連続な多変数関数の積の連続性
定義域を共有する2つの多変数関数\(f,g:\mathbb{R} ^{n}\supset X\rightarrow \mathbb{R} \)が与えられたとき、それぞれの\(x\in X\)に対して、\begin{equation*}\left( f\cdot g\right) \left( x\right) =f\left( x\right) \cdot g\left(
x\right)
\end{equation*}を定める新たな多変数関数\(f\cdot g:\mathbb{R} ^{n}\supset X\rightarrow \mathbb{R} \)が定義可能です。関数\(f,g\)がともに定義域上の点\(a\in \mathbb{R} ^{n}\)および周辺の任意の点において定義されているとともに点\(a\)において連続であるならば、関数\(f\cdot g\)もまた点\(a\)において連続であることが保証されます。
命題(連続な多変数関数の積の連続性)
関数\(f,g:\mathbb{R} ^{n}\supset X\rightarrow \mathbb{R} \)がそれぞれ任意に与えられたとき、そこから関数\(f\cdot g:\mathbb{R} ^{n}\supset X\rightarrow \mathbb{R} \)を定義する。\(f,g\)がともに定義域上の点\(a\in X\)および周辺の任意の点において定義されており、なおかつ点\(a\)において連続であるならば、\(f\cdot g\)もまた点\(a\)において連続である。
つまり、定義域上の点\(a\)において連続な関数\(f,g\)の積の形をしている関数\(f\cdot g\)が与えられたとき、\(f\cdot g\)もまた点\(a\)において連続であることを上の命題は保証しています。したがって、何らかの関数\(f,g\)の積の形をしている関数\(f\cdot g\)の連続性を検討する際には、関数の連続性の定義にさかのぼって考える前に、まずは\(f\)と\(g\)に分けた上で、それらが連続であることを確認すればよいということになります。
例(連続な多変数関数の積の連続性)
関数\(f:\mathbb{R} ^{3}\rightarrow \mathbb{R} \)はそれぞれの\(\left( x,y,z\right) \in \mathbb{R} ^{3}\)に対して、\begin{equation*}f\left( x,y,z\right) =\frac{1}{2}xy^{2}-3z
\end{equation*}を定めるものとします。多変数の座標関数である\(x,y,z\)はいずれも連続であるため、それらの積の定数倍である\(\frac{1}{2}xy^{2}\)と\(3z\)は連続です。したがって\(f\)は連続な関数の差であるため連続です。
\end{equation*}を定めるものとします。多変数の座標関数である\(x,y,z\)はいずれも連続であるため、それらの積の定数倍である\(\frac{1}{2}xy^{2}\)と\(3z\)は連続です。したがって\(f\)は連続な関数の差であるため連続です。
例(連続な多変数関数の積の連続性)
関数\(f:\mathbb{R} ^{2}\rightarrow \mathbb{R} \)はそれぞれの\(\left( x,y\right) \in \mathbb{R} ^{2}\)に対して、\begin{equation*}f\left( x,y\right) =\sin \left( 2x+y\right) \cos \left( 2x+y\right)
\end{equation*}を定めるものとします。\(\sin \left( 2x+y\right) \)は連続関数である多変数関数\(2x+y\)と正弦関数\(\sin \left( x\right) \)の合成関数であるため連続です。同様に、\(\cos \left( 2x+y\right) \)は連続関数である多変数関数\(2x+y\)と余弦関数\(\cos \left( x\right) \)の合成関数であるため連続です。したがって\(f\)は連続な関数の積であるため連続です。
\end{equation*}を定めるものとします。\(\sin \left( 2x+y\right) \)は連続関数である多変数関数\(2x+y\)と正弦関数\(\sin \left( x\right) \)の合成関数であるため連続です。同様に、\(\cos \left( 2x+y\right) \)は連続関数である多変数関数\(2x+y\)と余弦関数\(\cos \left( x\right) \)の合成関数であるため連続です。したがって\(f\)は連続な関数の積であるため連続です。
例(連続な多変数関数の積の連続性)
関数\(f:\mathbb{R} ^{2}\rightarrow \mathbb{R} \)はそれぞれの\(\left( x,y\right) \in \mathbb{R} ^{2}\)に対して、\begin{equation*}f\left( x,y\right) =\left( \frac{x}{2}+3y+1\right) ^{\frac{1}{2}}\left(
\frac{y}{2}\right) ^{\frac{1}{3}}
\end{equation*}を定めるものとします。\(\left( \frac{x}{2}+3y+1\right) ^{\frac{1}{2}}\)は連続関数である多変数関数\(\frac{x}{2}+3y+1\)と無理関数\(x^{\frac{1}{2}}\)の合成関数であるため連続です。同様に、\(\left( \frac{y}{2}\right) ^{\frac{1}{3}}\)は連続関数である多変数関数\(\frac{y}{2}\)と無理関数\(x^{\frac{1}{3}}\)の合成関数であるため連続です。したがって\(f\)は連続な関数の積であるため連続です。
\frac{y}{2}\right) ^{\frac{1}{3}}
