の連続性)
関数\(f:\mathbb{R} ^{2}\rightarrow \mathbb{R} \)はそれぞれの\(\left( x,y\right) \in \mathbb{R} ^{2}\)に対して、\begin{equation*}f\left( x,y\right) =x^{2}y^{3}
\end{equation*}を定めるものとします。\(f\)は多変数の多項式関数であるため\(\mathbb{R} ^{2}\)上で連続です。点\(b\in \mathbb{R} \)を任意に選んだ上で、関数\(f\)の変数\(y\)に\(b\)を代入すれば変数\(x\)に関する1変数関数\begin{equation*}f\left( x,b\right) =x^{2}b^{3}
\end{equation*}が得られますが、先の命題より、この関数\(f\left( x,b\right) \)は\(\mathbb{R} \)上で連続です。点\(a\in \mathbb{R} \)を任意に選んだ上で、関数\(f\)の変数\(x\)に\(a\)を代入すれば変数\(y\)に関する1変数関数\begin{equation*}f\left( a,y\right) =a^{2}y^{3}
\end{equation*}が得られますが、先の命題より、この関数\(f\left( a,y\right) \)は\(\mathbb{R} \)上で連続です。

ちなみに、上の命題の逆は成立するとは限りません。つまり、任意の変数\(x_{k}\)について関数\(g\left( x_{k}\right) \)が点\(a_{k}\)において連続であったとしても、多変数関数\(f\left( x\right) \)は点\(a\)において連続であるとは限りません。以下の例より明らかです。

例(1変数関数は連続だが多変数関数は連続ではない場合)
関数\(f:\mathbb{R} ^{2}\rightarrow \mathbb{R} \)はそれぞれの\(\left( x,y\right) \in \mathbb{R} ^{2}\)に対して、\begin{equation*}f\left( x,y\right) =\left\{
\begin{array}{cl}
\frac{xy}{x^{2}+y^{2}} & \left( if\ \left( x,y\right) \not=\left( 0,0\right)
\right) \\
0 & \left( if\ \left( x,y\right) =\left( 0,0\right) \right)
\end{array}\right.
\end{equation*}を定めるものとします。点\(\left( 0,0\right) \)に注目します。関数\(f\)の変数\(y\)に\(0\)を代入すれば変数\(x\)に関する1変数関数\(f\left(x,0\right) :\mathbb{R} \rightarrow \mathbb{R} \)が得られますが、\(x\not=0\)の場合には、\begin{equation*}f\left( x,0\right) =\frac{x\cdot 0}{x^{2}+0^{2}}=0
\end{equation*}である一方で、\(x=0\)の場合には、\begin{equation*}f\left( 0,0\right) =0
\end{equation*}であるため、この1変数関数\(f\left( x,0\right) \)は定数関数\(0\)であり、したがって点\(0\)において連続です。関数\(f\)の変数\(x\)に\(0\)を代入すれば変数\(y\)に関する1変数関数\(f\left( 0,y\right):\mathbb{R} \rightarrow \mathbb{R} \)が得られますが、\(y\not=0\)の場合には、\begin{equation*}f\left( 0,y\right) =\frac{0\cdot y}{0^{2}+y^{2}}=0
\end{equation*}である一方で、\(y=0\)の場合には、\begin{equation*}f\left( 0,0\right) =0
\end{equation*}であるため、この1変数関数\(f\left( 0,y\right) \)は定数関数\(0\)であり、したがって点\(0\)において連続です。その一方で、もとの2変数関数\(f\left( x,y\right) \)は点\(\left( 0,0\right) \)において連続ではありません(演習問題)。

 

多変数関数が連続ではないことの判定

多変数関数\(f\left( x\right) \)が点\(a\)において連続である場合、任意の変数\(x_{k}\)について、1変数\(f\left(x_{k},a_{-k}\right) \)は点\(a_{k}\)において連続であることが明らかになりました。対偶より、少なくとも1つの変数\(x_{k}\)について、1変数\(f\left( x_{k},a_{-k}\right) \)が点\(a_{k}\)において連続でない場合には、もとの多変数関数\(f\left( x\right) \)は点\(a\)において連続ではないことが保証されます。つまり、多変数関数が連続ではないことを示す際に、それを1変数関数の連続性の問題として考えることができるということです。

例(多変数関数が連続ではないことの証明)
関数\(f:\mathbb{R} ^{2}\rightarrow \mathbb{R} \)はそれぞれの\(\left( x,y\right) \in \mathbb{R} ^{2}\)に対して、\begin{equation*}f\left( x,y\right) =\left\vert xy\right\vert
\end{equation*}を定めるものとします。点\(\left( a,b\right) \in \mathbb{R} ^{2}\)を任意に選んだ上で、関数\(f\)の変数\(y\)に\(b\)を代入すれば変数\(x\)に関する1変数関数\begin{equation*}f\left( x,b\right) =\left\vert xb\right\vert
\end{equation*}が得られますが、この関数は点\(x=0\)において連続ではありません。したがって、もとの2変数関数\(f\)もまた\(x=0\)を満たす任意の点\(\left(x,y\right) \)において連続ではありません。

 

演習問題

問題(連続ではない多変数関数)
関数\(f:\mathbb{R} ^{2}\rightarrow \mathbb{R} \)はそれぞれの\(\left( x,y\right) \in \mathbb{R} ^{2}\)に対して、\begin{equation*}f\left( x,y\right) =\left\{
\begin{array}{cl}
\frac{xy}{x^{2}+y^{2}} & \left( if\ \left( x,y\right) \not=\left( 0,0\right)
\right) \\
0 & \left( if\ \left( x,y\right) =\left( 0,0\right) \right)
\end{array}\right.
\end{equation*}を定めるものとします。\(f\)は点\(\left( 0,0\right) \)において連続ではないことを示してください。
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