\end{equation*}を定めるものとします。\(\left( \frac{x}{2}+3y+1\right) ^{\frac{1}{2}}\)は連続関数である多変数関数\(\frac{x}{2}+3y+1\)と無理関数\(x^{\frac{1}{2}}\)の合成関数であるため連続です。同様に、\(\left( \frac{y}{2}\right) ^{\frac{1}{3}}\)は連続関数である多変数関数\(\frac{y}{2}\)と無理関数\(x^{\frac{1}{3}}\)の合成関数であるため連続です。したがって\(f\)は連続な関数の積であるため連続です。
多変数関数の積の境界点における連続性
以下は境界点における連続性の例です。
例(多変数関数の積の境界点における連続性)
定義域を共有する2つの関数\(f,g:\mathbb{R} ^{2}\supset \left[ 0,1\right] \times \left[ 0,1\right] \rightarrow \mathbb{R} \)の定義域上の境界点\(\left( 1,1\right) \)に注目したとき、\(f,g\)は点\(\left( 1,1\right) \)の周辺の任意の点において定義されているとは言えません。この場合、\(f\)および\(g\)が点\(\left(1,1\right) \)において連続であることとは、変数\(\left(x,y\right) \)が\(x\leq 1\)かつ\(y\leq 1\)を満たしながら\(\left( 1,1\right) \)へ限りなく近づく場合に、\begin{eqnarray*}\lim_{\left( x,y\right) \rightarrow \left( 1,1\right) }f\left( x,y\right)
&=&f\left( 1,1\right) \\
\lim_{\left( x,y\right) \rightarrow \left( 1,1\right) }g\left( x,y\right)
&=&g\left( 1,1\right)
\end{eqnarray*}が成り立つことを意味します。これは、\begin{eqnarray*}
&&\left( a\right) \ \forall v\in \mathbb{N} :x_{v}\leq 1 \\
&&\left( b\right) \ \forall v\in \mathbb{N} :y_{v}\leq 1 \\
&&\left( c\right) \ \lim_{v\rightarrow \infty }\left( x_{v},y_{v}\right)
=\left( 1,1\right)
\end{eqnarray*}を満たす点列\(\left\{ \left(x_{v},y_{v}\right) \right\} \)を任意に選んだとき、数列\(\left\{ f\left(x_{v},y_{v}\right) \right\} \)および\(\left\{ g\left(x_{v},y_{v}\right) \right\} \)について、\begin{eqnarray}\lim_{v\rightarrow \infty }f\left( x_{v},y_{v}\right) &=&f\left( 1,1\right)
\quad \cdots (1) \\
\lim_{v\rightarrow \infty }g\left( x_{v},y_{v}\right) &=&g\left( 1,1\right)
\quad \cdots (2)
\end{eqnarray}が成り立つことを意味します。関数\begin{equation*}
f\cdot g:\mathbb{R} ^{2}\supset \left[ 0,1\right] \times \left[ 0,1\right] \rightarrow \mathbb{R} \end{equation*}を定義します。\(\left( a\right) \)から\(\left( c\right) \)を満たす点列\(\left\{ \left( x_{v},y_{v}\right) \right\} \)を任意に選んだとき、数列\(\left\{ \left( f\cdot g\right) \left( x_{v},y_{v}\right) \right\} \)について、\begin{eqnarray*}\lim_{v\rightarrow \infty }\left( f\cdot g\right) \left( x_{v},y_{v}\right)
&=&\lim_{v\rightarrow \infty }\left[ f\left( x_{v},y_{v}\right) \cdot
g\left( x_{v},y_{v}\right) \right] \quad \because f\cdot g\text{の定義} \\
&=&\lim_{v\rightarrow \infty }f\left( x_{v},y_{v}\right) \cdot
\lim_{v\rightarrow \infty }g\left( x_{v},y_{v}\right) \quad \because \text{収束する数列の積} \\
&=&f\left( 1,1\right) \cdot g\left( 1,1\right) \quad \because \left(
1\right) ,\left( 2\right) \\
&=&\left( f\cdot g\right) \left( 1,1\right) \quad \because f\cdot g\text{の定義}
\end{eqnarray*}となるため、\(f\cdot g\)が点\(\left( 1,1\right) \)において連続であることが示されました。他の境界点についても同様に考えます。
&=&f\left( 1,1\right) \\
\lim_{\left( x,y\right) \rightarrow \left( 1,1\right) }g\left( x,y\right)
&=&g\left( 1,1\right)
\end{eqnarray*}が成り立つことを意味します。これは、\begin{eqnarray*}
&&\left( a\right) \ \forall v\in \mathbb{N} :x_{v}\leq 1 \\
&&\left( b\right) \ \forall v\in \mathbb{N} :y_{v}\leq 1 \\
&&\left( c\right) \ \lim_{v\rightarrow \infty }\left( x_{v},y_{v}\right)
=\left( 1,1\right)
\end{eqnarray*}を満たす点列\(\left\{ \left(x_{v},y_{v}\right) \right\} \)を任意に選んだとき、数列\(\left\{ f\left(x_{v},y_{v}\right) \right\} \)および\(\left\{ g\left(x_{v},y_{v}\right) \right\} \)について、\begin{eqnarray}\lim_{v\rightarrow \infty }f\left( x_{v},y_{v}\right) &=&f\left( 1,1\right)
\quad \cdots (1) \\
\lim_{v\rightarrow \infty }g\left( x_{v},y_{v}\right) &=&g\left( 1,1\right)
\quad \cdots (2)
\end{eqnarray}が成り立つことを意味します。関数\begin{equation*}
f\cdot g:\mathbb{R} ^{2}\supset \left[ 0,1\right] \times \left[ 0,1\right] \rightarrow \mathbb{R} \end{equation*}を定義します。\(\left( a\right) \)から\(\left( c\right) \)を満たす点列\(\left\{ \left( x_{v},y_{v}\right) \right\} \)を任意に選んだとき、数列\(\left\{ \left( f\cdot g\right) \left( x_{v},y_{v}\right) \right\} \)について、\begin{eqnarray*}\lim_{v\rightarrow \infty }\left( f\cdot g\right) \left( x_{v},y_{v}\right)
&=&\lim_{v\rightarrow \infty }\left[ f\left( x_{v},y_{v}\right) \cdot
g\left( x_{v},y_{v}\right) \right] \quad \because f\cdot g\text{の定義} \\
&=&\lim_{v\rightarrow \infty }f\left( x_{v},y_{v}\right) \cdot
\lim_{v\rightarrow \infty }g\left( x_{v},y_{v}\right) \quad \because \text{収束する数列の積} \\
&=&f\left( 1,1\right) \cdot g\left( 1,1\right) \quad \because \left(
1\right) ,\left( 2\right) \\
&=&\left( f\cdot g\right) \left( 1,1\right) \quad \because f\cdot g\text{の定義}
\end{eqnarray*}となるため、\(f\cdot g\)が点\(\left( 1,1\right) \)において連続であることが示されました。他の境界点についても同様に考えます。
演習問題
問題(連続な多変数関数の積の連続性)
関数\(f:\mathbb{R} ^{2}\rightarrow \mathbb{R} \)はそれぞれの\(\left( x,y\right) \in \mathbb{R} ^{2}\)に対して、\begin{equation*}f\left( x,y\right) =\left( x-1\right) \left( y-1\right)
\end{equation*}を定めるものとします。\(f\)が連続である点を明らかにしてください。
\end{equation*}を定めるものとします。\(f\)が連続である点を明らかにしてください。
問題(連続な多変数関数の積の連続性)
関数\(f:\mathbb{R} ^{2}\rightarrow \mathbb{R} \)はそれぞれの\(\left( x,y\right) \in \mathbb{R} ^{2}\)に対して、\begin{equation*}f\left( x,y\right) =\left\{
\begin{array}{cc}
x^{2}-xy+y^{2}+1 & if\ \left( x,y\right) \not=\left( 0,0\right) \\
0 & if\ \left( x,y\right) =\left( 0,0\right)
\end{array}\right.
\end{equation*}を定めるものとします。\(f\)が連続である点を明らかにしてください。
\begin{array}{cc}
x^{2}-xy+y^{2}+1 & if\ \left( x,y\right) \not=\left( 0,0\right) \\
0 & if\ \left( x,y\right) =\left( 0,0\right)
\end{array}\right.
\end{equation*}を定めるものとします。\(f\)が連続である点を明らかにしてください。
問題(連続な多変数関数の積の連続性)
関数\(f:\mathbb{R} ^{2}\rightarrow \mathbb{R} \)はそれぞれの\(\left( x,y\right) \in \mathbb{R} ^{2}\)に対して、\begin{equation*}f\left( x,y\right) =\ln \left( \frac{x^{2}+y^{2}+1}{2}\right)
\end{equation*}を定めるものとします。\(f\)が連続である点を明らかにしてください。
\end{equation*}を定めるものとします。\(f\)が連続である点を明らかにしてください。
プレミアム会員専用コンテンツです
【ログイン】【会員登録】